【マセラティ 3200GT】最後のターボエンジンを搭載した、名門からのGTクーペ

21世紀に入って、やっと日本での正規輸入チャンネルが確立したという、イタリア発名門スポーツカーのマセラティ。実は操業は1914年なのだそうです。細かい点は別としても、クルマについてのメディアに触れたことのある人なら、一度はそのブランド名を聞いたり目にしたりしたことがあるはず。数々の名車を発売した同社が、1998年に発表した4人乗りのスポーツ・ツアラーが、このマセラティ 3200GTです。

偉大な先輩から名称を引き継いで登場

聞く所によると、例のタックスヘイブンと目される国々では、国外から流れ込んできた富裕層の運転する「赤いフェラーリ」があふれかえっているとかいないとか。可処分所得がある程度以上に増えた人々が、今も昔も欲しがるのは、やはりハイパフォーマンス・スポーツカーなのです。
そういった「真にクルマを愛する人々」が最後にもとめる一台が、『リンカーン』でも『レクサス』や『ヒュンダイ』や『メルセデス』ですらなく、やはりイタリアのスーパー・スポーツカー。コンストラクターとしては非力な所も有るかもしれない数社が、この分野の世界を支配しているように見えるのも、考えてみると面白い話でもあります。

さて、イタリアン・スポーツカーと言えば、『F社』と『L社』がすぐに思い浮かぶ気もします。しかし、もう1つ忘れてはいけないブランドがありました。そのイニシャルは『M』。そう、マセラティ社です。

同車の量産スポーツカー第一号機は、1957年に発表された素敵なスポーツカー、『マセラティ・3500GT』。そして、その名称をトリビュートしながら、グランドツアラーとして1998年に「復活」したのが、マセラティ 3200GTというスポーツカーでした。

出典:http://www.goo-net.com/catalog/MASERATI/3200GT/9002796/index.html

外観は、流麗なるクーペスタイルを持ちつつ、殆どがレザー張りを施された室内。そこには、前後合わせて4つの座席を持つという、使えるクルマでもあったのがこのGTなのだそうです。デザインを担当したのは、ジョルジェット・ジウジアーロ。極限まで曲面に拘ったかのフロントとサイドのボディパネルは、一切、空気の流れと争わないかの印象(Cd値⁼0.34)です。そして、突然縦にカットされたようなリアには、これまた独特の個性を放つ「横L字型テールランプ」が配置されます。

実はこの時点で、フェラーリの傘下に入っていたマセラティ社。しかし、エンジンラインアップから車体デザインまで、『F社』の子分に成り下がることを拒んだのが、この3200GTというモデルだと言うことです

その中身

非常に長い歴史と、世界中に轟く程の名声を併せ持つマセラティ社。ピュアなスポーツカーコンストラクターとしては宿命的とも言える、不安定な経営状態と格闘してきたのも事実です。1930年代には既に、その経営は、モデナの実業家アドルフォ・オルシという人の手に渡っています。

その後も、シトロエンの傘下に入った(1965年)かと思えば、デ・トマソが買い取ったり(1975年)と波乱万丈。そのドラマがやっと収束を見せ始めたのが、1993年になってフィアットの傘下へ入った頃だったでしょう。その後、同じ系列のフェラーリに権利が移され、現在ではフィアットの子会社として復帰しているそう。

今回のテーマ、マセラティ 3200GTは、そのフェラーリ時代に生み出された一台。そして、このクルマの後継車種となる『マセラティ クーペ』程には、『F社』の影響が入り込んでいない最後のモデルなのです。

何といってもエンジンが主役

元祖である3500 GTこそ、直列6気筒のエンジンを積んでいましたが、その後のマセラティはV型8気筒が代名詞となったとも言えるでしょう。そしてもちろん、マセラティ 3200GTにもそのV8が搭載されています。排気量は(その車名に表れているとおり)3.2Lで、DOHC32バルブを『ビトゥルボ(Biturbo)』と呼ばれるツインターボで過給したオールアルミ製エンジンです。
同社の『クアトロポルテ4』にも搭載されていたこの動力源は、圧縮比7.5:1から、出力272kW(370ps)にトルクは491Nm(50kgm)を絞り出す強力版です。電子制御式の「ドライブ・バイ・ワイヤー・スロットル」を採用していて、トラクションコントロールも装備しているエンジンです。とは言え、その制御の足かせを取り払えば、各コーナーで245/40ZR18のリアタイヤを、容易に横スライドさせることができたそう。その反面、もっともスポーティーな設定を選んだとしても、この電子制御の効きが良すぎるという感想を持つドライバーも多かったとか。

その素性はまさに、操る者を選ぶ古典的なスポーツカーの印象をもつ、このマセラティ 3200GT。その迫力を生み出すのは、エキゾースト系に連結された2つの過給タービンな訳ですが、それだけにクセのあるエンジンだったようです。いわゆるターボラグは、運転する人間にある程度の慣れを要求しました。アクセルぺダルを踏み込んでも、ターボの効きには少しの間が存在し、逆にペダルを戻してもエンジン回転の落ちにも同様のラグがあったそう。

ただ、そういった至らぬ点も、スポーツカーにとっては1つの魅力。家電製品化をしている現代のクルマは持ち合わせていない、操ることの楽しみと意味を持っていたのが、この3200GTだったかもしれません。そしてその一方で、時速50km程の市街地走行にも、十分に対応してくれたのがこのクルマでした。

シャシーと駆動系

マセラティ 3200GTの基本構造は、シャシーとボディーが一体に統合された「ユニボディー」方式が採用されました。それに、エンジン関係を支える鋼管サブフレームが前部へ、駆動輪のディファレンシャルギアとリアサスペンションを支持するフレームが後部へ追加されています。

そのサスペンションは、4輪ともにダブルウィッシュボーン式が採用。スプリングはコイル式で、前後にアンチロールバーももちろん装備です。ダンパーは電子制御可変機構を持っていました。

ベースとなる変速機は、6速のマニュアルトランスミッション。最初のモデルが発売後1年経過した1999年には、4速のオートマチックを搭載した『3200 GT Automatica』が、ジュネーブショーで発表されました。『3200 GTA』とも呼ばれるこのモデルでは、マニュアル仕様と同じエンジンプロフィールを継承。追加される変速機構の重量増分は、全体でも30kg程度に抑えられていたそうです。

4ポッドキャリパー式の4輪ベンチレーテッド・ディスクブレーキはブレンボ製。これには、4チャンネルABSが組みあわされていました。

評判、ドライブフィール

好みにも寄りますが、特にこの時代のマセラティを選ぶオーナーさんなら、やはり6速のMTで振り回したいとお考えかもしれません。そしてこの3200GTが、今どきそこいらで見掛ける2ドアクーペと違う車だというのも、覚悟した方が良さそうです。

先に書いた通り、このエンジンにはクセも有り、同時に大パワーも備わっています。粗くアクセルペダルを踏み込むと、ともすれば制御しきれない加速でドライバーはシートに押し付けられるそうです。またそれにともない、ハンドリングにもある程度の繊細さは求められます。そんな素性のために、効きの良いトラクションコントロールが用意されたのかもしれません。そして、難しさを上手く扱うため求められる運転技量を満たした時、ドライバーはこのGTの力を制御し解放も出来るわけですね。

そんな反面、意外と市街地のドライバビリティーが確保されているのも、3200GTの大きな良点らしいです。十分広いとは行かなくとも、2つの後席は子供を座らせるには一応十分だとも聞こえてきます。

ちなみに、日本国内のユーザーさん達が記録した燃費を調べてみると、概ね6km/Lを若干下回るという所らしいです。まぁ、個々のクルマ自体のコンディションや、運転する道路の状況も関係することはするでしょう。それでも、思ったより悪くない(?)、とも言えそうです。

加えて、伝統のV型8気筒DOHC32バルブが発するサウンドには、多くのオーナーさんが満足されている様子ではあります。

【基本情報】

名称:マセラティ 3200GT(6速MT)
エンジン排気量:3,217cc
エンジン出力:272kw(370ps)/6,250rpm
エンジントルク:491Nm(50kgm)/4,500rpm
全長:4,510mm
全幅:1,822mm
全高:1,305mm
重量:1,590kg
ホールベース:2,660mm
サスペンション:ダブルウィッシュボーン式(前)/ ダブルウィッシュボーン式(後)

コンセプトカー、320S

320Sは、マセラティ 3200GTをベースに作られた、レース仕様のコンセプトカー。2001年のジュネーブショーに出展されました。ホールベースが3200GTより220mm短くなった車体には、ドライバーシートのみが装備された純粋レーシングカーです。6点式シートベルトなどを含めた競技用装備は、スパルコ製。
このモデルは、車体のデザインこそ大幅に改造されていましたが、エンジンは市販と同じV型8気筒で272kWのもの。トランスミッションも同じ6速MTを使っています。

実はベースモデルの3200GTは、この時、ほぼモデルライフを終えようとしていました。しかし同年のフランクフルト自動車ショーには、GTの次期モデルとしてスパイダーが出展。そのモデルによって、1990年以来途絶えていた北米への輸出再開という計画も、ちゃくちゃくと進んでいたといいます。

このコンセプトカーは、そんなマセラティの新たな計画のため、露払い的な役割もしたかもしれませんね。

最後の暴れ馬(?)を操りたい…中古を探してみる

まず、日本にあるの?

普通に新車を買えば、プライスタグ上にゼロが7つ並ぶだろうマセラティの車。もし乗ってみたいと思ったら、中古でも良いと考えたくなりますね。販売されていた時期も、ビンテージカーと呼ぶほど古い訳でもなく、ルックスも十分にモダンなシルエットを持っています。今これを乗り回したら、ちょっと楽しいことになりそうではあります。

とは言え、製造されていたペースも、1日に高々9台程度だったと言う話もあります。その希少な車、今の日本に存在するのでしょうか?

とりあえず調べてみると、2000年登録で走行距離が7.8万kmの6速MT車が、本体価格2、980、000円というのがあったりします。あるいは、同じ2000年登録のAT仕様で走行が4.1万kmで、2,780,000円という車体(正規輸入車)もあります。

まぁ、十数年前のイタリアン・スポーツカー、相場価格としてはこの辺りということなのでしょうか。日本でも意外と数は存在するかもしれません。

どうしても気にせざるを得ないのは、故障など

出典:http://www.goo-net.com/catalog/MASERATI/3200GT/9002796/index.html

マセラティ 3200GTのメカニカルな部分には、顕著な弱点は指摘されていないとも言います。これは、フィアット&フェラーリの生産技術が取り込まれた結果でもあるでしょう。ですが、現存するものが全て中古車である以上、使用した後の劣化は絶対に免れないところでもあります。ある意味、信頼性を手に入れた事で、前オーナーさんが長く乗った後に手放したというケースも考えられます。

レザーの内装は持ちが良い方だとのことですが、その色合いが褪せているケースは多いそう。ですから、内装の色調が美しさを失っていたとしても、その点を気にしすぎない方が良いらしいです。ただ、やはり細部の作りこみのレベルには、既に新車時点であまい部分もあるそう。走行時の音などはまだ良いとして、経年変化や劣化による破損には、気を付けた方がよいかもしれません。

エンジンとしては、やはりガスケットの抜けはよく見られるトラブルだそうです。先のことを考えたたら中古車購入時と同時くらいに、交換修理を行った方が賢明という意見もみられます。

もともと、オイルの消費が多いという評判はあるそうなので、一定期間に一応のチェックは怠らないほうが良いでしょう。とはいえ、これはトラブルというよりクルマの性格のようです。

まぁ、マセラティ 3200GTのようなクルマの美観を諦めて、そのまま乗り回すことも少ないかもしれません。それでも、まず見た目部分より先に安全性と基本的な性能の部分をチェック&メンテナンスしたほうが、この3200GTとは長く付き合えそうですね。

思い切って買っちゃった…後の維持費は?

それがたとえ中古車であったとしても、マセラティと共に暮らすことは、とっても素敵なことだろうとは思います。なんといっても、伝統と拘りのつまったイタリアンカーです。

しかし…一応、購入後のことも考えておいたほうがよさそう。つまり、税金や保険の心配を、です。

実は、日本の自動車重量税は1.5トンという水準が、税額の1つの境目になっています。これは、一部のクルマ、つまりマセラティ 3200GTのようなクルマには、微妙に厳しいことになりがちです。上記のようにちょびっとでも車重が基準を超えると、2.0トンの扱いになる訳なんです。そうすると、(エコカー減免はなしで考えた場合)2年分の32,800円の税を、車検の度に納税する義務が発生します。

加えて、毎年かかる自動作車税では、排気量が3.5L以下の部類ですから58,000円が必要です。(それなら、3500GTのままでもよかったのに、なんてグチも聞こえてきそうですね…)

自動車を乗り回すには保険も必要です。ということで、某S損保でそこそこな条件の任意保険プランを調べてみますと年の掛け金が50,030 円くらいから、となります。まぁ、安くはない方でしょうが、それほどべらぼうな額ではなさそうですね。保険としてはもう1つ、車検の時に2年分として自賠責保険27,840円も発生します。

まとめ

出典:http://www.goo-net.com/catalog/MASERATI/3200GT/9002796/index.html

なんでも、2020年の東京は、殆どの自動車が自動で走り回るようになる。なんて構想が、一部の機関の中にあるとかないとか…。

どうも科学者や技術屋さん、そして政治家の人達は、車を運転することが与える楽しみを理解していなさそうです。
確かに、社会の生産効率を上げて行くことは、これからの時代の必須事項だと思います。しかし、自動車に限らず人がわざわざ操作する他の機械にも、面白味とか味わいとかの意味はあるはず。全てを、合理性と効率だけで決めてはいけないとも思うのです。

そして、そういったハイテクがはびこってくる直前にうまれた、ある意味暴れ馬のようなクルマが、マセラティ 3200GTであったようにも感じます。居眠りしている間に目的地へ着くロボットに乗れば、楽なことこの上ないでしょう。でも、6速MTを操りターボラグをうまくいなしながら走る3200GTのドライバーの方が、ずっと充実した体験を得られそうな気がします。

もっと小さいクルマで良いので、ある程度スキルを駆使して操るモデルにも、ぜひ生き残って欲しいものです。