ルノー4(Renault 4)その成り立ちや魅力とは

ルノー4というクルマをご存じですか。4は、「カトル」あるいは「キャトル」と発音します。1960年以降、フランスで大ヒットしたモデルで、日本でもいまだに根強い人気があります。また中古車で取引されていますので、その気になれば手に入れて乗ることもできます。実際にどんなクルマなのか、ちょっと見てみませんか。

フランスで30年以上人気を誇っていた大衆車です

ルノー 4(キャトル)は、1961年から1993年まで、30年以上にわたって製造された5ドアハッチバックです。

戦後フランスで大ヒットし、代表的な大衆車となったシトロエン2CVに対抗してルノーが送り出したモデルで、ルノー初のFFレイアウトを実現したうえに、戦後初といわれる5ドアハッチバックのボディにより広大な室内スペースを実現しました。

当時、旧態化してきていた2CVに代わるフランス市民の普段の足として、また広大な室内スペースを活かして商店やビジネスのトランスポーターとして利用者を増やしていきました。

また、リアに荷室を架装した商用バンの「フルゴネット」や、屋根を取り払ったオープンカー「プレネール」、MPVの「ロデオ」といった派生車種を生み出しました。フランス本国では1986年で生産を終了しましたが、海外で1993年まで生産が続けられました。その間の累計生産台数は813万台以上でフランス車としては世界販売台数第一位、世界的に見てもフォルクスワーゲン ビートル、T型フォードに継ぐ、世界で3番目に数多く作られたクルマとなりました。

ちなみに「4」は、フランス語で「カトル(Quatre)」と発音します。現地では「カトル」、あるいはモデル名のひとつだった「4L:カトレール」の発音が近いようです。
日本では「キャトル」「キャトレール」と呼ばれることが多いため、このページでも「キャトル」と呼ぶことにします。

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ルノー キャトルの成り立ち

大人気のシトロエン 2CVの対抗モデルとして開発

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シトロエン 2CV

シトロエンが1948年に「2CV」を発表すると、その実用性の高さでたちまちビッグヒットとなり、フランスを代表するベーシックカーとなりました。2CVは当時としては先進的な前輪駆動で、荷物の積載量や巡航スピード、乗り心地の良さ、運転のしやすさなどで当時のフランス国民のニーズを先取りしていました。

それに対して、ルノーは1946年から「4CV」を生産していました。フォルクスワーゲン ビートル同様のリアエンジンで、当時、フランスで初めて販売100万台を突破する人気車種となっていました。日本でも日野自動車がノックダウン生産を行ない、「日野ルノー」として販売していました。

しかし4CVはリアエンジンだったため荷物のスペースが少なく、次第に高速化を迎えつつあった道路事情に合わなくなってきていました。そんな中、2CVがヒットしたため、その対策として新たなモデルの開発に迫られることとなりました。

5ドアハッチバックのルーツとなるモデル

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このように、先行して人気を集めた2CVを徹底的に研究して登場したのが「キャトル」です。

駆動方式は、2CVに対抗すべく前輪駆動に改められました。また、2CVよりも積載量を増やすためにルーフを水平にテールエンドまで伸ばし、そこに跳ね上げ式のバックドアを設けました。
当時としては新発想のボディスタイルのおかげで、キャトルは大きなカーゴスペースを得て、これが人気の理由のひとつとなりました。

ちなみにキャトルのボディスタイルは、現在の「5ドアハッチバック」にカテゴライズされ、諸説ありますが、このスタイルを初めて採用したのは、このキャトルだといわれてます。
いまは当たり前のようになったこのスタイルですが、ルーツはこんなところにあるのです。

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ルノー キャトルの構造や性能は

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フラットなシャシーで広い室内スペースを実現

キャトルのシャシーは、室内スペースの最大化を狙って開発されています。
まずベースとなるアンダーフロアは極力フラットにシンプルにデザインされています。例えるなら、細長い板の前方にエンジンを置き、その後にシートを前後に2列置き、上からボディを被せてタイヤを付けた、そんなシンプルな成り立ちです。

そのフラットなアンダーフロアのおかげで、キャトルは大人5人プラスたくさんの荷物が積めるスペースといった、2CVよりも大きなアドバンテージを得ることができました。

キャトルにはキャンバストップ装着車が多く存在しますが、2CVやフィアット500など当時の大衆車には多くみられた装備です。当時のクルマは遮音が充実しておらず、エンジンや走行時の音が車内にもろに響き、とてもうるさいものでした。そこで窓だけでなく屋根も開けてしまい、騒音を逃がそうという発想でキャンバストップが装着されていました。決しておしゃれのためではなく、実用的な見地からの装備だったのです。

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エンジンは前モデルを踏襲、独特なレイアウトでFFを実現

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エンジンは、先代のリアエンジン(RR)だった先代のルノー4CVのユニットがそのまま流用されました。しかし、そのまま車体前方には積めないため、エンジンとミッションの順序を前後させて搭載されています。つまり、トランスミッションを前方に、次にエンジンという順で搭載して、FFを実現しました。

通常、FFであってもギアボックスは運転席のすぐ前当たりに位置しています。しかしキャトルの場合、運転席からみてエンジンの向こう側、前端に位置しています。そのため手元のシフトレバーからその前端までとても長いリンゲージを介してギアチェンジする方式となっています。
いまのFFでは考えられないこの特異なレイアウトは、その後「5(サンク)」などにも受け継がれています。

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ルノー 4CV

サスペンションの構成も特徴的

リアサスペンションは、フル・トレーリングアームに、室内のフロアをフラットにしてスペースをすこしでも稼ぐため、スプリングにトーションバーが採用されています。トーションバーはその名の通り、1本の棒をねじることでバネのような反発力を起こします。一般的なバネよりも省スペースでキャトルにはぴったりの部品です。

このトーションバーはサスペンションのアーム(トレーリングアーム)に接続され、左右それぞれに取り付けることになります。その際、、通常であれば左右のトーションバーを天地方向に重ねてセットします。ですがこれではせっかくの室内スペースを侵食することになります。
そこでルノーの技術者はトーションバーを前後方向にセットする方法を選びました。このため、左右のサスペンションの取り付け位置が異なり、その分左右のホイールベースが異なることとなり、その差は5センチ程度あったそうです。

左右のホイールベースが異なると、直進安定性やコーナーでの操縦性に不安が出そうですが、キャトルは前輪駆動だったせいかそれほど影響はなかったようです。ルノーの技術陣やテストスタッフの入念な仕上げのおかげもあったことでしょう。

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キャトルの主な派生モデル

キャトル フルゴネット

屋根付きの小さな荷物車をフランスでは一般に「フルゴネット(Fourgonnette)」と呼んでいます。その元祖的な一台が2CVフルゴネットで、キャトルもそれにならってフルゴネットバージョンをデビューさせています。商用バンとしてより積載量を増やすために、キャトルの前席から後ろのボディを背の高いカーゴスペースに換装して優れた積載能力と機動性により、商店の仕入や販売などで大人気となりました。その魅力は、いまルノー カングーに引き継がれています。

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キャトル プレネール

プレネールは「PLEIN AIR」と書き、フランス後で「空気がいっぱい」の表します。その名の通り、オープンエアが満喫できるオープントップモデルです。ライバルのシトロエン 2CVもオープントップの「メアリ」をリリースしており、それに対抗するかたちで1968年にデビューし、1970年まで販売されました。当時、海辺のリゾート地で移動するための「ビーチカー」というジャンルのクルマが流行しており、プレネールもそのひとつとして企画されたといわれています。

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ロデオ

プレネールの後継として、ルノーキャトルのシャシーをベースにクロカン風のボディを架装したMPVです。1970年から87年まで生産されていました。2CVをベースにシトロエンが「メアリ」を発売したのと同様に、キャトルにフルオープンのFRPボディを組み合わせています。駆動方式は標準ではキャトルと同じ前輪駆動で、600kg台の軽量を活かして優れた走破性を発揮しました。その後、パートタイム式の4WDモデルも追加されています。

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日本で乗られている、ルノー キャトル

当初、4CV用の747ccエンジンを搭載して発売されたキャトルは、その後、845cc、さらに1108ccまで拡大されています。フランス本国では1986年に生産終了していますが、その後、スペインで生産が続けられたほか、モロッコやスロベニアなどでも生産が継続されるなどして、キャトルは世界に広がっていきました。

日本には845ccモデルが並行輸入されたほか、その後、1108ccモデルが当時のルノー正規代理店から正式輸入されています。また、イギリスから右ハンドル仕様も並行輸入されていたようです。

実際にキャトルに乗ってみると

昔の実用車なので確かにローパワーですが、その代わり600〜700kg程度と、いまのクルマ(小型車でも1トン程度)から比べると圧倒的な軽量で、そこそこ軽快に走ります。

845ccモデルのパワーは27ps程度ですが、エンジンが高回転まで軽く吹け上がり、小気味よく走ることができます。34psを発揮する後期型の1108ccモデルはさらに力強く、いまでも元気に走り回れます。
ダッシュボードから生えたシフトレバーの操作は最初は独特なタッチですが、10分も走ればすぐに慣れます。ステアリングはノンパワーですが車重が軽い上にタイヤも細いので、操舵にそれほどのチカラは必要ありません。

走っていると、エンジンがすぐ隣にあるような感じでそのノイズが運転席に充満します。その音はエンジンノイズというより、どちらかというと町工場のような軽い金属音です。タイヤが跳ね上げる小石がフェンダーに当たる音などもひっきりなしに聞こえてきて、なにやら騒がしい感じですが、それがかえって「走っている」という実感を湧かせてくれます。

決して速くはないけれど、軽々とした身のこなし、パタパタと響く排気音などが、のどかで牧歌的な雰囲気を醸し出し、乗っていて愉快な気分にさせてくれます。

キャトルに興味を持った、そんなあなたに

キャトルは現在、日本の中古車市場では100万円前後で取引されていることが多いようです。中には意外なほど安く売り出されているものもありますが、エンジンやボディに問題があり、修理などで結局はお金が必要になったりしますので注意が必要です。

キャトルは最新のものでも1993年製ですから、すでに生産から20年以上も経過したモデルばかりです。中古車を買おうとするなら、お金はもちろん、メカやメンテナンスに対する知識なども必要です。本を買ったり、ネットで情報を探すのもいいですが、まずそのオーナーを探して話を聞くのが一番手っ取り早い方法です。
キャトルの場合、オーナーズクラブとして「Club RENAULT 4 JAPON」が活動しています。こうしたオーナーズクラブにアクセスして、近くのオーナーを紹介してもらうなどしてみてはどうでしょうか。

ルノー4オーナーズ・ファンクラブ。ルノー4に関する資料、クラブの活動紹介、入会案内など。1991年発足。

フランス車の専門ショップもチェック

また、日頃からメンテナンスをしてくれる自動車工場も確保しておきたいものです。キャトルのような古い輸入車には独特のノウハウが必要なこともあり、それらを専門に扱っている工場の方が何かと便利で、不要なトラブルを経験しなくても住んだりします。

上記Club RENAULT 4 JAPONには、「クラブサポートショップ」として以下のリンクがあります。
また、「ルノー キャトル メンテナンス」などで検索すると、古いフランス車が得意なお店やパーツショップとめぐり会えそうです。

(株)三崎エンタープライズMisaki Enterprises LTD.
http://www.misaki-ent.co.jp/

(有)ミヤマエオートMiyamae Auto
http://www.miyamae-auto.co.jp/

(有)武田モーターサービスTakeda Motor Service
http://www.renault21.net/Tms/

出典:club-renault4.jp

雰囲気があって、おしゃれ。キャトル、いいクルマです!

1980年代から90年代にかけて、東京の青山や原宿といったファッショナブルな街で、インテリアなどのショップの店先にディスプレイがわりに置かれていたり、お花屋さんのデリバリーに使われているキャトルがいました。その姿を見かけると、そこだけパッとおしゃれに、パリの街角になったような気がしていました。

ボディ自体は実用一点張りですが、日本車にはない“オーラ”があり、それがこのクルマがいまだに人を引きつけてやまない魅力といえます。

出典:http://en.autowp.ru/picture/xcsjqb

1981年に発売されたスペシャルエディション