【水平対向エンジン】ポルシェやスバルが採用し続けるメリット・デメリットは?

あのポルシェが作りつづけ、日本ではスバルがこだわり続けている「水平対向エンジン」のメリットについて、下記ページでまとめています。では、デメリットはどんなところにあるでしょうか。見てみましょう。「ポルシェとスバルがこだわり続ける水平対向エンジンのメリット」 https:///529

低速トルクが細くなりがち

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最大の原因は、ショートストローク

水平対向エンジンのデメリットとしてまず上げられるのが、このことでしょう。発進の際、アクセルを踏んで立ち上がるトルクがどうしても細くなりがちな傾向があります。そのため、発進加速が鈍く感じられます。ターボ付きエンジンの場合、加給により回転の上昇とともに急速にトルクが立ち上がるため、そのコントラストでどうしても低速側が細く感じられてしまいます。

これは、水平対向エンジンはシリンダーのストロークが稼げないことに原因があります。

トルクが出るのは、ロングストロークタイプ

出典:http://4-mini.net/column1_1-1-2-1.php

エンジンの排気量は、シリンダー内の容積で決まりますが、シリンダーの直径=ボアと、シリンダーの長さ=ストロークの相関関係で決まります。同じ排気量でストロークを長くするとボアは狭くなります。ボアを広げれば、ストロークは短くなります(上図参照)。

ボアを狭める=ストロークを長くすると、燃焼室がコンパクトになるため燃焼の速度や効率が高まります。つまり、すばやく一気に爆発するようになるため、特に低回転域で爆発力が高まる=トルクが強くなる傾向があります。またその結果、街中で走りやすくなったり、燃費が良くなったりします。

逆に、ボアを広げる=ストロークを短くすると、燃焼室のバルブが大型化できることで吸排気の効率が高まります。回転が増すほど爆発しやすくなる=高回転でパワーが出るようになります。

エンジンの幅が制約されるため・・・

水平対向エンジンに話を戻します。

真横に広がったそのカタチから、水平対向エンジンにはどうしても幅の制約がつきまといます。エンジンを狭めないと車幅が広がってしまうからです。
水平対向エンジンの横幅を狭めようとすると、必然的にストロークが犠牲になり、ボアが広がっていきます。つまり、スペース上の理由から、低速トルクを出すのが不利なボア・ストロークの比率になりがちなのです。

反面、ボアが広いため、高回転パワー型のエンジン特性となります。水平対向エンジンならではのバランスの良さとあいまって、吹け上がりの良さや高回転域のパンチ力が楽しめます。

余談ですが、水平対向エンジンは重心が低くクルマ全体で優れた運動性能を実現しやすいため、フェラーリやアルファロメオなどのスポーツカーメーカーで好んで採用されていました。1970年代から80年代にかけて、どちらのメーカーも水平対向12気筒といった高性能エンジンでF1など各種レースに参戦し、フェラーリはF1で年間チャンピオンも獲得しています。
しかし、横幅がどうしても広くなりがちでボディ設計に制約が出るため、次第に使われなくなっていったという歴史があります。

出典:http://startinggrid.org/2011/03/25/classic-f1-brabham-bt46b/

アルファロメオ製水平対向12気筒エンジンを積んだF1マシン(ブラバム BT46 1978-79)

例えば、スバルのボアストローク比をみると

ちなみに、最近のスバル製の水平対向エンジンのボアストローク比を以下に記します。大排気量になるほど、ボアが広く、ストロークが短くなっています。

排気量 ボア×ストローク
2.5L  94.0×90.0(レガシィアウトバック/B4用)
2.0L  86.0×86.0(BRZ用)
2.0L  84.0×90.0(フォレスター 2.0iなど用)
1.6L  78.8×82.0(レヴォーグ 1.6GT系用)

出典:www.subaru.jp

最近のスバルでは低速トルクを増強するために、ロングストローク型の水平対向エンジンを積極的に開発しています。上にあげたレヴォーグ 1.6GT用をはじめ、フォレスター 2.0iなどに搭載している2.0Lエンジンではロングストロークを確保してデメリットを克服しようとしている姿勢が、「84.0×90.0」というデータからもうかがえます。

燃費を稼ぎにくい

ボアが広く、燃焼ムラが多いので

これも、水平対向エンジンがショートストロークになりがちなことからくるデメリットです。

ショートストロークのエンジンはボアが広いため、低回転では爆発がすみずみまで行き渡りにくく、燃焼ムラが出やすくなります。つまり、使った分のガソリンを正しくエネルギーに変えられないため、これがトルクが細い原因となりますが、同時にガソリンを余分に使いがちで、それが燃費が向上しない原因ともなります。

運転のしかたによる影響も

さらに走行中、低回転でトルクが不足がちとなるため、それをカバーするためにどうしてもアクセルを開け気味となります。これが燃費をさらに悪化させることにもつながっています。

しかしこうした問題も、前のこうで書いたロングストローク化や、燃焼室の見直しなど細かな技術のブラッシュアップで克服されつつあります。

オイル管理に気を使う

シリンダーが水平に寝ているために

水平対向エンジンは、エンジンオイルが減りやすい傾向があります。エンジンのシリンダーが水平に寝ているため、エンジンを停止するとオイルがシリンダーの下側に溜まります。再び始動した瞬間、シリンダー下側に溜まったオイルがガソリンと一緒に燃えたりするためです。

とはいえ、一般的な点検でカバーできる範囲

一般的な直列エンジンであれば、エンジンが垂直方向に立っているため、エンジン停止するとオイルはシリンダー下のクランクケースに落ち、シリンダー内に留まったりすることはありません。

このため、水平対向エンジンは一般的な直列4気筒エンジンに比べ、オイルの管理に気を使う傾向があります。とはいえ、日常的な点検やメンテナンスで十分にカバーできます。

メリットがあればデメリットも。それが“味”になる

クルマ好きを引きつける、魅力ある“ハート”

水平対向エンジンは現在、ポルシェとスバルしか作っていません。そしてどちらのメーカーも、多くのファンから厚い支持を受けています。その理由のひとつに、この独特のエンジン形式があるように思います。
確かにこのエンジンにはデメリットもありますが、どれもこのエンジンが好きな人にとっては“アバタもえくぼ”といった感じで、逆にその魅力を増す要因になっているかもしれません。

クルマを単なる移動の機械としてではなく、趣味として乗って操って楽しみたい。そんな人に水平対向エンジンは、いまや数少なくなった個性的で魅力ある“ハート”であることは間違いないでしょう。