【マツダ トリビュート】フォードと共同開発した走り重視の本格SUV!

かつてのマツダは、ロータリーエンジンを搭載したスポーティカーや、ロードスターのようなスポーツカー、あるいはファミリアなどを代表としたハッチバック、セダンなどのイメージが強く、SUVは得意としてない感がありました。そんな中で、フォードとの共同開発として市場投入したのが「トリビュート」です。どのようなクルマだったのか振り返ってみましょう。(飯嶋洋治)

マツダ トリビュートとは?

フォードと共同開発した本格的SUV

photo by mazda

「トリビュート」は、マツダが拡大するSUV市場においてマツダの存在感を示すべく2000年10月30日発表し、11月30日からマツダ系、マツダアンフィニ系販売店を通じて販売開始したモデルです。オンロードでの高い操縦性能と広い室内を目指し、ライトSUV初の3リッターV6エンジンを搭載したなどの特徴があります。

当時、バブル崩壊から経営危機に陥っていたマツダは、筆頭株主だったフォードモーターから送り込まれたマーク・フィールズ社長の元で再建を図りつつありました。すでにSUV(スポーツユーティリティビークル)が人気を博していた時代です。その中で「トリビュート」は、「広い室内と際立つスタイリングをもち、悪路走破性能を確保しながら、オンロードでの操縦性能を従来のSUVにない高いレベルで実現、マツダブランドの個性である(1)センスの良い、(2)創意に富む、(3)はつらつとした、という部分をクルマ全体で表現しているクルマと位置づけられていました。

現在のマツダにつながる「走る楽しさ」を追求!

SUVというのは、もともとはオフロードを走ることを念頭に作られたクルマです。しかし、クルマの使いかたの多様化により、街中で使われるのが当たり前という時代でもありました。そのような中で当時のフィールズ社長は「トリビュートはマツダの走りのDNAを反映させることで、『ドライビング・エンタテインメントSUV』という新しい価値を提供しており、まさにブランドメッセージの『心を動かす新発想』を具現化している」と語っています。

同車は、右ハンドル車はマツダの防府工場で生産され、左ハンドル車はフォード社の米国カンザスシティ工場で生産されたことなど、フォードとマツダの共同開発ということも注目されました。姉妹車としてフォード・エスケープが発売されています。

エクステリアは?

SUVらしい力強さを表現

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デザインはマツダのデザインテーマである「コントラスト イン ハーモニー」を強く意識したものです。具体的にはキャラクターラインを入れたボンネット、フレアフェンダーもSUVらしい力強さを感じさせるものとなっています。良くも悪くもこうした車種は目立ちたいユーザーが多こともありますから、そういった意味では成功していると言っていいと思います。特にGL-Xは、サイドクラディングパネルが装着して、力強さ、躍動感がひときわ目立つものとしています。

インテリアは?

実用性を重視しつつ当時の最新デバイスも装備

インテリアに関してはは、乗用車的な快適さ、SUVらしい高い機能性を意識したものとなっています。使い勝手についても工夫がなされ、オーバーヘッドコンソール、助手席シートアンダートレイをはじめ、小物入れもふんだんに配されました。これは快適性能の一環にもなりますが、全車オートエアコンを装備、ロータリーノブの3連ダイヤルの空調ノブも使いやすさを考えたものです。モジュール化したキットの選択が可能で、オーディオシステムは、将来の追加・交換の自由度を高めたマツダ独自「新発想オーディオシステム」としました。これはベースユニット(AM/FM電子チューナー付)を標準装備しており、販売店オプションとして、上段にCDあるいはCDチェンジャーを、下段にMDあるいはカセットを用意するというものでした。

カーナビに関しては、マツダテレマティックス対応CD-ROMカーナビを、GL-XとLXのGパッケージ装着車にオプション設定しています。これは販売店オプションの対応アダプターを装着し会員になれば、入会金、年会費無料でマツダテレマティックスセンターの様々な情報サービスを受けることができるものでした。このカーナビはiモード対応機能が付与されていることも今や時代を感じさせる部分です。

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パワートレインは?

エンジンはV6と直4の二本立て。トルクフルな走りが信条!

エンジンは3リッターと2リッターの2種類の設定でした。3リッターはV6型DOHCエンジンです。静かでパワフルなことはもちろんですが、SUVとしての実力を保つために、2,000rpmの低回転域から最大トルクの90%以上を発生。これは街中でのゴーストップでもストレスを感じさせないことに貢献しています。ガソリンもレギュラー仕様とし経済性も高いものとなっていました。2リッターバージョンは、直列4気筒DOHCエンジンは、V6同様レギュラーガソリン仕様としました。こちらも日常使用域での実用性能と排出ガス性能を両立させてものでした。

トルクスプリット4WDとフルタイム4WDがスイッチで選択できる!

4WD機構は電磁ロック機構付ロータリーブレードカップリング(RBC)式としました。この機構は、通常はほぼFF車となりますが、前輪が何らかの原因でスリップすると、自動的に後輪に駆動力を伝えるという機構です。また、インパネのスイッチ操作によって電磁ロック機構を作動させることも可能です。こうすることでコンベンショナルなフルタイム4WDとして、スノーロードや泥濘地などの走行安定性を保つという機構となっていました。

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シャシー、サスペンション等は?

ストラット&マルチリンクでオンロードでの走行性能も追求!

現在、ドライビングの楽しさを前面に押し出して好調のマツダですが、すでにトリビュートにもその片鱗がみられます。SUVとして基本的に求められるオールマイティさを保ちつつ、オンロードでも楽しめるサスペンション設定を追求したのです。オンロード、オフロードの両方で良好な走りを得るために与えられたサスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リヤがマルチリンクです。フロントはスタンダードなサスペンションでシンプルに、リヤは常に適正な接地状態を保てるように配慮したものといえるでしょう。特にリヤサスはフラットな乗り心地に貢献しているといえます。

SUVとなると、オフローダーのイメージからステアリングギヤ比もダルとなりがちですが、同車はダイレクト感を得られるラック&ピニオン式を採用しました。さらにステアリングギア比は16.4:1とスポーティカー並のクイックな設定としているのも特徴です。この辺はオンロードをかなり意識した部分のように思います。

「MAGMA」を採用しボディの軽量化と高剛性を図る

ブレーキはフロントはベンチレーティッドディスクですが、リアはドラムブレーキでした。このタイプのクルマとしては当時としても古いかな? とも思いますが、この辺はフォードとの共同開発という関係があったのかもしれません。ただEBD(電子制御制動力配分システム)付ABSなどを採用することにより、十分な制動力を確保しています。

ボディは「MAGMA:Mazda Geometric Motion Absorption (マツダの全方向衝撃吸収構造ボディ)」を採用しました。これは軽量化を図りながらも重要部分の効果的な強化、高剛性化を行ったものです。マツダでも当時「ボディ剛性はモノコックボディをもつSUVの中でトップレベルを実現している」としています。

パッケージングは?

ゆったりとした室内空間に、設計の良いシートを組み合わせる!

パッケージングは全長4,395mmです。これは当時のファミリアセダンと同等のコンパクトサイズでした。ただし、乗り心地に関係するホイールベースは長くとり、フロントオーバーハングも短くすることで、ゆったりとした室内スペースを確保すると同時にラゲッジスペースも十分なものとしました。室内長は1,810mmあり、リアシートのフットスペースもゆったりしているのが特徴です。

シートの作りに関しても手抜かりはありません。人間工学に基づいて長時間座っても疲れない快適な形状とクッション性能を追求しています。リアシートもリクライニング可能とするとともにフラットシートにもできます。6:4の分割可倒式で、座面フリップアップ機構と脱着機構も採用されていました。

荷室長は922mm。さらにリアシートの座面を取り外し、背もたれを前に倒すことで最大1,820リットルの荷室容量まで拡大します。また、走行性能の面で貢献しているリアマルチリンクサスペンションは、アッパーアームの装着位置を低く抑えることができるためホイールハウスの張り出しも最小限で済み、荷物を積むのにも都合が良いという利点がありました。

シャシーは専用設計となりますが、シート位置はトラックベースのSUVとセダンベースのSUVの中間を狙っています。この絶妙な高さでステップ無しでも乗降性に関してはかなりの高評価を得ていました。フロアとシート座面との間の寸法の最適化によって、アップライトな着座位置となっていることにより、先に解説したシートと合わせて、ロングドライブでも疲れを感じさせにくいものとなっていました。

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その後の経緯は?

2WD車の設定などを経て、2005年で発売終了

2001年5月には、V6 3リッターエンジン搭載の2WD「LX」及び「LX Gパッケージ」が加わります。同時に高級仕様とした、4WD「GL-X Lパッケージ」の計3機種がラインナップされました。2WDの追加というのは、SUVを結局、街中でしか使わない層が多いということだったのでしょう。

2003年12月にはマイナーチェンジが施されました。新型トリビュートはMPVに搭載されていた2.3リッターのMZRエンジンを搭載、4気筒モデルの走行性能のアップを図りました。リアコンビランプや一部のグレードではアルミホイールもファッショナブルなデザインを採用し、エクステリアの洗練を図っています。オーディオリモートコントロールスイッチ付き3本スポークタイプステアリング、マップランプ組込の大型オーバーヘッドコンソール、シート生地なども見直しがされ、スポーティさを演出しつつ利便性を向上させたインテリアとなっています。

この時点で、アウトドアレジャーに役立つ装備を充実させた新グレードFB-Xなど、3機種5タイプを設定しています。トリビュートは2005年12月まで生産され国内での販売は中止。2代目は2006年12月の北米国際自動車ショーに「トリビュートハイブリッド」としてお披露目されましたが国内での販売はありませんでした。

中古で買って楽しめる?

中古相場は10年以上前のクルマということでかなりこなれています。初期型だと車両本体で20万円程度、マイナーチェンジ後のものでも80万円程度となっているようです。程度の良いものなら、まだまだ楽しめるのではないでしょうか?

故障で注意したいのが、特に初期型です。エンジンはフォード製ということで、パーツなどが高くなりがちです。故障は年式相応だとは思いますが、初期型はブレーキマスターシリンダーや、ブレーキマスターシリンダーのダイヤフラムスプリングの不具合などがあったので、避けるか部品が対策品となっているかをチェックする必要があります。

古いクルマということで、改造するにあたってのパーツもあまり多くはありませんが、ストリート向けのスプリングやKYBのNEW SRなどのショックアブソーバーの設定もあるので、思い切りオンロードに振ったセッティングで楽しむのも良いでしょう。

ちなみに燃費は街乗りで7km/L前後、高速巡航で10km/L程度のようです。現代の感覚でいうとちょっと厳しいかもしれません。

主要諸元

エンジン

型式 3リットルV6(AJ型)エンジン
排気量 2,967cc
最高出力 149kw(203PS)/6,000rpm
大大トルク 265Nm(27.0kg-m)/4,700rpm

型式 2リットル直4(YF型)エンジン
排気量 1,988cc
最高出力 95kw(129PS)/5,400rpm
最大トルク 183Nm(18.7kg-m)/4,500rpm

サイズ

全長/室内長/荷室長 4,395mm/1,810mm/922mm

シャシー

サスペンション (F/R) マクファーソン・ストラット/マルチリンク
ステアリング ラック&ピニオン式(ステアリングギア比16.4:1)
ブレーキ (F/R)ベンチレーティッドディスク/ドラムブレーキ
その他 EBD(電子制御制動力配分システム)付ABS

タイヤサイズ

フロント 175/70R16 リヤ 175/70R16

まとめ

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現在、スカイアクティブテクノロジーを前面に押し出して好調のマツダですが、トリビュートを発売していた頃は、フォードに主導権を握られたようなかたちもあり、かなり余談を許さない状況でもありました。ただ、トリビュート自体は非常にまじめに作られたクルマでもありますし、今でも好んで乗っている層も存在しています。この後、CX-7となり、新世代ともいえるCX-5とつながっていくわけですが、単に過渡期のモデルとしてだけでなく、よく考えられたクルマだと思います。マニア的に乗ってみるのもいいかもしれませんね。