【ランボルギーニ ジャルパ】カッコ良すぎな超レアものスポーツカー

今時のランボルギーニには、明らかに非日常的な魅力が満ちているでしょう。巨大なV12エンジンとか7速のセミオートマなど、そこに詰め込まれたメカニズムも強くアピールします。しかし、その非日常性は時と場合によれば、妙な威圧感に変わってしまうのです。もっと、人間よりのランボがあっても良いのに…。その希望に応えることが出来たのは、1980年代に製造・販売された、このランボルギーニ ジャルパだったはずです。

ベイビー・ランボ、それがジャルパ

今のランボルギーニ像は、あの伝説的スーパーカー、カウンタックが生まれた時に方向性が決定したと言って良いでしょう。低くてぺったんこの車体に積んだV12気筒ツインカムは、イグニッションをひねるたびに、周囲150メートルの住居で窓を震わせる能力があります…おそらく。

車に乗る目的は人それぞれですので、そんな風に激烈的な印象を周囲に与えたい人なら、ウラカンやアベンダトールはぴったりの車です。しかし、そう言った目的の人はさほど多くないはず。実際には、人目を引くドハデさは、むしろ怖いと思う人間が殆どでしょう。本来、可能であるならランボルギーニも、その一般的な需要にも応えて行くべきです。

そして、ランボルギーニ ジャルパには、その役割をこなすことが出来たでしょう。
そして、そのラインに応えようと企画されたのが、『ウラッコ』から『シルエット』そして『ジャルパ』に通じる、V8エンジン・スポーツカーの系譜だった訳です。

愛されるキャラをめざしても、アダになる!?

場合によると、「ベイビー・ランボルギーニ」とも呼ばれた、このV8エンジンシリーズ。これについては、ボローニャ県サンターガタに本拠を置くカーメーカーとしても、マーケティング的には実に正しい判断を下したと評価するべきでもあります。そして同時に、正しいという自信のもとに下した判断でも、必ずしも正しい結果を生む訳でもないのです。これは、人間関係でもデートプランでも一緒。

ランボルギーニ ジャルパ(ヤルパ、とも、ハルパとも発音するらしいです)は、シルエット譲りの(比較的)コンパクトなV8エンジンを、1980年代に合ったヒップなボディーに収めたクルマです。シャープというか爽やかさも感じさせるベルトーネ・デザインに、街乗りでも扱いやすい性能を乗せて、エントリーレベルのランボルギーニになるはずでした。

おそらく最大の問題となったのは、市場にベイビー・ランボルギーニを求める人が、想定したほど居なかったという点なのでしょう。ランボを求める人が求めるのは、とにかくカウンタックのどぎつい程の存在感なのです。

かくして、このランボルギーニ ジャルパは同社のV8シリーズの伝統に従うように、たった410台しか作られないと言う希少なクルマとなっていきました。まぁ、この数字だけをみると、V8シリーズの中で最も人気があったのもジャルパだと言うことです。

ジャルパの中身とは?

横置きミッドシップ

特にリアから見れば、まんざら地味でもないランボルギーニ ジャルパの車体。中身は、運転席ならびに助手席の後ろと後輪の間にエンジンを置く、ミッドシップレイアウトになっています。つまり、純粋なスポーツカーとしての素養は、ちゃんと備わっていたのです。(この意味でも、ちょっと前に売られていたハラマとは事情が違います。)

シルエットでは3.0Lであったエンジン(DOHC16バルブ)は、ストロークを75mm拡大して3.5Lにスープアップ。出力は259psとなりました。その燃料供給システムには、4連ツインチョーク・ウエバー・キャブレターが採用されています。
V12に比べれば長さ(短さ)で絶対的に優位な8気筒を、ジャルパでは横置きに配置しています。車体の内部における最重量物はエンジン、それを横向きにして後輪の前に設置すれば、クルマとしての旋回性能を高めることが可能。そういったスポーツカーの性能を、ジャルパでもしっかりと追及していたのですね。
しかし、このレイアウト方式にも、諸刃の刃な所があります。真上から見て長方形をしているエンジンを横向きに置けば、車内の左右のスペースがきつくなるのです。そのためなのか、ジャルパのサスペンションは前後ともストラット式。ピュアスポーツカーとしては、いささか物足りない構造になっています。

ジャルパには、5速のマニュアルトランスミッションのみが与えられましたが、このシフトレバーパターンは手元に一速がくるレーシングライクなもの。この設定に関してどんな事情があったか、あるいはなかったか分かりませんが、スポーツ走行をする向きにはちょっとした演出だったでしょう。

タルガトップ

ランボルギーニ ジャルパの大きな特徴の一つが、ベースとなったシルエット譲りな、取り外し可能ルーフです。
開発段階では、スパイダー(あるいはロードスター?)型も何台か試作されましたが、結局エンジンの前にソフトトップをしまうことが困難で没になりました。この車のパッケージングを見ると、おそらくキャンバストップも、折りたたんだルーフを置く場所を見つけるのは難しそうです。
と言う訳で、ジャルパには人でに頼って取り外すタイプのルーフが備わり、タルガトップとなりました。そして、メリットとデメリットの両方を考えた上でも、これが大きな訴求ポイントであったことも確かでしょう。

そのオープン構造を支えるボディーワークは、プレスした鋼板を溶接してくみあげるという、カウンタックに比べれば近代的な方式です。別の言い方をすれば、より工業的に作られた量産品でもあったでしょう。多くの手作業により、アルミを多用して軽量化したカウンタックLP400(1,200kg程度)より重く、ジャルパの体重は1,500kgに到達しています。

性能と評判

ジャルパに関する1986年頃のロードテストでは、最高時速は232km、0から100km/時の加速が6.5秒という結果が残っています。スタンディングから400メートル加速は14.7秒です。
ジャルパの場合、5速ミッションの設置場所もそれなりにタイトであろうと想像されます。実際、エンジンを美味しい回転域で維持するには、それなり忙しいシフトチェンジとアクセルワークが必要だそうです。とは言え、街乗りで使いがちな回転域でも、普通に使いやすかったというのがこの動力源でした。エンジンのピークパワーは7,000rpmで発生です。

他の使い勝手の面では、フロントとリアのウィンドウが、夜間に嫌な映り込みをするという評判もあったよう。垂直に立っているリアウィンドウガラスは、バックミラーから除いても後方視界を遮る反射があったそうです。また、デザイン上のアピールであるリタラクタブル・ヘッドライトも、作り付けが緩いと、しばしば指摘されたようです。こういったクレームのいくつかは、カウンタックについても語られており、ジャルパを作る時点でもその対処はおざなりだったのかもしれません。

そういう1つ1つの取りこぼしは、やはり大きな影響を残したのでしょうか、結局、このランボルギーニ ジャルパは、410台だけ作られた激レアのスポーツカーとして歴史に名を残す結果になりました。

まとめ

カーメーカーとは呼ばれるものの、ランボルギーニのような所は、企業と言うより工房という性質が強いのではないかと思います。それは1つのメリットでもあるでしょう。
そして同社が、色々な意味の実験というか挑戦をしていた頃は、スポーツカーにとっても実は一番良い時代だったのかもしれませんね。
スーパー(モンスター)カーではない、ある種の節度を持ったランボルギーニであるジャルパ。もちろん、今の技術に比較すれば信頼性もパフォーマンスも落ちるはずですが、個性的な魅力がある希少車だと思います。