【ランボルギーニ ハラマ】ランボに4人乗ったって良いじゃないかっ、と提案していた一台

超高級&超高性能を目指すランボルギーニのクルマ。とは言え、東京のような大都会であっても、日本の道路事情からは色々な意味ではみ出してしまうでしょう。同時に、家族やグループでの温泉旅行・キャンプなどにも、向いているクルマだとは言い難い面もあります。しかし、そんなランボルギーニ社も、4人で乗り合わせるスポーツカーを模索していた時代がありました。その一台が、ランボルギーニ ハラマなんです。

ハラマ、スポーツカーの1つの形

以前、どこかでちょこっと聞いた話です。スーパーカーのメーカーというのは、意外と景気鈍感な業種らしいのです。たとえ世界経済が最悪の時期でも、金が消えて無くなる訳ではなく、時代によってどこかに偏っているだけなんですね。そして、その時期にマネーを掴んだ人々がこぞって発注するモノの筆頭、それがフェラーリorランボルギーニなどの高級車ということになるんだそうです。

その特別に選ばれたメーカー2社が、どちらもイタリアに存在するというのも、考えてみれば驚きに値することです。加えて言うと、(マニアやオーナー様達は失笑されるでしょうけれど)なんとなく存在感の区別がつきにくい2社だ、とも言えると思います。その個性を簡単に言ってしまうと、フェラーリは自動車っぽく、ランボルギーニは金属製の昆虫か宇宙船のよう、と言ったところでしょうか。

いやいや、もう1つ、両社を分ける明確な差がありました。『フェラーリGTC4Lusso』のような、2+2シーターのグランドツアラーは、今のランボルギーニにはないという点です。

しかし、今はない、ということは過去にはあったということ。そのランボ製グランドツアラーの最終モデルとなったのが、『ランボルギーニ ハラマ』だったのです。

ルーツは350 GT

スポーツカー業界永遠の名門、フェラーリ。その会社に対するライバル役として、ランボルギーニ社が立ち位置を確立したのが、1964年から製造を始めた『ランボルギーニ350 GT』だったと言います。これは、いわゆるスーパーカーの系譜ではなく、フロントエンジン&リアドライブのスポーツクーペと言ってよいモデルです。
フロントに、どーんと、V12気筒DOHCエンジンを搭載した自動車。それが、このタイプのグランドツアラーということですが、この車はさらに改良され『400GT』へ進化します。さらに改良されたモデルが、『イスレロ』となり、最終的に『ハラマ』へと昇華して言った訳です。
その進化の過程においても、V12気筒をフロントのボンネットに収め、プロペラシャフトで後輪へ動力を伝える方式を継承。それによって得られる最大のメリットこそが、実用的に人が座る事の可能な2つのリアシートなのです。

ランボルギーニにとっては、本来イスレロが、ライバルである『フェラーリ365GT 2+2』に対抗する予定でした。しかし、同社のラインアップには、1966年から『ミウラ』という強烈なアイコンが存在し、グランドツアラーとしては『エスパーダ』もありました。ということで、イスレロにとっての周辺事情が、微妙な関係性を醸し出してしまいます。

かくして、あまり伸びない業績を打破すべくデザインその他を大きく改良した、我が『ハラマ』の誕生となったのです。

その作りと中身

特徴的なフロントとコンサバなリアのデザイン

コンセプト的なベースとなったイスレロが、何故所望の実績を残せなかったのか、正確な理由はわからないでしょう。それなりなスポーツカーに、ある程度人が乗れるようにしたクルマを表現した、その現実的なスタイリングがあだになったのかもしれません。ともかくその後を継ぎ、エスパーダと同様にベルトーネデザインとして生まれた、ランボルギーニ ハラマ。この車には、スペシャルティ―カーとしての特別なデザインが与えられていました。
そう、このハラマをハラマたらしめるのが、何といってもフロントまわりの造形なのです。特に印象てきなのは、4つのヘッドライトを半分だけ隠す(点灯時はライトの下に隠れる)リトラクタブルのカバーでしょう。なんとも言えない独特な性格がにじみ出たその風貌、じっと見ていると、「このクルマは何を考えているんだろう」と意味のない想像がめぐってしまいます。

また、一種の異形と言えるヘッドライトとは逆に、真横から見たときのボディーシルエットのバランス感はなかなかです。フロントにV12を縦置きしたとは思えないスラントノーズはスポーティ。まさに台形と言えるそのシェイプは、安定感を醸しだすと同時に、後席のためのヘッドスペースをも生み出していたはず。上位車種のエスパーダがかなり間延びした印象なのに対し、ハラマには、人が乗る自動車として理想的なバランスが与えられたと言ってよいでしょう。

イスレロより幅広になりつつ、短くなったボディデザイン。そのフロントに詰め込まれたV12エンジンには、やはり熱的な条件に厳しさもあったようです。結果的に、ボンネットの左右上部にエアスクープが明けられ、両サイドのフェンダーにも同様の通風口が設けられました。そして、見た目の印象だけを言えば、この廃熱処理はハラマのスポーティ感を増す結果になったとも言えます。

インテリア

ハラマのインテリアは、4.0L級のV12エンジン搭載車として求められる雰囲気を持っています。内装は総革張りで、センターコンソールは大きく、そのままリアまで延長されていました。ステアリングホイールは木製で、比較的おおきな径を持ちます。リアの2座席は、深く沈むバケットタイプだったそうです。

エスパーダから譲り受けたシャーシに、イスレロからの心臓

全長は4,485mmで、ホイールベースは2,380mm。これを手近な車と比べると、ホンダ シャトルの全長4、400mmよりやや長く、CR-Zの前後ホイール間隔2、435mmよりまだ短いというディメンションになります。結果的に前後の大きいオーバーハングは、ちょっと近代の自動車ではなさそうな形状となり、時代性を映し出しています。
アルミニウムではなく、重いスチールを溶接してつくるこの車のシャーシ。開発当初は、あのジャンパウロ・ダラーラ(フォーミュラーカーのコンストラクターとして有名)がプロジェクトリーダーでした。とにかく、イスレロより短く幅広くを目指したのも、このハラマに1つの個性を与えています。4輪ダブルウィッシュボーン式の独立懸架とも相まって、この車のショートホイールベースは、節度ある良質のハンドリングを生み出したということです。

この車の系譜から、エンジンには排気量4.0LでV型12気筒DOHCが搭載されていますが、開発段階ではそれを半分に切った6気筒も検討されたそうです。しかし最終的に出来上がったのは、やはり12気筒の350hpを搭載の『GT』でした。一年後、このエンジンは365hpにアップされ、『GTS』となります。また、それらのエンジンにより、最高時速は250kmを突破しています。

【基本情報】

名称:ランボルギーニ ハラマ 400 GTS
エンジン排気量:3,929cc
エンジン出力:268 kw(365ps)/7,500rpm
エンジントルク:407Nm(41.5kgm)/5,500rpm
全長:4,485mm
全幅:1,820mm
全高:1,190mm
重量:1,540kg
ホールベース:2,380mm
サスペンション:ダブルウィッシュボーン式(前)/ ダブルウィッシュボーン式(後)

希少な骨董品のハラマ

まぁ、実際に乗り回すのは、ほぼ現実的ではないランボルギーニ ハラマ。しかし、写真でしか現存しないというのはちょっと寂しいですよね。日本に、実物があるのでしょうか。中古車を探しました。
検索してみると、『ナイトインターナショナル』という所に展示(および、販売も?)されているそうです。ランボルギーニの古今に、なみなみならぬご興味をお持ちの方は、問い合わせされてもよろしいかと思います。下にリンクを貼っておきます。

まとめ

結局、1970年から1976年の7年間、このランボルギーニ ハラマは販売されました。そして、その絶版と同時に、FRのグランドツアラーも同社のラインアップから消滅。ランボのユーザー達は、どちらかと言うとミウラのようなミッドシップスーパーカーを望んだということらしいです。
確かに、ミウラから今に通じる、ランボルギーニ車のデザインも秀逸ではあります。それでもなお、この時代にしっかり人を輸送することを目的に生まれたハラマのデザインは、むしろ心に入ってくるものがあるように感じます。クルマに限ったことでもないのでしょうが、やはり外観が持つ表現力というのは、大切なんですね。