ルノー ウィンド “風”という名のコンパクトフレンチオープン!

ルノーってやっぱり変わったメーカーです。小型~中型の実用車をメインに開発しているのかと思いきやときどきぶっ飛んだものをつくります。スピダーとかクリオV6とか、アヴァンタイムとか。現行でも“RS”や“トロフィー”というキレっキレのスポーツモデルもあるんです。そんなルノーがつくった超コンパクトオープンエア“ウィンド”です。

ルノーについてちょっとだけ

創業は1898年ですから、自動車産業創業期からの老舗メーカーです。エンジンの上に座って運転するスタイルが当たり前だった時代に、エンジンを前に置くFRスタイルを考えたのはルノーです。FRを採用した小型自動車で大成功し、第一次大戦中は戦車やタクシーの製造も手掛けて順調に規模拡大しました。
ところが第二次大戦でフランスは大敗しドイツの占領下に。ルノーは会社と従業員をまもるためにドイツ軍に協力しますが、それがきっかけで創業者ルイ・ルノーは投獄され、獄中死を遂げます。
終戦後瀕死の状態だったルノーを、シャルル・ド・ゴール将軍が国営化、ルノー公団となりました。以降は小型車を中心に業績を高め、1986年に念願の民営化を果たしました。
1999年、日産自動車を傘下に収めたのはご存知の通りです。
そんなルノーはモータースポーツにも造詣が深く、F-1はもとよりラリーやツーリングカー選手権にも参戦していますし、フランス国内では自社モデルで行うワンメイクレースもあります。
エポックメイクが大好きで、世の中に無いものや新しい技術の搭載など、歴史と伝統を守るというよりはあたらしいものを取り入れるという、老舗らしからぬ一面を持っています。

ウィンドってどんな車?

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89

2004年に掲げた“ウィンドコンセプト”のもと開発が進められ、2010年に実現したのがルノーウィンドです。トゥインゴのコンポーネントを利用しながらも、シャシからすべてを新造した意欲作です。
全長3,835mm・全幅1,690mm・全高1,380mmというコンパクトな2ドアのクーペ・カブリオレ。左ハンドル・5速M/Tのみの設定です。
ホイールベースが2,365mmの割にトレッドは前1,450mm/後1,430mmと、なかなかのスクエア配置です。
普通カブリオレは、ハッチバックやクーペの屋根を切ってつくりますが、こんなニッチな需要が予想される車をゼロからつくってしまうあたりは、さすが異端児ルノーです。

開発したのはレース部門

出典:http://vivasolto.blogspot.jp/2015/05/renault-megane-trophy.html

シャシにはじまり、エンジン、サスペンション、シート、ステアリングにいたるまで、開発にはルノー・スポール(ルノーのモータースポーツ部門)が携わっています。
しかもエクステリアデザインを担当したのは、メガーヌトロフィ(写真の車です)も担当したアドバンストデザイン部門の日本人・鈴木康裕氏なんですって。
でもウィンドって、なんだか“カピバラ”みたいな顔だと思いませんか?
トゥインゴをベースにしているものの外観部品は全てが専用品で、トゥインゴより230mmも長い全長3,835mmの車体には、100PSの1.2Lターボエンジン(TCE)とトゥインゴ・ルノー・スポールと同じ134PSの1.6L自然吸気エンジンの2種が用意されました。
日本仕様は1.6L自然吸気エンジンに5M/Tを組み合わせた左ハンドルの設定のみ。フランス本国も含めて、A/T車は最後までまで設定がありませんでした。
内装もトゥインゴからの流用は一切無く、ウインド独自のものが新造されています。大型のデジタル速度計を中央に搭載したトゥインゴとは異なり、ウインドでは3連のアナログメーターを運転席正面に搭載しています。2輪車をイメージした半透明のメーターカウルはオプションで別色とも交換できるようになっています。
シートもウインド独自のヘッドレスト一体型のバケット形状になっていて、シート後部には小物入れがついています。
オーディオの操作パネルはトゥインゴと共通でした。前方に大きく傾斜した“縦型”に近い配置で、操作性はよいのですが、社外のインダッシュのカーナビなどとの交換は難しいでしょう。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89

ウィンドの室内

わずか12秒でオープンエア!

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89

ウィンドの一番の魅力は、この電動開閉式のルーフでしょう。Bピラーとリアウインドーを残してはいるものの、完全な青空仕様は格別に気持ち良いですよね。後部を支点にルーフが180度裏返ってリアデッキ上(トランク内)に格納されるという、比較的シンプルな機構を採用しています。
ちょうどエンブレムがある当たりが支点になっています。と言うより、このエンブレムは支点にシャフトを通すための穴を隠しているんですね。
構造をシンプルにしたおかげで、開閉に掛かる時間はわずか12秒。世界中を見渡しても、この手の車種としてはトップクラスの早さを実現しています。
ワンタッチとはいきませんが、ルーフ前方(ルームミラー後ろ)にあるロックを外して、シフトノブの前にあるスイッチを引き上げるのみで操作は完了です。あとは、動作が終了したことを知らせるブザー音を確認したら手を離すだけです。
動作中は、残り時間の目安となるように、メーター内にドットで表示してくれます。
もうひとつ、シンプルな構造のおかげでルーフの開閉(収納)状態に関わらずラゲッジルームは270Lの容量を確保できています。
オープンにすると、畳んだルーフにトランクを占拠されてしまう車種が多い中、少量とはいえ一定の積載量を確保できているあたりは評価が高いですね。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89

開閉動作の途中

日本での販売状況

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Renault Wind GORDINI

2011年5月26日、東京都内で行われた新型メガーヌ発表の席で、“夏ごろまでに販売を開始する”と発表され、同年7月6日に販売を開始しました。同時に、限定仕様の“コレクション”を発表。
ブラックメタルのハードトップ、クロームドアミラーカバー、専用デカール、シートヒーター付黒本革シート、レッドクリアメーターフード、スピードライン製17インチアルミホイール、Bluetooth対応CD一体AM/FM電子チューナーラジオ&USB端子などを備えて、30台限定・ベース車+13万円高の268万円という内容でした。
2012年3月8日、かつてのルノーチューナーの名を冠した“ゴルディーニ”を発売しました。ブルーの専用ボディ色とホワイトのダブルストライプという、往年のゴルディーにカラーを纏い、シルバー/ブルーのツートンアロイホイール、ホワイトドアミラー、ルーフカバーホワイトカウル、ホワイトストライプ入りレザーステアリング、ゴルディーニロゴ入りシフトノブ、ゴルディーニロゴ刺繍入りレザースポーツシート、専用バッジを採用しています。価格はベース車+24万円の279万円でした。

乗ってみよう

出典:http://www.goo-net.com/car/RENAULT/WIND.html

発売されて間もなく、試乗したことがありますので、そのときの記憶をたどって書いてみます。まず、目の前にして最初に感じたのは“意外に大きい”でした。決して大きな車ではありませんが、もっと小さいのかと思っていましたので...。
外観は、曲線をうまく組み合わせてじつに美しくまとまっていますね。ドアのアウターハンドルは、トゥインゴと同じ構造で、ドアとリアフェンダーとの境目に小さなノブが隠れるように控えています。
ドアを開けてみると、実にしっかりしています。オープンモデルにありがちなよじれる感じはまったくありません。サイドシルの高さはないものの幅はけっこう広いので、ボディ剛性を考慮してのことでしょう。
シートに腰を下ろすと、ドライビングポジションは低くなかなかやる気にさせてくれます。小さくもサポート性の高いシートは、しっかりと身体を包むように支えてくれます。
スポーティなデザインのアルミペダルの1番左を踏み込んでギヤを1速へ。するするっと走り出すと、おや?ボディが軋まない。この手のカブリオレはボディのよじれを感じやすいものですが、ウィンドにはそれがありません。
さすがはルノースポールですね。しっかりと作り込んであります。大きなサイドシルが縦方向をしっかりと支え、Bピラーが横にしっかりと踏ん張っています。実は、トランク内にも補強が入っています。もう少し、ファニーな車だと思っていましたが、実は本気なんですね。
見切りが良いボディはいたって扱いやすく、乗り心地に不快感が無い程度に俊敏な味付けのフットワークです。ロールは小さく抑えられていて、ステアリングフィールもダルな感じがありません。スポーツカーと威張れる仕上がりです。
オープンエアが楽しめるという以前に、走りそのものがとても爽快で気持ちいい。

せっかくなのでオープンに

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89

12秒で解放できるということなので、信号待ちで“オープン!”。速いですね。いつでもどこでも操作できそうです。オープンにして走ってみると、風の巻き込みが小さく抑えられているのがわかります。一般的に、フロントウインドウが大きいほうが風の巻き込みは少ないのですが、その分開放感がスポイルされてしまいます。同じように、後方にもできるだけ大きな壁があるほうが巻き込みを抑えやすいのです。
ウインドは、Aピラーの角度と長さの設定が絶妙で、後ろもルーフを格納する関係でBピラーが高いので、結果的に巻き込みを抑える形状になっているようです。
高速道路を巡航する速度域ではそれなりに巻き込みますが、市街地から郊外の走行でしたら、気にならないレベルです。

高速道路にて

出典:http://2011.tokyo-motorshow.com/event/test_ride.html

先に書いた通り、パワートレインはトゥインゴ・ゴルディーニRSと同じスペックの1.6L・134psのエンジンと、5速M/Tという組み合わせです。正直、驚くほどで速いわけではありませんが、性能的には必要十分以上だと思います。
ひとつ残念なのが、M/Tが5速ということ。100km/hくらいで巡航すると、エンジン回転は3,000rpmを超えてしまいます。かなり“頑張ってる感”が強くなり、やや騒々しくなります。6速を用意するか、5速ギアをロングレシオにしてくれたら...と思ってしまいました。唯一ウインドに感じた不満点です。

左ハンドルのみ、しかもMTのみの設定というウインド。
右折や追い越しのことを考えると、輸入車でも右ハンドルで乗りたいところです。でも個人的には、M/T車の場合は左ハンドルのままで良いと思っています。
現在の欧州車は、ISO規格上、右ハンドルでもウィンカーレバーは左側にあります。クラッチを踏むのもシフトチェンジするのも左側なのに、ウインカーも左手で操作するのはけっこう煩雑なんです。加えてトゥインゴの右ハンドル車から想像すると、ペダルレイアウトがしっくりくるとは思えません。
A/Tがあれば検討するという人もいるかもしれませんが、“M/Tで乗って欲しい”というのがルノースポールの思いだと理解すべきでしょう(実際、A/Tは用意されませんでした)。
クーペとロードスター(タルガトップに近いですが)を12秒で簡単に行き来することができる、お茶目なデザインの車です。確固たる目的がなくても、思わず乗りたくなってしまいますね。

手に入れるには?

某中古車サイトを除いてみましょう。
7台ありましたよ。残念ながらゴルディーニはありませんでしたが、コレクションがありました。2011年式で走行は5万キロ。159.8万円とのこと。新車時は268万円でしたから、4年で100万円も下がったことになりますね。しかも30台の限定車輌です。なかなかお買い得ではありませんか。

日産との技術提携後のルノー車は、格段に信頼性が上がっています。販売網とサービスネットワークも充実してきましたので、万一の出先でのトラブル時でも“駆け込む先が無い”なんてことはありません。
走行距離に応じたメンテナンスは必要ですが、維持に困るようなトラブルや出費の心配は無用でしょう。ただし、外装(ボディだけでなく、ライト類も含めて)はすべて専用品ですので、万一事故を起こしてしまうと割高感は否めませんね。くれぐれもご注意ください。

最後にまとめ

いかがでしたか。ルノーが作った小さなオープンスポーツカー、ウィンド。ご理解いただけたでしょうか。一般的には、カブリオレはハッチバックやクーペの屋根を切り取ってつくります。カブリオレをつくるためにクーペをつくることもあるくらいです。
でもルノーは、そんな妥協をしませんでした。“コンセプトがある以上、それに相応しいものをつくる”とでも言いたげなモデルです。
製作を担当したルノースポールは、F1も担当する本気集団なんです。走る楽しさ、操る楽しさをよく理解していますから、できあがる車が本気で楽しいんでしょうね。
試乗している間は、道行く人の注目の的になっていました。2シーターを割り切れるのでしたら、選んで損はないと思います。これだけのつくりのオープンスポーツカーが、乗りだしで150万円というのは“超”がつくお買い得だと思います。