【日産 パトロール】50年以上販売され続ける偉大な実用車

パトロールと言えばかつてはランドクルーザーのライバルとして日本でもよく見かけたRV車です。一時日本ではサファリという名前で販売されていましたので、サファリのほうが馴染みが深い方も多いのではないでしょうか。今日はそんな本格RV日産パトロールを紹介していこうかと思います。

日産の本格RV車「パトロール」とは

初代

1951年、警察予備隊への小型トラック競争入札に加わり、採用はされなかったものの、国家・地方警察や消防などの他、民需へと納入されていったのが初代パトロールの始まりです。違いこそあるもののそのデザインは競争入札時トヨタも真似たジープの意匠が色濃く残っており、ジープが以下に完成度の高い車であり影響力が高かったのかが窺えます。
エンジンは水冷直列6気筒3.7Lエンジンを搭載し、最大馬力は85馬力と今では現代では考えられないくらい最高出力の低いエンジンとなっていたが、これは野太い低速トルクによる走破性の高さを追求した結果最高出力が低くなっていると言えるでしょう。
その見た目から「鉄仮面」というあだ名が付けられていました。

2代目

1960年にモデルチェンジし、その後20年に渡って製造され続けることになる2代目パトロールです。見た目では箱形でリアからフロントまで伸びる長方形の一体型フェンダーを採用していることが特徴で、この台で見た目がジープからサファリ独特の物へ徐々に変化していきます。民間用に販売されたモデルの他、消防用として販売された「ファイヤーパトロール」が存在し、大排気量エンジンから来る放水能力もあって日本全国の消防署や消防団に納入されました。2016年現在ではほとんどの車両が新型車へと変更されているが、今でも消防団などで配備されている車両が存在し、現役で消火活動に当たっています。
エンジンは初代に続き低速トルクを重視した水冷直列6気筒エンジンが採用されました。ファイヤーパトロールに搭載されるエンジンと通常のパトロールでは放水にエンジンを使用する関係上いくつかの変更が加えられています。

3代目

1980年のモデルチェンジとともに、日本国内では「サファリ」、国外向けには引き続き「パトロール」の名で販売されたのが初代サファリであり、3代目パトロールです。エンジンは直列6気筒3.2Lディーゼルエンジンおよび消防用に4.0Lガソリンエンジンが選択できた他、海外向けモデルでは乗用車には使用されたL28エンジンやLD28ディーゼルターボエンジンにATの組み合わせも選択することができました。
車体のバリエーションもこの3代目から豊富になり、4ドアロングホイールベースのエクストラバン、2ドアショートホイールベースのレジントップとレジントップのハイルーフ版、消防用のシングルシャーシとダブるシャーシの計5種類がラインナップされていました。
日本国内では1987年にフルモデルチェンジを迎え生産を終了したが、国外向けでは2002年まで発展しながら製造されたモデルも存在します。

4代目

主にY60系と呼ばれるのが、1987より生産が開始された2代目サファリおよび4代目パトロールです。
前モデルと比較してフェンダーがサスペンションやフレームの関係から大きく張り出しており、全車1ナンバー登録の普通貨物車となっています。フルモデルチェンジし、フレームも新しいものとなっていますが、パーツの多くが前モデルのパトロールを流用しています。日本国内向けには前モデル同様5種類のボディバリエーションが設定され、海外向けモデルは引き続きパトロールの名前でピックアップトラックなどのモデルも販売されていました。
このモデルではサスペンションがリーフジットからリンク+コイルスプリングへと変更され、走破性や操縦安定性が大きく向上しています。

5代目

1997年にフルモデルチェンジを果たし、国内では3代目サファリ、国外では5代目パトロールとして販売が開始されました。このモデルからターゲットをオーストラリアやドバイが設定され、それに伴い消防仕様
の設定は廃止されています。
2004年にはテレフォニカダカールラリーに出場し市販車無改造クラスで1位、総合22位という輝かしい戦績を残しており、その性能を国内外へ広くアピールしました。その他いくつかのラリーにも参戦し好成績を残しています。日本国内では2007年に販売を修了していますが、国外向けには新型となる6代目・Y62型パトロールと併売する形でY61型パトロールは現在も生産・販売を続けられています。

ダカール・ラリーとパトロール

パリ・ダカールラリーでは、多くの日産パトロールが出場し、1982年に参戦してから現在に至るまでプライベーターから日産自動車本体のワークスチームまで幅広いチームが過酷なレースを戦いました。
特にスペインでパトロールの現地生産を行っていたの日産モトールイベリカが独自にパトロールのディーゼルエンジン搭載仕様を製作し、レースでガソリン車以上の戦績を収め、大きく注目を集めました。
そういったパトロールの活躍もあり、スペインやイタリアなどヨーロッパ各国から多くのパトロールがパリ・ダカールラリーでレースに参戦することとなったのです。

6代目

2010年に、UAEやアラブの富裕層向けに開発されたのが6代目Y62型パトロールです。これまでのパトロールと違い6代目は日産のフラッグシップSUVとして開発されており、エクステリアからインテリアまで質感の高い高級車として開発がされています。5代目までのパトロールとはその立ち位置からニーズが異なるため、それまでのパトロールを求める層に対して5代目パトロールの生産・販売も6代目と並行して行う形を取っています。
開発自体が北米向け高級車ブランドインフィニティのSUVであるQXと共通で行われており、リアにスペアタイヤを搭載していないなど、高級SUVとしての性格が色濃くでています。
エンジンもインフィニティのフラッグシップモデルであるM56と共通のV型5.6LエンジンVK56VDへと変更され、最大出力は400ps、最大トルク56.1kgmと低速トルクを重視した設定をしているとはいえ、初代とは全く違うコンセプトの車となっています。

主要諸元

6代目 日産 パトロール

ボディタイプ:SUV・クロスカントリー・ライトクロカン
ドア数:5ドア
乗員定員:8名
型式:Y62
全長×全幅×全高:5,170×1,995×1,940mm
ホイールベース:3,075mm
車両重量:2,780kg

エンジン・燃料系
エンジン型式:VK56VD
最高出力:400ps(298kW)/5,800rpm
最大トルク:57.1kg・m(500N・m)/4,000rpm
種類:V列(8気筒DOHC)
総排気量:5,552cc
燃料タンク容量:140リットル

足回り系
ブレーキ形式(前):ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後):ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前):275/60R20
タイヤサイズ(後):275/60R20

駆動系
駆動方式:4WD
トランスミッション:マニュアルモード付電子制御7速AT(フロアシフト)
LSD:標準

パトロールNISMO

UAEなどの中東諸国をターゲットに高級SUVとして開発されたY62型パトロールですが、その高級SUVに日産のスポーツカーブランドNISMOがチューニングを手掛けたパトロールNISMOが設定されています。
このパトロールNISMOは日本はもちろん北米でも販売されず、UAE専売モデルとなり、日産がいかにUAEに力を入れているかが窺えます。
NISMOと言えばGTRなどのコンプリートも手掛けていますが、その実力はオフロードカーではなくオンロードでのスポーツカー的な走行性能のアップで力を発揮されます。そう、このパトロールNISMOはオフロードでの走破性ではなく、オンロードの性能を重視している、なんとも贅沢なモデルなのです。
エンジン出力は400psから428psへと引き上げられ、サスペンションにはビルシュタイン製のダンパーが新たに採用されています。ホイールなんとレイズ製22インチ鍛造アルミホイールを装備し、エアロパーツを新たに装備しています。
価格はY62型パトロールで円換算で600万円台となりますので、豪華なチューニングが施されたNISMOなら恐らく700万円台になるのではないかと言われています。
まさにスポーツカーのチューニングそのままのパトロールNISMOはこれから日産がUAEに力を入れていくということの表れであると同時に、パトロールが実用的なRV車ではなくプレミアムな高級SUVと舵を切った証しだと言えるでしょう。

パトロールを購入するなら

日本でパトロールを求める場合には、現実的には日産サファリの日本仕様を中古で購入することになります。実用的な面や年式を考えても先代Y61型サファリあたりが選択肢としては最良ではないでしょうか。
どうしても購入が難しいのがY62型パトロールです。まだまだ年式も新しく日本未導入のモデルであるため、並行輸入を行うか逆輸入車が中古車市場に流れてくるのを待つしかありません。Y62型は新車販売価格が円換算で600万円を超える高級車であり、日本に導入される際には関税もや業者の手数料も考えると相当な金額が必要になってくると考えられます。共通設計になるインフィニティQXは比較的日本市場にも入ってきていますが、Y62と同じ年式のワンオーナーモデルで600万円台となっています。インフィニティQXを600万円用意して購入するのがまだ現実的だと思いますが、どうしてもY62型パトロールが欲しいのなら、気長に逆輸入車を待つか、並行輸入を考えるしかなさそうです。
Y61型パトロールおよびサファリなら日本の中古車を検索してみると低走行車で300万円、10万キロ以上の走行距離だと100万円台から200万円台まで広く推移し、車両も多くありません。Y61以前のサファリおよびパトロールになるとグッとお求めやすい価格になりますが、年式が相当古くなってしまうのでよほど好きで知識のある方でないとお勧めできません。
Y61型と言っても様々な仕様が存在するのがサファリですので、できれば300万円ほど用意して、自分好みの中古車が見つかった時に則購入したほうが良いでしょう。
ちなみにパトロールNISMOはまだ発表がされただけなのでUAEでも販売は始まっていません。ですが仮に販売が始まったとしても、日本でパトロールNISMOに乗ることはほぼ不可能ではないかと思われます。

常に人々のニーズに答え続ける柔軟さ

戦後アメリカのジープから大きな影響を受け、トヨタのランドクルーザーと同様RV車として進化を続けてきたパトロールおよびサファリですが、日本国内でのその役目は終えたように思われます。初代から5代目までのパトロールは消防団などの組織へも積極的に納入されていき、日本の高度成長が行われていく中でどんどん需要も高まっていきましたが、日本が新興国から先進国へと発展するに従って徐々にパトロールは必要とされなくなっていったように思えます。地元消防団などは現在人口の減少や地方の過疎化と合わせて減少傾向となっていますし、パトロールのような実用性のあるRV車を求める人は、一部のRVが好きな人へとシフトしています。日産サファリも日本市場では大きく実用的すぎて、もっと小型のジュークや大型でもラグジュアリーなムラーノのようなSUVへと需要はシフトしています。
そういった需要の変化の中でパトロールはアジアなど別の新興国へ需要を見出し、最新モデルであるY62では高級SUVとして全く違う需要へと変化をしています。
つまり、パトロールの変化はそのまま日本の変化とともにあったように思えるのです。本来の実用的なRV車としての需要は高度経済成長を遂げた日本にはすでになく、新たな需要を世界の別の地域に見出すことで、パトロールは世界戦略車として今も活躍しています。
今は一部の富裕層へ向けた高付加価値商品を製造することが多くの製造業での息の頃い戦略となり、自動車メーカーでも多くのメーカーが限定生産の高付加価値モデルの製作を取っています。Y62型パトロールやそのパトロールNISMOもそういった需要に参入するために日産がとった戦略の答えだと言えます。
つまり、我々その時その時の情勢に応じて、我々もパトロールのように柔軟に変化をしていかなければ生き残れないと、こう思うのです。そういった意味では戦後から現在まで50年以上名前が残るパトロールは、最も柔軟で、人に必要とされてきた車だったのかもしれません。