ロータリーエンジンの仕組み、カンタン解説!

2015年の東京モーターショーでワールドプレミアを迎えたMazdaのコンセプトカー「RX-VISION」は次期ロータリーエンジン、SKYACTIVE-Rを搭載しています。スポーツカー好きにはお馴染みのエンジンですが、仕組みはどうなっているかご存じですか?なるべく簡単にまとめてみました。

ロータリーエンジンの仕組み、カンタン解説!

自動車搭載用RE第1号の10A型。初代コスモスポーツに搭載されました。

ロータリーエンジン(以下RE)は東洋工業(現在のマツダ)が世界で初めて実用化した夢のエンジンです。多く普及しているレシプロエンジンと違い、小型で大出力で静か。高級車やスポーツカーに相応しいエンジンです。しかし2016年10月現在、RE搭載車は市販されておらず今後の発売が待たれます。そんなREの仕組みをまとめてみました。

まずはREの歴史や概要をご覧ください。

ロータリーエンジンの概要と開発史

ロータリーエンジンの概要

広く普及しているピストン式のエンジンは「レシプロエンジン」と呼ばれます。

現在、多くの市販自動車に搭載されているエンジンは総称で「レシプロエンジン」と言います。ピストンの上下運動によりエンジンシリンダー内の容積を変化させ、出力を得ます。それに対し、マツダの一部スポーツカーに搭載されていたエンジンがREです。2016年10月現在、新車で市販はされていませんが過去にはRX-7、RX-8、コスモなどに搭載されていました。

RE内部のローターと呼ばれる「三角おむすび型」の部品がエキセントリックシャフトと呼ばれるエンジン内部中央を貫く棒の周りで公転運動を行うことで、エンジン外壁のロータリーハウジングとの間に隙間を作ります。この隙間を作動室と呼びます。この作動室の容積を変化させることで出力を得ます。

ロータリーエンジンの開発史

RE搭載第1号となったコスモスポーツ

1959年、旧西ドイツのNSU社(後のアウディ社)の技術者、フェリクス・ヴァンケルがREの試験開発を行ったと発表しました。そのころ、日本の自動車産業はメーカー再編の真っ只中でした。他社との合併の危機が現実的になっていた東洋工業は自社の存亡を賭け、NSU社との技術提携を行います。しかしNSU社が開発した試作エンジンはあまり上質な出来上がりとは言い難く、到底市販できるような完成度ではありませんでした。

そこで東洋工業で自動車搭載を目指し開発を行うのですが、多くの難問が山積みでした。ようやく市販できたのは、技術提携から8年後の1967年。コスモスポーツが搭載車第一号でした。

ロータリーエンジンの仕組み

それでは、REの仕組みをカンタン解説します。

ロータリーエンジンの部品、各部名称

REの各パーツや部位の名称を確認しましょう。

●ローター
エンジン内部の三角おむすびの形をした部品。

●アペックスシール
ローターの各頂点に取り付けられています。作動室の気密性を保ちます。

●サイドシール
ローターの側面(三角形の各辺)に取り付けられています。サイドハウジングとの気密性を保ちます。

●コーナーシール
アペックスシールとサイドシールのつなぎ目に取り付けます。作動室やサイドハウジング気密性を保ちます。

●オイルシール
作動室に余分な潤滑油が流入するのを防ぎます。

●エキセントリックシャフト
エンジン内部を貫く棒で、この周りをローターが公転します。周囲にはステーショナリギアと呼ばれる歯形の突起物が取り付けられます。ロータリーエンジンの出力をタイヤに伝える重要な部品です。

●ローターハウジング
ローターが収められているエンジンの内面で、吸排気を行う孔や点火プラグが取り付けられています。

●サイドハウジング
ローター内部の孔で、エキセントリックシャフトが通ります。孔の表面にはエキセントリックシャフトに取り付けられたステーショナリギアと対となるステーショナリギアが取り付けられています。

●作動室
ローターがローターハウジングに収まっている状態での隙間の空間のことです。この作動室は1つのローターにつき3つあります。13Bや16Xは2ローターなので、作動室が合計6つあることになります。この作動室の総合計の容積がREの排気量になり、13Bではおよそ1,300cc、16Xではおよそ1,600ccになります。

ロータリーエンジンの動作

それでは次にREがどのように動作して、出力を得るのかをカンタン解説します。

ローターはエキセントリックシャフトを中心に公転運動をします。エキセントリックシャフトと接するサイドハウジンは、より大きな孔でピッタリのサイズではありません。サイドハウジングは公転時、一部しかエキセントリックシャフトと接しません。結果、ローターはエキセントリックシャフトの周りを楕円形に公転し、3つの作動室は容積が変わることになります。

上2点のREの断面写真を見比べていただければ、ローターの動きにより作動室の容積が変わっていることがお分かりいただけると思います。作動室の容積が変わることでREは「吸気工程」、「圧縮工程」、「排気工程」を行います。「燃焼行程」は「圧縮工程」の次に行われ「膨張工程」を誘導し、「排気工程」へとつながります。

ローターが1回転する間に「吸気」から「排気」までの全工程が終わります。これが3つの各作動室で行われますので、ローターが1回転すると3回出力を得られるわけです。レシプロエンジンでは、1回の「吸気」から「排気」工程にピストンを2回上下運動させなければなりません。1ローターのREと同様に3回出力を得ようとすると、3気筒エンジンでピストン上下運動2回、6気筒エンジンでようやく1回になります。

レシプロエンジンと比べてREが小型で高出力で静穏性が高いのは、「吸気」から「排気」工程を1回のローターの回転で3回同時進行で行えるからです。

ローターリーエンジンの問題点

上記までだと良いことづくめのREですが、実際には問題も多くあります。もっとも、ロータリーファンはこの問題をREの個性と肯定的に受け止めていますが、一般ユーザーには由由しき問題であり、RE普及への足かせともなっています。

市街地では乗りにくいかも?

中、低速で走る市街地でのドライブはエンジンの回転数があまり上がりません。REは回転数が上がらないと十分な出力を得ることができません。そのため、市街地ではパワー不足を感じる方も多いと思います。

しかし開発中と噂の16Xでは電気モーターを使用し、低速域でのトルク不足の解消を試みているようです。REが低速で乗りにくいのは、今後発売される新世代REには通用しないかもしれませんね。

地球環境に優しくない?

作動室が大きく縦長のため、ガソリンと空気の混合気が完全燃焼しにくいのがREです。そのため、排気ガスの炭化水素濃度が高めです。

排気音が大きめ?

REには一切のバルブがありません。排気は排気ポートというロータリーハウジング上の孔で行います。この孔の開閉はローターの回転により行われます。そのため「半開き」という状態はなく、空くなら突然ガバッと空きます。そこに排気が一斉に押し出されるため、レシプロエンジン車に比べると排気音は大きめです。

お財布に優しくない?

REはお財布に優しくありません。

まず、燃費が悪いです。これは低速域では十分な出力が得られないためアクセル開度が大きくなりがちであることと、ガソリンと酸素の混合気が完全燃焼しずらいためです。ただし、低速域でのトルク不足は電気モーターで解消できそうですし、混合気の燃焼効率の悪さは燃料に燃焼速度の遅いガソリンを使用しているから起こる問題です。燃焼速度の速い水素を燃料に使用した場合、解決できます。

次に整備費がかかります。ローター周囲には3種のシールが取り付けられています。これらはすべて消耗品です。ローターを回す度、少しづつ摩耗しているのでレシプロエンジンよりも定期的なメンテナンスが必要となり、整備費、パーツ代がかさみます。

さらに、オイル代もレシプロエンジンよりもかかります。REは直接触れ合うパーツが多いので、多くの潤滑油が消費されます。オイルの補給もレシプロエンジンと比べると多くなり、費用もかさみます。

もちろんRE搭載車は高級クーペやスポーツカーが多かったので、車両購入費用も割高です。

技術革新のスピードが緩やか

レシプロエンジンは世界中のメーカーで、多くの技術者の方が日夜研究されています。そのため、新しいアイディアも多く、新技術の開発は次々に行われています。

しかしREを開発している自動車メーカーは世界広しと言えども、大手ではマツダだけです。マツダのRE開発部署には常に50名の技術者が在籍しているそうですが、1社では開発リソースがレシプロエンジンに比べて圧倒的に少ないのは想像がつきますね。そのためレシプロエンジンと比べると技術開発のスピードは緩やかで、時代や環境ニーズにマッチした新エンジン、新技術をすぐにリリースするのは難しいのです。

【まとめ】ロータリーエンジンの本番はこれから!

2015年東京モーターショーに出展されたRX-VISION。次期RX-7とも後継車のRX-9とも噂されています。
Photo by yino19700

世界でただ1社、マツダだけが製造できるエンジン。それがREです。詳述しませんでしたが、REの実用化には実に多くの難題がありました。それらをマツダの技術者は1つ1つクリアーしてきました。きっと、上記に挙げた問題点も解決し、より快適で個性的なRE搭載車を生み出してくれることでしょう。マツダとREの今後に期待ですね!