【トヨタ ビスタ】色気は少ないけれど、キチンとしてる所が魅力な日本のミドルセダン。

クルマを生活の中のどこに置くかは、オーナーさんの考え方次第ですし、もちろん使い方も人それぞれな訳です。しかし、基本的に輸送機器として設計された以上、クルマ自身は役目を与えられ働き続けることを望んでいるはず。なかでも4人か5人の幸せな家族を、買い物や海水浴や旅行などへ運ぶ仕事を与えられたら、車冥利に尽きること間違いなしです。かつて売られていたトヨタ ビスタは、そんな役割が一番似合う車の1つでしょう。

ビスタはセリカの遠縁

もともとトヨタは、セリカの4ドアセダンという位置づけの『セリカ カムリ』を出していました。とはいうもののその正体は実は『カリーナ』。この車を同社初の横置きエンジンFF車とするモデルチェンが行われた時、姉妹車として企画されたのが、『トヨタ ビスタ』です。車の位置づけだけを見れば、お世辞にも派手さがウリであるとは言えない一台。それでも、当時の販売チャンネルである『ビスタ店』の屋台骨を、まさに背負って立っていたのがこのクルマなんですね。

中級セダンの代表選手として誕生

現実には、このビスタにも様々な企画が託されていたかもしれません。しかし初代のモデルについて振り返ってみれば、まさにファミリーセダンの代表と言う形容詞が浮かんでくるのも事実です。そして同時に、トヨタにとっては1つの革新的モデルだったのも確かで、(カムリと同時に)同社にとっての初の横置きFFが初代ビスタでした。
そのルックスとしては、鉛筆と定規を使ってシルエットを書き上げたような、直線基調のボディがやや硬い印象。さらに、シックスライトのサイドウィンドウは、華と言うより真面目さを表現した雰囲気です。そして、スタンダードなFFの採用という思い切った路線転換は、このクルマに大きな居住空間という恩恵をもたらしていました。このビスタには、ボディタイプとして、5ドアセダンの『ハッチバック』も有ります。

時代が感じられるのは、当初用意されたトランスミッションが5速のマニュアルだけだったという点でしょう。それが組み合わされるエンジンはキャブレター仕様の1.8L直列4気筒OHCで、出力が100psにトルクは15.5kgmというものです。10モード燃費は12.5km/Lから14.0km/Lの性能。

内装装備としては、カーエレクトロニクスの結晶(カタログより)たる『エレクトロニック・ディスプレイ・メーター』や、カラオケのオプションもあった5スピーカーオーディオなどユーザー心をくすぐる工夫がありました。

この初代ビスタには、1983年には1.8Lのターボディーゼルが、1984年には2.0Lのスポーツツインカムエンジン搭載車がラインアップされます。これは、横置きエンジン車としては日本初のDOHC搭載だったたということです。

【基本情報】

名称:トヨタ ビスタ VX
型式:SV10
エンジン排気量:1,832cc
エンジン出力:100ps/5,400rpm
エンジントルク:15.5kgm/3,400rpm
全長:4,415mm
全幅:1,690mm
全高:1,395mm
重量:1,040kg
ホールベース:2,600mm
サスペンション:ストラット式(前)/ ストラット式(後)

オリジナルのカタログです

ルックスでのアピールに目覚めた2代目

初代のトヨタ ビスタでは、「自社初のFF横置きがもたらす、空間的・経済的なメリットを顧客に最大限アピール…」、なんて言う思い入れがやや強すぎたのかもしれません。言ってみれば味わいが足らない、あのお堅いルックスには、そんな力の入りようが表れていたのかも。
大概の物事は、肩に力が入り過ぎると的を外しがちになるものです。そんな訳もあってか、もうちょっとリラックスして優雅さを取り入れ始めたのが、この1986年8月に登場の2代目ビスタでしょう。この時のフルモデルチェンジで、5ドアがなくなった代わりに4ドアのハードトップが登場(1.8L or 2.0L)しています。そのハードトップは、セダンより車高を25mm低くして洗練さをアピールしました。

与えられたエンジンとしては、この頃のトヨタがトライしていた『ハイメカツインカム』が登場。これは、燃焼室をコンパクトにし熱効率を高めるため、吸排気バルブの挟み角を極限まで狭めたDOHCです。そのためにカムシャフト同士をシザーズギヤで連結したという、特徴のある機構を持っています。また、もう一種類のDOHCとしてハイパフォーマンスを目指す『スポーツツインカム』が、GTグレードに与えられました。加えて、セントラルインジェクションを備えた1.8Lや2Lのディーゼルターボも用意されています。組み合わされるトランスミッションは、5速MTと電子制御4速ATです。ちなみに、GTグレードの10モード燃費は12.0km/L。ターボディーゼルの60km/h定地走行燃費は31.5km/Lです。

サスペンションとしては、前にマクファーソンストラット式を採用。後ろには、平行・横向きに並ぶ比較的に長いロワーアームをもつ、『デュアルリンク・ストラット式』が使われています。1987年10月には、フルタイム4WD車も追加ラインアップされました。

【基本情報】

名称:トヨタ ビスタ 2000 ツインカム GT
型式:SV21
エンジン排気量:1,998cc
エンジン出力:140ps/6,200rpm
エンジントルク:17.5kgm/4,800rpm
全長:4,520mm
全幅:1,690mm
全高:1,370mm
重量:1,210kg
ホールベース:2,600mm
サスペンション:マクファーソンストラット式(前)/ デュアルリンクストラット式(後)

オリジナルのカタログです

3代目でプレスドアを採用

そのカタログを開いて、まず目に飛び込むキャッチコピーが、「快」という文字。それが1990年7月に登場の3代目ビスタです。金ぴかな豪華さや数百馬力のパワーなど、表に見えるものだけが品質じゃぁない、というPRコンセプトとともに売り出されました。
そんな方向性があらわれていたのか、クルマとしては先代の正常進化型としての登場で、さほど飛躍したデザイン変更はなされていません。1つ与えられた大きな(そして節度ある)変更は、セダン系のドアをプレスドアとして、4ライトコンセプトにしたことです。外観としては、2代目から取り入れた曲面形状のボディーパネルを洗練しつつ、オーナーの満足度を上げる質感が高められました。

用意されたエンジンとしては、ハイメカツインカムが1.8Lと2.0Lに、そして2.0LのGTにはスポーツツインカムがあります。加えて2.0Lのディーゼルターボも選べました。主な燃費性能としては、GTグレードの10モードで11.6km/L、ディーゼルの60km/h定地走行では31.5km/Lという公式データです。

メカニズム的には、色々なものが花開いたのもこの時代のクルマです。まず大きいのが、車速感応型電子制御4WSでしょう。これは、ステアリング舵角と車速に応じて、後輪も適切に操舵するという技術。高速では全輪と同相に後輪を向けレーン変更時などの安定性を高め、低速走行時は逆相に後輪を向けることで、疑似的なショートホイールベースを実現します。これにより、2WSでは5.3mある回転半径が、4WSでは4.8mに縮小されました。

また、このビスタは、2種類のフルタイム4WDを持ちます。まず、マニュアルトランスミッション車用には、ビスカスカップリングで前後車輪の回転差動制限を行う方式が採用。前後の回転数が生じた時は、シリコンオイル粘性を利用して、回転の少ない方へとトルクを移動するものです。もう一方でオートマ車には、油圧電子制御の多板クラッチにより常に前後のトルク配分を行う、『ECハイマチック』が装備されています。

足回りは、基本的に4輪ストラットの独立懸架を継承しつつ、走行モード切替付きの『TEMS』に『液体封入式ストラットマウント』などを加え、走行安定性と乗り心地の両立度合を高めました。

装備としては、『車速感応時間調整式間欠ワイパー』や『超音波雨滴除去装置付きドアミラー』、そして『SRSエアバッグ』他の多様な安全機能が与えられました。他には『オートドライブ』、『ビスタ・スーパーライブサウンドシステム』などの、快適装備もあります。

【基本情報】

名称:トヨタ ビスタ 1800 16バルブ VR
型式:SV30
エンジン排気量:1,838cc
エンジン出力:115ps/5,600rpm
エンジントルク:16.0kgm/4,400rpm
全長:4,600mm
全幅:1,695mm
全高:1,395mm
重量:1,180kg
ホールベース:2,600mm
サスペンション:マクファーソンストラット式(前)/ デュアルリンクストラット式(後)

オリジナルのカタログです

さらなる魅力を身に付けた4代目

例の巨大な(経済的)泡が破裂して、先行きに不透明感が増しつつあった1994年7月に、ビスタ&カムリ系列は3回目のフルモデルチェンジを行います。この時のデザイン変更点は、以前までのものより重みを追加し、存在感を強めたものでした。そのヘッドライトからフロントグリルへつながる形状は、上級クラスの車が持つイメージも感じさせます。車体のタイプ構成としては、4ドアセダンとハードトップの2本立てを継承。

日本経済の上昇気流が止まったこの時代、ビスタに用意されたエンジンは3機種。従来通りの1.8L(125ps / 16.5kgm)&2.0L(140ps / 19.0kgm)の『ハイメカツインカム』、そして2.2Lのターボディーゼル(91ps / 19.6kgm)でした。当初、フルタイム4WDが設定されたのは2.0Lガソリンエンジンのみでしたが、1995年にはそれがディーゼルにも加わっています。燃費性能としては、1.8Lの16バルブが10モードで14.6km/L。ディーゼルの60km/h定地走行は31.5km/Lです。

『4輪ABS』や『TRC(トラクションコントロール)』、そして事故時の衝撃に対する『CIAS(Crash Impact Asorbing Structure)』や『SRSエアバッグ』など、安全性能をより謡うようになってきたのもこの頃からでしょう。臭いが気になるからと敬遠されないように、集塵・消臭・脱臭を行う『オートエアピュリファイヤー』や、エアコンから香る『エアファンタジー』などで、繊細な女性達にもしっかりアピールしています。

【基本情報】

名称:トヨタ ビスタ 2200 ディーゼルターボ VX
型式:CV40
エンジン排気量:2,184cc
エンジン出力:91ps/4,000rpm
エンジントルク:19.6kgm/2,200rpm
全長:4,650mm
全幅:1,695mm
全高:1,390mm
重量:1,220kg
ホールベース:2,650mm
サスペンション:マクファーソンストラット式(前)/ ストラット式(後)

オリジナルのカタログです

成熟の5代目

遊び心より節度が取り柄の、ちゃんとした(?)クルマとしてやってきたトヨタ ビスタ。1998年7月になると、そのライフにも集大成の時がやってきます。この時のフルモデルチェンジで、従来から姉妹関係にあったカムリが消滅、ビスタは独立した自動車として大幅に改良されたのです。またこの時は、時の流行にも合わせてステーションワゴンの、ビスタ アルデオが追加されました。このモデルチェンジでは、ハードトップが消えた分、車体の全高を高めて(セダンで1,505mm、ワゴンは1,515mm)室内の広々感を追求しました。

排気量で見たエンジンバリエーションとしては、1.8Lと2.0Lの2種類というシンプルな構成。しかしその中に、21世紀が求める新しい技術がいくつか投入されたのも興味深いところでしょう。その1つが、1.8Lに使われた『VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)』。これはエンジンのカムシャフトに連結した、油圧駆動アクチュエーターを電子制御することで、吸排気バルブの動作タイミングやオーバーラップ量などを可変させるもの。全負荷域で出力特性が向上するなどのメリットがあります。これにより、ベースとなったエンジンより出力で5ps、燃費は17パーセントも向上したと言います。
もう1つの技術が、『D-4』と呼ばれたガソリン気筒内直接噴射。これはトヨタ初の成層燃焼を実現したエンジンです。成層燃焼とは、点火プラグ周辺に燃焼しやすい混合気を集めその周りを空気の層とする事で、安定な希薄燃焼を実現したものだそうです。10モード燃費性能としては、2.0Lの直噴エンジンで15.4km/L、1.8Lの16バルブは15.0km/Lというデータです。

そのエンジンに組み合わされるのは4速のオートマチックトランスミッション。駆動方式はFFか4WDが選べました。4WDは、リアアクスルのディファレンシャル直前にビスカスカップリングを置く、『Vフレックスフルタイム4WD』と呼ばれる方式です。また、その走りをささえる足回りには、前マクファーソンストラット式としつつ、FF車のリアには新しく『インタービームサスペンション』と名付けた、トーコントロールリンク付きのトーションビーム式を採用して、乗り心地と走行安定性の向上を図っています。

安全性能としては、『SRSエアバッグ』や『ABS』といった標準的な装備を持ちつつ、事故の衝撃を車体自体で上手く受け止める『衝突安全ボディGOA』なども投入されています。

【基本情報】

名称:トヨタ ビスタ 2.0 D-4
型式:SV50
エンジン排気量:1,998cc
エンジン出力:145ps/6,000rpm
エンジントルク:20.0kgm/4,400rpm
全長:4,645mm
全幅:1,695mm
全高:1,505mm
重量:1,310kg
ホールベース:2,700mm
サスペンション:マクファーソンストラット式(前)/ トーコントロールリンク付きトーションビーム式(後)

オリジナルのカタログです

懐かしのビスタは中古市場で探そう

2003年に絶版している自動車であるトヨタ ビスタ。どこを探しても古い車体しか出てこないのは、もとより分かっている所です。同時に、トヨタの量販車種であったことを考えると、個体数は多くて価格も落ちていることも想定できるでしょう。

とりあえず探してでてきた面白そうなものだと、2000年登録で走行距離が2.4万kmで車検付きが、199,000円というのがあります。これは、ETC純正フル装備だそうです。もう1つには、1996年登録の2.2Lディーゼルターボ車で9.7万km走行の5速マニュアルが、車検付きで390,000円という車体も見受けられました。

ビスタ系列としては唯一のワゴン、アルデオはどうでしょうか? 2001年登録の1.8万kmしか走っていない車体が、車検付きで340,000円。この辺りが上位価格のようですので、人気車に拘らず中古車をお探しであるのなら、ビスタも検討の対象に入るかもしれません。

まとめ

やはりトヨタ ビスタは、歴史に名を残すために生まれたクルマではない、と思います。それでも、日本一のメーカーが21年間かけて育て上げた、「いわゆる1つの立派で普通なクルマ」がこれです。日本以外の市場でもある程度の数を販売する以上、節度を持って与えられた装備群に、経済性と環境性能までしっかり担保していた国民車だったと言えるでしょう。
そんな真面目な所が、このビスタというクルマにとって、最大の魅力なのだと思います。