【ハイブリッドエンジン】ハイブリッドシステムにはどんな方式がある?

ひと口にハイブリッドシステムと言っても多種多様な仕組みがあります。モーターとガソリンエンジンをペアにした使い方で、各社最も効率の良い方式をいろいろと探っています。トヨタプリウスがJC08モード燃費で40km/Lを達成して、効率の良さをアピールする動きが加速しているようです。しかし、クリーンディーゼルも欧州車をはじめとして世界的な展開を強める中、ハイブリッドエンジンの今後の動きが気になります。

トヨタ・ハイブリッドシステム

ハイブリッドシステムのガソリンエンジンについて

「ハイブリッドエンジン」という言い方は、「ハイブリッド用エンジン」なのか「ハイブリッドシステム(構造)」を指すのかは不明確なのですが、「ハイブリッド専用エンジン」は特にありませんので、システム全体をご紹介しておきます。

ハイブリッド車のエンジンは、発電と高速巡航時の使用が主となってきたので、出力としてはそれほど大きなものは必要がなくダウンサイジングされてきました。低回転型エンジンが増えているのですが、これはむしろ燃費測定方法のJC08モードの影響であるとみられます。この日本の燃費基準のモードでは、高速巡航モードはなく80km/hが瞬間あるだけです。そのため高速域での燃費が急速に悪くなる車が多く、ヨーロッパの燃費規制では不利になるのではないかと危ぶまれています。エンジン特性をもう少し高回転型に変更し、100km/h巡航時の燃費の改善を望みたいですね。

ハイブリッドと言えども、ガソリンエンジン単体の効率化も進んでいて、ダウンサイジング・ターボエンジンが主流となりつつあるのは、皆さんご存知のことかと思います。自然吸気(NA)でもアトキンソンサイクル・エンジンが増えており、直噴エンジンが当たり前の状況になってきています。多くのハイブリッドエンジンも、ダウンサイジング・ターボ・アトキンソンサイクル・直噴エンジンに集約しつつあり、ガソリンエンジン自身も省燃費化を進めてきています。

アトキンソンサイクル・エンジンとは?

出典:http://www.honda.co.jp/tech/power/exlink/

アトキンソンサイクル・エンジンとは、爆発行程のストロークを圧縮行程のストロークよりも長くとることで効率を高める発想です。本来はメカニカルに膨張行程のストロークを延ばしているのですが、現在のアトキンソンサイクル・エンジンと称しているエンジンは、バルブタイミングを電子制御で遅らせることによって、圧縮工程で実質、膨張爆発行程よりもストロークが短いのと同じようにしているミラーエンジンであるという指摘もあります。トヨタもホンダも採用しています。
アトキンソンサイクル・エンジンは、上記のようにバルブタイミングをずらしているので、吸入バルブの方から吹き返すことがあり、カーボンが溜まりやすくエンジンオイルが汚れるという問題が残っています。現在、メーカーの指定に従ってオイル交換をすれば問題はありませんが、オイル交換時については自分でも注意することも良いでしょう。

ハイブリッドエンジンの狙い

もともと排気ガスの浄化や燃費に良い作用と言えば、燃料を節約できることが一番です。石油を燃やさなければ、公害は起こらないからです。ですから、ガソリンを燃やさないモーターで走る電気自動車なら排気ガスは出ないのですが、現在はまだ、充電せずにそれほど長く走れるバッテリーがないのです。そこで重いバッテリーを大量に積まずに、エンジンで発電しながら走れば、エンジンだけの車に比べて排気ガスが少ないことになります。ハイブリッドとは、モーターとエンジン両方の機能、動力を使うシステムのことです。
課題はまだ山積みで、例えば、モーターで高速を走る効率は、エンジンで高速を走る効率より悪いのは御承知のとおりです。なので、エンジンとの組み合わせにより、最高の効率を求めて、各社でいろいろな組み合わせが模索されているのです。

基本的な1モーターシステム

1モーターシステムは、エンジンを低速域で補助するようにモーターが働くシステムが基本であると言えます。発進時などモーターだけで走るEVモードを持っているシステムがほとんどです。バッテリーが放電するとエンジンがかかり充電を開始します。高速域になって、エンジンが効率の良い領域になるとエンジンのみで走ります。また、減速時ムダに捨てられるエネルギーを回生します。1モーターの利点は、重量を抑えられることと低コストであることです。ホンダのi-DCDも1モータを採用しています。ヴェゼル、グレイス、シャトルなどがそれにあたります。

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ホンダ・スポーツハイブリッド・i-DCD

最近では、一度充電してバッテリーからモータを駆動するより、効率の良い発電しながらモーター駆動するシステムもあります。1モーターシステムでは「マイルドハイブリッド方式」などと呼ばれる簡易型も出てきています。スズキのハイブリッドが「マイルドハイブリッド」と呼ばれていて、ソリオやイグニスなどがそれにあたります。ISGというモーター機能付き発電機によって、減速エネルギーを効率よく利用するなど発電効率を高めています。その電力を活かして、エンジンの再始動や加速時のモーターアシストを可能にしています。

出典:http://www.suzuki.co.jp/car/ignis/performance_eco/

スズキ・ISG(モーター機能付発電機)

2モーター方式

モーターが、「発電用モーター」と「駆動用モーター」と2つ用意されて、それぞれ駆動できるシステムです。モーターで走ったり、エンジンを補助している時、バッテリーが放電してしまうと、エンジンが駆動して発電機を回して充電するように、同時に稼働出来るシステムです。現在では、2モータ方式が主流になりつつあります。ホンダのi-MMDが2モータを採用していて、オデッセイ、アコードなどがそれにあたります。

出典:http://www.honda.co.jp/ACCORD/webcatalog/performance/details01/

プラグインハイブリッド

ハイブリッド方式の中で、充電スタンド、家庭用電源など外部電源からの充電を基本とすることで、バッテリーの容量を増やし、EVモードによって走れる距離を延ばしたものが、プラグインハイブリッドです。電気自動車を基本に、充電用エンジンを備えていると考えても良いかもしれません。プリウスにも既に存在していて、ドイツ車はクリーンディーゼルとこの両方式をとりつつあります。

ハイブリッドシステムの主な3つの方式を挙げましたが、いずれも出来切る限りEVモードで走り、燃料を使わないで済むように考えられています。究極はやはり電気自動車なのでしょうが、現在のバッテリーの効率から考えて、しばらくはハイブリッド主力で推移するものと考えられます。
EV走行が多くなると、街中ではエンジン音がしないことによって、人込みではむしろ危険という問題も言われています。それに対しては、スポーツカーなどでエンジン音を演出するスピーカーシステムを積んだ車も登場しており、危険を回避するためにはEV走行でも採用されることもあるかもしれません。

現在のハイブリッド車の特性

ハイブリッドの機能の1つであるエンジンの特性は、2,000回転以下では有効なトルクがありません。MT車では、発進時クラッチを繋ぐ時、幾分滑らせる「半クラッチ」によって、急激につなぐ動作を抑えてエンストを防ぐ必要がありました。免許を取得する時の初心者では、最難関の技術でした。トルクコンバーターのATの登場で、そのわずらわしさからは解放されたのですが、発進時にトルクが弱いのは今でも同じですね。特に、ホンダS2000などのスポーツカーのエンジン特性(下図)は、高回転型エンジンで低回転トルクが少ない典型です。

ホンダ・S2000のエンジン性能曲線図

ハイブリッドのもう1つの機能であるモーターの特性は、回り始めてすぐ有効なトルクがある(下図)ので、特に低速域で能力を発揮します。そのためハイブリッド車は、日常生活で大変使いやすい車をつくることが出来ます。しかしモーターは、高速回転になると急速にトルクをなくしてきます。そのためエンジンの方が熱交換率が良くなるので、高速域ではエンジン直結とするハイブリッドシステムがほとんどです。
そこで最近、モーター側にもさらにミッションを取り付けて、高速域までモーターに任せようとする考えもあります。電気自動車では当然にそうなります。現在は、重量増加やコストアップのこともあって、高級車に使われるだけですが、いずれはモーター中心のシステムとなる可能性が高くなるのではないでしょうか。

ホンダ・オデッセイの2モーター出力

まとめ、集約しつつある各社のハイブリッド方式

世界で初めてのハイブリッド車は、トヨタのプリウスでした。発売当初「採算はとれないが将来のために発売する」と言っていました。しかし、アメリカのカリフォニア州の厳しい環境規制の中、「プリウスを愛車にするセレブ」などの評判が出て来て、レオナルド・ディカプリオやキャメロン・ディアスなど有名なハリウッドスターなどがこぞって大型車に乗らずにプリウスに乗ったため、一気にハイブリッド車が脚光を集め始めました。
そして現在、日本ではモーターとガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッド車の需要が高まり、欧米ではクリーンディーゼル車の需要が高まっています。
近い将来は、プラグインハイブリッドとなり、より電気自動車に近づいていくと思われます。その時は発電用エンジンも、ガソリンではなくディーゼルエンジンになることも考えられます。
ハイブリッドシステムでは、バッテリーの性能が技術的にはキーポイントになるのですが、プリウスが登場した初期のころ、バッテリーの寿命は5,6年とも言われていました。現在では、車の寿命と変わらないと言われており、10年以上は交換の必要はないものと考えられています。

ホンダ・アコードやオデッセイで採用する2モーター方式・i-MMD

現在、トヨタもホンダも2モーター方式で、次の3モードの走行モードを持っている方式に集約してきています。
(1)EVモード。
バッテリーの改良で、より走行距離を延ばす傾向で、プラグインハイブリッドになっていきます。
(2)エンジン、モーター混合モード。
エンジン直結とモーター直結を同時に行う方式と、発電にエンジンを使い、車本体の駆動はモーターによる方式とあります。
(3)エンジン直結モード。
高速域で負荷がかからない場合、エンジン直結のみを使う傾向です。

さて、ハイブリッドとひと口に言っても様々な方式があったり、単純な分類が難しくなってきていて、ここだけでは説明がしきれません。でも気になるのは、これからどんな効率の良いハイブリッド方式になっていくのか、そして、ハイブリッドは生き残っていけるのかです。日本の技術は世界に誇る素晴らしいものですが、欧米ではクリ―ディーゼルの普及が進んでいて、ハイブリッドがガラパゴス状態になってしまうことは避けて欲しいものだと思います。