【三菱 ミニカトッポ】ミニカベースのノッポなクルマ「ミニカトッポ」は未来を先取りした軽自動車だった!?

かつて乗用軽自動車がただの移動手段にすぎなかったときに、軽商用車並みの高い天井を与えてしまいました。小さな軽自動車から一転、奇妙とも言える姿をした軽自動車が誕生します。これがまさか現代の軽ハイトワゴンという軽自動車の主流になっていくとは…しかし、自ら作り出した流れには乗り遅れてしまう…。今回は元祖軽ハイトワゴンと言えるミニカトッポのお話です。

ミニカトッポとは?

ミニカはかつて三菱が生産していた軽自動車です。生産自体は1962~2011年までと近年まで続けられていました。その見た目からもわかるかもしれませんが、比較対象となるライバル車は「ダイハツ ミラ」「スズキ アルト」などが該当します。
生産終了の理由は単純な需要の低下です。ライバル車の場合ですと「ミライース」「アルトワークス」のような、別の路線を行く派生車種が登場することによって現在も存続していますが、ミニカの場合は少し事情が違います。

ミニカの派生車種 ミニカトッポ

ミニカにも派生車種というのは過去に登場しています。その派生していく上で、ミニカとは別の道を歩む車種へと変わっていったのです。今回紹介するミニカトッポがそうです。ミニカトッポは当初はミニカの派生車種として登場し、その後「ミニカトッポ」→「トッポBJ」→「トッポ」へと別の車種となっていきます。

軽自動車で広い車内空間を実現

車内空間こそが軽自動車の決め手

現在でもたびたび自動車メーカーから軽自動車規格の変更が求められる声が聞こえます。中でも「車両寸法を大きくしたい」という声は常にあります。
軽自動車を大きくしたい理由のひとつとして「安全性確保」これは簡単に言えば「事故の際にクッションの役目を果たすエンジンルーム(=クラッシャブルゾーン)を大きくしたい」と言っているわけです。他には安全性も含めての設計の自由度を高めたいとか…でも、もっと単純な一言で説明が付きます。

「大きくて車内空間が広い方が売れるから」

「安全性確保」「設計の自由度」と言いますが、これ全てそのクルマが売れる要素ですよね?
安全性が高い方が良いに決まってますし、自由な設計が可能になればより魅力的なクルマを作れます。間違いではありませんが、一般ユーザーがクルマの設計うんぬんを計算して選ぶことは少ないです。
それよりも簡単な指標が「車内が広い」です。「クルマ同士の事故の場合は大きいほうが生存率が高い(=小さいほうは吹き飛ぶ)」というのは良く知られています。でも、多くのユーザーは事故のとき~なんて考えよりも快適性を求めて、軽自動車という限られた規格の中で車内空間が大きな軽自動車を欲するわけです。
メーカーとユーザーとの考えには違いはあれど、許される範囲内であればクルマは大きいほうが良い。その許容範囲が違うからこそ大小様々なクルマが世の中を走っているわけです。

横がムリなら 縦に伸ばしてしまえ

とはいえ、軽自動車は大小様々であってはダメでして、軽自動車としての規格 つまり上限が存在します。その規格に合わせなければ軽自動車ではなくなってしまうわけです。
全長も全幅も規格ギリギリのところまで切り詰めたので、これ以上の室内空間は無理かと思われていました。ある時、

「横がダメなら 縦に伸ばしちゃえば?」

誰がそのような発想をしたのかは不明です。でも、この考えは的を射ています。
例えば人が住む家にしてもそうです。広大な敷地があるのであれば平屋にするでしょう。でも限られた敷地内で家の床面積と部屋数を稼ぐならどうするか? 自然と2階建て3階建てへとなっていくことでしょう。
クルマの場合は座席を上下に配置するなんてことにはなりませんが、それでも天井が高くなることで圧迫感から開放されます。車内空間と言うのは面積ではなく体積で考えるものです。いままで平面的な考えでしか広さを追求されてこなかったところに高さを加えたことが大きなポイントだったと言えます。

現代軽自動車の主流 軽ハイトワゴンの誕生

元祖 軽ハイトワゴン!

こうしてミニカをベースにしたハイルーフ仕様の「ミニカトッポ」が1990年に誕生します。
従来のミニカの作りを継承しつつも、高い天井を生かした新しい使い方が可能になります。

高い天井部分に小物を収納できるオーバーヘッドシェルフが追加されました。小物収納による使い勝手の良さを追求したものと言えます。また天井が高ければ、それまで積載不可能だと思われたものが積み込めるようになりました。例えば横倒しが不可能な鉢植えの観葉植物などがそのまま載せられたりします。また高い天井そのものを収納スペースとするという試みもあります。例えば釣竿を天井に収納するロッドホルダーなどがその際たる例です。天井が高くなると言うことによって様々な可能性が広がったわけです。

こうして、ミニカトッポは商用タイプやファミリーカー仕様の特別車両が登場するなど高い評価を得ました。このまま軽ハイトワゴンの先駆けとして軽自動車市場を牽引して

いくことはなく、後発となる1993年生まれの「スズキ ワゴンR」がその後の軽自動車市場を牽引することになります。

もう一押しの「完成度不足」

「どうしてこうなった…」
ミニカトッポ自体には欠点と言える部分はありません。ただし、「ミニカをベースにした」と言うのがネックだったと言えます。

ベースがミニカということはミニカと部品共有する部分があります。座席なんかもそのひとつです。ミニカの座席をミニカトッポに搭載するというのは簡単です。ミニカトッポのほうが大きいのですから。
しかし、その座席に座ったときの目線までミニカと共有してしまって良いのでしょうか? せっかく高い天井があり、上方向には余裕があります。

ミニカトッポ タウンビー

そう 運転時のドライバーの視点も「ミニカと共有化」されてしまったのです。
画像を見ればわかりますが、ミニカトッポとワゴンRとでは天井とヘッドレストの距離が違います。ワゴンRのほうが天井に近く、「座面が高くて、ドライバーは高い目線からの広い視野が確保できる」ということを意味しています。
実はこの「座面の高さによって得られる広い視野=展望性」というのは現代の軽ハイトワゴンにおいてもアピールポイントにもなる要素。残念ながらミニカトッポにはそれがありませんでした。
とはいえ、ミニカの派生車種としてのミニカトッポと従来とは違う新規開発車両となるワゴンRとでは、設計時の条件が違います。部品共有化という考えも悪くはありません。ワゴンR自体もコスト削減のために徹底した部品共有化された上で設計されています。ただ、設計段階で「従来車種の派生車」か「新規車両として開発」という性格の違いが、その後のクルマとしての作りに違いを生んでしまったという話なのです。

その後、軽ハイトワゴンの原型をつくったミニカトッポは、軽自動車規格の改正に合わせて生産を終了。後継機にバトンタッチする形で役目を終えました。

まとめ

いかがでしたか?

後発となるワゴンRに軽ハイトワゴンとしてのお株を奪われるような形にこそなりましたが、その後の軽ハイトワゴンの原点となるのは間違いなくミニカトッポです。ミニカトッポからはじまり、ワゴンRにおいて一定の完成を向かえたという流れでしょうか。
販売当時はミニカトッポに商用モデルが存在しており、その方向性が決定されていない時期でもありましたが、これも軽ハイトワゴンの特徴でもある収納能力の高さを活用した形であったと言えます。それまでは商用軽自動車のみだった福祉車両ですが、現在では軽ハイトワゴンでも見られるようになり、その容積の高さと快適性を生かす使い方がなされています。

その意味ではミニカトッポによる軽ハイトワゴンのはじまりは、日本の軽自動車が社会貢献を果たすための大きな礎をとなったと言えるのではないでしょうか。その奇抜な姿こそが、現代の軽自動車の自由なデザインと発想の原点であり、利用者であるユーザーにとって軽自動車がより受け入れやすい存在となった最初のクルマと言えます。