【ボルボ C70】スタイル性と安全性、北欧の名門が打ち出したクルマの進歩

道路では常に危険が発生し得ます。それからアナタを守ってくれる自動車の安全性能、その昔は、いかにもお堅く不愛想な、四角四面の金属体が信頼されました。たとえば、ボルボ 940エステートなんかが、まさにそのイメージ。しかし、走るガーディアンとも言える同社の車も、時代と共に安全の提案方法は洗練されています。2ドア&コンバーティブルを売りにしたボルボ C70は、そんな時代のボルボ第一号だったらしいのです。

外見的な魅力が求められる時代に生まれたC70

自動車に限らず、産業製品を作るメーカーが安定した業績を続けるには、いわゆるセルフブランディングが大切です。例えば、小型で求めやすい価格のクルマしか作らないと言うのもブランド。また、その逆で2、000万円以上の高級車だけのラインアップが誇り、というのも速球ポイントにになり得ます。
そして、先進的なスタイルとは遠い武骨なイメージが根付いているのも、時に商売の助けになるのです。まぁ、外見だけでなく中身に「安心感」が一杯つまっていればこそ、ではありますが…。

そう、それこそスウェーデンが誇る、あのボルボ・カーズの製品群ということになりますね。

同車の車作りの中心に据えられたフィロソフィー、それは革新的な安全性能の追及と提供を第一に考えること。しかし、20世紀も終焉を迎えると、世界的な自動車市場にも加速度的な変化の兆しが見え始めました。そんな中にあって、この北欧の生真面目なメーカーも、コンセプトを理解してくれる顧客だけに買ってもらえば良いとは言っていられなくなったようです。
そこで、と言わんばかりに登場するのが、ボルボ C70のシリーズ。モデルとしては2世代しかなかったこのクルマは、ボルボなりに21世紀へつながるスタイル性を追い求めた、そんな一台だと言って良いでしょう。

1997年に生まれたスタイリッシュなボルボ

1996年のパリモーターショーで発表された、このC70は、それまでボルボが守ってきた長方形のデザインに、あらたな変革をもたらすコンセプトを与えられていました。850で実績があったP80プラットフォームに、ボルボにとっては新鮮な流線形ボディーを与えて、同社にとって780以来のラグジュアリークーペとしたのです。
とは言え、そのデザインには旧来のボルボが強く残っている部分がある、のもこの初代C70。とりわけ、「真面目な男性」というイメージが強いフロントマスクは、まだ冒険しきれなかったデザインチームの純朴さが表れている点でしょう。まぁ、何をもってそのクルマが格好良いと言えるのかは、明確な基準のない部分ではあります。そしていわゆる「ジ・ド・ウ・シャ」という印象を残したボルボのクーペは、今となれば存在意義も増しているかもしれません。

ただ、リアに向かっては空気の流れと同化できそうな、ファストバックの形状が光ります。当時、ボルボのデザイン部門を率いていたピーター・ホーバリーは、「四角い箱は捨てたけど、中身のおもちゃは、ちゃんと取っておいたよ。」という発言を残したそうです。

その中身、ボルボが一番自信を持っている部分だと思われますが、実はC70の開発は変わった体制で行われています。イギリスのトム・ ウォーキンショー・レーシング(TWR)との共同開発だったのです。TWRは、ルマン24時間耐久レースやF1などで実績を残した、知る人ぞ知る実力派レーシングチーム。そのTWRは、850に使われていたP80プラットフォームを大幅に修正して、C70の基本的な構造設計やサスペンションのチューニングなどを支援しました。このC70が達成したスポーティクーペとしての仕上がりは、このコラボレーションがあってこそだったのでしょう。

ボルボ C70に用意されたエンジンは、全て横置きの直列5気筒DOHC20バルブ。それらには、ロープレッシャーターボチャージドと呼ばれた、排気量2.0Lで出力132 kW(180ps)&トルク220Nm(22.43kgm)から2.4L(あるいは2.5L)で出力142kw(193ps)&トルク270Nm(27.53kgm)のタイプがあります。また、ハイプレッシャーチャージドの排気量2.0Lは出力が169kw(230ps)&トルク310Nm(31.61kgm)へ、2.3Lのものは最大で184kw(250ps)&トルク330Nm(33.65kgm)までありました。そのパワーソースは、流線形のクーペボディを時速250kmまで引っ張ります。
また、その動力をつたえるトランスミッションは、5速のマニュアルタイプと4速および5速のオートマチックタイプが用意されています。

P80プラットフォームはAWD化にも対応していますが、C70の駆動方式は全車FF。そしてサスペンションには前マクファーソンストラット、後ろはデルタリンク(トレリングアーム&トーションバー)という構成を採用していました。

安全性に自信のカブリオレ投入

ボルボ C70を、同社のカーデザイン思想上で革新的とする理由は、実はこのカブリオレにあったでしょう。一般的に考えて、万が一の転倒時にどの様に乗員を守るかは、オープンカーにとって重要な課題です。なりは古風でも安全性だけは格別、というボルボのアイデンティティを考えると、ルーフを取り払った開放的なクルマには、おいそれと手を出せなかったはずです。
その問題を解決したのが、ROPS(Roll Over Protection System:横転保護システム)と呼ばれる新機構。これは、転倒するほどのアクシデントが起きたとき、瞬時に跳ね上がり乗員の頭部を守る逆U字型のロールケージと、シートベルトプリテンショナー、補強されたAピラーなどで構成されるシステムです。この開発に成功したため、ボルボは真の意味で同社にとって初のオープンスポーツであるC70を、リリースすることができた訳です。

何にしても、安心と安全ばかりを言っているお堅いイメージのメーカーから、開放的かつスタイリッシュなオープンカーがリリースされたことのインパクトは大きかったようです。このモデルは北米を主に狙った製品でしたが、当然、世界中にファンを獲得したということです。

スカットル・シェイク(ねじれ音)

C70カブリオレは4人乗りのオープンカー。必要な場合にその上部を覆うのは、電動式のソフトトップです。この収納場所を確保するため、後方の視界をやや犠牲にしていたという話もあります。しかしそれ以上にオープン化の影響は、やはりボディーの捻じれ剛性低下などにあらわれていたようで、走行中の振動が気になると指摘する声もいくつかあったようです。この振動は『スカットル・シェイク』などとも呼ばれ、オープントップの自動車には宿命的なものであります。ボルボ C70カブリオレの場合も、この振動に起因するねじれ音に関しては、まだ改善の余地があったということかもしれません。
とは言うものの、2002年にクーペのC70が生産を終えたあとも、このオープンタイプは2004年まで販売されます。さらに、最終的には最強版エンジン(250ps)が搭載されたのは、こちらのタイプのみでもありました。

【基本情報/スペック】

名称:ボルボ C70 T52.3(ターボ)
エンジン排気量:2,319cc
エンジン出力:176kw(240ps)/5,100rpm
エンジントルク:330Nm(33.7kgm)/2,700-5,100rpm
全長:4,716mm
全幅:1,817mm
全高:1,428mm
重量:1,490kg
ホールベース:2,664mm
サスペンション:マクファーソンストラット式(前)/ デルタリンク(後)

大幅に改良の2代目C70

ボルボ C70がフルモデルチェンジをしたのが、2006年のことです。この時には、本当の意味でボルボのイメージを脱却するような、大きなイメージチェンジが行われました。そのボディーシェイプは、フロントからリアの全体にわたり、空気と一体化するような曲線で構成され、フロントマスクからもボルボの「四角い」イメージがなくなっています。実はこの車体は、イタリアのピニンファリーナとの共同開発&製造で、ピニンファリーナとしてはイタリア国外で製造を手掛ける初の自動車でした。その基本骨格を支えるシャーシは、フォードと共有のP1プラットフォームです。また、サスペンションも前にはマクファーソンストラットを継承しましたが、後ろはマルチリンク式へと進化してもいます。

用意されたエンジンは全て直列5気筒。非加給の2.4L(103kw&125kw)から3種類のターボ付き2.5L(最大186kw、370Nm)、そして2.0Lと2.4Lのターボディーゼル(100kw&132kw)が欧州向けに存在しました。

C70は、このモデルチェンジ時においても、乗員数は4人を確保しています。

3分割式ハードトップ

布と金属板では、あきらかに堅牢さに違いがあります。それが自動車のルーフを構成する部分だとしたら、やはりボルボカーズのようなメーカーとしては最も気になる部分だったはず。この2代目C70では、初代が備えていた電動ソフトトップを捨て、新設計の自動開閉ハードトップが採用されました。この方式は、ドライバーがボタンを操作すると、ルーフが3段に積み重なりトランクスペースへと収納されるとういもの。この機構により、オープンカーとクーペ両方の機能をそなえたコンバーティブルとして、生まれ変わったのがこのC70でした。

この新機構、実際、ルーフを閉鎖すればボディ剛性が約15パーセント向上したとも言います。しかし、固定式の屋根ほどの信頼性は望めないのも事実。そのためボルボ社は、このC70に数々の安全機構や技術を適用しました。その代表が、なんといっても先代から受け継いだROPSで、この後期型C70ではその点にもさらなる改良が加えられていました。
まず、乗員保護のためのロールゲージは、火薬の爆発力によって伸長するようにされています。これで、いざと言う時の応答を素早くできます。また、新型C70のリアウィンドウがガラス製であることから、それを打ち破るための小さなスパイクも付けらました。

さらにもう1つ、乗員の頭部を守るのがドア内部に仕込まれた、カーテン型のサイドエアバッグ。これは、内部にある程度固いスラットが組み込まれていて、膨らんだ後も上部に留まるようになっています。そういった工夫により、たとえサイドウィンドウが開いた状態でも、効果的に乗員の安全を確保するのだそうです。

また、車体の安全設計も進歩しています。まずAピラーへ更なる強度をあたえるため『Hydro-forming』という技術を導入。金属チューブの内部に高圧をかけつつ、外部を叩いて成形することで、継ぎ目のない構造を形状的にも自由度の高いものに作り上げることが可能と言う方法です。さらに、サイドからの衝突については、Bピラーを強固にすることと横向きの骨格を5本も車体に通すことなどで、衝突のパワーを床面へ逃がすようになっています。
両サイドのドアには対角線上の補強メンバーが内臓され、さらに衝突時でも開かない設計となっています。そういったことも相まって、事故時にくわわる衝撃を、前後の方向へにがす役割も持っているといいます。

ちなみに、ルーフを収納時でもおよそ200リットル程度の荷室スペースが残されています。

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3分割ハードトップの動作映像

コンバーティブルとなって燃費は?

まさに、安全への拘りこそボルボのアイデンティティ。そう言わしめる部分が、コンバーティブルのモデルだからこそ、顕著に見て取れるとも言えそうです。とは言え、ボディーの強化のために重量増といコストも支払ったのは確か。たかだか200馬力台中盤のパワーしかないクルマで、車重は1,700㎏を超えてもいいるのです。この車体重量が一番ひびくのは燃料消費です。一応、JC08モードで9.5km/Lというデータがありますが、実燃費もそれと変わらないレベルという記録が多いようです。場合によると10km/Lが平均と言っているオーナーさんもいます。まぁ、不必要なパフォーマンスを追求しないという所にも、ボルボの安全思想が表れている受け止めるべきなのかもしれません。やはりボルボは実直なメーカーなのですね。

【基本情報/スペック】

名称:ボルボ C70 T5 コンバーティブル
エンジン排気量:2,319cc
エンジン出力:176kw(240ps)/5,400rpm
エンジントルク:330Nm(33.7kgm)/2,400-5,100rpm
全長:4,716mm
全幅:1,817mm
全高:1,428mm
重量:1,740kg
ホールベース:2,664mm
サスペンション:マクファーソンストラット式(前)/ マルチリンク式(後)

情報のふるい分けをするIDIS

C70に装備された、IDIS(Intelligent Driver Information System)は、各部から車体の動作を監視します。アクセルやブレーキそしてステアリングなどの動きから、どのようなドライビングがなされているかを判断し、緊張度の高い状況を自動で察知。携帯の着信やメールなどを、ドライバーに知らせるタイミングを、遅延させたりするという機能です。
今の時代から見て、IT的に言ってそれほど先進の技術でもないのでしょうが、ボルボ社はこの技術も常に進歩させているのだそうです。

マイナーチェンジと限定仕様バージョン

2010年のマイナーチェンジで、ボルボ C70はルックスに更なる魅力を与えられました。主にはフロントマスクのデザインを変更して、この時代のあらゆる顧客に受け入れられるだけの、モダンさを手に入れたのです。
その車体に2011年に加わったのが、『C70 Inscription』と言う呼び名の限定バージョンで、これは年間2,000台の生産計画でした。このモデルには、ブラックストーンにブラックサファイヤ、そしてアイスホワイトという3つの特別色が用意されています。ホイールは18インチを装着。インテリアには、アルミニウムで装飾されたステアリングホイールやスポーツペダル、そしてシフトノブとセンターコンソールなどにもそれが埋め込まれアピールしています。

2013年には、カナダ市場向けに『Special Edition C70』が設定されました。これには、運転中の死角情報などを支援する『BLIS(ブラインド・スポット・インフォメーション・システム)』という安全装備が加わっています。

意外と見つかる中古車

安全&安心、そして堅牢であるのがボルボのボルボたる所以です。2013年に生産を終えてしまったC70ですが現在でどの程度のものが手に入るのでしょうか?

まず、正規ディーラー系の認定中古車販売チャンネルである、『VOLVO SELEKT』で検索すると、とりあえず1台のC70(エンジン2.0LターボのT5GT)が見つかりました。登録が2011年の新型モデル(コンバーティブル)が走行距離は2.2万kmで、価格が3,380,000円となかなかなものです。
社外の販売店系で検索すると、2007年登録で走行距離が4.5万Kmの2.4L(ノンターボ)車で価格は1,580,000円。あるいは、2007年登録で走行が2.8万Kmの2.5リッターターボ車が、1、897、000円とうのもあります。

これらは全部フルモデル後の分割ルーフですが、むしろ、もっとボルボらしいC70がお望みの方も居ることでしょう。1998年登録で10.7万kmを走破したクーペモデルだと、280、000円というのもちょっと面白い(もちろんメンテナンスには気を使いそうですが)車体です。この時期のモデルだと、フロントマスクが古典的デザインを引き継いでいるのも良い点の一つ。コンバーティブルの付加価値が高いぶん、クーペモデルは意外と求めやすくなっているのかもしれません。

電動ルーフのコンバーティブルの場合、やはりその機構の故障は気になるところ、中古ならなおさらそうです。まぁ、開閉時に異音がするとか、開閉を検知するセンサーの故障(コンソールに大きく警告が出るそうです)というものは見当たります。しかし、ルーフが垂直になったまま止まったとか、外れて落っこちたなどという話は、さすがにないようです。

気になるのは故障

電動ルーフのコンバーティブルの場合、やはりその機構の故障は気になるところ、中古ならなおさらそうです。まぁ、開閉時に異音がするとか、開閉を検知するセンサーの故障(コンソールに大きく警告が出るそうです)というものは見当たります。しかし、ルーフが垂直になったまま止まったとか、外れて落っこちたなどという話は、さすがにないようです。他には、パワーウィンドウや電動ミラーが動かないとか、サンバイザーの支持部が割れてしまうという報告も見られます。一般論的には、ある程度の故障は想定して購入したほうが良い、という言い方の報告もあります。

まとめ

多分このC70は、デザイン性のみならず、ボルボにとって新しい時代の扉を開けた一台だったでしょう。そのおかげなのか、今現在ボルボのインターナショナルウェブサイトを開いても、あの四角四面なクルマは見当たりません。とは言え、2ドアかつコンバーチブルというモデルが継承されていないのも事実と言えば事実。
その時期に、同社としては冒険だったかもしれないクルマ作りを、やはり同社らしく生真面目にこなして出来上がったC70。個性的なルーフの開閉機構を含めて、たとえ中古車になってしまったとしても、十分に関心を寄せるだけのことはある一台だと思います。