【マツダ デミオ15MB試乗】ターマックで行くか? ダートで行くか? 競技仕様前提のスポーティカー! 

マツダが2015年にリリースした「デミオ15MB」。MBはモータースポーツベース車という意味です。それまでのデミオはガソリンエンジン車は1.3リッターエンジン…。モータースポーツカテゴリーのコンパクトカークラスで考えるとスズキ スイフトスポーツやホンダ フィットRSに排気量で200cc以上差をつけられて、苦しい戦いとなります。そこでマツダが出した答えがデミオ15MBというわけです。(飯嶋洋治)

マツダ デミオ15MBとは?

久々に登場したメーカー肝いりのモータースポーツベース車

photo by iijima

モータースポーツベース車というのは、かつてはそれなりに設定がありました。例えば古くはトヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノ(AE86)のGTグレードなどは、豪華な装備を排して廉価版とし、ジムカーナやダートトライアルで好んで使われましたし、日産ではサニーVRやマーチRなどがありました。ランサーエボリューションもGSRに対してRSというグレードを設けて、事実上の競技ユース車両としていました。

そんなグレードを設定するくらい参加型モータースポーツの競技人口がいたということでもあります。そんなクルマが設定される時代も終わったのかな……と思っていた昨今ですが、マツダがデミオ15MB(イチゴー・エム・ビー)」を設定しました。エンジンを1.3リッターから1.5リッターに載せ替え、6速MTを採用しています。直にマツダの方から聞いたところによると、「実際にモータースポーツに参加している社員の意見を大いに? 取り入れた設定」というようなことだったので、それだけでも評価できるのではないかと思っています。

他のデミオとの違い

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これまでのデミオは1.3リッターエンジンです。もちろんそれでモータースポーツに参加できないことはないのですが、それではライバルのスイフトスポーツ(1.6リッター)やフィットRS(1.5リッター)に対して排気量的に不利になってしまいます。ジムカーナやダートトライアルでは、排気量によってクラス分けがされますから、はじめから不利が分かって勝負を挑むのはキビシイものがあります。

15MBでは、1.5Lガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.5」を搭載しました。エキゾーストマニホールドは「4-2-1排気システム」とし、排気効率をアップしています。いきなり「4→1」としてしまうと、抜けが良くても中低速トルクが細くなるので、4-2-1とすることで、トルクフルにしている感じでしょう。さらに6速のSKYACTIV-MTや大径ブレーキ(13インチ→14インチ)の採用により、モータースポーツでの性能を重視したかたちになっていると言っていいでしょう。

ちなみにこれまでのラインナップのデミオは1.3リッターエンジンで、最高出力は68kW(92PS)/6,000rpm、最大トルクは121N-m(12.3kg-m)/4,000rpm)です。これはこれで小排気量ながら気持ちの良いパワーフィールと好燃費を果たしたエンジンとは言えますが、スイフトやフィットといったライバルに比べると非力なのは前述したとおりです。

簡単に言えば、ロードスターのエンジンをデミオに無理やり載せたともいえるもので、こういう発想は、モータースポーツ好きが考えがちなもの? と言えます。エンジン、トランスミッション以外は1.3バージョンと同じ仕様となっています。サスペンション(スプリング、ショックアブソーバー、ブッシュ)は競技参加を考えた場合には、それぞれの競技の専用品に交換するのが前提となっていますから、それでいいわけです。

乗り心地は?

中速域でのトルクと軽量ボディが効いている!

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基本はファミリーカーですし、まずドライバーズシートに座った瞬間は「モータースポーツベース車」という感慨は湧いてきません。ペダル配置などは、ロードスターに比べても、センタートンネルなどの規制が無い分、広くとられていて自然な感じもあります。インパネに目をやると、スピードメーターの左側の小さなタコメーターが目に入り、ちょっとザンネンな感は拭えませんでしたが、モータースポーツは基本アクセル全開? ですから、シフトアップポイントのレブリミットさえわかれば良い! という考え方もできますし、後付で大きなタコメーターを付けるのもありかと思います。

クラッチ踏力やMTの操作フィールもイマドキのクルマらしく、ごく軽いものとなっています。この辺はモータースポーツベースならもうちょっと手応え、足応えがあっても良いのでは? と思うのは古い人間の感覚なのかもしれません。

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高速道路でアクセルを踏み込むとトルクフルなエンジンが軽量ボディを引っ張り、パワー以上の気持ち良い加速を見せます。低速で扱いやすく割りと高回転まで気持よく回るエンジンがこのクルマの最大の美点でしょう。ただし、低速ギヤで引っ張るとシフトインジケーターの表示が「3→4」などと表示し「エコじゃないから? 早くシフトアップしなさい」と指示してくるのがイマドキのクルマを感じさせるところでした。


エコという面では、アイドリングストップ機能もついており、スイッチを切らなければ都内など渋滞の中を走るときには頻繁にエンジンのオンオフを繰り返しますが、振動や騒音も気になるレベルではありませんでした。むしろ、インパネの平均燃費表示を見ていると積極的にアイドリングストップを使った方が気持ちいい感じさえしました。

足回りはそのままモータースポーツに…というわけにはいかないが?

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サスペンションは1.3リッターからの流用ですが、むしろ軽量化されたボディのために、一般走行では、ちょっとスポーティなサスペンションという感じで不満のないものでした。フロントストラットでリヤがトーションビームというサスペンション形式は「スポーツカー」を感じさせるものではありませんが、リヤサスがシンプルで軽いということは有利ですし、なにも重くしてまでダブルウイッシュボーンやマルチリンクにすることはないでしょう。

ストックでは市街地ではわりと硬めのイメージなのが、高速道路に入ると、路面状況によってはやや頼りないかな? という部分がありますが、競技用に交換が前提で考えれば問題にはなりません。

特筆しておきたいのが、ステアリングフィールがしっかりしていて直進安定性が高く感じられること。市街地ではもうちょっと重くてもいいかな? という感じなのですが、80km/h以上くらいになると、路面からのフィードバックが適度な感じがしました。シートが廉価版なので、あまり長距離は走りたくないなという感じもあったのですが、400km程度の走行距離では疲れは感じさせません。


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モータースポーツを考えるとリヤブレーキもドラム(リーディングトレーリング)式ですから、サイドターンも比較的容易にこなせると思います。ほんのちょっとジムカーナをかじる…くらいならタイムはともかく、ストックの状態でもそれなりに走れてしまうのでは? と思う半面、やはり、スプリング、ショックアブソーバー、LSD、ブレーキパッド(リヤはシュー)くらいは入れて、安全装備として4点式シートベルト、フルバケットシートを入れれば、数年はそのまま楽しめるクルマだと思います(ダート系では6点式以上のロールケージが事実上必要となります)。

モータースポーツ入門車としての競合車種は?

スイフト、フィット相手に互角の戦いを挑める!



モータースポーツが前提ということなので、ここでは競合となりそうな車種について軽く触れておきましょう。

マツダ ロードスター

数少ない国産ライトウェイトスポーツカーと呼べるマツダ ロードスター。ロードスターの場合は、あまりダート系競技に出る人はいないでしょうから、ジムカーナでの競合となります。ネックになるのはまず価格でしょう。デミオに比較して100万円以上の価格差としては決定的となってしまいます。もうひとつ、ロールバーの問題があります。ジムカーナに関してはオープンの場合、転倒した際の安全性に関わる部分としてロールバーの装着が必須となります。これはJAF公認競技の場合、その規定に沿う必要があります。ボディに加工が必要となりますから、かなりの本気度が必要ですし、そこまで本気になっても楽しさはともかく圧倒的に速いか? という問題もつきまといます。

スズキ スイフトスポーツ

事実上のライバルの最右翼がスイフトスポーツとなるでしょう。ただしスイフトは1.6リッターで100kw(136PS)/6,900rpm)、160Nm(16.3kg・m)/4,400rpmとなります。車重は1,040kgということでスペック的にデミオよりも有利です。とはいっても、ジムカーナでは有力ショップがデミオ開発に努めていますし、テクニックの差が出やすいダートトライアルではいい勝負になっているようなので、しばらくどちらが優勢になるかが見どころになると思います。

ホンダフィットRS

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1.5リッターi-VTECを搭載し6速MTのフィットRSもライバルとなります、97kW(132PS)/6,600rpm、 155Nm(15.8kg-m)/4,600rpmで 車重は1,050kgとなります。ただ、メーカー希望小売価格が消費税込みで1,926,000円と結構良い価格になってしまいます。この価格をどう考えるか? がポイントでしょう。現在、スイフトスポーツと並んで、参加型モータースポーツのコンパクトカーが走れるクラス(JAF全日本選手権などではPN1クラス)では主力となっています。

スズキアルトワークス

走りに特化したクルマということではアルトワークスは非常に魅力的なクルマです。ただ対デミオということを考えると、走る楽しさは同等だとしても、どうしても660ccという小排気量と軽自動車の64PS縛りがあるということや、タイヤサイズの問題ではタイム的に厳しいものがあると思います。

やっぱり気になる価格や燃費

主要諸元

型式 マツダ・CBA-DJLFS型
総排気量 1,496cc
駆動方式 FF
車両寸法(全長☓全幅☓全高) 4,060mm☓1,695mm☓1,500mm
車両重量 1,010kg
乗車定員 5名
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC16バルブ
最高出力(ネット) 85kW(116PS)/6,000rpm
最大トルク(ネット) 148N・m(15.1kg・m)/4,000rpm
燃料供給装置 筒内直接噴射(DI)
燃料・タンク容量 無鉛プレミアムガソリン・44L
燃料消費率 JC08モード 19.2km/L
変速機型式・変速段数 SKYACTIV-MT(6MT)
最小回転半径 4.9m
ボディカラー ソウルレッドプレミアムメタリック
タイヤ&ホイール 185/60R16 86H タイヤ16☓5.5Jインチアルミホイール
(1)車両本体価格 1,544,400円(消費税抜価格1,430,000円)※特別塗装色代43,200円(税込み)を含む
(2)オプション価格 64,800円(消費税抜価格 60.000円)
■ メーカーセットオプション
●ユーティリティパッケージ
・ダークティンテッドガラス(リアドア/リアゲート)・リアシート6:4分割可倒式シートバック・CDプレーヤー・185/60R16 86H タイヤ16☓5.5Jインチアルミホイール
合計金額(1)+(2) 1,609,200円(消費税抜価格 1,490,000円)

燃費は?


今回は、横浜、都内、東北地区ダートトライアル選手権の会場である栃木県の「丸和オートランド那須」の往復に主に使用しました。走行距離は457.6kmに達しました。昼間に横浜から東京の往復という比較的燃費には厳しい状況も含みながら平均燃費は17.5km/L。これはモード燃費にも近く、状況によってはまだまだ伸びるという感じもありました。無鉛プレミアム仕様とはいえ、この燃費は経済的にモータースポーツをしたいという層に訴求するには十分な数値だと思います。

まとめ

私も、割りと真剣にダートトライアルをしていた20代の頃には、新車を買ってそのままダート走行を行なって飛び石で傷だらけ……などの悲しい? 思いを何度かしています。とはいっても、当時AE92カローラやEP82スターレットターボならば、込み込みで130万円程度で済みました。LSDはさすがに自分では組めませんが、サスペンション交換などは自分でやっていましたから、150万円程度で、それなりにダート走行を楽しめるクルマになりました。そう考えると、デミオ15MBも「すごく安い!」とは言い切れない面はあるのですが、まだなんとか手が届く範囲にあるのかな? という感じです

今回、デミオで行った丸和オートランド那須でのJAF東北地区戦ダートトライアルでも、初代シビックタイプRやランサーエボリューションVなど、もう旧車? に属するようなクルマ活躍しているのをみると、現在、モータースポーツベースといえるクルマがないことを痛感します。もちろんローカルイベントなら古くても楽しめれば良いという考え方でいいとは思いますが、少なくとも全日本選手権クラスであまりにも古いクルマが走っているのを見るのはちょっと悲しいというのが本音。そんな中で若いドライバーの相棒としてデミオ15MBのようなクルマがどんどん出てきて欲しいというのが、今回の試乗を終えての感想でした。

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