【ホンダ アコードツアラー】今だから欲しい!? ホンダのステーションワゴンは米国生まれ

1980年代のホンダは、例えばシティーとかCR-Xとか、元気がよくて小ぶりなクルマを作るのに長けたメーカーでした。そんな同社も21世紀の今となり、ある意味では日本を代表するミニバンメーカーに「成長」したのだろうと思います。しかしどの世界でも、すでに消えてしまった商品に、郷愁を重ねて思い出す人が居るのは一緒です。このアコードツアラーも、「あの時のホンダは」と思いをはせる対象になる一台かもしれません。

ステーションワゴンだからこそ意味がある

流行と言う意味なら、アパレルと同じく自動車のスタイリングも、変遷と浮き沈みが大きいものだと思います。そして元来、かなり高額になる商品ですから、各カーメーカーさんの商品企画も「外さないこと」が第一義になってもくるのでしょう。逆を言うと、時代が流れて販売される車種構成が変わると、自分が最も欲しいカタチのものが消えてしまうということにもなります。
日本メーカーで一番最初くらいの頃に北米工場を立ち上げ、CVCCという希薄燃焼方式でいち早くマスキー法のクリアを成し遂げ、インディーカーへエンジンを供給し続けるなど、常にアメリカに視線を向け続けるのがホンダです。それゆえ経営方針も、北米での車の流行には大きく影響を受けるだろうことは、容易に予想できる訳です。
そんなアメリカの流行が、ステーションワゴンからミニバンへと移る頃、ホンダのラインアップにあったのがアコードワゴン。後にホンダ アコードツアラーと呼ばれるクルマでした。

アコードはもともと、傾斜のあるリアハッチを持つハッチバック車。それが、3ドアのエアロデッキを経て、北米を主眼に置いたステーションワゴンに発展したのがこのモデルです。

その系譜はアコードワゴン

先述の通り、アコードツアラーの原点はアコードワゴンというステーションワゴンです。今は存在しないと言うものの、全部で言うと5世代に亘る系譜をもつ車種がこれ。ですのでとりあえず、そのルーツを振り返ってみたいと思います。

元祖はCB9型アコードUSワゴン

アコードが4代目に切り替わる時、北米のデザイン部門も取り込み企画されたのが、1991年に登場の初代アコードワゴンです。車体の前半分位はセダンとまったく同じと言っても良いですが、伸びやかさを感じさせるリアのハッチまわりのデザインは、やはり新大陸の息吹を感じさせる良いデザインだと思います。比較的スラントしたリアハッチもあってか、実際に欧州向けでは、ワゴンではなく従来のエアロデッキを名乗っていたのがこのモデルでした。デザインとしては、ちょっと無理があるんじゃないかとさえ感じる、低いボンネットも特徴ポイントの1つです。

今では、オデッセイでさえ前ストラット/後トーションビームという、言ってみれば面白味の少ないFF用サスペンションになっているホンダ車。しかし、このころのホンダはもっと格下のシビックから、4輪ダブルウィッシュボーン式という懸架方式に挑戦していました。そして、もちろんこのアコードも前輪後輪共に上下のアームでタイヤの動きを決める、ダブルウィッシュボーン式サスペンションを驕っていました。

搭載されたエンジンは、SOHCながら吸気・排気それぞれにバルブを2つ持つ『F22A型』です。出力は103kW(140ps)/5,600rpm、トルクは192Nm(19.6kgm)/4,500rpmを発揮するパワーユニットでした。また、1992年のマイナーチェンジで、ABSなどが標準装備になっています。

日本向けですと、これくらいの大人向け仕様なクルマとして当然のごとく4速ATだけの設定ですが、北米型には5速MTのバージョンも存在したようです。

【基本情報】
名称:アコードUSワゴン 2.2i
型式:E-CB9
エンジン排気量:2,156cc
エンジン出力:140ps/5,600rpm
エンジントルク:19.6kgm/4,500rpm
全長:4,725mm
全幅:1,725mm
全高:1,440mm
重量:1,430kg
ホールベース:2,720mm
サスペンション:ダブルウイッシュボーン式(前)/ ダブルウイッシュボーン式(後)

2代目はCE1/CF2型

好みにも寄りますが、初代のデザインが持っていたセダンとの抱き合わせ感がかなり是正され、クルマとしてより良くまとまったと言えるのが、1994年3月に登場したこのCE1/CF2型アコードワゴンでしょう。また、ライバルと思しきフォードトーラスと戦えるよう、ワイド感を醸し出すスタイリングも与えられました。フロントサスペンションのストロークを多分犠牲にしていたと思われる、あの低いボンネットへの拘りも、このデザインからはあまり感じられません。先代よりややふっくらとしたフロントセクションは、真横から見たときのシルエットに、全体としてバランス感を加えたと言えるでしょう。

サスペンションは依然として、4輪ダブルウィッシュボーン式を採用。スペース効率の問題は横に置くとして、こういったセダン用のコンポーネントを持ち込めるのは、ステーションワゴンの大きな良点の1つです。このモデルの最終型では、エンジンにも気の利いた改良がおこなわれ、DOHC16バルブのVTEC(Variable valve Timing and lift Electronic Control system)搭載車も加わりました。そのスペック、出力は162kW(220PS)/7,200rpm、トルクは221N·m(22.5kgf·m)/6,700rpmに到達する高性能版でした。

このモデルが登場したのは、段々と北米における自動車の好みがミニバンにシフトした時期で、販売には苦戦したという話もあるようです。とは言え、アメリカ人オーナー達の発言をみると、12年とか15年乗ってもメジャーなトラブルは皆無。あらゆる道具を満載して悪路へ踏み込んでも、確かな走りで支えてくれるというような、ポジティブな評価が多い印象です。

【基本情報】
名称:アコード ワゴン 2.2VTL
型式:E-CE1
エンジン排気量:2,156cc
エンジン出力:145ps/5,500rpm
エンジントルク:20.2kgm/4,500rpm
全長:4,770mm
全幅:1,780mm
全高:1,455mm
重量:1,400kg
ホールベース:2,715mm
サスペンション:ダブルウイッシュボーン式(前)/ ダブルウイッシュボーン式(後)

3代目CF6/7/CH9/CL2型

輸入車という形式から、日本国内での製造へ切り替わったのが、1997年9月に登場した3代目のアコードワゴンです。このモデルでは、ワゴンのユーティリティー性を流線形のボディに収めた、少しスポーツライクなデザインになっているのが特徴でしょう。足回りは、やはり前後共にダブルウィッシュボーン式を継承。ちなみに、アメリカ仕様には日本になかった5速MTも残されていたとのことです。

このモデルのオーナー達の感想として、電動式パワーウィンドウが遅い、という意見がいくつかあるようです。総じて信頼性には定評があるものの、塗装の劣化が早いという話もみつかりましたが、使い方にもよると思うのでどうなのでしょうか? ステアリング機構には可変ギアレシオというものが備わったりもしています。また、インテリアの装備としてはBOSE製オーディオにMD/CDオートチェンジャーも付いていることろなど、ちょっと時代を感じさせますね。

エンジンには、2.3LのDOHC16バルブVTECで、出力147kW(200PS)にトルクが21Nm(22.5kgm)のものまで導入されました。また、この型から4WDも選べるようになりました。

【基本情報】
名称:アコード ワゴン 2.3VTL 4WD
型式:E-CF7
エンジン排気量: 2,253cc
エンジン出力:158ps/5,700rpm
エンジントルク:21.5kgm/4,900rpm
全長:4,740mm
全幅:1,730/mm
全高:1,470mm
重量:1,450kg
ホールベース: 2,665mm
サスペンション:ダブルウイッシュボーン式(前)/ ダブルウイッシュボーン式(後)

4代目CM1/2/3型

外観でもかなり印象が変わったのが、2002年の11月に行われたこのフルモデルチェンジでしょう。他の車種同様、それまでホンダ アコードのアイデンティティの1つであったスポーティさを捨てて、「たくさん乗せられそう」なイメージを押し出したデザインだとも言えそう。実際、ボディーの全幅もさらに拡大され、後方ハッチの角度も荷室容積を意識して、垂直に近くなりました。モノはまったく違いますが、あの懐かしいエアロデッキのルックスを、想起させる所もあるようです。

サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーン式。備えられたトランスミッションは、4速から5速のATへと進化しています。その動力源としては2.4Lの同じ形式(K24A)を、外部EGRで排気ガス対策を強化しつつ118kW(160PS)を発揮する低排出ガス仕様と、147kW(200PS)のハイパフォーマンス仕様に分けて搭載しました。また2.0LDOHC16バルブで114kw(155ps)のタイプも用意。エンジンはすべてVTECです。

実は、日本よりさきに欧州で『ホンダ アコードツアラー』と命名されていたのが、このモデルだと言うことです。

【基本情報】
名称:アコード ワゴン 24T スポーツパッケージ
型式:CM2
エンジン排気量: 2,354cc
エンジン出力:147kw(200ps)/6,800rpm
エンジントルク:232Nm(23.7kgm)/4,500rpm
全長:4,750mm
全幅:1,760mm
全高:1,470mm
重量:1,540kg
ホールベース:2,720mm
サスペンション:ダブルウィッシュボーン式(前)/ トレーリングアーム付きダブルウィッシュボーン式(後)

アコードツアラー誕生

ステーションワゴンという、ある意味でセンシティブ(?)なセグメントに属してきた、ホンダ アコードワゴン。デザイン側の主張と、それぞれの時代からの要求にもまれて、そのスタイリングも変遷(あるいは漂流)してきた感があります。しかし、2008年12月に発表されたこのホンダ アコードツアラーは、セダンベースのワゴンとして実にまとまりのよいボディを手に入れています。実際には5代目アコードワゴンであるこのツアラーは、このモデルの最終型であり、まさに集大成の車体になったと言えるのでしょう。同時に、尖って実験的なことをやってくれるホンダの好奇心が鳴りを潜め、いわば保守性を身に付けた大人の企業に成熟したのがこの頃かもしれません。
とは言え、ほんの数年前まで現役であったクルマですから、今みても十分にモダンで魅力も感じるシルエットなのがこの一台です。

エンジンとトランスミッション

このホンダ アコードツアラーに用意されたエンジンは、2.0LでSOHC4気筒ながら16バルブのR20Aエンジンと、2.4LのDOHC16バルブのK24Aという2タイプです。若干その目的は違うものの、どちらもVTECを搭載です。

そのエンジン。まず2.0Lの方は、車体が巡航速度で走行時のエネルギー効率を改善するための、『可変吸気量制御』を取り得れたバルブ制御を行っています。通常、一定速度でクルージング時などアクセルの踏み込みが少ない場合、エンジンの吸気をスロットルバルブで絞っています。これが、エンジンにとっては抵抗になっていて、エネルギーを損失しているのです。ホンダのこのエンジンでは、吸気側バルブの閉じタイミングを遅らせて、一度吸い込んだ混合器をマニホールド側へ押し戻すということを行います。そうすると、電子制御(DBW=ドライブ・バイ・ワイヤ)により制御されるスロットルバルブを閉じ切らなくても吸気量を絞る事ができ、エンジンの出力を低減させることが可能になります。これで、通常の吸気の抵抗によるロスを抑えているということです。

もう1つの2.4Lエンジンは、低速と高速で二つのカムを切り替える『VTEC』に、連続的な開閉タイミング(位相)の制御を可能にした『VTC』を導入した『i-VTEC』です。これにより、緻密な燃焼制御が行われるようになり、低中速でのトルクと高速での出力向上を実現しています。

そのエンジンが発生する動力を受け止めるのが、パドルシフト付の5速オートマチックトランスミッションです。アコードツアラーのこのミッションは、『Sモード』と『Dモード』の2つの設定が選べるものでした。Sモードはドライバーの操作のみで変速する、マニュアル車に近い動作。一方、Dモードでもパドルシフトは行えますが、電子制御が状況を判断して必要な時はオートマモードに自動復帰するという、運転者支援機能が付いた設定となっています。

4代目のワゴンまでは選べた4WD仕様は、このツアラーには設定されませんでした。

シャーシと安全装備

FFのみの設定となり、後輪への駆動伝達という要求がなくなったものの、このツアラーでも4輪独立懸架を継承しています。というよりむしろ、タイヤの動きを支えるアームを増やしたマルチリンク式に進化したのが、この最終型ワゴンであるアコードツアラーです。スペース効率を考えたら、リアをトーションビームにしても良かったかもしれませんが、やはりそこはホンダのクルマです。走りへのあくなき追及も忘れていない、ということかもしれません。

プラットフォームの中では、エンジンのマウントを低くし燃料タンクも後席の下に置くという工夫で、低重心と低慣性化を実現しました。その上に乗るボディー骨格では、ルーフ部に閉断面連続結合構造を採用したり、Cピラーからテールゲート開口部周辺などの剛性を強化して、走行性能や静粛性を向上させています。

ボディーの底面には、フロントフロアカバーやリアサブフレームカバーなどで、可能な限りのフラット化を目指しました。これにより、高速走行時の揚力を抑えると同時にその前後バランスを改善して、高速走行時の安定感を増したそうです。

ホンダ アコードツアラーのアクティブ・セイフティ―機能としては、旋回走行中の状況に合わせて、外側前輪に適度なブレーキをかけたり(アンダーステア時)、内側後輪を適度に制動したり(オーバーステア時)する、VSA(ビークル・スタビリティ・アシスト)を装備。同時に、『EPS(電動パワーステアリング)』で車体の姿勢に合わせた操舵支援を行う、『モーション・アダプティブ・EPS』も用意されています。

ラゲッジスペースとインテリア

エンジンやメカニズムがどうのと言っても、ステーションワゴンで最も大切な要素とは、やはりラゲッジスペースのはずですね。
このアコードツアラーの荷室は、その左右両側にサスペンションのダンパーと思しきでっぱりがあって、横幅のある大柄な物を積みたい場合は邪魔にもなりそうです。とは言え、車体最後部の荷台は幅が1,100mmあり、後席を前に倒すと前後長で1,835mmを稼ぐことができます。またその床面下には、69Lのボックスがありますし、左右にもフロアサイドボックス(床面下)とカーゴサイドボックス(壁面内)があります。絶対的な数値の良否は他車との比較でありますが、ステーションワゴンとして十分に遊べそうなのが、この5代目アコードワゴンであるアコードツアラーでしょう。

運転席廻りでは、ヒップポジションを下げたシートに加え、ステアリングホイールの角度を起こすなどの工夫がなされています。荷物を多く積載して遠方へ出かけるワゴンだからこそ、運転性に関するこうういった配慮はありがたいと言えるでしょう。インパネのマルチインフォメーション・ディスプレイは、瞬間燃費や航続可能距離などを表示して、ロングドライブを助けます。

上級装備の『Type-S』の運転席には、前後スライド/リクライニング/高さ、を好みのセッティングにできる『8ウェイパワーシート』を装備。加えて、後席エリアの空調を向上する『リアベンチレーション』も与えられました。

【基本情報】
名称:アコードツアラー Type-S
型式:DBA-CW2
エンジン排気量:2,354cc
エンジン出力:151kw(206ps)/7,000rpm
エンジントルク:232Nm(23.7kgm)/4,300rpm
全長:4,750mm
全幅:1,850mm
全高:1,470mm
重量:1,610kg
ホールベース:2,705mm
サスペンション:ダブルウィッシュボーン式(前)/ マルチリンク式(後)

中古で乗るとすると…

今はもう存在しないクルマと言う物珍しさだけでなく、アコードクラスのセダンにユーティリティーを加えた自動車が欲しいとお思いの方は、結構多いのではないかと思います。そしてワゴンですから、徹底的に遊び倒すのであれば、新車よりも中古車の方が向いているとも言えそうですね。

まぁ試しにと思い、最初にこのシリーズのルーツである1991年からのCB9型を探してみましたが、ちょっと見つかりませんでした。今どき、このタイプで状態の良い車体が存在したら、むしろ値段が上がってしまうのかもしれません。
当然、一番個体数が多いのは2000年代に入ってからのCM1/2/3型(アコードワゴン)以降です。ホンダの認定中古車で検索すると、2006年登録の2.4タイプS フルレザーシートに純正のHDDナビ装備車両で、1,398,000円というのが今の最高価格のようですね。

同じ認定中古車のアコードツアラーの代で調べると、2011年登録の20TLスマートスタイルパッケージ(走行11.2万km)で、998,000円という価格から選べることは選べます。また、2012年登録の2.4 タイプS純正HDDナビ付きが、走行距離2.4万kmで2,598,000円です。

中古ですから程度は個体差によりますが、とりあえずボディ形状が違う3世代から色々と選べる中古ステーションワゴンが、このアコードワゴン&ツアラーだとも言えるかもしれませ。

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まとめ

シリーズとして最後まで拘った、4輪ダブルウィッシュボーン式サスペンションが物語る通り、このホンダ アコードツアラーのファミリーは最大限の走りも求めたクルマだったと思います。もちろん、今のミニバンがこれに比べて走行性能に劣る、などとは言えません。しかし、ボディ形状からしても、乗用車に近い位置に居るのがステーションワゴン。「キャンプをしない時のドライブ性能」には、やはりメリットがあるでしょう。
まぁ、いくら作っても売れないモノはラインアップから消えてゆく、それも宿命ではあります。でもホンダのようなメーカーには、このセグメントで何か別の新しく面白いクルマを創り出してもらいたい。そんな気もする所です。