【フォード フィエスタ】日本撤退目前のフォードが作った傑作コンパクトカー

2016年の年明け早々、フォードが日本から撤退するという発表がありました。そんなフォードの傑作コンパクトカーがフィエスタです。日本では良さを知られないままに、このままフェードアウトしてしまいそうなフィエスタの魅力をお届けします。

フォード フィエスタとは?

フィエスタはヨーロッパやタイで生産されて世界中に輸出されているコンパクトカーです。ライバルとしては例えばトヨタ ヴィッツ、ホンダ フィット、フォルクスワーゲン ポロ、ルノー ルーテシア、プジョー 208、それからインドから日本への輸入がはじまったスズキ バレーノなどがライバルになります。

自動車にそれほど詳しくない方だと、フォードってアメリカのメーカーではなかったっけ? と疑問に思われるかもしれません。実はフォードは古くからヨーロッパに進出していて、1911年からはイギリスに、1931年にはドイツに子会社を作り、ヨーロッパの需要にあわせて、フォルクスワーゲンやオペルと対抗するコンパクトな実用車を作ってきたのです。1967年にはヨーロッパのフォードは一元化され、開発体制が強化されました。アメリカのフォードが作るSUVやピックアップトラックなどの豪快な自動車たちに比べると、ヨーロッパのフォードは小型な車体にエッセンスが濃縮されたような、対極なコンセプトの自動車を作っているのです。

フィエスタはそんなヨーロッパのフォードが1976年から生産しているコンパクトカーで、2016年で40周年を迎えました。フォルクスワーゲンのゴルフなど、さらに長い歴史を持つモデルもありますが、とはいえ車種名としては、ヨーロッパの中でもかなり長い歴史を持つ1台に挙げられます。これはヨーロッパでフィエスタが愛されてきたことの証拠とも言えるでしょう。

フォード フィエスタの歴代モデル

まずはフィエスタ40年間の歴史についておさらいしましょう。日本では資本関係のあったマツダが、同じクラスでコンパクトカーを発売していたこともあって、21世紀に入るまでは正規輸入されてこなかったフィエスタですが、ここでは日本ではかなりマイナーな20世紀中のモデルも、しっかりフォローしてみました。

フィエスタ Mk.I(1976-1983)

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/i/pictures/yncwa3/

こちらが1976年に登場した初代フィエスタ。フォードはこれをMk.I(マーク1)と呼んでいます。優しい顔立ちが魅力的で、どことなくイタリアンなテイストもありますが、一説にはイタリアのカロッツェリアで、当時フォードとの資本関係が強まっていたギア社が、開発に大きく関与したとか。

また、このフィエスタはフォードとしてははじめての、本格的な小型前輪駆動モデルとなりました。上級車として販売されていたエスコート(現在のフォーカスに相当)は当時まだ後輪駆動でしたから、今後のエスコートの前輪駆動化を目指したテストヘッドという意味合いもあったことが想像されます。

フィエスタMk.Iは1982年まで日本にも輸入されていたのですが、1979年からフォードの子会社となったマツダが、アジアやオセアニアなどではフォードブランドの小型車の開発を担当する方針となり、マツダ開発のフォード レーザーと置き換えられるカタチで輸入が終了しました。

フィエスタ Mk.II(1983-1989)

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/ii/pictures/239788/

1983年にはMk.II(マーク2)に移行。1980年代らしい近代的な顔立ちになりました。どことなくマツダっぽい雰囲気を感じますが、どちらかというと当時のマツダがフォードっぽかったという方が正解かもしれませんね。

こちらのMk.II、実はMk.Iのビッグマイナーチェンジモデルで、顔は随分と変わりましたが、よく見るとサイドビューはMk.Iとそっくりです。つまり実質的な初代モデルを1976年から1989年まで、13年間も販売したということで、当時のヨーロッパ車のモデルライフが今よりも総じて長めだったとはいえ、ここまで長い期間生産されたモデルは、それほど多くはありません。これは初代フィエスタのしっかりとした設計が、1990年代直前まで通用したということを物語っています。

フィエスタ Mk.III(1989-1997)

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/iii/pictures/e4124v/

1990年代を目前に控えた1989年に、フィエスタは満を持してフルモデルチェンジ。Mk.III(マーク3)へと移行しました。全体的な雰囲気はMk.IIの路線を継承していますが、サイドビューなどを見ると三角窓が廃止されていたりと、一気に近代化されていることが見て取れます。

全くのニューモデルとなったフィエスタMk.IIIには、写真のような、実用的な4ドアモデルが追加されたこともポイントです。ヨーロッパのこのクラスの小型車は、フランス勢は早い段階から4ドアモデルを販売していましたが、ドイツ勢は長らく2ドアモデルがメインでした。フィエスタMk.IIIに刺激されてか、オペルやフォルクスワーゲンは、その後のフルモデルチェンジで、コルサ(日本名ヴィータ)やポロに、相次いで4ドアモデルを追加しました。

フィエスタMk.IIIは基本的に1995年まで生産されてMk.IVに移行しますが、一部の仕向地などにはMk.IIIが1997年まで販売されていたようです。

フィエスタ Mk.IV(1995-2002)

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/iv/pictures/ldtelb/

1995年にはフィエスタはマイナーチェンジしてMk.IV(マーク4)にモデルチェンジ。こちらはMk.IからMk.IIのときのようなビッグマイナーチェンジだったのですが、世代のカウントはひとつ進みました。これまでの快活な雰囲気から一転、タレ目のブサカワ系にイメージチェンジ。

丸みを帯びたフロントマスクは、当時発売開始されていた上級セダンのモンデオなどに通じるものがあり、また、グループのマツダの上級モデルにも通じる雰囲気がありました。少しプレミアム路線を狙ったというところだったのかもしれません。フォードはこのデザイン路線を「オーバルデザイン」と呼び、フォードのアイコンにしたかったようです。が、しかし…

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/iv/pictures/29280/

1999年には吊り目路線に回帰。タレ目路線は僅か4年で終わってしまいました。これまでの命名規則だと、これがMk.Vになっても良さそうなくらいの変わりようですが、今回は何故か、Mk.IVの名前が継続されています。

フロントバンパーの形状も大きく変わり、フォグランプの存在感も目立ちます。同時期には、フィエスタのひとつ上のクラスに位置した伝統のモデルであるエスコートが、こんな感じの吊り目テイストでフォーカスと名前を変えてフルモデルチェンジしています。フォードとしては、新しいフォーカスのイメージで、フィエスタも販売したいというところだったのでしょう。こちらのデザインはオーバルデザインに対して、ニューエッジデザインと呼ばれていました。

フィエスタ Mk.V(2002-2014)

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/v/pictures/oh781f/

2002年には13年振りに3回目のフルモデルチェンジを行い、フィエスタはMk.V(マーク5)を名乗るようになりました。顔は近代化されていたとはいえ、元は1989年生まれだったMk.IVに比べると、一気に若返った感があります。吊り目路線は継続されるも、少し穏やかな表情になりました。2005年には一度少変更が行われていますが、Mk.IVのときのような、別のモデルと見間違えるほどの変更ではなく、小規模なものに留められています。

フィエスタMk.Vは2008年まで生産されて次の世代にバトンタッチしたので、フィエスタとしては今のところ最も短命なモデルとなりましたが、一部の仕向地に向けては2014年まで生産が継続されました。またヨーロッパ以外の地域には、セダンなどのボディタイプも提供されています。またモデルライフの途中にスポーツモデルのフィエスタSTも追加されました。フォードのスポーツ部門、チームRSが手掛けたフィエスタSTは、バランスの取れた内容からホットハッチのベンチマーク的存在となりました。

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/v/pictures/y5a2k0/

こちらはブラジル向けのセダンバージョン。ヨーロッパでの販売終了を目前に控えた2007年に、生産継続を見据えてマイナーチェンジを受け、顔が変わっています。Mk.IV末期のような吊り目路線が復活、元はハッチバックなので、ちょっと強引さがあるリアデザインの処理が、なんだか愛らしいモデルです。

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/v/pictures/cgq12n/

2010年にはさらに手直しを受け、こんな顔立ちに。フォードは当時「キネティックデザイン」と呼ばれるデザインを、世界中のフォードに採用することにしていました。それにあわせての変更だったのですが、なかなか気合が入っており、取ってつけた感は少なくなりました。サイドモールも廃止されたので、全くのニューモデルと言われても、そんなに違和感はありませんね。

こういった手直しを続け、フィエスタMk.Vはブラジルでは2014年まで販売が継続されました。ヨーロッパでは短命だったフィエスタMk.Vですが、世界規模で見ると、Mk.I/IIやMk.III/IVに匹敵する長寿モデルとなったのです。

フィエスタ Mk.VI(2008-2012)

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/vi/pictures/258036/

南米向けにMk.Vを継続する一方で、ヨーロッパではフィエスタはMk.VI(マーク6)にフルモデルチェンジ。ボディ側面に大胆なプレスラインが入ったりと、2000年代後半のトレンドをしっかりと組み込んだモデルになりました。デザイン文法は、キネティックデザインです。

画像は3ドアモデルですが、5ドアモデルもしっかりと設定され、途中で4ドアセダンも追加設定されています。またスポーツモデルのSTも継続されました。

Mk.VIのポイントは、ヨーロッパのみならず世界のあらゆる場所で、大きく仕様を変えずに販売するグローバルカーとして開発されたところです。かつてはフォルクスワーゲンやオペルとヨーロッパで熾烈な戦いを繰り広げていたフィエスタでしたが、世界中に羽ばたいていったライバル同様に、フィエスタもまた、戦いの舞台を世界規模に移したのでした。果たして、フィエスタMk.VIは、ライバルたちを上回る勢いでのヒット作となったのです。

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/vi/pictures/235670/

こちらは中国向けの4ドアセダン仕様のMk.VI。中国向けのプレス写真ゆえか、金色のボディカラーが採用されていますが、クラスをこえた高級感や存在感がうかがえますね。

フィエスタ Mk.VII(2012-現在)

出典:http://en.wheelsage.org/ford/fiesta/vi/pictures/rxiqpc/

大好評のフィエスタMk.VIは、2012年にデザインを変更、Mk.VII(マーク7)として再登場しました。こちらはアストンマーティンを思わせるフロントグリルが印象的、フォードはこのデザインを、ニューグローバルランゲージと呼び、フォード車共通のアイコンとしています。

効率の良い3気筒ダウンサイジングターボエンジンを搭載するなど、燃費でも動力性能でも最新スペックとなったフィエスタは、満を持して2014年から日本にも再上陸。ライバルたちとの間で善戦することが期待されていました。ところがわずか2年後の2016年、フォードの日本撤退により、日本での輸入販売は僅か3年足らずで終了してしまうことが決定してしまったのです。

日本終売間近、最新フィエスタの今後は?

日本でのフィエスタのグレード構成

日本仕様のフィエスタは、フォードがエコブーストと呼ぶ排気量1.0Lの直列3気筒ターボエンジンに、ドイツゲトラグ製のツインクラッチトランスミッション(マニュアルトランスミッションをベースにした、高速変速が可能な自動変速機)との組み合わせで、モノグレードで投入されました。価格は229万円、フォードとしてはライバルに対して善戦できると踏んでいたようですが、実際には販売網の弱さも相まって、なかなか売れず、現場では大きく値引きして売るケースも少なくなかったようです。しかし値引き販売は、将来中古車として手放すときに、リセールの悪さに影響します。

例えば10年以上、長い期間フィエスタを乗り潰すつもりならば、リセールの良し悪しは誤差範囲になってくるのですが、13年以上の長期保有で税金が上がるなど、同じ自動車に長く乗り続けるには不利な日本では、なかなか厳しい条件であったことは否めません。

最後の限定車「Appearance(アピアランス)」

フォードの撤退報道のあと、フィエスタにはアピアランスと呼ばれる限定車が追加投入されました。フロントグリルの色などを変更した以外は、通常モデルとはほとんど同じという限定車でしたが、なかなか精悍なイメージで、フィエスタの魅力を引き立たせています。本当はこれを販売のカンフル剤としたかったのかもしれませんが、恐らくフィエスタにとっては最後の限定車になってしまいそうです。

プロの評価も抜群、アドレナリンが出る小型車だったフィエスタ

自動車評論家の清水和夫はフィエスタについて、自前のコンテンツで日本の代表的コンパクトモデルであるトヨタ ヴィッツとの比較テストを行いました。大ヒットモデルであるヴィッツも優れたコンパクトカーながら、フィエスタのキレのある加速や減速、高速安定性や急ハンドル時の挙動はクラスをこえた水準で、アドレナリンが出ると絶賛していました。

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その気になれば並行輸入という方法も

フォード・ジャパンによる日本での販売が終了してしまうフィエスタですが、海外での生産は続けられます。ですから、個人輸入や並行輸入業者により、日本に輸入する道は残されています。たとえば日本では最後まで販売されなかったパワフルなスポーツモデルである、フィエスタSTなどを選んで、街中で注目を集めてみると、人知れぬ満足感が味わえるかもしれません。

噂の3気筒エコブーストエンジン、フィエスタってそんなに燃費が良いの?

ひととおり特徴に触れたところで、実際に所有した場合に気になる燃費についてもお伝えしておきましょう。日本仕様のフィエスタのJC08モードは、ずばり17.7km/L!

…あれれ、そんなに良くないぞって思われる方もいるかもしれません。ただしこのフィエスタ、JC08モードのためにチューニングを最適化して、カタログ燃費を稼ごうなどということはやっていないようです。ですから実際の燃費はカタログ値とそんなに乖離しないようです。高速道路や、多少の上り下りのあるワインディングでもほぼカタログ燃費同等の数字を出し、一方で市街地だと15km/L前後に落ちるという感じ。

この実燃費の出方、実はスズキ スイフトの実燃費にかなり近似しています。ハイブリッドに頼らずに重量1トン前後の小型車で、化石燃料だけで効率を煮詰めていくと、物理法則的にこんな数字に収束していくのでしょう。しかもエンジンが100馬力とスイフトよりもパワフルなことを考えれば、これは十分に良いと言い切って良い数字です。ただしフィエスタはハイオク指定、燃料代がちょっと割高なことは頭の片隅に置いておきましょう。

知らなければ損なフィエスタのお買い得中古車情報

ここまで読んでもらって、フィエスタは良いクルマだなと感じられた方もいるかもしれません。でもちょっとライバルに比べても高くないかな…と思っている方には、中古車がおすすめ。

実はフィエスタ、人気がないためにディーラーが自社登録して、新車に近いような条件の新古車を本体150万円台で販売しているのを見かけるのです。色などは選べませんが、これはかなりお買い得。輸入車のライバルはもちろん、国産車と比較しても勝負になりそうな価格帯です。

なお、日本で現在流通しているフィエスタはほとんどがMk.VIIですが、たまに並行輸入されたMk.VI以前の個体も出てきます。こちらは相場はなく、仕様や走行距離によっては二束三文のこともあれば、かなりの高値でプレミア価格の場合も。中古車選びとしては、ちょっと上級者向けの車種になってきます。

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まとめ

40年間続く歴代フィエスタと最新モデルを見ると、本当に真面目に作られてきたコンパクトカーなんだなぁという印象は、誰しも抱かれるのではないでしょうか。そして最新のフィエスタMk.VIIは1年間あたり、世界規模では70万台以上をコンスタントに売り上げる大ヒット作になっています。

しかしブランドイメージを重んじる日本では、単純に良いだけでは売れないのも事実。フォードの撤退に、日本の自動車文化について思いを馳せてしまった自動車好きも少なくないのではないでしょうか。とはいえフォードは2016年末までは販売を行っています。それにフィエスタが消えてしまうわけではありません。

フィエスタがずっと気になっていた方、まだチャンスはありますよ!