【ボルボ850】ツーリングカー選手権を席巻したステーションワゴン

1990年代は空前のツーリングカーレースブームでした。モータースポーツ閉鎖国日本でも、JTCC(全日本ツーリングカー選手権)が開催されていました。市販車がベースでなければいけなかったので、このレースに出走させるためにハイスペックな市販車が投入されていました。そんな時代の波に乗ってレースでも市場でも大成功したクルマの代表格がこのボルボ850と言えるでしょう。

ボルボ850というクルマ

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%9C%E3%83%BB850

ボルボ850は1992年に発売されたミドルセダンです。それまでかたくなにまもりとおしたFRレイアウトに決別し、FFレイアウトを採用したモデルです。直列5気筒エンジンを横置きで搭載しました。このエンジンは、ボルボ960に採用された直列6気筒エンジン(開発にはポルシェが加わっていたエンジンです)から1気筒を削った構造です。慣例にとらわれることなくゼロから新設計された850は、“従来のボルボ車との共通点は無い”と言わしめるほどの新設計車両で、それまでの“頑丈意外に取り柄なし”と言われ続けたボルボ車のイメージを覆すモデルでした。

スペック

ボディタイプ:セダン
ドア数:4ドア
乗員定員:5名
型式:E-8B5254
全長×全幅×全高:4,660×1,760×1,415mm
ホイールベース:2,665mm
トレッド前/後:1,520/1,465mm
車両重量:1,440kg
エンジン型式:B5254
最高出力:170ps(125kW)/6,200rpm
最大トルク:22.4kg・m(219.7N・m)/3,300rpm
種類:水冷直列5気筒DOHC20バルブ
総排気量:2,434cc
圧縮比:10.5
過給機:なし
燃料供給装置:ボッシュ LHジェトロニック
燃料タンク容量:73L
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
10モード/10・15モード燃費:8.4km/L
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前):スタビライザー付マクファーソンストラット式
サスペンション形式(後):スタビライザー付デルタ・リンク式
ブレーキ形式(前):ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後):ディスク
タイヤサイズ:195/60R15
最小回転半径:5.2m
駆動方式:FF
トランスミッション:4速A/T

販売価格:5,400,000円

エステート(ステーションワゴン)の登場

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%9C%E3%83%BB850

翌1993年にステーションワゴンモデル“850エステート”が追加されて、セダン以上に人気者になりました。それまでもボルボ車にワゴンモデルはありましたが、現在でも通用する“VOLVO=スポーティワゴン”というイメージを作り出したのはこの850だったのだと思います。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%9C%E3%83%BB850

このルーフまで届く縦に長いテールライトデザインが人気を博し、この時代のステーションワゴン界では1大ブームになりました。日本市場でも1990年代はステーションワゴンブームが巻き起こり、スバル レガシィや日産 ステージアなど、日本の自動車メーカーのステーションワゴンに大きな影響を与えたと言えます。

スペック(セダンとの差異のみ)

ボディタイプ:ワゴン
ドア数:5ドア
乗員定員:5名
型式:E-8B5254W
全長×全幅×全高:4,710×1,760×1,440mm
車両重量:1,480kg
サスペンション形式(後):デルタリンク式

販売価格:5,200,000円

追加バリエーション

1992年の春にセダンの最上級グレード“GLT”から輸入が始まった850ですが、次第にバリエーションが増えていきます。
1992年秋に標準グレードの“GLE”が追加されました。
1993年1月に、廉価版となる“GLEタイプS”が追加されています。
1993年10月に、待望のエステート(ステーションワゴン)が追加されました。同時にターボモデルも追加され、タイプSが“GL”に改められました。
1995年9月、“GL”グレードが“S2.5”に改められました。
1996年3月に、待望の“R”モデルが登場しました。
1996年7月、スポーツモデル“T-5”が追加されました。
1997年1月、ビッグマイナーチェンジを受けて、セダンは“S70”、エステートは“V70”へと車名を変更しました。850の在庫処分策として、本革張りシート、ウッドステアリングホイール、レッドウッドパネル、ウッドシフトノブ、助手席パワーシート、CDプレイヤー内蔵オーディオ+6連奏CDチェンジャー、16インチアルミホイールなどの豪華装備を持つ“クラシック”と“クラシックT”として販売されました。

エンジンバリエーション

エンジンバリエーションは全て直列5気筒です。日本市場に投入された順に紹介します。
●直列5気筒DOHC20バルブ2.5L 170psエンジン(GLT/2.5 20V)
●直列5気筒DOHC10バルブ2.5L 140psエンジン(GL/GLE/S2.5/2.5)
●直列5気筒DOHC20バルブ2.3L 225psターボチャージャー付エンジン(ターボ/T-5)
●直列5気筒DOHC20バルブ2.3L 240psターボチャージャー付エンジン(T-5R/R)
●直列5気筒DOHC20バルブ2.5L 193pspsターボチャージャー付エンジン(2.5T)

T-5R

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Volvo_850

1995年、ポルシェの助言を受けて開発されたハイパフォーマンスモデル“850T-5R”です。開発段階ではは“850プラス5”と呼ばれていたようです。 850ターボをベースに、B5234T3エンジンに特別仕様のECUを用意し、ターボチャージャーのブースト圧を2psi(0.1bar)追加して18psアップの243psまで引き上げました。4速オートマチックまたは5速マニュアルトランスミッションを組み合わせています。また、専用仕様としてリップスポイラーとフロントバンパー、リアスポイラー、サイドスカート、アルミニウムのサイドシルプレート、アルカンターラのシート、ウォールナット木目のアクセントと黒のインテリアが与えられました。 ボディカラーはクリームイエローとブラックのみでどちらも黒のインテリアです。T-5Rには、トランク上の“850”のエンブレムの左に“モータースポーツバッジ”と呼ばれる追加エンブレムが与えられました。 チタングレーの5スポークホイールもT-5Rの専用品です。“T-5R”は、1995年のみの限定販売でした。

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Volvo_850

T-5Rは、エステートも人気でした。 その箱型の控えめな外観にもかかわらずCD値は0.29という数値で、0〜100km/h加速は5.8秒を誇ります。 最高速度は250km/hに電子的に制限されていました。

850R

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Volvo_850

大成功を収めた限定車“T-5R”の後継車として新しい高性能ボルボ850を開発しました。ボルボはT-5Rに直接の後継車があってはならないことを決めていましたが、ボルボのスポーツイメージを揺るがぬものにするためには新しい高性能モデルの開発が必須だったのです。 この新たなスポーツモデルは、ボルボ“850R”と名付けられ、セダンとステーションワゴンが用意されました。ターボチャージャー装備のステーションワゴンは、0〜100km/hを6.2秒で加速し、最高速度は254km/hに達します。限定生産だったT-5Rとは異なり、850Rの生産は1996年から850のモデル末期となる1997年まで続けられました。ボディカラーはブライトレッド、ブラックストーン、ダークグレーパール、ダークオリーブパール、ターコイズパールとポーラーホワイトでした。残念ながらT-5Rで好評だったクリームイエローの採用は見送られました。インテリアは、“スポーツ”のバケットシートをより進化させたフロントシート(レザーボルスターとアルカンターラセンター)、アルカンターラドアカード、2トーンレザーステアリングホイール、ステンレスの上に“850”と記されたキックプレートには“R”が含まれていました。1996年の期間限定で、マニュアルトランスミッションの850Rにビスカスカップリングとトルセンの両方の特徴をもつ“M59”と呼ばれるLSDを用意しました。 M59装着車は、より大きなTD04HL-16Tターボ、再設計されたターボマニホールド&インタークーラー、ヘビーデューティークラッチ、ボッシュモトロニック4.4システムを持つECUと2.3リッター5気筒エンジンを搭載しました。

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Volvo_850

エステートモデルです。

ツーリングカー選手権での活躍

1990年代はツーリングカーの時代だったのかもしれません。1992年シーズンにF-1からホンダが去り、1994年にはアイルトンセナを事故で亡くし、F-1はその輝きを失っていました。特に日本では、“ホンダ”と“アイルトンセナ”がF-1人気を牽引していたような状況でしたから、失意の反動も大きかったのでしょう。時を同じくして、欧州から持ち込まれた“ツーリングカーレース”の波が広がります。日本で広く認知されはじめたアルファロメオや、メルセデス、オペルなどの乗用車がレースを繰り広げるのです。1994年には日本でもJTCCが開始され、トヨタ、日産、ホンダ、マツダ、BMW、ボクスホール(オペルのイギリス名)が参戦しました。

850以前から参戦していたボルボ

ボルボのツーリングカーレースへの挑戦は850以前からでした。にわかに信じがたい話ですが、あのボルボ240ターボで暴れていたのです。1985年のDTM(ドイツツーリングカー選手権)ではチャンピオンに輝いています。

いかがですか。およそ速そうに見えない(失礼!)のですが、この240ターボがツーリングカーレースの最高峰であるDTMで優勝したんです。“フライングブリック(空飛ぶレンガ)”という愛称までいただいていたのですから驚きですね。

850での参戦

出典:http://www.pistonheads.com/gassing/topic.asp?t=1267574

英国で開催されているBTCC(イギリスツーリングカー選手権)に、ボルボはトムウォーキンショーやプロドライブの運営によって参戦していました。ライバルは、ルノー、フォード、トヨタ、ホンダ、日産など多くのメーカーです。毎回、バンパートゥバンパーやサイドバイサイドといった手に汗握る戦いが繰り広げられ、ちょっと当たるのは日常茶飯事のこと自分で道を切り開きトップ競いをする迫力あるレースなのです。ボルボはこのレースにエステート(ステーションワゴン)ボディの850で参戦しました。ボディ剛性の面で不利なエステートではコーナリング時のヨレなど不利だと考えられますが、当時はレギュレーションでリアスポイラーの取り付けを禁止されていたため、エステートのフラットなルーフ形状が有利だと説明していました。結果はと言えば、優勝するには至りませんでしたが、何度か入賞を果たし周囲の予想を裏切ることになったのです。翌年からはスポイラーの使用が可能になったのでセダンにスイッチしましたが、ライバル達に比べると一回り大きな850のボディは、なんとも不利な四角いものです。240時台と同様に“見た目の速さなんていらないぜ”と言わんばかりの大活躍です。総合優勝こそなかったものの何度もレースを沸かせポイントを稼いでいました。

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Tom_Walkinshaw_Racing

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ボルボのレースの歴史を語る動画です。

850を手に入れたい!

1992年に登場し、1997年に生産を終了したボルボ850です。最終モデルでも20年経過していますから、維持するのはたいへんかもしれませんね。さらに、“T-5R”は1995年式のみですからさらに経過年数がかさんでしまいます。

他にも不安材料が

加えて、ボルボの歩みも不安を大きくしています。1999年、ボルボは深刻な経営不振に陥り、乗用車部門を売却しています。ボルボって乗用車だけ野メーカーじゃないんです。どちらかと言えば乗用車部門はおまけ的存在で、トラック・バス・建設機械・軍用ジェットエンジンなどがメインの会社です。これを守るために乗用車部門を切り離したのです。買い受けたのはフォードでした。フォード傘下で発足したのが現在にもつながる“ボルボ・カーズ”です。さらに、2010年にはフォード傘下から中国の吉利汽車の親会社の浙江吉利控股集団へ売り渡されています。
フォード傘下で再編成された“ボルボ・カーズ”ですが、それ以前のボルボ車のデータや部品在庫などをどこまで引き継いでいるのかがわかりません。もしかしたら手厚い対応をしてくれるのかもしれませんが、往々にして“それは自社の製品ではない”と足蹴にされてしまうことが多いのです。さらに現在は中国資本下ですから、かつてボルボがつくったクルマとは言えどこまで面倒をみてくれるのか不安です。

トラブルは? 故障しない?

私の知る限り、輸入車の中ではボルボは故障が少ない部類のクルマです。ただ、誤解して欲しくないのは、定期交換部品は存在します。ですから、“ガソリンを入れれば走る”という感覚の方にはオススメできません。もっとも、これは国産車でも同じ事で、エンジンオイルをはじめ最低限の定期交換部品はありますよね。乱暴な言い方をすれば、輸入車は国産車に比べて定期交換部品の“定期”が短い傾向にあります。世界で最もクルマに酷な状況と言われる日本の気候風土と交通事情を熟知して、最大限それに配慮してつくられたクルマとそうでないクルマでは、なにがしかの差があってしかりではないでしょうか。

10万キロ~15万キロで定期交換部を要するパーツ

オーナーが口を揃えて言うのは“エアコンのエバポレーター”です。そもそも北欧のクルマです。1年を通してエアコン(クーラー)を使う機会がどれだけあるでしょう。欧州諸国への輸出を加味しても、日本ほどの酷暑は想定していないかもしれません。ましてや多湿な日本では、エバポレーターはとても厳しい状況におかれます。10万キロ働いてくれたなら“お疲れ様”と言ってあげましょう。
次によく聞くのが“フューエルポンプ(燃料ポンプ)”です。ガソリンタンクからエンジンへガソリンを供給するポンプです。これも12、3万キロでダメになるケースが多いようです。ただ、これにはちょっと異論があって、この頃のクルマのほとんどが“フューエルフィルタ(燃料フィルタ)”がポンプと別に付いています。ガソリンに混ざっているゴミを取り除くためのフィルターです。このフィルターを交換するという意識が無い方が多いのですが(メカニックの中にも)、ゴミを濾し取るフィルターですから、フィルター内にゴミが溜まっていきます。やがてガソリンの流れを阻害し、ポンプの負担になってしまうんです。ですからこのフィルターをまめに交換することで、ポンプの寿命をグッと伸ばすことができます。フューエルフィルターはそんなに高額な部品ではありません。2万キロごとくらいに交換してあげれば、ポンプの負担にならないはずです。
最後にラジエターです。これも高温多湿な日本の夏が原因と言えます。祖国のように涼しくありませんから、“よくがんばった”と言ってあげて下さい。

ネット時代の利点を活かし

1997年にモデルチェンジしたとは言え、C70・V70は実質850のマイナーチェンジ版ですから、共通部品が多いんです。70系も含めればまだまだオーナーの数も多いですし、海外にまで視野を広げれば調達ルートも含めて情報収集は可能です。

中古車探し

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パーツの入手

純正部品はディーラーさんで手配してくれるかも知れませんが、純正相当の社外パーツはのほうがお値打ちに入手できます。カスタムパーツも含めて入手先を探しておくと、いざというときにあわてずにすみます。

株式会社オートウェアーのボルボ 850用パーツ紹介ページです。LEDテール、リング付ヘッドライトなどのドレスアップパーツから各種補修部品まで幅広く取り扱っております。

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最後にまとめ

いかがでしたか。ボルボ=スポーティなステーションワゴンを決定づけた850をご紹介しました。BTCCでの活躍は本当に心躍りましたが、“エステートでやるの?”ってみんなが思っていました。レースでの活躍は、素性の良さが反映されているはずです。ちょっと古い部類のクルマですが、本家ボルボにとっては集大成のようなモデルです。ぜひご堪能ください。