【フォルクスワーゲン パサート】ゴージャスさを加え進化し続ける中堅セダン&ワゴン

実に、オリジナルモデルが1973年登場というフォルクスワーゲン パサートは、同社のラインアップ上でも長いこと中間層を支える看板車種であったと言って良いでしょう。最近発覚した例のスキャンダルで業績の足元が揺らいでいる同社です。とは言えその直前には、ヨーロッパで2015年のカーオブザイヤーに選ばれたのがパサートでありますから、この最新型も実は結構良いクルマらしいんです。

パサート:セダンとワゴンで世に仕え早や30年越え

当初はエンジン縦置きのFF

ジョルジェット・ジウジアーロが外観をデザインし、1973年に市場投入された初代のフォルクスワーゲン パサートは、技術的にはアウディ80セダンのコンポーネントを流用した車です。したがって、2ドアおよび4ドアのセダンとして出発しました。そしてこの初代、さらに2代目となるパサートでもっとも興味深いポイントは、アウディから継承した縦置きのエンジンレイアウトだったかもしれません。
初代のパサートにおいて、標準からやや外れたレイアウト位置から前輪を駆動したそのエンジンのバリエーションは、ガソリン燃料用には直列4気筒OHCで1.3Lと1.5Lのものが採用されています。また1.5Lは後に1.6Lまで拡大されていました。加えて、後に1.5Lのディーゼルがゴルフから換装されたりもしています。
さらに、後の1981年に発売された2代目パサートでも、アウディ80と共用の『B2』という型名のプラットフォームを用いた設計を継承しました。直列5気筒のエンジンが加わったのも、この頃からだそうです。この時のモデルチェンジでは、古い見栄えになっていた丸目のヘッドライトを一気に四角い形状に変更したり、ハッチバックも全体的に曲線で包む印象するなど外観を発展させています。その見栄えは、一段とモダンなクルマに進化したと言えるのが、この時のサートでした。

4WD登場、セダン路線を一時分離

1981年当時このクラスの車体と言うと、リアゲートがあるハッチバック(もしくはワゴン)が主流だったということもあり、パサートは一旦セダン路線を切り離します。そして路線は、別の車種フォルクスワーゲン サンタナとして販売することにしました。とは言え、この車名は1985年のマイナーチェンジを期に、ヨーロッパ市場からは姿を消しています。(諸外国では継続販売)
一方、ワゴン版のバリアントには、1984年に、四輪駆動の『シンクロ』というモデルが追加されています。

横置きFF採用の3代目パサート

アウディとの関連を取りやめ、フォルクスワーゲン パサートが標準的な横置きエンジンレイアウトのFF車となったのが、1988年に登場したモデルからです。この『B3』と呼ばれるプラットフォームは、基本設計をゴルフ用の『Aプラットフォーム』から利用していましたが、全てのサイズを拡大し中型サルーンのパサート用に仕立てたものだったそうです。また、エンジンが横置きになりましたが、このプラットフォームでは4WDの機構も組み入れる事が可能になっていました。ボディタイプの構成では、4ドアのセダンおよび5ドアのワゴン(バリアント)にしぼり、旧来のハッチバックは廃止しています。
この『B3』プラットフォームは、1993年に『B4』と型番を更新され、大掛かりなリフレッシュを受けました。構造面では同一ながら、その材質なども見直され、車としての外観も細部に手が加えられ一層モダンなものへフェイスリフトが加えられたのです。
このプラットフォームに搭載されたエンジンで面白いのは、6気筒の全長を短縮するため挟角のV型に間隔を詰めてシリンダーを配置した、『VR6』というタイプ(2.8L)が投入されたことです。加えて、TDI(Turbocharged Direct Injection)と呼称される、新しいディーゼルが新たに加わってもいます。

アウディA4との共通パーツが復活した5代目パサート

フォルクスワーゲンが『B5』と呼ぶプラットフォームは、1996年のパサートに採用されたもので、これはアウディの『PL45』という車台と同じ物です。従ってこの時、エンジンのマウントも再び縦置きが復活しています。ただ、このレイアウトではエンジンオイルの容積が圧迫され、しっかりとメンテナンスを行わない場合、オイルに混じるスラッジがトラブルを引き起こすことも多かったと言います。
このモデルの後期には、同じ基本設計ながら車体に大幅な手直しを加えるという先代と同様の手法が用いられ、そのモデルは『B5.5』と呼ばれたりもするようです。この時は、ややもすると家庭的な雰囲気だったモデル期前半のデザインを、ゴージャス感を強める方向のグレードアップが図られています。またエンジンには、挟角のV型4気筒を二つ並列した『W8』という4.0Lーのタイプが加わり、4WD車両に搭載されました。
この代から、『4MOTION』に呼び名を変更した4WDシステムが登場したのも、この代のパサートです。

6代目パサート、横置きにも対応できる4WD、『4MOTION』

2005年に『B6』というプラットフォームを用いるフォルクスワーゲン パサートが登場し、後の2010のマイナーチェンジ期に『B7』と呼称を変更しています。とは言え、どちらもゴルフと基本設計を同じくする、エンジン横置きのFF車両となり、ふたたびアウディとの関連が消えたのがこの時のモデルです。
そして、すでに登場している4WDシステム『4MOTION』では、横置きのエンジンに対応する駆動分配方式が用意されていました。フォルクスワーゲンのこの技術は、縦置きエンジンの4WD車両にセンターディファレンシャルギアとしてトルセンLSDを使い、横置きの場合はハルデックストラクション社が製造する油圧制御式の多板クラッチで前後の駆動力配分を行うという思想のシステムです。

最新パサートのアピールポイントとは?

とにもかくにも、2015年にヨーロッパで発売された自動車の中で最も高い評価を受けたたのが、このフォルクスワーゲン パサートな訳です。つまりは、本質的にかなり魅力的な一台なのだと思います。以前のモデルにもましてラグジュアリー感が光るボディーを得た車体は、ファミリーセダンより少し上の車格も感じさせますが、そのパサートに盛り込まれた装備・技術とはどんなものなのでしょう?

シャーシと動力系

2015年、『MQB』と呼ばれる進んだコンセプトを導入して開発・市場投入されたのが、現行の最新型フォルクスワーゲン パサートです。このコンセプトに基づき設計されたプラットフォーム群は相互にパーツを共有でき、その自由度はエンジンのタイプや形式、ハイブリッドかEVかによっても影響を受けないというものだそうです。それは結果的に、自動車製造の効率を飛躍的に高め、車体の重量も削減するなどの効果が大いに期待される方式なのです。そのシャーシには、前輪にマクファーソンストラット式、後輪に4リンクと呼ばれる独立懸架が組み合わされています。
現在、日本国内で正規販売されているパサート(セダン&ワゴン)は、全て1.4Lの直列4気筒DOHCインタークーラーターボである、ダウンサイズエンジン(TSI)が与えられています。その動力源は、小排気量ながら110kwの出力を5,000rpmから6,000rpmの間で、250Nmのトルクを1,500rpmから3,500rpmの間で発揮します。燃料供給は気筒内直接噴射、そして可変バルブタイミング機構も持っています。さらに加えて、低出力時に2つのシリンダを休止させる『アクティブシリンダーマネジメント(ACT)』などを組み込まれた、環境意識の高いエンジンとなっています。また、走行中にドライバーがアクセルから足を離すとエンジンとトランスミッション間を一時的に切り離し、慣性走行状態を作り出す『コースティング走行モード』もあります。エンジンからの動力を高効率のデュアルクラッチ式7速DSGで伝達するなど、数々の燃費向上の工夫が盛り込まれているのが、この新しいパサートです。そのため、全幅で1,830mmという5ナンバー枠を超える車体でありながら、20.4km/Lという納得のゆく燃費性能を発揮しています。

多彩なセーフティー機能:ブレーキ系

最近では積極的に自動車事故を防ぐ技術が普及し、アメリカでは自動ブレーキの装備を義務化する動きもあるそうです。そしてパサートにも当然、衝突による被害を回避するためのシステム、『プリクラッシュブレーキシステム』が備わっています。フォルクスワーゲンのこの技術は、時速5km以上の全速度域で走行中はレーダーが前方を監視し、先行車両との距離が近くなりすぎた場合それを音やランプの警告でドライバーへ知らせます。また、さらに危険が増した場合はステアリングを振動させることで注意を喚起、それでもドライバーが適切に反応しない時は自動ブレーキが作動して車体を減速させる機能まであります。時速45km以下であれば、レーダーに加え前方のカメラが作動し歩行者も検知します。(あくまでも、補助的な機能です)
それらに加えて、追突された後などに対向車線へはじき出された場合エアバッグの衝撃センサーによりそれを感知し、自動ブレーキを作動させ2次的な正面衝突の被害を緩和する『ポストコリジョンブレーキシステム』というものも装備されています。

多彩なセーフティー機能:速度制御系

最新型パサートには、走行中のドライバーエイド機能もいくつか備わっています。その一つが、『アダプティブクルーズコントロール(ACC)』。これは、前を走行する車両との距離が一定となるように、設定された速度を上限とする範囲で自動的に車速を調整する機能です。この装置は、渋滞など完全に停止するまで速度が落ちるシチュエーションでも使うことができるのだそうです。
もう1つの車速制御に『渋滞時追従支援システム』があります。これは時速60km以下の走行時、先述の車間距離維持機能が働くとともに、先行車両と同じレーンを保つようステアリングも自動で操作されるという機能です。またこれに関連した装置として、前方のカメラが走行中(時速65km以上)に路上の車線をとらえ、自動的にその内側に留まるよう制御する『レーンキープアシストシステム』というのもあります。
さらに加えて、バックで出庫する際には後方をレーダーが監視します。この時、死角から近づくものを検出すると警報を出すとともに場合によれば自動ブレーキをかけるという、『リヤトラフィックアラート』もパサートの安心性能を高めてくれる装備となっています。

多彩なセーフティー機能:乗員保護系

パサートの『プロアクティブ・オキュパント・プロテクション』は、例えば急ブレーキがかけられたり限度を超えるアンダーステア/オーバーステアが起きた場合、事故を予見して乗員の安全を最大限確保するシステムです。この装置が作動すると、自動的にシートベルトのテンションを高め窓を閉めるなどして、エアバッグの効果を損なわないようにします。そのエアバッグは、前2座席のフロントエアバッグ&ニーエアバッグと前後の座席のサイドエアバッグに、サイドウィンドウを覆うカーテンエアバッグの全9ポイントで乗員を事故のインパクトから守ります。
さらに、運転者のステアリング操作から疲労度合を推定して音や表示によって警報を出す、『ドライバー疲労検知システム』も乗員の安全確保につながる装備と言えるでしょう。

流麗なデザインのセダン

日本向け最新フォルクスワーゲン パサートは、3ボックスでありながら、その傾斜したリア部分では流れる曲線を表現しています。その容姿からは、クーペにも近い美しさをアピールしていると言ってよいでしょう。そのクルマ、現状では以下の4グレードが販売されています。

基本装備の、Passat TSI Trendline

先述の通り基本を超えた安全装備が全グレードに標準として備わっているので、基本価格が3,290,000円のこのグレードを選んでも、さほど寂しさは感じないと思えるのが最新パサートの良い点です。一応、このタイプで選べない代表的な装備を上げると、リヤビューカメラ / LEDヘッドライト / コーナリングライト / 3ゾーンフルオートエアコンディショナー / スマートエントリー&スタートシステム / 12V電源ソケット / 運転席の座面長調整式シート、と言ったところだと思います。とは言うものの、考えようによってはなくても困らない装備です。
そんな中意外に最大の難点だと言いたくなるのは、パドルシフトがオプションでも選択出来ないことかもしれません。折角ティプトロニックのセミオートマが乗っているのに、変速動作をオートマチックに任せるしかないのは、運転好きにとっては物足りないでしょう。
まぁ標準のホイールが16インチと言うことでなのか、このグレードだけスペアタイヤがフルサイズとなっているのは、ありがたいと言えばそう言える部分でしょう。

意外とお買い得な、Passat TSI Comfortline

基本モデルより少し価格が上がるこのグレードになると、オプションでならLEDヘッドライトやダイナミックコーナリングライト、さらにはリヤビューカメラも選べるようになります。標準で12V電源ソケット / 3ゾーンフルオートエアコンディショナー / スマートエントリー&スタート、さらにはパドルシフトも付いてきます。そう考えれば、上のベーシックグレードから30万円多めに詰んで3,590,000円を出費しても、むしろ納得感が高いかもしれません。

充分装備の、Passat TSI Highline

4,140,000円の価格になるのが、この『Highline』グレードです。この車体になると、運転席シートが電動8Way(前後、高さ、角度、リクライニング)調整の機能が付き、さらにヒーターやマッサージ機能までが標準で備わってきます。そういった面でも、ラグジュアリー感が高まる演出となっているのが、このグレードだと言えます。また、シートベンチレーションが選べるのは、4グレード中、これだけでもあります。
さらに、純正のインフォテイメントシステム『Discover Pro』が標準(Comfortlineではオプション)となるのもこのグレードからです。そのシステムではまず、FM-VICS内蔵のSSDナビゲーションシステムが使えるようになります。加えて、やDVD/CDプレーヤーも装備し、MP3とWMAのファイルフォーマットの再生が可能となります。さらに、地デジTVの視聴、そしてもちろんBluetooth経由でのスマートフォン通話までも行えるのがこのオプションです。
下の2グレードでは付けられない、リアウィンドウの電動サンブラインド、フルカラーマルチファンクションインジケーターなども標準となっています。

最高装備は、Passat TSI R-Line

印象としては文句のない装備を持つ『Highline』に、さらなるプレミアム感を付け加えるのが、この最上級グレード『R-Line』と言うことになります。とは言え、このフォルクスワーゲン パサートのグレード構成はきっちりした平等主義の下に成り立っている感があり、他のグレードと比べて格別に排他的な装備を持っている訳でもないのがこの最上級グレードとも言えます。
このタイプを特別に印象付けるのは他のグレードでは選べない外装品の数々で、R-Lineエンブレムをはじめとしフロントグリルや前後のバンパー、そしてサイドスカートに特製のものが付けられます。また、排気管もツインエキゾーストフィニッシャーとなります。このオプションを選ぶと、タイヤはグレード中で最も幅広な235/40R19(アルミホイール&10ダブルスポーク)となり、この点でも見た目のグラマラス感をアピールします。
内装では、3本スポークのマルチファンクションステアリングホイールは、オーディオコントロール付になっていたり、前席二つは、ナパレザーの専用スポーツシートが与えられて、ゴージャス&スポーティーになっているのが、この『R-Line』でしょう

ユーティリティーはワゴンで

伝統的にパサートとの看板を担うもう一つのタイプが、『バリアント(Variant)』と呼ばれるこのワゴンモデルです。とは言うものの、完全な平等主義を貫いた最新パサートの車種構成は、このワゴンにおいてもグレード間でさほどの差別化を行っていません。もっと言えば、セダンとの比較をしてもその装備に大きな差が見つかることもありません。
強いて違いを上げるとすれば、セダンにあった電動サンブラインドが選べないことや、R-Line専用エクステリアにリアスポイラーが追加設定されることなどとなります。とは言ってもやはり、装備品によってセダンとワゴンの良否を決めるのは難しそうです。
ワゴンですから、通常時で650Lの容積を持ちリアシートを倒せば最大1,780Lになる荷台には、荷物や遊び道具を満載にして遊びに出かける役割があります。そんな時に5人の乗員をフル乗車させて走ったら、セダンとまったく共通のエンジンが非力に感じられないかなぁ、と若干の危惧を抱きもします。ですが、高効率の7速トランスミッションがそれもカバーしてくれそうです。
そのワゴンスタイルは日本車にはなさそうなワイドで伸びのあるもので、車重は1,510kg以上にもなりますが、JC08モードの燃費性能でも20.4km/Lを達成しているのはさすがだと言うべきでしょう。

アフターケア

フォルクスワーゲンは、全車種に『フォルクスワーゲン プロフェッショナルケア』という保証を無償で付帯しています。これは、新車購入から3年間、点検および部品交換の工賃が無料になるというプログラム。これに『フォルクスワーゲン ニューサービスプラス』という有償の補償をつけると、部品代金も3年間カバーされるようになるそうです。
フォルクスワーゲンの公式サイトでは、車検も含めた点検には正規ディーラーが持つ特別な設備を使用するのが好ましい、と謳っています。現代は自動車の内部が複雑な電子機器と化しているので、その情報全てをチェックするには、特別なテスターが必要なのだとか。また、ティプトロニックのフルード交換なども専門技術が必要となるそうですから、パサートに限らずフォルクスワーゲン車両をお求めの際はしっかり確認された方が良いかもしれません。

まとめ

かなりラグジュアリー感を高めて生まれた、最新型のフォルクスワーゲン パサート。そのスタイリングには、いわゆる色気のようなものは少ないかもしれません。そうは言っても、特にワゴンの見せるなかなか伸びやかなボディーラインは、日本の道路を走らせた時それなり十分な外車オーラを発してくれる一台だろうと思います。
バリアントでも平成32年度燃費基準+10%の燃費性能を発揮して、自動車取得税で8割、重量税で7.5割の減税対象にもなっているのもうれしいですよね。そんな風に、環境性能の面でも現代の日本の要求レベルを満たすのは、さすがドイツ=フォルクスワーゲンと言うべきでしょう。その技術が十分活かされた一台、それが最新型のパサートだ、と言えそうです。

【基本情報】
名称:フォルクスワーゲン パサート(Passat TSI Highline)
型式:DBA‐3CCZE
エンジン排気量:1,394cc
エンジン出力:110kw(150ps)/5,000‐6,000rpm
エンジントルク:250Nm(25.5kgm)/1,500‐3,500rpm
全長:4,785mm
全幅:1,830mm
全高:1,470mm
重量:1,460kg
ホールベース:2,790mm
サスペンション:マクファーソンストラット式(前)/ 4リンク(後)

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