【ホンダ ロゴ】名車シティの後継というプレッシャーを背負った真面目すぎる三代目!

「シティ」に続くホンダのコンパクトセグメントを受け持ったのが「ロゴ」です。1996年に市場投入されたわけですが、時は「バブル崩壊」といわれた時代に入っていました。その中で質実剛健かつダウンサイジングを求められた、いわば試練の中で世に問われたといってもいいでしょう。ただ、現在の「ダウンサイジング・コンセプト」にも似た工夫が施されていて、ちょっと興味深い面もあるクルマとなったのも事実です。(飯嶋洋治)

シティの後継という位置づけ。スタイリングとしては初代のハイト系に戻る。

さまざまな制約の中で質実剛健を求められた。

photo by honda

1996年10月、人気車種「シティ」の後継という重要な位置づけで登場したのが「ホンダ ロゴ」でした。シティは初代はトールボーイと呼ばれ大人気を博しました。しかし、2代目になると一転してコンパクトな中で徹底してワイドアンドローなスタイリングとしました。その時点で名前が消えたことからもわかるように2代目シティは販売面ではそれほど振るいませんでした。ただ、肩を持つわけではありませんが、その走行性能はスポーツカーと呼ばれてもいいもので、特にジムカーナやダートトライアルという参加型のモータースポーツでは、車両型式から「GA2(ジーエーツー)」と呼ばれ、他の同クラスのクルマを寄せ付けない速さを見せ大活躍しました。普通に15km/L以上走る好燃費には助けられたモータースポーツ系ドライバーも多かったと思います。このGA2でシティは消滅してしまうわけですが、その後を次ぐカタチの「ロゴ」は、どちらかというと初代シティを彷彿させるような背の高いスタイルとなっていました。

ホンダが「ロゴ」の進むべき方向として考えたのは以下です。
●最適なサイズと気持ちのよりスペースの両立が何より求められていること。
●最高性能を競うより、頻繁に使用する領域にいちばんよい性能を持たせることの方が大切なこと。
●クルマの基本性能に磨きをかけることが、装備と同様に安全のために重要であること。
●省資源・環境対応や当然あるべき装備の充実を通して、時代の要請に答えていくこと、など。

シティの名を捨てた? のは、「スポーティ」に振った路線から、「経済性」「環境性能」「実用性能」に振らざるを得ない時代に入ったことと無縁でないことが読み取れるようなコンセプトになっています。

ちょうどよさの徹底追求で「HUMAN SIZING」なコンセプト

ホンダはロゴの開発コンセプトを「ちょうどよさの徹底追求」であるとし、それを「HUMAN SIZING(ヒューマンサイジング)」なクルマにした、と謳いました。HUMAN SIZING 1として挙げているのが「キュービック・パッケージ」です。これはコンパクトな中にゆったりとくつろげる広さが欲しいというユーザーの気持ちに応えたものとして、「広く、快適で、使いやすい、新しいスペースのつくり方」のことを指しています。具体的には、乗る人の体格を幅広くカバーする最適キャビンサイズの設定や高いヒップポイント、大きな開口部などによるすぐれた乗降性、日差しの強い日も快適ドライブを約束する全面高熱線吸収UVカットガラス。最適ドライビングポジションを基本に、自然な操作感覚を求めた手もと集中大型スイッチパネル、などを挙げています。

HUMAN SIZING2として挙げているのが「スマート・カジュアル・デザイン」です。どこにいてもそれとわかる存在感を表現し、自分の部屋にいるようなくつろぎの気分をつくり、生活の多様なシーンに合うエクステリア、インテリアのデザインを追求した部分となります。ホンダとしては、上質なカジュアルウェア感覚のインテリアはもちろん、安全面としてフィット性を追求したシート、シートベルトをスマート・カジュアル・デザインの一環としています。

エクステリアは、コピーを「あくまでしゃれに、愛着をもって乗りこなしてほしいから。背高・のびのび、存在感のある使いやすさのカタチ。」としています。短いボンネットに対してキャビン部分が大きくなっているのはFFの作り方を心得ているホンダらしさがよく出ている部分となりました。先に書いたように事実上の先代にあたるGA2シティが、低く身構えたようなクラウチングフォルムを特徴としたのに対し、背を高くしたのは大人気だった初代シティを目指した先祖返りといえるのかもしれません……が、個人的に言えば、全体的にまとまったスタイルとはいえるのかもしれませんが、2代目シティから背を高くしたものの中途半端で、初代のトールボーイシティと比べるとありきたりという感じは否めませんでした。

「ハーフスロットル高性能」を謳い、低中速域重視に割り切ったエンジン。

すでに時代遅れとなっていた2バルブエンジンをあえて採用。

HUMAN SIZING3としては、「ハーフスロットル高性能」をあげています。これはスペックだけの高性能という意味ではなく、日常生活のなかでアクセルを軽く踏むことで発揮されるパフォーマンスとしています。時代が「速さ」ではなく「経済性」を求めてきたということも当然反映されているように思います。D13Bと名付けられたパワーユニットは、ゴー・ストップの多い都市部でストレスなく走れることをコンセプトとしています。出力特性は低・中速トルクを優先。時代が求め始めた低燃費を追求しています。ピークトルクは2,500rpm、さらに1,300rpmで90%トルクを発生させていることからも、このコンセプトがよく読み取れます。軽量、低フリクションにもこだわりをみせ現代の「ダウンサイジングコンセプト」の萌芽が見られるように思います。

吸排気バルブはそれぞれ1つの2バルブSOHC方式ですが、プラグ位置をセンターにもってきました。これはエンジンの作りとしては難しくなりますが、適正な燃焼ということを考えると合理的なものです。燃焼室内に適正なスワール/タンブル(混合気の横回転、縦回転)を発生させ、ここでも低速域の燃焼を安定させる工夫がされています。フリクションの低減に関しては、主に動弁系(カムシャフト、吸排気バルブ部)に施され、ここでも低燃費と低速トルクのアップを図っています。

エンジンの静粛性、触媒活性化など細かい配慮も!

快適性ということでは、低振動化の工夫見逃せない部分でした。クランクシャフトのプーリーをトーショナルダンパー付とし、クランクシャフトも鍛造で高剛性とするとともに8ウェイトとしました。これで回転がスムーズになることで低振動、低騒音としています。環境性能という面では、鋳鉄製のエキゾーストマニホールドから、プレス成形のステンレス板で構成したことがあげられます。これは軽量化という意味もありますが、温度が上がらないと有効に働かない三元触媒を生かすためにヒートマスを低減して、触媒の早期活性化を図ることも考えられています。

小ぶりなシャシーながら、ワイドトレッドをぎりぎりまで求める。

ボディの静粛性の確保にも努めた。

シャシーはコンパクトな中で、ワイドトレッド化として、操縦安定性を高めています。日常生活では振動や騒音が重要視される部分でもあります。快適なドライブ環境を創りだすべく、エンジンからの振動・騒音の対策として「慣性主軸タイプ3点マウントシステム」を採用しています。小型車では特にアイドリング振動が問題視されますが、その振動の入力を抑えています。サイドエンジンマウントは液封マウントとしました。マウント内部にオイルを使用することで、キャビン内の余計な騒音を減らすとともに乗り心地の向上にも貢献しています。

ボディもエンジンからの遮音性を高めました。二重化ダッシュボードロアパネルの採用も効果的ですし、ダッシュボードインシュレータ開口面積の縮小も図っています。小型車だからある程度うるさくてもしかたないという部分をかなり潰しているようにみえます。メルシート(室内の床面に貼られる防振材)の密着率を高めるためにビードレスフロアとして、これも走行時に車内に伝わるタイヤの騒音を抑える役割を果たしています。

サスペンションはオーソドックスなものながら、スポーツ走行には難あり。

回転数感応式パワステは日常使いにはすぐれるもの。

サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リヤが車軸式(ツイストビーム)とコンパクトFFとしては標準的なものです。ただ、ジオメトリー(サスペンションの位置決め)の最適化を図り、フロントとリヤに大型バンプストップラバーを採用するなどして、乗り心地の向上を図っています。最小回転半径は4.6mとなっており、比較的狭い道でもUターンが可能なものですから、道を間違えやすいビギナードライバーにも安心設計といえるでしょう。

パワーステアリングはエンジン回転数感応型ロータリーバルブ式を採用していました。これは街中でのハンドルの回しやすさを考慮したものです。据え切りでは大きな操舵力が必要となりますが、それを軽減。中・高速域にはある程度の重みを与えるように設計したものとなっていました。

乗り心地、使い勝手は?

あくまでも街乗り用。ワインディングや高速道路ではちょっと……。

私は家族がロゴを新車から現在まで乗っていることもあるので、ちょっと試乗記を書いてみたいと思います。実際に、ロゴで大人四人でドライブをしても、コンパクトな割には室内に余裕があり、広いとは言いませんが、窮屈な思いはしません。この辺はホンダもかなり気を使って仕上げたのだろうという感想を持ちました。

インパネの操作系に関しては、シンプルで分かりやすいとは言えますが、あまりに実用本位でつまらないという感じでしょうか? 3速オートマチック仕様ということもあるのですが、Dレンジに入れるとあとは何もやることがなく手持ち無沙汰という感じです。メータークラスタにはタコメーターもありませんから(上級グレードにはあります)、運転をしていて面白みというのは感じられませんでした。ただ、トランスミッションにホンダマルチマチックを使用したものは、手もとでS/Dモードの切り替えスイッチがあったということなので、また違った印象だったのかもしれません。

正直、操縦性を云々するクルマではないような感じです。ノーマルのままでは峠道などを気持よく走る……とは行かない感じです。自分のクルマだったら、間違えなく足を固めてしまうと思います。ただ、普段の足としては重宝なクルマ、可もなく不可もなくというところでしょうか?

主要諸元は?

【車名・形式】 
ホンダ・E-GA3
【寸法/重量】
全長 3,750mm
全幅 1,645mm
全高1,490mm(1,525mm)
ホイールベース 2,360mm
トレッド 前/後 1,425mm/1,400mm
最低地上高 0,155mm
車両重量790kg~870kg
乗車定員 5名
客室内寸法(長さ/幅/高さ) 1,705mm/1,320mm/1,205mm
【エンジン】
エンジン形式・種類 D13B・水冷直列4気筒
弁機構 SOHCベルト駆動 吸気1 排気1
総排気量 1,343cc
内径☓行程 75.0mm☓76.0mm
圧縮比 9.2
燃料供給装置形式 電子燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
燃料タンク容量 40L
潤滑油容量 4.3L
【性能】
最高出力 66PS/5,000rpm
最大トルク 11.3kg-m/2,500rpm
最小回転半径 4.6m
燃料消費率(10・15モード) 18.0km/L~19.8km/L
【走行装置】
ステアリング装置形式 ラック・ピニオン式
タイヤ(前・後) 155R13
主ブレーキの種類・形式 前/油圧式ディスク 後/油圧式リーディングトレーリング
サスペンション方式 前/マクファーソン式 後/車軸式

まとめ

実は、モータースポーツでもロゴにはちょっと期待したのです。操縦性は足回りをチューニングすればいいだけの話。実際、安いクルマなんだから、ワンメイクレースでもやればいいのに……という声もあり、1998年に「HONDA ロゴ ライセンス講習&ワンメイクレース」が企画されました。これは「一度はレースに出てみたいがライセンスの取得方法や、レース出場への手続きが解らない」という人などを対象で、モータースポーツへの参加を楽しんでもらうためのイベントと位置づけられました。たしか、AT車両のみのレースだったと記憶しています。ただ、当時モータースポーツ専門誌にいた私もあまり記憶に残っていませんし、結局盛り上がらなかったと思います。時代はバブル崩壊後、参加型モータースポーツに陰りが見えていた時代でもあります。かた破りなおじいちゃん(初代シティ)、スマートなお父さん(2代目シティ)に比べるとロゴは時代に恵まれなかった真面目過ぎる三代目と言えるでしょう。