【主運動系チューニング】ピストン、コンロッド、クランクシャフトの改良で最強のエンジンに!

主運動系といわれてもあまりピンとこないかもしれません。しかしこれらは、ピストン、コンロッド、クランクシャフトとエンジン内部の三大パーツとも呼んでいいものです。基本的には吸気系、燃焼系などのチューニングをした際に十分な強度が求められる部分ですが、軽量化、フリクションロスの低減で性能アップも図れます。それぞれについてみていきましょう。(飯嶋洋治)

「主運動系」のチューニングとは?

ピストン、コンロッド、クランクシャフトが主運動系

カムシャフトやバルブなど、シリンダーヘッド側にある「動弁系」は、エンジン性能のカギを握る部分です。これに対して、シリンダーブロッグ側にあるピストン、コンロッド(コネクティングロッドの略)、クランクシャフトは「主運動系」と呼び、実際にトランスミッションを通じタイヤまでパワーを伝える役割をしています。普段はなかなか見ることのないパーツかもしれませんが、エンジンを語る上では避けて通れない部分です。

ピストンはシリンダー内部を往復して、燃焼によって生まれた力をコンロッドを通してクランクシャフトに伝える役割を持ちます。クランクシャフトはそれを回転力に変換するパーツです。エンジンには4サイクルの場合、吸入、圧縮、燃焼、排気の4行程がありますが、燃焼行程(膨張行程)では、燃焼ガスが瞬間的に2,000℃以上になります。そのとき、ピストンに伝わる膨張力は3トンから4トン、ターボエンジンでは5トンにもなります。これだけ強力な圧力にピストンは耐えなければなりません。ピストンは強大な膨張力を受け止めるために丈夫であることが求められるのです。

さらに燃焼室からの熱も受けます。ピストンが受けた熱は、ピストンリングやピストンスカートを伝わりシリンダー側に逃げます。ですからピストン自体が放熱性に優れ、熱によって変形しにくいものである必要があります。また、往復運動によって生まれる慣性力を小さくするために、なるべく軽いことも求められます。このような条件の中でピストンのチューニングが求められます。

ピストンのチューニング

出力がアップした場合に鍛造ピストンが有効

ピストンのチューニングは、材質、形状によるものが主になります。材質については軽量化と強度の確保のために、アルミ合金製の鍛造ピストンに交換する手段が多くなります。鍛造ピストンは鋳造ピストンに比べて重くなる場合もあり、それだけをノーマルエンジンに組み込んだとしても、フリクションの増大はあり逆効果となります。また、チューニングパーツとして市販されている鍛造ピストンは、鋳造品に比べて価格が高くなります。

ちなみに市販エンジンのピストンは、アルミ合金による鋳造製が多いのですが、最近は、ノーマルのままでも鍛造ピストンが使用されていたりします。これはそれだけエンジンが高性能になっているからとも言えます。鍛造ピストンにしたからといってエンジンの最高回転数が上がったり、パワーが出るものではありません。吸排気系、燃焼系、動弁系などのチューニングをして高回転まで回るエンジンになった場合、それに耐えることができる耐久性を持つ鍛造ピストンが必要になるのです。

形状で圧縮比アップもできるがクリアランスに注意!

ピストンに関しては形状に関するチューニング(選択)のポイントもあります。圧縮比を上げると燃焼効率が上がり、パワーも上がるので頭頂部が盛り上がったものを使用したりします。これも安直に入れてしまうと、吸排気バルブが開いた時にピストンとクラッシュして、バルブを曲げてしまうようなことも起きます。この辺は事前のチェックが欠かせない部分です。仮にヘッドが盛り上がったピストンをもちいて圧縮比を上げられたとしても、度が過ぎてしまえばノッキングが起きるため、その対策が必要になります。この辺はエンジンチューニングを行なう際の追いかけっこの部分といえます。

各気筒ごとのピストンの重量を揃えることも重要なチューニングで「バランス取り」などと言われる作業はこれも含まれます。ピストンの僅かな重量の違いも、パワーロスにつながります。ピストンを同じ重量にするには、内面を研磨して揃える方法があります。この際には、ピストン強度を落とさないように気をつける必要があります。現在ではエンジンの生産精度が上がっているために、ピストンの重量の差もなくなっているので、この作業の重要性も下がっているようです。

ピストンのコーティングという方法もあります。これはモリブデンコーティングやテフロンコーティングをピストンサイドに施すことでフリクションを減らす方法です。ピストンが往復する際にピストンスカートがシリンダー壁と接触することで生まれるフリクションを低減することが目的です。コストはかかりますが、確実にエンジン性能がアップする方法です。

ピストンリングのチューニング

ピストンリングによるフリクションを低減する。

ピストンリングとは、ピストンの丈夫にはめられたリング状のパーツです。通常3本あって、上の2本がコンプレッションリング、3本目がオイルリングと言われます。一番上のコンプレッションリングをトップリングと言います。これは燃焼室で発生するガスのシールを受け持ちます。その下のコンプレッションリングはセカンドリングと呼ばれ、シーリングを完全にすることやエンジンオイルの油膜の厚さの調整を行なう役割も担っています。一番下のオイルリングは、余分なエンジンオイルを掻き落として、最小限の油膜を作り、燃焼室内に余分なオイルが残らないようにする役割を持っています。

強化ピストンリングでフリクションの低減とシール性を両立する。

チューニングの方法としては、フリクションロスの低減やシール性の向上のためにピストンリングをチューニングエンジンに適したものとする方法があります。エンジンの摩擦損失は、ピストンとピストンリングによるものが一番大きいので、ここをチューニングする意味は大きいものです。フリクションロスを低減するには、ピストンリングの張力を弱める方法があります。それはシール性とトレードオフの関係にはなりますが、強化ピストンリングとして市販されているものを使うことであるレベルまでの両立が図れる場合もあります。市販エンジンの場合は、コストの問題でそこまで高度なものは使えませんが、こうしたピストンリングは加工に手間がかかり、吟味した素材が使用されています。

コンロッドのチューニング

まずもとめられるのが十分な強度。

ピストンは3トン以上の強い圧力を受けます。そのため、コンロッドもピストンのからの力に耐えられるような強度が必要にあります。コンロッドはピストンとクランクシャフトの回転につられて左右に振られながら上下するという運動をするために負担も大きなものです。その際には慣性力が生まれてスムーズに動く際の邪魔をします。慣性力を小さくするにはできるだけ軽くすることが求められます。そうすることで結合部の負担も少なくすることができるからです。

ただし、軽くしても強度が下がってしまっては本末転倒になってしまうから、その辺は非常に難しいところです。そのためにチタン製のコンロッドを使用する場合があります。強度や軽さという意味ではとても優れています。ただし、価格は高いですし、傷が付くとそこから破損する可能性があるというデメリットもあります。

ピストンピンがプレスフィットならフルフローティングにする手段も。

コンロッドの上部をスモールエンドと呼びます。ここはピストンとつながる部分ですが、ピストンピンと呼ばれる部品を介してつながっています。ピストンピンとスモールエンドは左右方向にはフリーにつなげられています。ここは可動部なのでフリクションの発生があります。つなぎかたはプレスフィットタイプ(圧入式)とフルフロータイプがあり、フルフロータイプの方が、フリクションが小さく動くことができます。性能を考えた場合はプレスフィットタイプをフルフロータイプに加工するという方法があります。これもショップやボーリング屋さんにお願いする作業になります。

コンロッドでできるチューニングはリューターなどを利用して表面を鏡面仕上げする方法があります。これはコンロッド表面の細かな傷を取り除き、そこから亀裂が発生してコンロッドが破損するのを防ぐ意味があります。また、WPC処理を行なって強度を上げるという方法もあります。WPC処理とは、金属の表面にその硬さ以上の高度の粒子を噴射して強度を上げる方法です。さらにピストンの重量を合わせるというチューニング方法を紹介しましたが、コンロッドの重量も揃えることでよりスムーズにエンジンが回るようになります。

クランクシャフトのチューニング

ジャーナル部のフリクションを低減すると耐久性の問題も。

クランクシャフトは、ピストンの往復運動を回転に変える部分です。クランクシャフトは折れ曲がった棒のカタチをしていますが、ピストン、コンロッドによる強い力によってねじり回されるので、強度が必要になります。ノーマルでもただの鋳鉄ではなく球状黒鉛鋳鉄と呼ばれる強度の高い素材が使用されます。

クランクシャフトの主軸の部分をクランクジャーナルと言います。クランクジャーナルはメタルと呼ばれるプレーンベアリングが用いられています。このメタルとクランクジャーナルの部分はフリクションの大きな部分となります。チューニングとしてはメタル幅を小さくすると効果的です。ただし、面積が小さくなった分耐久性が落ち「焼きつき」の原因となる場合もあります。ここはオイル管理が重要になってくる部分です。フリクションロスの低減と、焼きつきよるトラブルを発生はトレードオフの関係になるので、その兼ね合いが重要になるといえるでしょう。ただし、非常に難しいのは事実で、F1でもエンジントラブルの主な原因はここになるといわれます。

カウンターウェイトのバランスをさらに厳密にとる。

クランクシャフトにはカウンターウェイトというバランスが取り付けられています。これによって、バランスが取られ、スムーズに回転を行なうことができるのです。これはノーマルでもドリルで穴が開けられバランス取りがされていますが、さらに厳密なバランスを取る場合もあります。これはショップを通して専門業者に依頼することになります。作業料金としては5万円以上となるでしょう。クランクシャフトのジャーナル部にラッピングをするという方法もあります。これはジャーナル部をコンパウンドを使用して磨き上げる方法です。

その他に、クランクシャフトとシリンダーブロックの結合部やクランクピンとコンロッドのスラスト方向(軸方向)のクリアランスをチェックするなどの方法があります。この辺は、基本的にプロフェッショナルの部分なので、DIYは事実上不可能になります。

パーツ価格&工賃は?

上を見ればキリがない領域!

それぞれのパーツ価格と工賃をざっと見ていきたいと思うのですが、ここまでのチューニングによるとケースバイケースということも認識しておいていただければと思います。ピストンはチューニング用のピストン、ピストンピン、ピストンリングなどがセットとなって10万円以上とみていただければいいと思います。コンロッドは強化品で1本5万円以上でしょう。クランクシャフトはレース用となると20万円から50万円以上は覚悟する必要があると考えてください。もちろん、もっと安いものをさがせば見つかるかもしれませんが、エンジンの根本的な部分なので、なるべくいいものを揃えるに越したことはありません。工賃もここまでくるとケースバイケースですが数十万円から百万円単位となるでしょう。

まとめ

かなりハードな内容? になってしまいました。これまでも「給排気系」「燃焼系」「動弁系」など何回かにわけてエンジンチューニングについて書いていますが、ここはいわば「本丸」とも言える部分です。手軽にできるというわけでもありません。しかし、エンジンの仕組みやどうやれば性能が上がるのかを、なんとなくでも分かってくると、知れば知るほど面白くなり、大げさに言えば「知的欲求を満たしてくれる」とても楽しい機械ということが分かっていただけるのではないかと思います。ピストン、コンロッド、クランクシャフトという基本となるパーツだけでも、意外と知らないことがあるかもしれません。「ピストンピンをフルフローティングにして……」とか「コンロッドをWPC処理したけど……」なとなると、もうマニアの世界です。もちろん、いきなり全部を知るのはもちろん難しいですし、その必要もありませんが、少しずつでもエンジンを知っていくことが、カーライフを充実させるのに役に立つのではないかと思います。

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