【吸排気系チューニング】効率よく吸気して速やかに排気すれば、エンジンは気持ちよく回る!

エンジンチューニングというと、なにか職人技のように非常に難しい感じを受けます。確かにそういういう面はあるのですが、比較的簡単にできるチューニングもあります。エンジン本体に手を入れないという面からは「吸排気系チューニング」がそれにあたるでしょう。空気を入れて燃焼させ排気するのがエンジンの基本ですから、効果も侮れないものがあります。その基本的な部分を今回は解説していきます。(飯嶋洋治)

吸排気系チューニングの重要性

エンジンは人間の身体と同じで効率の良い呼吸が必要になる。

ガソリンエンジンは、ガソリンと空気との混合気を圧縮・燃焼させることによって生まれた膨張力を利用してクランクシャフトを回転させた出力がパワーとなります。そのために、まずは燃焼室内に混合気を効率よく入れることが必要になります。また、いくら効率よく入れても、その先で詰まってしまうと意味がなくなります。そのためには排気系のチェックも必要です。全体を見ることによってはじめて、高回転による高出力を得られるようになるのです。例えれば人間の呼吸と同じですね。

吸気系とは、エアクリーナーからスロットルボディを経てインテークマニホールドまでの部分。エンジン本体まで含めると、シリンダーヘッドの吸気ポート、吸気バルブまでつながります。燃焼室で燃焼した後には排気系となり、エンジン本体では排気バルブ、排気ポート。本体を出ると排気マニホールド(エキマニ)、三元触媒、フロントパイプ、メインパイプ、マフラーというような系統で排気されます。ターボ車の場合には、スロットルボディの後からインテークマニホールドの部分にターボのコンプレッサーが入り、圧縮された空気がインタークーラーで冷やされた後に吸気ポートに入ります。

エアクリーナーの交換は手軽なチューニング

集塵能力も重要だが、それが吸気の妨げにならないようにする。

吸気効率を手軽にアップする方法には、高効率のエアクリーナーに交換するのが合理的です。エンジンに空気を効率良く取り込むには、ごくわずかでも吸気抵抗を減らすことが大切だからです。ノーマル形状のスポーツ走行用のエアクリーナーに交換する手段もありますし、より本格的にするならばキノコ型のスポーツクリーナーに交換すれば、多くの空気をエンジンに取り込める可能性があります。交換作業自体もノーマル形状のエアクリーナーであればごく簡単にできる場合が多いと考えていいでしょう。

キノコ型の高効率のものはゴミも吸ってしまう注意が必要。

スポーツキットなどで販売されている高効率のエアクリーナーにはいくつかのタイプがあります。代表的なものがキノコ型のもので、吸気開口面積が大きく高効率が狙えます。ただし、そのまま付けただけでは、エンジンルーム内の熱気を吸ってしまうこともあるので、それに応じた対応が必要になってきます。具体的には遮熱板の設置となります。こうしないと、せっかく吸気を多くしたとしても、吸気温度が上がると空気の密度が下がってしまうので、結果的に効率がよくありません。

キノコ型では、メンテナンスにも気を使う必要が出てきます。一般的に吸気効率が高くなると、集塵能力が下がって、シリンダー内にほこりが進入する可能性が高くなるからです。そのために、スポーツ走行時には吸気効率の高いものを使用し、普段走行の時は目の細かいものを使い分けるなどの配慮もするといいでしょう。スポーツエアクリーナーはノーマル形状だと数千円くらいから、キノコ型などの高効率のものだと5万円程度。取り付け工賃も5千円程度から、遮熱板を付けるとなると2、3万かかる場合もあると思います。

吸気(インテーク)マニホールドのチューニングも効果がある。

インテークマニホールドで、スムーズに燃焼室に空気を送る!

さらに吸気を効率的に行なうならば、吸気マニホールドや、ターボ車の場合はタービンに空気を導くためのサクションパイプの装着も行なう必要があります。ターボ車の場合は、エアクリーナーからタービンまでが、曲がりが少なくて太いものが効果が高くなります。またNAエンジンの場合、チャンバー効果(一旦空気をプールしておく機能)があるものが効果的になります。

吸気マニホールドは、エアクリーナーからスロットルボディを経てきた空気を各シリンダーに分配する役目を持っています。そのため、できるだけ均等&スムーズに空気を流す必要があります。市販車用のエンジンでは実用性を重視したマニホールドになっているので、これを交換すればスポーツ走行に向いた高回転型にすることも可能です。一般的にマニホールドを短く太くすれば高回転型になりますが、この場合、カムシャフトやバルブを駆動する動弁系のチューニングと関連します。それらのチューニングについては、改めて解説しますが、エンジン本体をそのままで高回転型のマニホールドに交換しただけでは効果がないばかりか、低中速回転域が使いづらくなるので注意が必要です。

スロットルバルブを大きくすれば、吸気は増えるがデメリットもある。

スロットルボディ(バルブ)のチューニングもあります。吸気を効率的に行なうには、スロットルバルブを大きくするのが効果的ですが、これにより単に吸気量が増えただけではエンジンコントロールが難しくなり、乗りにくくなることもあります。ここも全体で考えることが必要です。ちなみに、市販車の場合は通常バタフライバルブと呼ばれる円状のバルブの中央に軸が通り、その軸を中心に回転することで開閉が行なわるものが使われます。ただ、この場合、全開にしても水平になったバルブによる吸気抵抗が残るので、レーシングカーではスライドバルブを使用する場合があります。これは全開にするとバルブが通路からなくなるので、より効率的な吸気が可能になります。

インテークマニホールドを交換するとなると価格は車種にもよりますが10万円から数十万円という場合もあるようです。工賃はケースバイケースですが1万円から2万円以上。大径のスロットルボディも5万円から10万円以上、スロットルボディ脱着も1万円から2万円以上という感じになると思います。

吸気ポート研磨はちょっと高度な作業

古いエンジンでは今でも有効な吸気効率アップ方法。

エンジン本体に入ると、シリンダーヘッドの吸気ポートがあります。ここは伝統的なチューニングとしてポート研磨(ポート加工)という手法があります。ポート研磨では、ポート径を大きくしたり、逆に流速を高めるために小さくしたり、凹凸をなくすなどの形状を整える作業を行います。こうすると空気の流れがスムーズになって、結果的に多くの混合気が燃焼室に入っていくようになるのです。

具体的なやり方は、リューター(電気やエアを動力にした回転するヤスリ)を使用して粗削りして、おおよそのカタチを整え、その後、サンドペーパータイプの回転ヤスリなどを使って表面をきれいに磨き上げるということを行います。これには試行錯誤も必要になりますし、技術的な熟練が必要とされるので、アマチュアが気軽にというようなものではありません。

現代のエンジンになると、もともとポートの吸気効率も計算しつくされている傾向があるので、チューニングという面での重要度は下がっていると言えます。それでも最新のエンジンで行なうとすれば、ポートの段差を撮ったりバリととったりする程度となります。AE86などに使用された4A-GEのような古いエンジンではポート研磨の効果も大きいですが、現代のエンジンでは「撫でる程度」というのが現状といえます。費用的には分解費用を別にして5万円以上はかかりますが、効果がわからない場合もあり、作業を請け負ったショップとしても2日くらいポート研磨にかかりっきりになった割には費用をあまり請求できないという面では辛いものがあるようです。

エキゾーストマニホールド(エキマニ)の形状は重要ポイント

エキマニは排気干渉を無くして排気効率を上げるカギ!

ここまで吸気系のチューニングを中心に解説してきましたが、吸気系をやったら排気系も合わせて考える必要があります。いくら吸気効率を高めても、その先の排気側で詰まってしまっては効果は期待できないのは冒頭で述べたとおりです。エンジン内で燃焼を終えてガスが排出されるのは排気ポートが最初になります。ここも吸気ポートと同じように、スムーズに抜けていくことが必要です。ただし、排気に関しては排気圧が強く、自然に抜けていくという面があるので、吸気側ほど神経質になる必要はありません。

ポイントはエキゾーストマニホールド(エキマニ)になります。これは、排気ポートを抜けてきたガスを整流して、スムーズにマフラーのフロントパイプにつなげる必要があります。問題になるのは排気干渉です。市販車の場合は、コストの問題も考えなければならいので、効率的にイマイチのものもありますし、高速回転を使うスポーツ走行を考慮するばかりではなく、低中速回転の使い勝手を考えているために、あまり抜けばかりよくても仕方がないという面があります。

ここをチューニングするならば、「タコ足」と呼ばれているエキマニに交換する方法が一般的です。排気ポートからは燃焼の順番によって排気ガスが出てきますが、エキマニの長さが不等長の場合、どこかとどこかの排気のタイミングが重なってしまい、うまく排気されないことがあります。タコ足は排気管を等長としているために、干渉を防ぐことができるのです。このパーツも、現在のスポーティなクルマではノーマルで装着されていることもあるので、自分のクルマにどのようなものがチェックされているのかを確認することから始める必要があります。

装着に関しては、ノーマルのエキマニを外してその車種用として市販されているタコ足に付け替えるという作業となり、基本的には難しいものではありません。ただし、高熱にさらされているパーツでもあり、特にボルトなどは熱で酸化している場合も多く、取り外しに苦労する場合もあります。その点、ある程度工賃がかかってもプロに任せた方が安心できる部分です。

エキゾーストマニホールドの価格は2万円から10万円以上。車種や作りによってけっこう違います。工賃は2万円から3万円以上見ておいた方が良いでしょう。

触媒は必須だが、排気抵抗を減らしたスポーツ触媒もある。

エキマニに続くのはターボ車の場合はタービンがあり、ターボアウトレットからフロントパイプ、NA車の場合は直にフロントパイプとなります。ターボ車の場合は、ターボアウトレットからフロントパイプまでは非常に強い排気圧力を受けるので、効率の良い形状や太さのものをチョイスして、流れを良くする必要があります。タービンのレスポンスにも関連してくる部分です。排気ガスの浄化を考えると三元触媒が重要となります。ただし、排気効率だけを考えた場合には、排気抵抗となってしまいます。そこで排気浄化機能も持ち、抜けの良さも確保したスポーツ触媒も市販されているので、それを使うのも一つの手段です。

フロントパイプの価格は3万円から15万円以上、スポーツ触媒は5万円から10万円以上。取り付け工賃は2万円から3万円以上というところです。

マフラーの交換はどちらかというと見た目と音

全体を見る必要があり、マフラー交換だけでは大幅な性能アップは望めない。

マフラー交換はチューニングの定番ともいわれ、一番最初に行なわれることも多いと思います。見た目や音という面も大きいのが現状でしょう。安価なものからチタンなどの材質を使用して軽量化を図ったものもあります。車検対応のものを使えば、違反改造とされることもありません。ただし、ここまで解説してきたように、マフラーだけを交換しても性能的に劇的に代わるということもないのも事実で、基本は吸気から排気まですべてを考えた上での話となるでしょう。これは好みや値段に応じていろいろ発売されていますから、チョイスして装着するだけと言えます。サーキット走行などでは音量規制がある場合がほとんどですから、購入する際にはその辺のチェックが重要になってきます。

いわゆるスポーツマフラーというのも価格はピンきりですが、おおよそ15万円から20万円あれば、そこそこのものが入手できると考えていいと思います。交換工賃は2万円から3万円以上という感じです。

ターボチャージャーの過給圧アップ、タービン交換は効果は大きいが注意が必要

ターボ車の場合は過給圧アップでパワーアップするが、安易にやるとエンジンに負担がある。

ターボエンジンはターボの過給圧(ブースト)アップで比較的簡単にパワーアップが図れるという面があります。簡単なブーストアップの方法としては、過給圧を一定以上に上がらないようにしているアクチュエーターを強化型にする方法があります。アクチュエーターが作動する限界を上げるわけです。また、VVC(機械式過給圧コントローラー)やEVC(電気式過給圧コントローラー)というパーツを装着してブーストを上げるという方法もあります。こちらは過給圧を細かく制御できるので便利とも言えます。ターボ(タービン)自体を大型のものに交換するという方法もあります。

これは確実にシリンダーに送り込む空気量が多くなるので、(エンジン本体の限界はありますが)大幅なパワーアップが可能となります。ただ、単にブーストアップやタービン交換をしただけではECU(エンジンコンピューターユニット)が対応できずに、異常と判断して燃料カットしてしまう場合があります。合わせてECUチューニングが必要となりますが、その辺は機会を改めて解説をすることにします。

ターボ(タービン)の価格は10万円から30万円程度。けっこう高いです。交換工賃は3万円から5万円以上というところでしょう。

インタークーラーによるチューニングはターボチューンに付随する

過給圧アップで増えた空気を効率的に冷却するために必要。

過給圧をアップすると、吸気量が多くなりますが、いくらそれだけ多くしても効率的にはあまり良くありません。というのは、ブーストを上げると吸気温度が上がり空気の密度が下がってしまうからです。そのためにインタークーラーがあるのですが、ターボによるチューニングをした場合には、冷却のためのインタークーラーの大型化が必要になります。これもただ大きくするだけでは空気が通過する際の抵抗が増えて損失が増えるので、適度な大きさにする必要があります。

取り付けにはサイズと位置をよく考えること。

エンジンルームの前に持ってきた方が風はよく当たりますが、パイピングが長くなるとレスポンスが悪くなったり、位置によってはラジエターの冷却効率を下げてオーバーヒートの原因になったりしますから、プロのアドバイスを得ながら行なう必要があります。インタークーラーの交換は、取り付けが簡単なもので10万円くらいから、取り付けに加工が必要だと15万円からの予算を見ておくことが必要になります。

まとめ

給排気系のチューングを見てきました。本当に性能アップを考えると、全体で見ていかなければいけないことがご理解いただけたでしょうか? また、現代のエンジンはECUで制御していることもあり、吸気量が多くなれば燃料増量、点火時期などをECU側で行なわなければならないなど、けっこう大変です。ECUなどは改めて解説してみたいと思います。現実的にはエアクリーナーとマフラーを変えるくらいであれば、性能的に違いが分かる場合があるでしょうし、余計な気は使わずに乗れるファインチューンと言えるでしょう。あとはお財布と相談ですね……。

モータースポーツのためのチューニング入門

¥1,944

販売サイトへ