【ボルボ C30】北欧の名門が放った幻の一台、あなたはご存知?

数々の安全装備を発明し、自動車の歴史を作ってきたボルボ・カーズ社。その安全性に関する高い評価からか、このメーカーが作る車は、どちらかと言うと四角くお堅い、ブロックみたいなイメージが付きまといます。しかし、そんな同社でも、たまにはハメを外したくなるようでして、2006年に若さとダイナミズムを表現した、C30というモデルを市場へ投入、自動車ファンの間に一つのセンセーションを巻き起こしました。

ボルボ C30って、ナニ?

現在は、すでに生産を止めているボルボ C30ですが、同社の公式ページに、ヘリテッジモデル群の一台(つまり、ボルボのクラシックカーの仲間入りです)として、いまだに紹介されています。それによれば、「このC30によりボルボは、2ドアプレミアムカーのセグメントに進出を果たしました」とのこと。
C30が登場する数年前に、2ドアの、C70クーペが生産終了していることになっていますが、その後も、同じC70のカブリオレがしばらく継続し、実はC30より後に販売を終えていますので、この時期のボルボにも、2枚扉の車は複数あったのですが、C30には、より若々しく躍動的な役割を与えたかった、ということらしいですね。このクルマは4つの独立したシートをもつ4人乗り、に割り切っているところなんか、ボルボの思い切りも感じます。
その気概は、実際は3ドアハッチでありながら、前後に流れるスムーズなシルエットと、スラントしたノーズにエッジの効いた形状のヘッドライト、そして、最大の特徴となる巨大で独特な形状のリアガラスなど、このC30に託した遊び心からも見て取れるでしょう。ボルボが、真面目な安全性以外を求める顧客層へ訴求する数々の演出も試みたのが、このC303ドアハッチだと思います。ちなみに、レイアウト的には前エンジン前輪駆動のFFとなっています。
生産時期が、2006年から2013年の間に限られ、車体の世代としても1世代しか作られなかったC30ですが、いまだに「C30のファンサイト」などもあり、根強いファンも数多くいる様です。

エンジンバリエーション

本質的なモデルチェンジのチャンスがなかったため、一つのプラットフォーム(フォード・C1プラットフォーム:フォードフォーカス、マツダアクセラなどと共用)に、単一世代の車体が一つだけ、というC30なのですが、その代わりと言うことか、エンジンのセレクションは多様にして、世界中の顧客にアピールする作戦だったようです。その7年間のライフの中で、投入されたエンジンは以下のように少なくとも12機種のバリエーションを展開したことになっています。

(1)1,596cc直列4気筒DOHC、出力100ps/6,000rpm、トルク150Nm/5,000rpm
(2)1,798cc直列4気筒DOHC、出力125ps/6,000rpm、トルク165 Nm/4000rpm
(3)1,999cc直列4気筒DOHC、出力145ps/6,000rpm、トルク185Nm/4,500rpm
(4)2,435cc直列4気筒DOHC、出力170ps/6,000rpm、トルク230Nm/4,400rpm
(5)2,521cc直列5気筒DOHCターボ、出力220ps/5,000rpm、トルク320Nm/1,500–4,800rpm
(6)2,521cc直列5気筒DOHCターボ、出力230ps/5000rpm、トルク320Nm/1,500–5,000rpm
(7)1,560cc直列4気筒ターボディーゼル、出力109ps/4,000rpm、トルク240Nm/1,750rpm/rpm
(8)1,560cc直列4気筒ターボディーゼル、出力109ps/4,000rpm、トルク240Nm/1,750rpm
(9)1,997cc直列4気筒ターボディーゼル、出力136ps/4000rpm、トルク320Nm/2,000rpm
(10)2,401cc直列5気筒ターボディーゼル、出力180ps/4,000rpm、トルク350Nm/1,750–3,250rpm
(11)2,401cc直列5気筒ターボディーゼル、出力180ps/4,000rpm、トルク400Nm/2,000–2,750rpm
(12)1,798cc直列4気筒(ガソリン&E85)、出力125ps/6,000rpm、トルク165Nm/4,000rpm

このラインアップで特徴的なのは、直列5気筒エンジンと、85パーセントエタノールの燃料でも走行できる、フレックスフュエルのものでしょう。一応、コンサバティブからスポーティ、そしてエコロジカルと、一通りの動力源を揃えていたのは、はやりボルボ社の生真面目さだったのかもしれません。そして、これらのエンジンに組みあわされたトランスミッションは、5速MTから、フォード製の6速DCT(デュアルクラッチ式トランスミッション)、6速MT、そして5速のギアトロニック(マニュアルモード付AT)などとなっています。

一番燃費が良いのはディーゼル

お堅いボルボと言えども、やぱっり実燃費は気になるところです。C30には、『DRIVe』と呼ばれる、アイドリングストップ機能つきの1.6Lディーゼルバージョンがあり、このタイプからは、なんと31km/Lの燃費が記録されたそうです
もちろん、使用状況や運転の仕方によって、結果もまったく変わってしまう訳ですが、一応、ハイパフォーマンスの排気量2.5Lの直列5気筒エンジンでは、概ね9.7km/Lから11.0km/Lの燃費がでると言う話が多い様です。

シャーシ

C30が使用した、フォード・C1、と呼ばれるプラットフォーム、ボルボでは、P1と呼んでいたもので、フォード傘下にあった自動車メーカー数社が共用して使っていました。その血統を引く兄弟車両には、2003年から生産のフォード フォーカス、同年からのマツダ アクセラ、2004年から生産のボルボ S40、および、V50、2005年からのマツダ プレマシー、2006年からのボルボ C70などがあります。
C30はFF車両ですが、この車台はAWDにも対応するものです。サスペンションは前マクファーソンストラット式、後Eリンク(マルチリンク)式だったと言うことです。(2003年マツダアクセラの資料から参照)
メーカーとしては、コンパクト&ダイナミックを謡っているのですが、それでもボルボ C30の重量は1,300kgを超える規模で、全幅も5ナンバーを超えますし、その意味でも、今どきの日本市場には存在し得ない稀有な車種と呼ぶべきでしょう。それだけに、今でもチャンスがあれば手に入れたいと願う、熱心なファンもいるのかもしれません。

各所からの評価

軽いとも言えない車体(と思います)に、ボルボとしては驚きの格好良さを被せた、そんなクルマであるC30、販売されていた当時の評価はどうだったんでしょうか? いくつかのメディアのテスト結果などを、ちょっと見てみましょう。(各批評記事より抜粋・意訳)

edmunds.com

「ボルボ C30については、巨大チェダーチーズのブロックと同じ形状の車体を作る、と目されるメーカーにとっての、ドラスティックな飛躍だと思われるのかもしれないが、真実のところ、やはり、彼らの血筋からは逸脱した一台ではない。そして、機構的には、S40やV50と関連性があるのだが、このC30のサスペンションには、しっかりめのチューニングは施されている。また同時に、快適性と日常的な運転のしやすさも配慮しているのが、このクルマである。あなたが、お手頃価格で手に入るボルボの安全性を求めるか、はたまた、同社から出たホットハッチを求めるか、そのどちらだとしても、価格のだけの価値はあるだろう。」

ボルボ C30のテストと評価記事(英語)

www.autocar.co.uk

「ボルボによれば、スポーツクーペと定義されるのが、このC30であるが、実際は少し違う。たとえば、アウディTTや、日産370Zはスポーツクーペと呼ぶべきだが、この車の場合は、BMX1シリーズ、アウディA3、あるいはミニを思い浮かべたほうがしっくりくる、今どきのファッションを身にまとった、プレミアムハッチと言うべきだ。」

ボルボ C30のテストと評価記事(英語)

www.carbuyer.co.uk

「速度を上げて走っても、このボルボ C30は、安定感と快適性を維持する。フォード フォーカスに比べて、ステアリングはやや重めだが精密だ。ありがたくないところ、と言えば、スポーツフィールがほぼ感じられないところで、フォーカスやゴルフのパフォーマンス版の方が、より多くの場面で楽しめるだろう。そして、この1.6Lエンジンを運転するのは、なかなか忙しい作業となるので、もし、さほど経済性にこだわらないなら、2.0Lエンジンのタイプを検討するのが賢明である。この車は、静かで快適であるし、固めのシートは長旅も歓迎してくれるものだ。ドアミラーの風切り音が気になるが、一方、エンジンノイズはさほど耳に届かない。」

ボルボ C30のテストと評価記事(英語)

関連するショーモデル

時代とともに丸くなったとは言うものの、安全が最大の売りであるボルボ。しかし、生真面目さだけが売りのようなこのメーカーの製品にも、実は、いろいろなチューンアップをする会社が複数あるんです。本家のメーカーに足らないエキサイトメントの追加販売をする、そんな各社は、やはり、スポーティーなイメージのC30が登場した時に、かなりの食指を伸ばしたようです。

EVOLVE C30(2006年 SEMAショー)

カリフォルニアに本拠を置く、ボルボ専門のチューニング会社『ELEVATE Cars Inc.』は、その創立者が家族のために初のボルボ(740ターボワゴン)を購入した際、メーカーの手を離れた後のボルボ車に、さらなる付加価値を加える会社が、米国にはないということに気づき、現地のボルボ社と交渉した結果立ち上げた、という、ボルボ・チューナーの老舗みたいな会社です。彼らのポリシーは、ボルボの売りである安全性を残したまま、さらにユニークなスタイリングと、より高いパフォーマンスを付加する、ということだそうです。
そのELEVATE社が、2006年、米国ラスベガスのコンベンションセンターで開催された、自動車展覧会SEMAに出店したのが、『EVOLVE C30』という名のチューンアップコンセプト。
フロントには、フォーミュラーカーを思わせる、エアトンネル式のスポイラーを装備したこのクルマは、シャーシを4輪駆動に改造し、エンジンは2段シーケンシャルのツインターボで過給し514psを絞り出したマシンです。また、ハイパワーを受け止めるリアタイヤは355/25-19という幅広に好感され、ブレーキは4ピストンにしたという、ハイパフォーマンスなスポーツカーへの改造を狙ったモデルでした。

IPD C30( 2006年 SEMAショー)

アメリカ合衆国オレゴン州に本拠を構えるの『IPD』は、ボルボの自動車専用に、ドレスアップパーツから、排気系、燃料噴射器、さらには、照明関係などの交換部品を製造販売している、1963年創業の会社だそうで、これまた老舗と言えそうなところです。
この会社が、2006年のSEMAに出したのが、直列5気筒のC30モデルをスーパーチャージャーで加給しつつ、ボディーはガルウィングのドアに変更したコンセプトカーです。そしてさらに、一時的にエンジンから爆発的パワーが得られるという、あのニトロチャージャー(背中にそれ用のタンクを積んでいる)までついているという、モンスター級のC30がこの車でした。まるで、マッドマックスにでも登場しそうな、強烈モデルですね。

HEICO C30( 2006年 SEMAショー)

ドイツに本社があり、日本にも代理店があるというのが、『HEICO SPORTIV社』で、ドイツのボルボ本社から、正式に公認されたチューニングメーカーだそうです。設立は比較的新しく、1997年で、こちらもモータースポーツでの実績があり、ハイパフォーマンス武装したボルボを作り続けています。
その会社が、2006年ラスベガスのショーに出展したのが、『HS3 THOR』と名付けられたチューンアップ版のC30で、やはりシャーシをAWDに改造し、2.5L直列5気筒エンジンは300psまでパワーアップしたモデルとなっていました。

HEICO HS3 D5 / HS3 THOR_2(2006年 Essenショー)

前出のHEICO SPORTIV社は、本国ドイツ、エッセンで開かれた自動車ショーの方には、2モデルを出展しています。
その一つが、『HS3 D5』という車で、直列5気筒エンジンをディーゼル化し、出力を205psまでアップし、車高調性付きダンパーや4ピストンのブレーキなどで、パフォーマンス強化を図ったクルマです。
そして、もう一つのモデルが、SEMAに出店した車のアップデート版である、『THOR_2』。C30のT5というグレードがベースで、エンジンパワーを250psにチューンし、30mmほど車高を高めたという、ややRVチックな響きのあるプロトタイプだったそうです。

C30 DRIVe ElectricとRange Extender

2010年の北米国際自動車ショーにボルボが出店したのが、バッテリーとモーターだけで走行する、この『DRIVe Electric』です。そのために、センタートンネルと燃料タンクスペースを、総容量24kWhのリチウムイオン二次電池(米国 EnerDel社製)が占領しています。82kwの出力を出すモーターは、このC30を、最高で時速150kmまで加速できました。その充電器やモーター制御系は、スイスの『BRUSA Elektronik AG』が開発しています。バッテリーは、家庭の商用電源ソケットから充電でき、フル充電に7時間、最大150kmの走行距離でした。
このEV版C30に、さらに長い走行距離を与える目的で作られたのが、『Range Extender』で、駆動するモーターのほかに、40Lのガソリンタンクと3気筒のエンジンを搭載し、それによって40kwの発電機を駆動しモーターとバッテリーへ電力を供給するという方式です。これにより、最大の走行距離が1,000km程度まで延長されたそうです。

レース活動

ボルボのレース活動と言えば、1980年代の世界ツーリングカー選手権を席巻した、あの『240ターボ』を思い出します。そう、伝説の『空飛ぶレンガ』が、あのマシンだったんですね。どう見てもレーシングカーには不向き、というより、スポーティーカーとすら呼べないそのボディー形状をもって、他のワークス勢をぶっち切ったんですから、レース関係者の人々の目には、それは恐ろしく映ったことでしょう。
まぁ、そこに現れた走行性能は、ボルボが車体つくりで追及している頑強さのたまもの、だった訳ですし、その正当な血筋を引きつつ、スタイリッシュ&スポーティな容姿を実現したボルボ C30にも、あの時の栄光を取り戻すという期待感が寄せられたのも、容易に想像がつく話ではあります。
実は、ボルボ本体にも、『Volvo Polestar Racing』という名称のレース&チューニング部門があり、そこが、C30をレース用にチューンして、2008年から2011年までモータースポーツ活動を行っています。その結果、2010年のSTC(スカンジナビアン・ツーリングカー選手権)でワークスドライバーのロバート、ダルグレンが、ドライバータイトルを獲得、チームタイトルでもチャンピオンに輝きました。
公式ページによると、このマシンは『C30 S2000』と呼ばれるそうで(S2000はレギュレーション名)、エンジンは直列5気筒2.0Lの自然吸気で290hp(294ps)の性能です。トランスミッションは6速シーケンシャルタイプで、駆動はFFとのこと。
さらにPolestar社は、このSTCモデルをWTC(世界ツーリングカー選手権)用に変更した『S2000 1.6T』を作り、2011と2013年に二度、このレースへ参戦しています。これは、直列4気筒1.6Lエンジンをターボで加給し、340hp(345ps)にまでパワーアップしたマシンで、駆動はやはりFFです。
また同社は、こららのレーステクノロジーを応用し、『C30 Polestar Concept』という公道向けコンセプトカーも作っています。こちらは、駆動を四輪駆動とし、2.5Lの直列5気筒エンジンが発する451hp(457ps)という巨大なパワーを受け止めるという、ボルボとしては、なかなか尖った一台となっています。

日本で中古はみつかるの?

ボルボ本体の公式ページを見ても、そして日本向けページを見ても、現状でC30のようなプレミアム2ドア(もしくは3ドアハッチバック)車は販売していないようなので、このクルマ、平たく言うと「幻のボルボ」と呼んでもおかしくありません。と言うことは、ちょっとくらいは希少価値があるでしょうか? そんな期待感もありますが、中古車の価格は需要と供給のバランスで決まるものです。
さて、そんなC30、一応、日本の中古市場にもそれなりの台数が流れているようで、ちょっと調べただけでも、車種選択の余地が十分あるといった状況です。そのうち値段が高い方だと、たとえば、2011年型の2.0Lモデル『2.0eアクティブ』(走行距離2.3万km)で、1,480,000円というのがあります。
また、一番安いクラスを探してみると、2007年の『2.4i SE』(走行距離7.5万km)の車体が、397,000円なんていうのもあります。
中古車ですから、実車に触れて状態を確認しないと、本当のところはわからないのですが、とは言うものの、もともと、車体の頑丈さと耐久性がボルボの価値で、だからリセールバリューも下がらない、と言うのが基本的認識です。それにしては、意外に求めやすい値段で出回っていると言って良いでしょう。何故なんでしょうか、市場であまり買い手がつかないのか、はたまた知名度が低すぎるとでも言うんでしょうか…。
とにかく、ボルボのブランド力、そして、ラインアップの中でも個性的なボディーを持つという、このC30の存在感を考えると、これはこれで、手を伸ばしたくなる価格帯だと思います。

どんな故障がありえるか?

いかにボルボと言えども、輸入車ですから、そのトラブル対処のこともやはり気になる点です。いろいろ調べると、一般論的には、故障が特に気になるような車体ではない、という印象が伝わってきます。たとえばクーラントの漏れなどがあった、と聞こえてはきますが、これは他の輸入車でも、あるいは日本車でも、起こり得るトラブルの気がします。
あと、純正のオーディオシステムが故障して使えなくなると、車体と抱き合わせの設計になっている関係上か、思いのほか修理に予算がかかる、という話もありますが、これにしても、ボルボに限った話でもないでしょう。

まとめ

いわゆる『Cセグメント』に入ると言う、このボルボ C30。若いカップルが乗っても楽しいクルマを、北欧の生真面目なメーカーが表現した一台です。個人的には、日本でのボルボのイメージが、どちらに向かっているか分からないのですが、まぁ、このC30が見せようとした、スポーツとかスポーティー感などは、やはり似合わないと言われることが、少なくないのでしょうか。
2.0L以上のエンジンを積むハッチバックなら、日欧のメーカーが、次々とハイテクエンジンを投入し、新しいモデルが市場のシェアをつかもうと攻めてきますし、ユーザー層の選択眼も厳しいところと思います。そこで、21世紀初頭の何年間か頑張りぬいたのですから、北欧からやってきた、このスポーティハッチのこと、ちょっとは褒めてやっても良いでしょう。
安心・安全は折り紙付き、でも、走行性能で特別なものをアピールする訳でもないこのC30ですが、素直に見た時、ルックスにはかなりの魅力があると思いますし、それなりにストーリーのあるボルボ、だと思います。