ヒトとは違う個性が打ち出せるエアロプログラムの魅力とは。

個性的なカーライフを暮らすうえで欠かせないのがドレスアップ。なかでもエアロプログラムは、愛車のパーソナリティ性を高めてくれるアイテムとして、熱心なオーナーのあいだで根強い人気を誇っています。そんなエアロの魅力について、おさらいしてみましょう。

自動車の車体に息づくエアロダイナミクス。

空気を味方につけるために。

 たとえば、自転車に乗っていたとします。その際、追い風ならペダル軽くすいすいと前に進み、向かい風ならどれだけペダルを漕いでもなかなか前に進まないですね。また、スピードを上げるほどに風圧は強まり、これまたペダルを強く漕ぐ必要があるはずです。

 それが空気抵抗。クルマの場合は車体表面の空気との摩擦により発生し、車速の2乗に比例して大きくなるといわれています。帰省時などに高速道路を走行していると、思いがけずふだん以上の燃料を消費していた、などという経験はありませんか。それは一般道と比べてスピードが乗りがちゆえに抵抗が大きくなった結果です。

 車両前面投影面積の大きなトラックと、流線型を誇る車高の低いスポーツカー、どちらが空気抵抗が強いかは自明の理。自動車における空気力学(エアロダイナミクス)は航空機分野で培われた知識や技術の応用から始まりましたが、その発端は車体形状を研究することで燃費を向上させることが狙いだったといえましょう。

 いかに空気を味方につけて省エネを実現するか。その課題が長らく追求されてきた結果、近年の自動車はトラックすら例外なく丸味を帯びたフォルムが与えられるようになりました。角張った造形を極力取りのぞくことが結果的に空気抵抗の軽減につながると判明したからです。

 走行中に窓ガラスを開け手を出してみると思わぬ風圧に驚いたことはありませんか。自動車をひとつの流線形移動体と考えれば、手はスムーズな空気の流れを乱す角張った抵抗発生装置でしかあり得ません。自動車史とは空気との闘いの歴史、といい換えてもなんら問題ないかも知れません。

モータースポーツの発展とともに。

 燃費向上に根ざした空気力学研究が今なお続くなか、自動車におけるエアロダイナミクスは異なる観点からも発展を遂げてきました。それは“速く走るための装備”というアイディアです。端的な例を挙げればレーシングマシンの肢体。地面を這うがごとき低いフォルム、大きな前後ウイングなどなど、サーキットには驚くべき異形の容姿を誇るクルマが闊歩しています。

 それはひとえに“速く走るため”のフォルムづくり。低ければ低いほど前面投影面積を減らして抵抗を抑えることができますし、ウイングは空気抵抗を利用してタイヤを地面に押しつけることでトラクション(駆動力)を稼ぐ、もしくは高速走行時に発生した揚力を打ち消し旋回能力を高めるためにたどり着いたスタイルです。

 それらをダウンフォースともいいますが、基本的にはすべて空気抵抗を強く意識した様式美といっていいでしょう。また、同じような概念から発達を遂げたものにスポイラーがあります。

 純粋にサーキットで闘うために生まれてきたフォーミュラーマシンに代表されるレーシングカーはいざ知らず、日本でもっとも観客動員数の多い「スーパーGT」や「スーパー耐久」といったツーリングカーレースは市販車こそが主役。そうなると、ボディ下部の凹凸をいかに処理するかがときに勝敗を大きく左右します。

 ボディ下部の凹凸とはオイルパンやサスペンション、ギアボックス、エキゾーストといった、自動車を当たり前のように構成する部品。レイアウトあれる場所や高さはそれぞれであり、それら剥き出しのメカが生み出す凹凸が意外な空気抵抗を生むわけです。

 それら凹凸をなくすためにカバーを装着すればいい、という声も聞こえてきそうですが、その場合、熱対策や整備性はどうするべきかという技術的問題が発生します。また、参加レース次第ではレギュレーション違反に問われるケースもままあり得ましょう。

 そこで考案されたのがスポイラー。ボディ下部に極力空気が侵入しないように、バンパー下にスクリーンを立ててしまおうという発想です。ついたてならば剥き出しのメカに加工や細工を施すよりもはるかに安価であり、放熱性や整備性もきちんと確保できるこのスポイラー、最終的には前方だけでなくボディ側面や後方にも採用されるまで進化を遂げています。

 省燃費をもたらすため、速く走らせるため。エアロダイナミクスという概念は、いまや自動車づくりにおける必要不可欠な要素といっていいでしょう。そして、そんな潮流は時代を追うごとにアフターパーツへも波及していくのです。

ファッションとしてのエアロダイナミクス。

チューナーブランドの誕生と伝播。

 スポイラーを用いたレースカーづくりは意外と早く、1970年代にひとつの山場、全盛を迎えています。その後、空気力学の発展を踏まえたさまざまな概念と発見を経て、いま現在へと繋がっていますが、真剣勝負に挑むレースカーの肢体、その疾走ぶりは多くの自動車好きにとって憧れといえるものでした。

 つまり、模倣が始まったのです。ぞくに学ぶは真似ぶ、といいます。格好良いレースカーの装いをすこしでも愛車に取り入れたい、そう願うのはクルマ好きならば誰もが抱く感情でありましょう。

 KPGC10型スカイラインGT-Rしかり、TE27型カローラレビンしかり、フロントセクションをヒトの顔に見立てて顎に当たるチン部へスポイラーを装着する、いわゆるチンスポイラーやどっしりとしたスタイルが演出できるワイドフェンダー、レースカーの象徴ともいうべきウイングの装備などなど、サーキットの作法がストリートへと還元され始めました。

 そんなストリートにおける国産GTメイクの勃興と歩調を揃えるように、海外、とりわけヨーロッパでも大きな動きが生まれました。それがチューナーブランドの誕生です。チューナーブランドとはメルセデスやBMW、フォルクスワーゲンといった自動車メーカーが世に送り出したモデルを自分好みにカスタマイズしてしまおう、という新潮流。

 基本的には“走り”に重きを置いた独自性の高いチューニングが主体ですが、爽快な走りを強調するため、あるいはオリジナリティ性を高めるため、エンジンパーツはもちろんホイールやエアロパーツなどで自分たちが理想する内外装を磨く傾向がありました。

 メルセデス系でいえばAMG、ブラバス、ロリンザー、が代表格であり、BMW系ならばハルトゲ、アルピナ、フォルクスワーゲン系ではABT、エッティンガーといったところが有名でしょう。

 ハンズ・ヴェルナー・アウフレヒトとエバハルト・メルヒャーの二人が立ち上げたチューナーブランド。1993年にメルセデス・ベンツの内製ブランドとなり、最高級モデルの製作を担当している。

 ボード・ブッシュマン総帥が指揮を執る漆黒の武装集団。ときどきに応じて発表されるハイパワーユニットはメルセデスシーンをそのつど震撼させており、走りとルックスをかね揃えた無骨なモデファイぶりも相まって、熱狂的なフリークから熱く支持されている。

 優雅なスタイリングと華麗な走りが堪能できる個性的なアプローチがロリンザー人気の秘訣。量産車に飽き足らない個性派に向けた“自動車の粋を極める技術力”を企業哲学に、数々の話題作をシーンに提供し続けてきた名門。

 BMWの販売と修理を手掛ける小さな会社として誕生。順調に規模を拡大しつつレース活動を通じて培った経験やデータをもとにチューニングカーの開発と発表に乗り出す。いまでは世界でも屈指のBMWチューナーとして広く認知されている老舗。

 BMW唯一の公認チューナーとして知られるアルピナ。数々の栄光に輝いたサーキット活動はつとに有名であり、機能性を含めた内外装のエレガントな作り込みぶりで、今なお名作を生み出し続けている。

 世界最大のVWアウディチューナー、それがABT。VWきっての老舗ブランドとして知られており、エアロパーツをはじめとする各種ドレスアップパーツを多数ラインアップするメガチューナー。

初代空冷ビートルのチューニングを原点する老舗VWチューナー。最近ではポルシェやベントレー、ランボルギーニに対する精力的なプログラム発表でも知られている。

それら新進気鋭のチューナーブランドが、エンジンはもちろん内外装にまで独自の調教を施したトップモデルは、まず輸入車を愛する日本の好事家を中心に存在が知られていきます。チューナーが手掛けたモデルはコンプリートカーと呼ばれ、自動車メーカーが販売するベース車両とは雲泥ともいうべき、高性能ぶりと魅惑の肢体をもち合わせていました。

 そのなか、好事家が注目したのはボディを飾る魅惑のエアロパーツ。コンプリートカーは恐ろしく高価であり、とてもではない車両まるごとを購入するのは困難。ならば、せめてルックスだけでも再現してみたいと思うのは世の常人の常といえましょう。

 また、欧州でぞくぞくと生まれるチューナーブランドはコンプリートカーを構成する各種パーツの個別販売にも取り組んでおり、それがエアロパーツの存在価値をいっそう日本に広める結果ともなりました。当初はレースカーのボディ下部の凹凸をなくして空気抵抗を減らすためのスクリーンにしか過ぎなかったスポイラーは、チューナーの手によって無骨一辺倒のレーシングパーツから脱し、ファッション性を帯びたドレスアップパーツとして認知されるにいたったのです。

日本におけるエアロブランドの誕生。

 チューナーブランド、コンプリートカーという新たな概念、いわば“黒船”の襲来に衝撃を受けた日本側の動きは意外なほど早く、日本車を創作対象にすえたドメスティックブランドが雨後の筍のごとく立ち上げられました。セダンやクーペ、ステーションワゴン、ミニバン。アプローチはそれこそ多種多様。とりわけ創作対象として取り上げられたのが、セダンとミニバンでした。

 そんなカードレスアップに生まれた、いまや老舗のエアロブランドといえば、ヴァルド、ジャンクションプロデュース、ジーコーポーレーション、ケンスタイル、ダムド、ジアラなどが挙げられます。

 日本を代表するエアロブランドのひとつ。カードレスアップ黎明期から旺盛な活動を続けており、いまや世界中にシンパを誇るビッグネーム。スタイリッシュにして存在感あふれるフォルムづくりに長けている。

 国産系高級セダンを中心とした、重厚かつエレガントなエアロづくりでフリークを熱狂させ続けてきたセダンメイクの雄。和心たっぷりのアクセサリーを数多く販売しており、日本のドレスアップシーンに与えた影響はとてつもなく大きい。

 ミニバンシーンを牽引する老舗エアロブランド。良作を重ねてきた経験が生み出す洗練されたフォルムは他の追随を許さず、ドレッシーな肢体づくりに高い定評をもつ。老舗にしてバリバリの現役。

 シンプルリッチなフォルムづくりが大人のドレスアップ好きから好感されているケンスタイル。最近では魂動デザインで人気の高い新生マツダへの意欲的なアプローチで知られる。

 レーシーなボトムアレンジで老若男女を魅了し続けるダムド。ハリウッド映画「ワイルドスピード」へランサーエボリューションVII用ボディキットを供給したことで世界的な名声を誇る。

 レーシースパルタンなエアロデザインが幅広い層から好感されている。老舗の看板にあぐらをかかず、貪欲な創作意欲を抱き続けるマイスター。その魅力はいまだ色褪せず。

 その後もいまに続く創作意欲旺盛なエアロブランドがデビューを果たしては消えていき、日本のカードレスアップシーンにいっそうの彩りを添えてくれているのはご存じの通り。 

 黎明期こそインパクトを競うがごとく華美に過ぎる造形が与えられたエアロキットがもてはやされていましたが、昨今は純正プラスアルファレベルのシンプルなキットが主流となっており、エアロの存在がすっかり市民権を得たいま現在では、自動車メーカーみずからがエアロで着飾ったモデルを当然のようにラインアップに含めてくる時代となりました。

アフターブランドにはない安心感を買う。

 メーカー純正系エアロカー最大の利点は、なんの気がねもなくディーラーへ立ち寄ることができること。レギュラーグレードを駆るオーナーには優越感が抱けるうえに、定期点検や車検、トラブル発生時にごくふつうに乗り付けることが可能です。安心感をもってエアロスタイルを楽しみたいならば、純正エアロは心強い味方となり得ましょう。

トヨタテクノクラフト株式会社が所有するブランド。自動車レースやカスタマイズパーツなどで知られる。

トヨタ車向けのカスタマイズカーパーツの企画販売やトータルデザインを手掛けるトヨタグループの1社。

日産車をベースとしたチューニングカーやカスタマイズカーを手掛ける。日産のワークスチームのひとつである大森ワークスが母体。

日産自動車グループとして、特装車事業を担当。豊富なカスタムカーの設定で知られている。

ホンダの市販車用の各種パーツ、レーシングパーツとカートの製造、販売を手掛ける。

各種モータースポーツへのワークスチーム派遣や、モータースポーツパーツの開発・販売を手掛ける。

かつて存在したマツダ系列のモータースポーツ部門。現在は市販各モデルのブランド名称として使用されている。リンク先はマツダのホームページ。詳細は各モデルリンク先へ。

スバルテクニカインターナショナルの略称。モータースポーツへの参加や各種パーツの開発・販売を手掛ける。

さらなる個性を追求するなら断然アフターブランド。

 純正エアログレードや純正系ブランドでは味気なさ過ぎる。そんな欲張りなオーナーには断然アフターブランドのエアロ製品がオススメ。シンプルながらエッジの効いた個性的なデザイン、レーシーな作風は、きっとあなたの愛車を華麗に彩ってくれるはず。さまざまなアプローチから磨き込まれた唯一無二の味わいは、深い満足感すらもらたしてくれましょう。

ダクト使いが個性的な新進気鋭ブランド。前身はトミーカイラ。レーシースパルタンな作風は日本のみならず世界中のファンが魅了されている。

重厚にしてエレガントなデザインを誇る、老舗エアロブランド。車格を問わないスタイリッシュなフォルムづくりで幅広いフリークから好感されている。

その高いデザインクオリティを武器に、わずか短時間でトップブランドまで登り詰めた、いまをときめく大人気エアロブランド。

あらゆるレベルのユーザーに感応する、膨大な車種と豊富なアクセサリーを手掛けるヒットメーカー。

Kカーはもちろんセダン乗りからも信奉されている、日本が誇るVIPメイクの勧進元。

広島の地で一人気を吐くVIP系ブランド一方の雄。完成度の高い肢体づくりに定評あり。

まとめ。エアロパーツの効能と魅力とは。

愛車の飽き止め対策としてもオススメ。

 駆け足ながら、エアロパーツについて書き連ねてきたがいかがだったでしょうか。空気力学に基づく省燃費対策、モータースポーツにおける武装、研究当初は機能性に根ざしたアイディアだったはずですが、いまではカードレスアップに欠かせないマストアイテムとしてきらり輝く存在感を放っています。

 ファッションを一新すれば気分が変わるのは、ヒトもクルマも同じ。クルマの代替サイクルが長くなる傾向が続く昨今、飽き止めの意味もかねてぜひともエアロキットの装着、ひいてはドレスアップに乗り出してみてはいかがでしょう。きっと、いつもの風景が違ってみえるはずです。