【ホンダ クラリティ フューエル セル】パワーユニットの小型化で5名乗車に! 一充填3分で750kmの走行が可能!

ホンダから「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」が発売されました。トヨタのMIRAIには1年ちょっとの差をつけられましたが、そこはホンダならではのオリジナリティを見せる仕上がりとなっています。特にパワーユニットをコンパクト化と、それに伴う室内スペースの広さなどはポイントです。本格的なFCV時代の到来を感じさせるこのクルマを見てみましょう。(飯嶋洋治:RJC会員)

クラリティ フューエル セル(CLARITY FUEL CELL)とは?

ホンダは、3月10日に燃料電池車(FCV)の「CLARITY FUEL CELL(クラリティ フューエル セル)」を発売しました。トヨタが2014年にMIRAIを初の市販燃料電池乗用車として発売してから1年あまり経ちますが、ホンダもいよいよそれに続いたわけです。ちょっと時代をさかのぼると、ホンダは2002年に高圧水素タンクを持つ「FCX」をFCVとしてはじめて米国環境保護庁、およびカルフォルニア州大気資源局認定を取得し、リースを行っています。これは内閣府に1台、ロスアンゼルス市に1台というものでした。2008年には「FCXクラリティ」のリースを開始しており今回の「クラリティ フューエル セル」はそれらのデータを元に開発されています。

エクステリアは?

コンセプトに「BOLD&AERO」を掲げ、ロー&ワイドで堂々とした車格と先進的で美しいストリームラインデザインを目指しています。実際に見た感じも極端に「FCV」を押し出すことなく、スマートでかっこ良いデザインのように感じました。一連のホンダ車のデザインを引き継いでいる感じで、目立ちすぎることなく、FCVに乗りたいという層にはMIRAIよりも受け入れやすいかもしれません。

エアロダイナミクスも良く考えられています。ボディ上部の空気抵抗の削減はもちろんのこと、フロントエアカーテンダクト、リヤエアカーテンダクト(世界初)、リヤタイヤカバーで整流効果を高めています。ここも燃費向上の本気度が伺えるところです。

インテリアは?

クラリティ フューエル セルを設計する段階の調査で、ユーザーはFCVでも、居住性に妥協しないということがわかったそうです。そこから乗車定員は大人5人がゆったり座れるスペースを確保することにはこだわっています。これは、後に解説しますがパワートレインのコンパクト化に成功したこととも大きく関係しています。

デザイン的にもインパネを含めストレート基調でシンプルにすることにより広さを感じさせるものとなっています。シートを含む内装も、FCVだから……という妥協をすることなく、上質感を感じさせるものとしました。静粛性はもちろん、外気中の排気ガスなどを検知して自動的に内気循環に切り替えるエアクオリティセンサーや、空気浄化、脱臭などの効果を発揮するプラズマクラスター技術搭載エアコンの装備など、居住性にはかなり気を使っているように思えます。

パワートレインは?

FCVということで、パワートレインはモーター(交流同期電動機)となります。最高出力130kW、最大トルク300Nmということで、スペックだけをみてもかなりパワフルな走りが期待されます。また、燃料電池パワートレインの小型化も今回のポイントで、ボンネット内に搭載することに成功しました。これがセダンタイプのFCVではじめて5人乗りを実現できたポイントとなっています。

小型化に際しては、モーターの上にFCスタックを載せた構成ですが、そのセル出力を1.5倍にしてセル数を30%減らし、セルの厚みも20%削減したことなどで33%小型化し、V6エンジン並みのサイズになったということが大きいところでしょう。これはホンダの「MM(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」に基づくとも言える部分です。バッテリーと高圧水素貯蔵タンク(70Mpa)は、乗員の足元と後部座席後ろに搭載されています。

こうしたパワートレインの高効率化、走行エネルギーの低減により、一充填走行距離を従来比で約30%伸ばし、750kmとなりました。一回あたりの水素充填時間は3分程度ということで、これもガソリン車と使い勝手は変わらないものとなっています。ホンダとしては、130kWとミッドサイズクラスの出力でトヨタMIRAIよりも実用的な車に仕上げたとしています。

主要諸元は?

【パワートレイン/モーター】
最高出力 130kW/4,501-9,028rpm[最高回転数:13,000rpm]
最大トルク 300Nm/0-3,500rpm
種類 交流同期発動機
【燃料電池スタック】
最高出力 103kW
種類 固体高分子形
【駆動用バッテリ】
種類 リチウムイオン電池
【燃料・タンク】
種類 圧縮水素
タンク内容量 141L(前方24L/後方117L)
公称使用圧力 70Mpa
【寸法】
全長 4,915mm
全幅 1,875mm
全高 1,480mm
乗車定員 5名
車両重量 1,890kg
最小回転半径 5.7m
【動力伝達・走行装置】
最終減速比 9.333
ステアリング装置型式 ラック・ピニオン式(電動パワーステアリング仕様)
タイヤ 235/45R18 94W
主ブレーキ種類・型式 前/後 油圧式ベンチレーテッドディスク/油圧式ディスク
サスペンション方式 前/後 マクファーソン式/マルチリンク(ウイッシュボーン)式
スタビライザー形式 前後 トーション・バー式
全国メーカー希望小売価格(参考価格) 7,600,000円(消費税込み)

外部給電器としても使える?

クラリティ フューエル セルは別売りの「POWER EXPORTER 9000」を使用することで、外部給電の電源としても使えます。これは車両に蓄えた電気を家庭用電源に変換するもので、合計最大9.0kVAの出力で、一般家庭のおよそ7日分の電力を供給可能となるものです。災害時の非常要電源、平常時の屋外イベントでも使用できるということで、ここも来るべき「水素社会」を感じさせる部分です。

まとめ

ホンダは2030年を目途にハイブリッド、プラグインハイブリッド、EV、FCVを生産車の3分の2にしたいという意向があります。今回のクラリティ フューエル セルはそのための大きな一歩ということになるでしょう。当面はリース販売のみで個人販売は1年半くらい後になるということです。価格は優遇措置を受けても決して安い買い物ではありませんが、燃料電池の価格は共同開発のGMとの協力関係でコストを下げることを目指していると言います。インフラ整備を含めて、水素社会をどうやって作っていくかというのが今後の課題と言えるでしょう。