【トヨタ グランドハイエース】日本的ミニバン進化の典型か

従来からのワンボックスカーに日本的な繊細さを各所に組み入れたミニバンの登場によって、日本ではミニバンの大ブームが起こります。その中で、短い期間ながら、高級ミニバンのあるべき姿を具現化したこのモデルが、その後のミニバンのコンセプト形成に一役買ったのは言うまでもありません。

荷物と人と自動車と

ステーションワゴンの誕生

画像はイメージ画像

車が誕生してまもなく、車の主目的がまだ貨物を運ぶことが主だった時代。鉄道の駅に到着した人々を「荷物のように目的地に運ぶ」ことがステーション・ワゴン(駅の荷車)の始まりでした。そもそもワゴンとは「荷車」のこと。自動車が人とモノを運ぶための手段として誕生以来、世の中の発展と技術の進化に伴って、車も様々な方向に進化し始めます。
一方の貨物車が大きな空間、力強い走行性、耐久性といった、「運搬道具」としての機能を高めて行くのに対して、乗用車は「走ること」「操ること」「快適に過ごすこと」といった人間の五感を満足させる方向へと発展していきます。当然のこととして、その中間に位置する車も登場し、ワゴン、バン、ワンボックスと目的と用途に応じたバリエーションが広がっていく結果をもたらしました。

相対的な比較の指標として

ただ、どれだけの人がこの種類の違いを説明できるのでしょうか?言葉だけでは違いを伝えにくいワゴン、バン、ワンボックスといった分類を、「一列目」と「二列目」の快適性の比率で表現してみるのはどうでしょうか? 例えばステーションワゴンだと60:40、ミニバンでは50:50、ワンボックスだと40:60とか。 今流行りのSUVも加えるのであれば、「走行性」と「多様性」という基準も入れてみるのも、いいかも知れません。人によって印象に違いが出てくるのは仕方がないとしても、購入を選ぶ際の相対的な指標として、「使える」のではないでしょうか。

ミニバンの成り立ちは?

ミニバン:ヨーロッパでの発祥

マトラ・ランチョ・シムカをベースとし、ヨーロッパではじめて1984年に誕生したのがルノーエスパスという名前のミニバンです。発売当初、その斬新なコンセプトとデザインによって、いきなりベストセラーとなりました。フランス車としてのお洒落な雰囲気と共にモノスペースカーとして上質の外装と内装を提供し、後々他の自動車メーカーにも大きな影響を与えることになります。このルノーエスパスはモデルチェンジを繰り返し、今なお人気モデルとして親しまれています。なおエスパスのパスはフランス語で「空間」のこと。コンセプトを1語で表現した見事さです。

米国クライスラーによるミニバンの大成功

米国で、このミニバンのコンセプトで大成功したのがクライスラー。積極的に開発に力を入れ、1990年代前半には大きく売り上げを伸ばしていきます。もともとライトトラックの市場の大きい米国で、エクステリア、インテリアの両方に注力したのが大成功の理由でした。それまでトラックイメージしかなかったこの分野に革新的なイメージの変化をもたらし、まさにミニバンのクライスラーとして会社のイメージアップにもつながりました。当時、「アメリカで流行ったモノは5~10年後に日本でも流行る」と言われていた通り、やがて日本にもミニバンブームが伝わっていきます。

斬新なコンセプトが日本にも

トヨタ・エスティマ

その日本でルノー・エスパスに大きな影響を受けたのが1990年発売のトヨタ・エスティマ。自由な発想で近未来的なデザインを具現化した卵型のデザインは、それまでの商用車の延長上のイメージだった日本の多人数車のイメージを一新するほどの革新的なものでした。外装だけでなく内装にも徹底的に配慮された結果、ミニバンとしての付加価値が単に「移動」するためだけでないことを、身を以て教えてくれました。こうした未来的なエクスエリアとインテリア、とりわけ2列目以降への居住性に対する配慮は画期的で、以降のミニバンブームの火付け役ともなりました。

ところが2.4Lながら傾斜させて配置せざるを得なかったミッドシップエンジンの制約に起因する非力さも同時に指摘され、より「走り」に力を入れたモデルも求められるようになります。こうした世の中の流れのもと、3ナンバーのボディを持ち、トヨタとして初めてミニバンながらフロントエンジンを持つグランビアが1995年に発売されます。

トヨタ・グランビア

ボディサイズを生かした広大な室内空間とパッケージングの良さ、FRであることの上質な乗り心地、ロングボディでありながら小回りが利く操縦性など評判がよく、トヨタのミニバンとしてフラグシップ的な役割を果たすことになっていきます。さらに外装にも手をかけ、豪華さも強調されるようになりました。ただ内実としては、殆ど専用設計のシャシーや上質な造り込み、凝ったサスペンションなどにより、メーカーにとっての製造コストは相当に高かったようでもありますが。

グランドハイエースは、このグランビアの派生モデルとして1999年に誕生しました。

グランビアの派生モデル・グランドハイエース

最上級モデルにふさわしい高級感を醸し出すために、同じトヨタの最上級モデルであったクラウンを思わせる豪華な内外装を施して「ミニバンのクラウン」的立ち位置を与えられました。そのためか、見た目はグランビアよりも派手目で、より押し出し感の強い印象が感じられるようです。

ところが無念なことに、当時競合していた日産エルグランドの大攻勢の前に根本的な対抗策にかられ、2002年には後継機種となるアルファードにその立場を譲って、短い生涯を終えることになってしまいます。なお名前にハイエースと付いているのは販売チャンネルがトヨペット店の代表的車種であるハイエースからとったことに由来し、日本版ハイエースをベース車としているわけではありません。