【ダイハツ フェロー】1リッター当たり112.4PS?レース用NAエンジン搭載の「軽」

高回転、高出力は「ホンダ・エンジン」という当時のイメージを打ち砕いた「フェロー」シリーズは、1リッター当たり112.4PSというレースエンジンを搭載したモデルが存在していました。その「フェロー」に迫ってみたいと思います。

「フェロー (Fellow)」

「フェロー(Fellow)」 は、ダイハツ工業が製造、販売していた軽自動車です。ユニークなバギータイプの「フェローバギィ」も派生モデルとして存在していました。

1thモデル(1966年-1970年)

1thモデルは、1966年11月に発売されました。「ダイハツ社」としては、既に貨物用の軽商用車では十分な実績を持っていたゆえに軽乗用車市場参入モデルの第1作となっていました。グレード設定は、「スーパーデラックス」と「デラックス」の2タイプが用意されていました。パワートレインは、縦置きエンジン配置としたFR駆動方式を採用し、既に実績のあった軽トラックの「ハイゼット」に使用していた「ZL型」の2ストローク空冷2気筒ガソリンエンジンを水冷化し、23PSにチューンした「ZM型」エンジンを搭載していました。サスペンションシステムは、コイルスプリングによる4輪独立懸架を採用しており、フロントには、ウィッシュボーン式を採用し、リアには、ダイアゴナルスイングアクスルという特異なサスペンションシステムを採用していました。このサスペンションシステムは、日本車では「いすゞ・ベレット」以外に先例がありませんでした。エクステリアデザインは、プリズムカットと呼ばれる箱形のボディースタイリングで、大人4人が無理なく乗れる軽自動車を目指した居住空間を持っていました。また当時の軽自動車としてはクオリティの高い質感となっていました。リアに設けられているトランクはヒンジをボディパネル外部に付けることで開口部を大きくとり、荷物の出し入れを容易にしていました。ボディデザインと居住性、使い勝手の良さから「フェロー」は当時のダイハツの軽自動車販売シェアを伸ばすモデルとなりました。しかし、同時期に廉価で高出力な「ホンダ・N360」の登場によって、販売シェアが伸びなくなったためにスポーツモデルの「SS」を投入しました。それでも市場を制するまでには至りませんでした。スポーツモデルの投入などバリエーションが多く、2ドアセダン、商用モデルの3ドアバン、ピックアップトラックのボディバリエーションがありました。また角型のヘッドランプは日本車で初採用でした。1thモデルは、1967年に「スタンダード」を追加し、1968年にスポーツモデルの「SS」を追加しています。また1970年4月には、北海道、東北等の降雪地帯を除いて100台限定でバギータイプの「フェローバギィ」も発表されました。

スポーツモデル「SS」

当時、軽自動車のエンジンパワーは、20から25PSが標準でしたが、そこに「ホンダ」は「N360」の31PSを登場させ一気に市場にパワーウォーズを仕掛けてきました。市場は、エンジンパワーとデザインで「ホンダ・N360」に流れていったために「ダイハツ社」は1967年の東京モーターショーでレーシングマシンの「P-5」と「32PS」にパワーアップした「フェローSS」を発表しました。発売は、1968年になりました。スポーツモデルの「フェローSS」は、ボディーを軽量化すると共にコストパフォーマンスを考えてベースモデルに「スタンダード」にして、エクステリアデザインは、フロントグリルをブラックカラーのメッシュに赤と白のストライプダイハツのマークとSSのバッジを取り付け、ロケットタイプのフェンダーミラーを装着していました。リアデザインはデュアルテールのマフラーを装着している他は、他のモデルと変更はなくタイヤサイズも同じでしたが、レッドカラーのホイールにブラックのホイールキャップを装着していました。搭載ユニットは、水冷2サイクル2気筒のエンジンでソレックスタイプのレーシングキャブレターを2基と大型エアクリーナを装着した最大出力32PS/6,500rpm、最大トルク3.8kgm/5,000rpmは、軽自動車最高出力でした。サスペンションシステムは、他のグレードと同じでフロントにダブルウイッシュボーン独立、リアはダイヤゴナルスイングアクスルを採用しコイルスプリングを組み合わせた4輪独立懸架式でした。この仕様で最高速度115km/h、0-200m加速は13.18秒というポテンシャルでした。

「SS」主要諸元

エンジン:356cc 水冷2サイクル直列2気筒 ツインキャブ仕様「ZM型」
最大出力:32PS/6,500rpm
最大トルク:3.8kgm/5,000rpm
トランスミッション:4MT
速駆動方式:FR
サスペンション:F ダブルウイッシュボーン/コイル R ダイヤゴナルスイングアクスル/コイル
ブレーキ:F/R ドラム(リーディングトレーディング)
全長:2,990mm
全幅:1,285mm
全高:1,350mm
ホイールベース:2,990mm
車両重量:495kg
最高速度:115km/h
0-200m加速:13.18秒

レーシングマシン「フェロー7」

「ダイハツ・フェロー7」は、1969年2月に開催された第2回東京レーシングカー・ショーで公開された、「ダイハツ・ワークス・レーシングマシン」です。シャシーに「フェローSS」のラダーフレームを補強したものをベースにトラスフレームを組みFRP製のボディカウルが被せられています。ドアはアルミ製となっています。搭載ユニットは、「フェローSS」の356cc 2サイクル 水冷直列2気筒のエンジンをベースとしたユニットです。最高出力40PS/8,000rpm、最大トルク3.7kgm/7,500rpmを発生させ、シャシーのセンターコンソール下に、このユニットとトランスミッションを搭載していました。FRレイアウトで搭載していましたが前後重量バランスを考え、フロント・ミドシップ・レイアウトとなっています。ボディは、全長が3,100mm、全幅は1,380mm、全高を700mmとして車両重量は、320kgに抑えられ最高速度は、180km/hに達していました。そして当時製作されたといわれている「フェロー7」は合わせて3台とも4台とも言われていますが、「ダイハツ社」は、このレーシングエンジンをフィードバックし、後に登場する「フェローマックス」に搭載することにします。

フェローバギィ(L37PB)

「フェローバギィ」は、1970年4月に登場しています。北日本を除く日本国内で、100台限定で販売されました。当時は実用性を重視した乗用車や商用車が主流でしたが、エクステリアデザインは、FRP製ボディに曲面を活かしたユニークなデザインでドアの無いバスタブ形状に仕上げられており、オープンスポーツカーのように2人乗りという軽自動車規格を備えたボディデザインでした。また安全装置として大型ロールバーとグリルガードを装備していました。シャシーフレームは、名前は、「フェロー」にもかかわらず、商用軽自動車である「ハイゼット」のピックアップをベースモデルとしていました。それゆえに2シーターの後ろに150kgの荷物スペースを確保し軽トラック登録となっています。ルーフには、ビニール・キャンパスが採用されています。インテリデザインは、メーター回りは「フェロー」のピックアップの大型スピードメーターが、ステアリングホイールの左、フロントパネルのセンターに配置されています。ステアリングの正面にはライト、ワイパースイッチをセットいました。搭載するエンジンは、「フェロー」のピックアップモデルと同様の356cc 空冷2サイクル直列2気筒 シングルキャブ仕様の「ZL型」エンジンで最大出力26PS/5,500rpm、最大トルク3.5kgm/4,000rpmを発生していました。型式は「L37PB」となっています。

「フェローバギィ」主要諸元

エンジン:356cc 空冷2サイクル直列2気筒 シングルキャブ仕様「ZL型」
最大出力:26PS/5,500rpm
最大トルク:3.5kgm/4,000rpm
トランスミッション:4MT
速駆動方式:FR
サスペンション:F ダブルウイッシュボーン/コイル R リジットアクスル/リーフスプリング
ブレーキ:F ツーリーディング R リーディングトレーディング
全長:2,995mm
全幅:1,290mm
全高:1,400mm
ホイールベース:1,940mm
車両重量:440kg
最高速度:95km/h

2thモデル(1970年-1980年)

1970年4月に2thモデルへフルモデルチェンジし、名称が「フェロー」から「フェローマックス(Fellow Max)」に変更されました。型式は「L38」となっています。ボディバリエーションは2ドアセダンと3ドアバン、後にハードトップと4ドアセダンが追加されました。エクステリアデザインは、2BOXスタイルとなっています。1thモデルの角目ヘッドライトから丸目ヘッドライトに変更となり全体的に丸いラインを描いたデザインとなりました。また駆動方式は、当時は「ホンダ社」以外の各社が後輪駆動が主流だった軽乗用車では珍しく、「ホンダ社」に続いてスペース効率で有利な前輪駆動のFFを採用しています。サスペンションシステムもフロントにストラット式、リアには高度なセミトレーリングアーム式を採用し、四輪独立懸架の足回りは先代モデルを踏襲しつつ走行安定性の向上が図られています。またパワーユニットは、40PSを発揮するまでになっており、前モデルより軽量化され、ハイパフォーマンスモデルとなりました。しかし、オイルショックや排出ガス規制によってマイナーチェンジ毎にエンジンの変更が行われ、パワーも低下していきました。また、大衆車としての需要もリッターカーへ移行しいき人気は徐々に下火となっていきました。

2thモデルのMC後の変更点

1970年の7月にツインキャブ仕様の「SS」と「S」モデルを発表しています。また1970年10月には、「ハイカスタム(シングルキャブ仕様)」を追加しました。1971年3月にマイナーチェンジを施し、8月にハードトップモデルを発売しグレードをツインキャブ仕様は、「GXL」と「SL」、シングルキャブ仕様は、「GL」と「TL」に設定していました。ツインキャブ仕様モデルにはフロントにディスクブレーキが標準装備となりました。1972年3月のマイナーチェンジで「中期型」となります。インストルメントパネル、フロントグリル、フロントフード等を変更しています。ハードトップモデルに「GHL」(前輪ディスクブレーキ、レザートップを標準装備したシングルキャブ仕様の豪華バージョン)を追加しています。1972年になると10月には、4ドアセダンを発売しています。グレードは「デラックス」「カスタム」「ハイカスタム」の3タイプで、全てシングルキャブ仕様でした。また全車排出ガス規制に対応したためにツインキャブ仕様は40PSから37PSに、シングルキャブ仕様は33PSから31PSに最高出力が低下しました。1973年5月のマイナーチェンジで「後期型」となります。フロントグリル、フロントフード、フロントフェンダー等を変更しています。2ドアセダンのリヤスタイルが4ドアセダンと同じデザインに変更となっています。またハードトップのリヤスタイルも大幅に変更されました。そして、2ドアセダンハイカスタム、2ドアセダンパーソナル、ハードトップGXLを廃止し、2ドアセダンスーパーデラックス、4ドアセダンSTD、ハードトップGSL、ハードトップLを発売しています。1975年2月のマイナーチェンジでは、ツインキャブ仕様のモデルが廃止されました。またナンバープレートの大型化に伴い、前後バンパーの形状を変更しています。そして、インストルメントパネル、シートバックも変更しています。その後、1975年12月のマイナーチェンジでは、ブレーキフルード残量警報装置を採用しています。翌1976年5月のマイナーチェンジでは、ハードトップを廃止し、「ZM型」エンジンの360cc 2ストローク 2気筒エンジンモデルは昭和50年排出ガス暫定規制に適合させています。また「AB型」エンジンの550cc 4ストローク 2気筒SOHCエンジンを搭載した「550」モデルを51年排ガス規制適合モデルとして発売しています。550ccエンジン搭載モデルの変更はバンパー延長のみで車幅は360ccサイズのままとなっています。

レースからフィードバックしたエンジン搭載の「SS」モデル

「フェローマックスSS」は、「ダイハツ・ワークス・レーシングマシン」である「フェロー7」のエンジンをデチューンして搭載していました。「ZM5型」で356cc 空冷2サイクル直列2気筒 ツインキャブ仕様のスペックは、圧縮比:11.0:1に高められ、最大出力40PS/7,200rpm、最大トルク4.1kgm/6,500rpmを発生し、1リッター当たりの馬力は、112.4PSというスペックで、当時の軽自動車では、最強の数字を記録していました。

「フェローマックスSS」主要諸元

エンジン:356cc 空冷2サイクル直列2気筒 ツインキャブ仕様「ZM5型」
最大出力:40PS/7,200rpm
最大トルク:4.1kgm/6,500rpm
圧縮比:11.0:1
1リッター当たりの馬力:112.4PS
トランスミッション:4MT
速駆動方式:FF
サスペンション:F ストラット/コイル R セミトレーリングアーム
ブレーキ:F ディスク R リーディングトレーディング
全長:2,995mm
全幅:1,295mm
全高:1,295mm
ホイールベース:2,090mm
車両重量:465kg
最高速度:120km/h
0-400m加速:19.8秒

3thモデル「マックスクオーレ」(1977年-1980年)

「フェロー」から「フェローマックス」となり3thモデルに当たるモデルでは、「マックスクオーレ(Max Cuore)」となり1977年7月に登場しています。このモデルは、「フェローマックス」のビッグマイナーチェンジ版に当たり、車幅が広げられました。形式はセダンが「C-L40」、バンが「H-L40V」となっています。ボディラインナップは2ドアセダンは、「STD」「DX」「カスタム」、4ドアセダンが「DX」「カスタム」「ハイカスタム」、そして3ドアバンが「STD」「DX」「スーパーDX」の設定となっていました。搭載するユニットは、「AB型」エンジンで547cc 2気筒4サイクルの28PS仕様でした。1979年3月にマイナーチェンジがあり、セダンは53年排出ガス規制適合で「E-L40」となり、バンは54年排出ガス規制適合で「J-L40V」となりました。最高出力は31PSに向上しています。翌1980年7月 に生産終了となりました。後継モデルはセダンが「クオーレ(Cuore)」、バンが「ミラ・クオーレ」となりました。

まとめ

「フェロー」は、当時の軽自動車市場においてハイパフォーマンスモデルの「SS」シリーズを登場させ、1リッター当たり112.4PSというレーシングマシンゆずりの最強エンジンを搭載しており、日本の自動車史に名車として残るモデルです。