【フィアット プント】“点”と名付けられた出来の良いスモールハッチ

イタリア最大の自動車メーカー、フィアット。自国のほとんどの自動車メーカーを傘下に収め、エントリーモデルからスペシャリティまでを自社でまかなうのではなく、グループ内を統制しながらそれぞれのブランドを活かす采配をしています。フィアットは大衆車を担い、ランチアやアルファロメオにコンポーネントを提供しながらプレミアムカーの製作を任せています。お互いにいいとこ取りしながら成長を続けているのです。

フィアットプントの誕生

フィアット社内で使われるプロジェクト名“178プロジェクト”というコードネームで、フィアットウーノの後継車として開発がはじまりました。ベースになったのはフィアット・ティーポです。1993年9月に発表され、翌1994年に販売が開始されました。イタリア語で“Punto”は英語の“Point”であり、日本語で“点”を意味します。“そこかしこに点在する”とでも言いたげなネーミングですが、命名についてはフィアットから正式なリリースはありませんでした。欧州ではオペル・コルサ、フォルクスワーゲン・ポロなどの強豪がひしめく小型ハッチバック車市場に投入されました。

フィアットプント初代モデル

直列4気筒の1.1L・1.2Lのガソリンエンジンと、1.7Lのディーゼルエンジンが搭載されました。後にスポーツモデルとして1.4Lターボモデルも追加されています。3ドアもしくは5ドアのハッチバックボディを持ち、スタイリングデザインはジョルジェット・ジウジアーロによります。後に3ドアモデルをベースにカブリオレモデルがベルトーネ社の工場で製造されました。欧州のこのクラスですからマニュアルトランスミッションがメインですが、富士重工業製のCVTを搭載した“セレクタ”も追加されました。1995年ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーに輝いています。

日本への導入

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Fiat_Punto

フィアットプントカブリオレ

日本への導入は1997年3月でした。1.2Lセレクタと1.2Lカブリオセレクタが先行して発売されました。1998年4月には、日本仕様車として開発された“スポーティングアバルト”が発売されました。アバルト製のエアロパーツを装着し、1.2LながらDOHCエンジンを搭載し6速M/Tを搭載したスポーツモデルです。

出典:http://serpente-oltre-alpi.blog.so-net.ne.jp/index/4

フィアットプントスポーティングアバルト

スペックなど

●プントセレクタ1.2L
ボディタイプ:ハッチバック
ドア数:5ドア
乗員定員:5名
全長:3,760mm
全幅:1,625mm
全高:1,460mm
ホイールベース:2,450mm
トレッド前/後:1,375/1,365mm
車両重量:970kg
最高出力:60ps(44kW)/5,500rpm
最大トルク:9.8kg・m(96.1N・m)/3,000rpm
エンジン:水冷直列4気筒SOHC
総排気量:1,240cc
内径×行程:70.8mm×78.8mm
圧縮比:9.6
過給機:なし
燃料供給装置:電子制御式燃料噴射装置
燃料タンク容量:47リットル
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前):マクファーソン・ストラット
サスペンション形式(後):トレーリングアーム
ブレーキ形式(前):ディスク
ブレーキ形式(後):ドラム(リーディングトレーディング)
タイヤサイズ(前):165/65R14
タイヤサイズ(後):165/65R14
駆動方式:FF
トランスミッション:CVT(無段変速・富士重工業製)
販売価格:1,885,000円

角張ってモダンになった2代目

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Fiat_Punto_(1999)?uselang=ja

フィアット社内で使われるプロジェクト名“188プロジェクト”というコードネームで開発が進められた2代目プントは、1999年にデビューしました。直列4気筒1.2L・1.8Lのガソリンエンジンと、1.3L、1.9Lのディーゼルエンジンをラインナップしました。1.3Lディーゼルエンジンにはコモンレール式の燃料噴射装置を採用していました。先代と同様にCVTは富士重工製ですが、“セレクタ”ではなく“スピードギア”と呼ばれました。

日本への導入

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%B3%E3%83%88

日本へは2000年6月に導入されています。オーソドックスな5ドアハッチバックに1.2L直列4気筒DOHCエンジンとCVTを組み合わせた“ELXスピードギア”と、3ドアにアバルトのエアロパーツを取り付けて、フィアット・バルケッタと同じ1.8L直列4気筒DOHCエンジン+5M/Tを搭載した“HGTアバルト”が発売されました。HGTアバルトは先代のスポルティングアバルトと同様、日本のみの仕様です。

●フィアットプントHGTアバルト
ボディタイプ:ハッチバック
ドア数:3ドア
乗員定員:5名
型式:GF-188A1
全長:3,820mm
全幅:1,660mm
全高:1,480mm
ホイールベース:2,460mm
トレッド前/後:1,410/1,400mm
車両重量:1,100kg
最高出力:130ps(96kW)/6,300rpm
最大トルク:16.7kg・m(164N・m)/4,300rpm
エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量:1,746cc
内径×行程:82.0mm×82.7mm
圧縮比:10.3
過給機:なし
燃料供給装置:マルチポイント式電子制御燃料噴射
燃料タンク容量:47リットル
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前):マクファーソンストラット式独立懸架、スタビライザー付
サスペンション形式(後):トーションビーム式、アンダーフロアスプリング配置
ブレーキ形式(前):ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後):ディスク
タイヤサイズ(前):185/55R15 81V
タイヤサイズ(後):185/55R15 81V
駆動方式:FF
トランスミッション:5M/T
販売価格:2,180,000円

マイナーチェンジ

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%B3%E3%83%88

2003年12月に500万台生産を記念して大がかりなマイナーチェンジを行いました。フェイスリフトによりフロントマスクを一新しています。それまでのグリルレスで細目のヘッドライトの顔つきから、ダミーグリルを装着してヘッドライトを大型化することでフロントデザインを一新しました。

大きくなった3代目“グランデ”

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Fiat_Grande_Punto?uselang=ja

コードネームは“199プロジェクト”の3代目は、内外装ともにスタイリングデザインをジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインが担当しました。“大きなプント”という意味の“GRANDE PUNTO(グランデ・プント)”と名付けられて2005年7月28日にデビューしました。資本提携が解消されたGMのプラットフォーム“GM・ガンマプラットフォーム”を採用したのが大きくなった理由です。優れたパッケージングによりクルマが巨大化を続けていた時期ですが、全長は4mを超えたものの全幅は1.7mを切っています。

日本への導入

出典:http://www.netcarshow.com/fiat/2008-grande_punto/

日本でのデビューは2006年6月でした。6速M/Tを搭載した“16Vスポーツ”とセミオートマチックトランスミッションのデュアロジックを搭載したモデルがあります。デュアロジックモデルには、“メガ”・“ギガ”・“テラ”が存在し、デュアルゾーン式オートエアコンや電動ダブルサンルーフ の“スカイドーム”などの装備レベルが違います。2009年2月には、アバルトグランデ・プントが追加されました(左ハンドル仕様のみ)。“グランデ・プント”は全幅が1.7mを切っているのに対して、“アバルト・グランデ・プント”の全幅はチューニング版の“エッセエッセ”も含めて全幅1,725mmとなり日本では3ナンバー登録となります。

●フィアットグランデプント16Vスポーツ
ボディタイプ:ハッチバック
ドア数:3ドア
乗員定員:4名
型式:ABA-199141
全長:4,050mm
全幅:1,685mm
全高:1,495mm
ホイールベース:2,510mm
トレッド前/後:1,470/1,460mm
車両重量:1,160kg
エンジン型式:199A6
最高出力:95ps(70kW)/6,000rpm
最大トルク:12.7kg・m(125N・m)/4,500rpm
種類:直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量:1,368cc
内径×行程:72.0mm×84.0mm
圧縮比:10.8
過給機:なし
燃料供給装置:マルチポイント式電子制御燃料噴射
燃料タンク容量:45リットル
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前):マクファーソンストラット式
サスペンション形式(後):トーションビーム式
ブレーキ形式(前):ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後):ディスク
タイヤサイズ(前):205/45R17
タイヤサイズ(後):205/45R17
駆動方式:FF
トランスミッション:6M/T
販売価格:2,090,000円

マイナーチェンジ

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Fiat_Punto_Evo?uselang=ja

2009年9月のフランクフルトモーターショーでマイナーチェンジ版となる“プント・エヴォ(PUNTO EVO・エヴォは英語で“進化”を意味する“Evolution”の略)”を発表しました。翌年の3月からイタリアで、6月から日本で発売を開始しました。 アバルト版の“アバルト・グランデ・プント”も2010年2月に“アバルト・プント・エヴォ”として同年3月のジュネーブショーで発表されました。

再度マイナーチェンジで

出典:https://commons.wikimedia.org/wiki/Category:Fiat_Punto_(2012)?uselang=ja

2012年9月1日に2度目のマイナーチェンジを行い、名称を“プント”に戻しました。当初日本では、プント・エヴォと並行発売していました。グレードは排気ガス規制“ユーロ5”をクリアしアイドリングストップ機構を備えて15.7km/Lを達成した1.4L直列4気筒SOHCエンジンと、セミオートマチックタイプの5速A/Tを搭載した“ラウンジ”1種類のみです。
本国ではツインエアエンジンを搭載して販売されていますが、日本では2014年9月をもって販売が終了されました。

現行(日本未導入)モデル

出典:http://www.fiat.com/punto/technology-safety

プントは現在も生産・販売されています。ただ、日本ではあまり成績がふるわなかったのと、パンダや500との棲み分けが上手に図れなかったのが販売終了の主な原因なのでしょう。こちらも日本未導入ですが、フィアット500Lはプントがベースになっていますから、まだまだ活躍しているのですが...。
そんな現行プントですが、輸出先によってボディバリエーションを3ドア/5ドア、エンジンも0.9Lのツインエア、1.2Lのガソリンエンジン、1.4Lのガソリン+ガスのコンバインエンジン、1.3Lディーゼルなど多彩なバリエーションを駆使して世界中で活躍しています。
たとえば、イタリアでは5ドアのみで1.2Lガソリンと1.4Lのコンバインエンジン、スイスでは3ドアのみで0.9Lツインエア、1.2L・1.4Lガソリン、1.3Lディーゼルという具合です。

プントを生んだ仲間たち

プントの誕生と多彩なバリエーション展開には、多くのフィアット車のメカニズムが応用されています。

ベースになったのはティーポ

ティーポのデビューは1988年です。外装デザインは当時フィアット・VSSの開発で脚光を浴びていたイタリアのデザイン会社I.DE.Aが、内装はフィアットチェントロスティーレ(フィアット社内デザインセンター)が担当しました。イタリア語で“Tipo”とは英語で言う“Type”で、“型”とか“モデル”、また“標準”や“模範”という意味をもちます。その名の通り、フィアット系C/Dセグメント(小型ハッチバック/セダンクラス)の原型として、自社はもちろんランチア、アルファロメオなど1990年代のフィアットグループを支えたクルマです。ティーポをベースに開発されたクルマは、フィアットブランドではテムプラ・クーペフィアット・ブラーボ(Bravo 、3ドア)/ブラーバ(Brava 、5ドア)、ランチアブランドでデルタII・デドラ、アルファロメオブランドでは145・146・155・GTV・スパイダーなど全部で16車種に及びます。

フィアットウーノ

そして、直接の先代モデルにあたるフィアットウーノです。フィアットパンダの兄貴分として開発された小さなクルマです。903ccから1.4Lターボまで多岐にわたるエンジンバリエーションをもつ息の長いクルマでした。

HGTアバルトの父親バルケッタ

2代目プントのアバルトモデル“HGTアバルト”のエンジンは、このバルケッタ用に開発されたエンジンでした。“別のクルマのエンジンがそんなに簡単に乗るの?”と思われるかもしれませんが、実はこのバルケッタ、初代プントをベースに開発されたクルマなんです。ですから、色々と親和性が高いのでしょうね。

最後にまとめ

いかがでしたか。フィアットグループを影で支え続けたフィアットティーポとその後継車プントです。プントはわたしの現役メカニック時代にドンピシャの世代ですから、懐かしくもあり寂しくもありますね。5ドアモデルなら使い勝手も良いですし、大きさといい価格といい日本で売れない理由がいまひとつわかりません。