謎の車【アウディ A2】を徹底解剖!

アウディの「A」シリーズは世界中で支持されている人気シリーズです。セールスにおいてもエントリーモデルのA1からエグゼクティブサルーンのA8まで豊富なラインナップを揃えて中核をなしています。そのシリーズに中で1999年~2005年まで販売されましたが、それ以降10年以上も「欠番」になっているのが「Audi A2」です。しかも日本では正規輸入されなかったこの「謎のアウディ」を今回は追ってみます。

「アウディA2」ってどんな車だったの?

出典:http://www.honestjohn.co.uk/carbycar/audi/a2-2000/

A2のアウディブランドとしての位置付け

一昔前は「セダン」や「クーペ」といったボディ形状が顧客の嗜好性を表す指標となっていましたが、現在の自動車は多様化するターゲット顧客の市場性にあわせて下記のよう細分化したセグメントを指標としています。

Aセグメント(Segment-A)・・・ミニカー(mini cars) 例:軽自動車、スマート、kai
Bセグメント(Segment-B)・・・スモールカー(small cars) 例:フィット、ポロ
Cセグメント(Segment-C)・・・ミディアムカー(medium cars) 例:シビック、ゴルフ
Dセグメント(Segment-D)・・・ラージカー(large cars) 例:アウディA4、BMW3シリーズ、ベンツCクラス
Eセグメント-E(Segment-E)・・・エグゼクティブカー(executive cars) 例:アウディA6、BMW5シリーズ、ベンツEクラス
Fセグメント-F(Segment-F)・・・ラグジュアリーカー(luxury cars) 例:アウディA8、BMW7シリーズ、ベンツSクラス
Sセグメント(Segment-S)・・・スポーツクーペ(sport coupes) 例:BMW6シリーズ、ベンツCLSクラス
Mセグメント(Segment-M)・・・マルチパーパスカー(multi purpose cars) 例:エルグランド、ベルファイアー
Jセグメント(Segment-J)・・・オフロード&SUV (recreational & sport utility vehicles) 例:ランクル、カイエン
注:EC(欧州連合)の政策執行機関・欧州委員会によるセグメント

A2のマーケティングコンセプト

出典:http://www.honestjohn.co.uk/carbycar/audi/a2-2000/

アウディAシリーズは1995年まで偶数のA4・A6・A8(セグメントD~F)のラインナップしかありませんでした。それより下のA~Cセグメントの車はフォルクスワーゲンの主力商品だったのでグループ会社として「ブランド」で棲み分けをしていました。しかし、1996年に市場の変化に伴い「小さな高級車」をコンセプトにゴルフのプラットフォームを流用したアウディ初のCセグメントカー「A3」を発売し高評価を得ました。しかし翌年に1997年にメルセデス・ベンツより1段飛ばしでBセグメントのエントリーモデルとして5ドアハッチバックの「Aクラス」が登場しました。そこで「A3」よって新たな需要の発掘に成功していたアウディが、メルセデス同様にの1999年にエントリーモデルとして発売したのが「A2」になります。

アウディの初代Bセグメントカーは「アウディ50」

出典:http://angebote.autoscout24.de/Audi-50-Benzin-Gold-272841107

実はアウディは1974年~1978年まで「アウディ50」という現在でいうBセグメントカーを販売していました。これは翌年に販売を控えた兄弟車のフォルクスワーゲン・ポロの為に行った市場動向を伺う試験販売という性格でした。この時はどちらもヨーロッパ圏のみの販売でしたが「ポロ」はフォルクスワーゲンのエントリーモデルとして女性の圧倒的な支持を得てワールドカーとして今も健在です。また、Aセグメントの「フォルクスワーゲン・UP」も2011年にラインナップに加わっています。

迷車「アウディA2」

定石を捨てて賭けに出た「A2」

アウディA2はフォルクスワーゲン・ポロの成功に倣えば、プラットフォームはA3と同じ手法でフォルクスワーゲン・ポロと共通化してコストを抑えて、ターゲットは「お洒落な若者で特に女性に優しい仕様」というある種「必勝パターン」で行っていれば現在も継続してたシリーズだと思います。しかしA「2」では敢えてオリジナルの「オールアルミボディ」を採用し、ミッションは5速マニュアル(5速プトロニック仕様もあった)という仕様でした。「オールアルミボディ」は軽量で燃費向上にはつながりますが傷をつけたときの費用負担が大きく、尚且つコストアップの要因となりました。また普通のオートマを設定しなかった事も災いしてターゲット層に受け入れられず、日本への正規輸入も果たされずに7年間で約17万台という期待外れの結果で2005年に生産中止となりました。初代のメルセデス・ベンツAクラスも「横転の危険性がある」という事でリコール対象となって失敗作と呼ばれていますが、このBセグメントカーは高級ブランドの自動車メーカーにとっては鬼門ですね。(BMWは現在も参入していません。)

日本にもあったアウディA2

中古車を発見

日本には正規輸入されなかった「A2」ですが並行輸入されたいたらしいので、中古で販売されているか調べてみたら都内で1台発見しました。ドイツ国内のベーシックモデルの新車価格が2000年当時で約250万円程度だったので、もし正規輸入していたら販売価格は300万円をちょっと切るくらいの設定になっていたでしょう。そう考えると生産台数による希少性と状態が良さだと思いますが、10年前の車にしては値落ち幅が小さく感じます。

出典:http://www.ratensha.com/parc_zaico/detail.php?r_corp=120&r_shop=120&r_car=3301858&page_n=1

価格:208万円(税込)
年式:2005(平成17)年式
走行距離:34,500km
車検:2016年6月まで
車輌:並行輸入
排気量:1,400cc
ミッション:マニュアル
ハンドル:左
駆動:2WD
燃料:ガソリン
修復歴:なし

Bセグメントカーの未来予想図

A・Bセグメント市場の難しさ

日本の軽自動が良い例ですが、Aセグメントカーは先進国・新興国問わず価格・サイズや法律など自国の生活様式に合わせられるドメスティックメーカーの方が市場競争力があります。アウディ、メルセデス・ベンツ、BMWやレクサスといった世界的な高級ブランドのアンダーラインはやはりBセグメント(BMW、レクサスには現在ありません)までに成らざるを得ません。そのAセグメントとBセグメントの車格やターゲティングが難しく高級ブランドにとってリスクが高いところです。トヨタ(レクサスを除く)を始めとする日本メーカーやフォルクスワーゲンがこの分野で強いのはメーカーとしてのスタートがこのA・Bセグメントカーからで経験やノウハウ、市場の信頼性において一日の長があるからでしょう。

テクノロジーによる新たなBセグメントカー

出典:http://www.audi.com/corporate/en/innovations/studies/models/audi-urban-concept.html

アーバンコンセプト(1人乗り電気自動車)

そこでアウディはBセグメントに対して新しい定義をして来ました。それが2011年9月のフランクフルト・モーターショーに出品された「A2コンセプト」と「アーバンコンセプト」の2台です。これはどちらも電気自動車で自分達の主戦場である先進国における新たなBセグメントカーの提案ではないでしょうか。2011年当時から現在に至っても各自動車メーカーは電気自動車の技術やどのセグメントに位置付けるかが曖昧です。しかし、ここ数年で話題に多く取り上げられる様になった「自動ブレーキシステム」「追突防止システム」「自動運転システム」「自動駐車・車庫入れシステム」「インターネット情報システム」など各種センサー・画像・位置情報などによるドライバーアシスト機能を搭載した電気自動車はシティコミューターとしておぼろげながら利用シーンが見えてきている様な気がします。初期の電気自動車はハイブリッドカーとの比較でCO2の排出がなく環境負荷が小さいという意味合いがクローズアップされていましたが、1回の充電での走行距離不足やインフラの問題、ハイブリッドやディーゼルエンジン技術の進歩、水素エンジンの開発などもあり、電気自動車の弱点の克服と同時に特性を生かした新たな利用価値の研究が進んでいます。近い将来に車道に電気自動車専用レーンが出来れは車内で朝食をとったり新聞を読みながら出勤できたり、高齢者の外出だったり、子供の幼稚園や学校の送り迎えが安全に出来たりするかも知れませんね。

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Audi RS7での自動運転システム実験動画
(普通にスピード出てるのにビックリ!)

ゴールドマンサックスの予想

ここで世界経済に精通しているゴールドマンサックス(金融サービス企業)が予測している2025年の自動車の未来像についてご紹介します。

温室効果ガスと大気汚染問題が、自動車業界全体で車の燃料改革を推し進めています。燃費とCO2規制により、自動車メーカーはより効率性の高いエンジンを開発しなくてはならなくなっています。
2025年までに電動化システムを採用した車両販売は、現在の5%から25%に増加するでしょう。
しかしそのほとんどはハイブリッド車で、95%の車は少なくとも動力の一部を化石燃料に頼ることになります。つまり、自動車メーカーは新しい基準に準拠するため、エンジン熱効率の向上に迫られます。燃料電池などの代替電源の開発は全体の効率性を高めますが、それも普及してこそです。日本政府は2025年までに燃料電池車を220万円(1.8万米ドル)で販売することを目標に掲げています。世界の自動車販売においてはまだまだ小さな市場ですが、この車両価格であれば一般的なハイブリッド車と競合できるでしょう。

出典:www.goldmansachs.com

昨年にトヨタが世界に先駆けて「水素燃料電池車・ミライ」を販売をしましたが、ゴールドマンサックスの予測では今後10年間でほぼすべての新車がハイブリッド化していると予測しています。そして日本政府はそれまでに「燃料電池車」を現在のB又はCセグメントカーの価格帯で販売出来る様に後押しすると発表しています。政府の主な役割は水素ステーション(ガソリンスタンドと同じ)などのインフラや水素を一般的に扱う為の安全性に関する技術開発が中心で製品技術に関してはこれまで同様に自動車メーカーに委ねる形になります。

電池がキーパーツになる

ここで重要なポイントは電気化システムに欠かせない電池になります。この電池の大容量化・軽量化・ダウンサイジング化・低コスト化の進歩具合によってPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)、PEV(Plug-in Electric Vehicle)、PFCV(Plug-in Fuel Cell Vehicle)の市場に於けるポジションが大きく影響を受ける事になると思います。PEVでは重量とコストの50%が電池と言われています。PHVからPFCVに一足飛びに移行が進むとPEVのメリットが失われてしまいますが、PFCVの普及にはインフラや安全性の確保など問題点の解決に時間がかかります。まして新興国での普及にはインフラが整うかも未知数です。そうなると都市環境やインフラによって棲み分けがされたPHVとPEVそれぞれの特性に合わせた利用価値が生まれてくると思います。

新たな自動車のセグメントが始まる

この様な技術革新に伴なってこれまでのセグメントでは通用しなくなって来るかも知れません。例えば先進国のセグメントではA~BセグメントカーはPEV(電気自動車)、C~FセグメントカーはPFCV(燃料電池車)、それ以外はPHV(ハイブリッド車)といった利用シーンやインフラによる棲み分けが想定出来ます。また新興国では全てのセグメントカーがPHV、そして後進国では都会ではPHV、インフラが未整備な場所ではガソリン又はディーゼルエンジンがしばらくは主流(燃料価格と電子部品のメンテナンス問題が少ないシンプルさ必要)といった具合です。これは1800年代後半から1970年代までの人が自動車の価値観を形状で選んでいた時代、1980年代から現在までの自動車メーカーが市場に合わせていた時代、そしてこれからは人も自動車メーカーも大きな意味で環境に合わせて行く時代に入って行くことになるのだと思います。

これからのセグメントカーとは

話がだいぶ広がってしまったので話を「A2」に戻したいと思います。この様に考えると2011年という時期に「A2コンセプト」を発表したアウディでしたが、今もラインナップされていない事もなんとなく理解出来る気がします。アウディブランドの最下層になるBセグメントカーを現在の定義に当てはめてみると、成功する理由もシリーズ化して行ける可能性も見当たらないのです。さすがというか当たり前というか今回「A2」について調べて気づいたことを5年以上前に分かっていた上での「A2コンセプト」だったのだろうと勝手に思い込んで関心しています。

先進技術で未来のBセグメントカーへ

復活の狼煙を上げた新生「A2」

出典:http://www.audi.com/corporate/en/innovations/studies/models/audi-a2-concept.html

A2 コンセプト

2011年にシティーコミューターとして復活の狼煙を上げた「A2コンセプト」。2016年現在ではアウディの電気自動車は量産販売されていないので第一号が「A2」になる可能性は高いと思います。e-tron(ハイブリッドシステム)や Audi connectや Audi virtual cockpitといったITと電子制御技術を応用したドライブサポート技術を搭載した車がアウディの各Aシリーズに展開されて来ています。現時点でのセールスと「zFAS」と呼ばれる統合ドライバーアシスト コントロールシステム(自動運転機能)の成熟度などもあり、アウディが完全な電気自動車として新型「A2」を販売するのはもう少し先になると思いますが、これまでとは違う新たな「Bセグメントカー」として電気自動車を位置付けてもらいたいですね。これに電気自動車で先行している日産・ルノー、BMW、メルセデス・ベンツ、やトヨタを含めた日本の国産メーカーが追随してくれて東京のゲリラ豪雨や北京の大気汚染が解消する事を期待しています。