未来の燃料電池車「TOYOTA FCV PLUS」の開発者に車の未来をインタビュー!

先日プレスリリースでもご紹介したトヨタの未来型燃料電池(FCV)のコンセプトカー「TOYOTA FCV PLUS」。その期間限定特別展示が行われている水素自動車の情報発信施設「TOYOTA MIRAI ショールーム」でTOYOTA FCV PLUSの開発責任者の方に説明いただく機会をいただいたので、車の今後を聞いてきました。

TOYOTA FCV PLUSとは

TOYOTA MIRAI ショールームに展示されたTOYOTA FCV PLUS

TOYOTA FCV PLUSは2015年の第44回東京モーターショーに出展された未来の燃料電車のコンセプトカーですが、次のモーターショーで市販車として発売されるような直近のコンセプトカーではなく、2030年を見据えた3〜4世代先の水素自動車のあり方を提案している車となっています。
今までの燃料を消費するだけの単なる移動体から発電装置としても想定された車と社会との新しい関わり方を模索している、新しいビジョンを持ったコンセプトカーとなっています。

開発責任者の盛合威夫氏が語る水素自動車の未来とは

今回、開発者のトヨタ自動車株式会社の盛合さんに話を聞く機会をいただいたのでご紹介させていただきます。

15年という年月を近い未来と感じるか、遠い未来と感じるか

前述の通り、このコンセプトカーは2015年の東京モーターショーで展示された2030年の社会を見据えたコンセプトカーということで、15年後どうなっているかというのがテーマになっています。盛合氏のお話で印象的だったのは「その15年という年月を”近い”と感じる人と”遠い”と感じる人がそれぞれいて、それによってこのコンセプトカーの受け取り方が変わってしまう」というお話でした。
確かに15年前の車と比べて、今の車が大きく変わったかと言われると意外とそんなことはない気がします。しかし、よく考えてみると初代プリウスが発売されたのが1997年で、ハイブリッドカーが本格的に認知されてきたのは2000年頃ではないでしょうか。それから15年、今やコンパクトカーから高級車、さらにはアウトドア向きのSUVまで色々な車にハイブリッドのラインナップがあります。昔はどのカタログを見る時も馬力をチェックしていましたが、今や人の関心は燃費性能に移っています。また、15年前には電気自動車はまだまだ未来の話と思っていましたが、今やEVカーだけでなく、未来の技術と言われた水素と組み合わされた燃料電池車が発売されています。
トヨタからMIRAIが発売されたのは2014年、その15年後、水素自動車が当たり前の時代になっている可能性は十分にあるのではないでしょうか。そんな水素自動車の未来を見据えてたコンセプトカーがこのTOYOTA FCV PLUSです。

MIRAIのイメージにもなっているフロントインテークを残したTOYOTA FCV PLUSのフロント

では15年後、水素自動車が普及する際の問題点は何でしょうか?
水素自動車の原料となる水素は他の一次エネルギーさえあれば水から電気分解できるため、どこでも作成することができます。問題は常温だと気体の可燃性で扱いが難しく、石油などの化石燃料から作り出す場合は燃料価格が高くなってしまうのですが、後者は太陽エネルギーなどの自然エネルギーの余剰エネルギーから電気分解することで、水素は安価にどこでも作られるようになると思われます。なので、どちらかというと慎重な扱いが必要なせいで建設費や人件費がかかってしまう水素ステーションが目下の問題でしょう。

TOYOTA MIRAI ショールームが併設されているイワタニ水素ステーション芝公園の水素スタンド

燃料電池車は「エコカー」から「エネカー」へ

そんな15年後、水素がその辺で当たり前に入手できる社会になった場合、もはやエコカーという言葉は当たり前になり、次にどうなるかというのが求められます。そこで盛合氏たちが打ち出したのが「エネカー」という言葉だそうです。
クリーンエネルギーで水素が当たり前に作られ、その設備や法整備が整った場合、その安価でクリーンな水素を利用して家庭や企業でもエネルギーを得ようとするはずです。しかし水素からの発電設備は多少のコストがかかるのも事実です。それを車で補おうというのが落合氏の考えでした。

後輪ホイールハウスの非接触給電パネル

また、難しい接続機器等があると一般の人にはハードルが高くなるため、非接触という考え方も取り入れられています。
車同士は後輪ホイールハウスから、施設などフロントのフロア下から非接触給電パネルを通じて給電できる想定となっています。

フロントフロア下の非接触給電パネル

車は駐車場にある時間が圧倒的に長いのに、移動体の位置付けだけでいいのか?

盛合氏は「車は乗っている時間と駐車場にただ置いてある時間だと圧倒的に何もせず置いてある時間の方が長い。こんなに高価なものを置いておくだけというのは勿体ないのでは」と思われたそうです。よく考えてみるとそうですね。例え車で移動したとしても、出先では車を止めておきますし、現在はほとんど移動体としてのモノでしかありません。そんな疑問に対する答えが、このTOYOTA FCV PLUSのコンセプトである「エネカー」で、地域社会と車の関係性を変える提案です。

大型ショッピングセンターなど、太陽光発電などで昼間水素を作る施設が出てくるとします。そうするとその施設に出かけた際、自然エネルギーで作られた水素を供給してもらう代わりに、その施設の電気を発電してあげることが可能になるかもしれません。それが1台だと小さな力でも数十台の車がただ置いてある大型の駐車場であれば、かなりの電気を賄えることになり、どちらもWin-Winの関係性になることができます。
また、さらに未来に自分の家で水素が発電できるようになった場合は、水素を充電しながら自分の家の電気を賄う。そんな未来がやってくるかもしれません。

水素供給口は車のリアに設置

また、最近ニュースに取り上げられる機会の多い自動運転。車のメディアに携わる私としては自分が運転するのが好きなので、便利だけどちょっと味気ない社会にならないか不安でしたが、盛合氏の「自分が運転している時では無く、自分が乗っていない時こそ自動運転があるべきで、勝手に水素ステーションに行って、乗りたい時に戻ってきてくれる、そんな形で自動運転が生きてくるかもしれない」という話を聞いて、それなら自動運転万歳だと思ってしまいました。

燃料電池車ならではのパッケージング

ここはもう数年先の未来で十分実現可能というか、むしろすでにMIRAIでも実装されている燃料電池自動車のメリットの一つなのですが、エンジンという一番重くて大きな車の部品が無くなり、電池や水素タンクなどが自由にしかも小さくレイアウトが可能になります。
前にFCスタック、後ろに水素タンクを配置し、電池を床下に設置し、インホイールモーターでタイヤを直接動かすことでかなり自由な車内レイアウトが可能となります。走行面においてもこのTOYOTA FCV PLUSは全長3,800mmに対し、ホイールベースは3,000mmと通常のガソリン車ではあり得ないタイヤレイアウトですが、インホイールモーターで内輪外輪を独立して動かすことにより、最小半径はあまり大きくならないようにしたいと盛合氏は語っていました。

車内はシートとハンドルのみの思い切ったパッケージング

全長に対してかなり長いホイールベース

インホイールモーターは現状も電気で自走可能。未来は近い!?

燃料電池以外でも未来への提言

TOYOTA FCV PLUSの中を見て一番印象的なのは車体後部の構造です。これは軽量化と高剛性を両立した3D骨格構造ということで、従来のプレス機などでは難しかった構造が、最新の3Dプリンターなどでは可能になったことを受け、より軽く、より剛性の高い構造を目指したとのことです。
イメージとしては骨髄で、軽いのに丈夫な構造が今後はどんどん出てくるであろうとのことでした。

骨髄をイメージした3D骨格構造

今後の車開発について

盛合氏自身「この車がMIRAIからすぐにこう進化するとは思っていない。3〜4世代かけて少しずつ実現可能なものから次の車に繋げていきたい。」とおっしゃっていました。
今回のTOYOTA FCV PLUSは少し飛び抜けたコンセプトカーに見えますが、実は少しずつ実社会に取り込まれていくことで、15年後は実際にこういった車が出てくるかもしれませんね。

2016年3月14日(月)までTOYOTA FCV PLUSを特別展示

以前のプレスリリース紹介でもご紹介した通り、東京港区のTOYOTA MIRAI ショールームではTOYOTA FCV PLUSの期間限定特別展示が行われています。この記事を見て興味を持たれた方は是非行ってみてはいかがでしょうか?

詳しくは以下のリンクをご確認ください。

TOYOTA MIRAI ショールーム内はいたるところに水素をイメージしたモチーフも。Hは水素の元素記号。