【スズキ フロンテ】モデルごとに駆動方式を変更した「アルト」の姉妹モデル

かつて和製「カウンタック」と呼ばれるモデルまで登場した「フロンテ」は、「アルト」と共にスズキを牽引してきたモデルです。そのヒストリーに迫ってみたいと思います。

「スズキ フロンテ (Fronte)」

「スズキ フロンテ (Fronte)」 はスズキ自動車が、かつて生産していた軽自動車です。車名の由来は、「フロンティア精神」の「フロンティア(業界の先駆者)」から取られています。1979年に派生モデルの「アルト」が登場し大ヒットするまで長年にわたりスズキを代表するモデルでした。

1thモデル「TLA/FEA/FEA-II型」(1962年-1967年)

1962年3月に1thモデルは、「スズライト バンTL型」(1959年9月登場)の乗用モデルとして「スズライト フロンテTLA型」として登場しました。当時、FR方式が主流の中、駆動方式はFF方式を採用していました。エンジンは空冷2ストローク直列2気筒360ccを搭載しての登場はヒット作となりました。1963年3月に型式が「FEA型」になり、ガソリン・エンジンオイル自動混合方式「セルミックス」を採用しています。また1965年10月には「FEA-II型」になり、エンジンオイル直接噴射方式「CCI(Cylinder Crank Injection) 」を採用してエンジン信頼性を向上させました。

1thモデル「FEA-II型」主要諸元

エンジン:360cc 空冷2サイクル直列2気筒横置き キャブレター仕様
最高出力:21PS/5,500rpm
最大トルク:3.2kgm/3,700rpm
トランスミッション:3MT
駆動方式:FF
サスペンション:F ウィッシュボーン/コイル R 横置きリーフスプリング
ブレーキ:F/R ドラム
全長:2,995mm 
全幅:1,295mm 
全高:1,380mm 
ホイールベース:2,050mm
車両重量:500kg

2thモデル「LC10型」(1967年-1970年)

2thモデルは、1967年4月に登場しました。モデル名が変更され「スズライト」の文字が外れて「フロンテ 360」となりました。また駆動方式も変更されRR方式に、そしてコラムシフトからフロアシフトに変更となっています。エクステリアデザインは、当時の流行の「コークボトルライン」と言われる丸みのあるスタイルを採用しています。さらに搭載エンジンを「レーシングカー譲りの2ストローク3気筒」と掲げた直列3気筒へ変更しています。このエンジン形式は、理論上では4ストロークの直列6気筒に匹敵する優れた回転バランスを持つエンジンです。ライバルの「ホンダ・N360」に対抗し31PSのハイチューンエンジンも設定されました。1968年11月にハイパフォーマンスモデルの「フロンテ SS(ストリート・スポーツ)」を追加しています。このモデルは、レーシングドライバーの「スターリング・モス」氏と2輪レーシングライダーの「伊藤光男」氏がイタリアの高速道路「アウトストラーダ・デル・ソーレ」で長時間高速走行テストを行ったことでも知られています。

2thモデル「LC10型」主要諸元

エンジン:356cc 空冷2サイクル直列3気筒横置き キャブレター仕様
最高出力:25PS/5,000rpm
最大トルク:3.7kgm/4,000rpm
トランスミッション:4速
駆動方式:RR
サスペンション:F ダブルウィッシュボーン R セミトレーリングアーム
ブレーキ:F/R ドラム
全長:2,995mm 
全幅:1,295mm 
全高:1,330mm 
ホイールベース:1,960mm
車両重量:425kg

3thモデル「LC10-II型」(1970年-1973年)

1970年11月に3thモデルの「フロンテ(フロンテ 71)」が登場します。形式は「LC10-II型」となっています。ボディスタイルは全く新しいデザインが採用され、直線基調の2ボックススタイルになりました。車高が1,260mmとかなり低く設定され、フロントのトランクは拡大されました。このスタイルは、通称「スティングレイ・ルック」と呼ばれました。搭載されるエンジンは基本的には従来の空冷3気筒2サイクルエンジンでキャッチコピーは「2サイクル3気筒は4サイクル6気筒に匹敵する」と謳っていました。「SSS」は36PSとハイチューン仕様でした。また、軽自動車初の吊り下げ式クーラーが設定されていました。1971年5月に「フロンテ 71W」が追加されました。このモデルは、「フロンテ 71」のボディに、新しい水冷エンジンを搭載したモデルです。形式は「LC10W型」となっています。エンジンは新開発の水冷2ストローク3気筒を搭載。冷却方式はスズキ独自の「デュアル・ラジエター方式」で「W」は水冷(Water cooled)を意味していました。1971年9月には3thモデルの「フロンテ」をベースに軽自動車枠のスポーツカー、「フロンテ・クーペ」が追加されました。1971年11月にマイナーチェンジが施され名称が「72(セブンティ・ツー)フロンテ」に変更されました。フロントグリルのデザイン、内装の変更が施されました。また1972年10月のマイナーチェンジでは、73年型として「ニューフロンテシリーズ」が発表されました。エクステリアはバンパーからフロントグリル、ボンネットに至るまで大幅な変更が施され、ヘッドランプは角型2灯式から丸型2灯式に、上級グレードはリアコンビランプ横にガーニッシュを装備、また三角窓が廃止されました。「GT-TYPE II」モデルでは、タンデムブレーキマスターシリンダーとフロントディスクブレーキが装備されました。

3thモデル「LC10 II型」主要諸元

エンジン:356cc 水冷2サイクル直列3気筒横置き キャブレター仕様
最高出力:34PS/6,000rpm
最大トルク:4.2kgm/4,500rpm
トランスミッション:4速
駆動方式:RR
サスペンション:F ダブルウィッシュボーン R セミトレーリングアーム
ブレーキ:F/R ドラム
全長:2,995mm 
全幅:1,295mm 
全高:1,295mm 
ホイールベース:2,010mm
車両重量:475kg

4thモデル「LC20/SS10/SS20型」(1973年-1979年)

4thモデルは1973年7月に発表されました。先代モデルの「スティング・レイ・ルック」のデザインから、「オーバル・シェル」の丸みあるスタイルへと変化しています。エンジンは、水冷エンジンのみのラインナップで4ドアモデルを設定してファミリーユーズに対応すると共に、リアウィンドゥを閉開式のガラス・ハッチにしてエンジンルーム上部にラゲッジスペースを設けた。これによりフロントとリア両方にトランクを持つこととなり、実用性の拡大を図られました。1974年のマイナーチェンジで黄色ナンバープレートの対応化に加えてグレード名称の変更、エンジンのパワーダウンが施されました。1976年5月のマイナーチェンジでは、全長を195mm、全幅を100mm拡大し、排気量を443cc(T4A型エンジン)にアップし、内外装も変更が施されました。型式も「SS10型」となり、「フロンテ 7-S(セブン・エス)」と呼ばれることになりました。

4thモデル「LC20/SS10/SS20型」主要諸元

エンジン:356cc 水冷2サイクル直列3気筒横置き キャブレター仕様
最高出力:34PS/6,000rpm
最大トルク:4.2kgm/4,500rpm
トランスミッション:4速
駆動方式:RR
サスペンション:F ダブルウィッシュボーン R セミトレーリングアーム
ブレーキ:F/R ドラム
全長:2,995mm 
全幅:1,295mm 
全高:1,300mm 
ホイールベース:2,030mm
車両重量:545kg

5thモデル「SS30/40型」(1979年-1984年)

1979年5月に5thモデルが発表されています。駆動方式がRR方式から初代モデル同様のFF方式になっています。このモデルから姉妹車として商用車バージョン(軽ボンネットバン)の「アルト」が登場しました。「アルト」は簡素さと低価格でアプローチしたのに対し、「フロンテ」は5ナンバーならではの居住空間の広さや豪華さをアピールしました。搭載エンジンは、常用回転域でのトルク特性と高回転域での最高出力が向上している2ストロークエンジンの「T5B型」と、燃費経済性と静粛性、アイドリングのスムーズな4ストロークエンジンの「F5A型」の2タイプが用意されました。2ストロークモデルは型式が「E-SS30S」、4ストロークモデルは「E-SS40S」となっています。実は、2ストロークエンジンの「T5B型」は、RR用だった「T5A」をFF用に設計変更したものでした。それに対して4ストロークエンジンの「F5A」は改良を重ねつつ、スズキの各モデルに広く搭載されるエンジンとなります。1982年10月のマイナーチェンジでは、ヘッドランプを角型に変更し、デジタルメーターを一部グレードに採用しています。

5thモデル「SS30/40型」主要諸元

エンジン:543cc 4サイクル直列3気筒横置き キャブレター仕様(F5A型)
最高出力:31PS/6,000rpm
最大トルク:4.2kgm/4,000rpm
トランスミッション:4速
駆動方式:FF
サスペンション:F ストラット R リジットアクスル/リーフスプリング
ブレーキ:F/R ドラム
全長:3,195mm 
全幅:1,395mm 
全高:1,335mm 
ホイールベース:2,150mm
車両重量:570kg

6thモデル「CB71/72型」(1984年-1988年)

6thモデルは1984年9月に登場しました。乗用シリーズとして販売されていた「フロンテ」としてはこのモデルからハッチバックボディのデザインとなりました。最上級グレードの「FG」モデルには、5速MTとフロントディスクブレーキを装備していました。1985年10月には、エアコンと回転ドライバーズシートを装備した特別モデルの「ウィット」が追加されています。1986年7月のマイナーチェンジでリアサスペンションが「アイソトレーテッド・トレーリング・リンク(I.T.L)」式となり、ヘッドランプを角型(SAE規格)から異型ライトに変更し、内装も変更されました。また、オートエアコンがオプション設定されました。1987年1月には「550cc 3気筒 DOHC 12バルブ」エンジンを搭載した3ドアのスポーティーグレードの「ツインカム12 GR」を追加しています。

6thモデル「CB71/72型」主要諸元

エンジン:553cc 4サイクル直列3気筒横置き キャブレター仕様(F5A型)
最高出力:31PS/6,000rpm
最大トルク:4.4kgm/4,000rpm
トランスミッション:5速
駆動方式:FF
サスペンション:F ストラット R リーフスプリング
ブレーキ:F/R ドラム
全長:3,195mm 
全幅:1,395mm 
全高:1,410mm 
ホイールベース:2,175mm
車両重量:590kg

7thモデル「CN11型」(1988年-1989年)

1988年10月に「フロンテ」としては最終モデルの7thモデルが発表されました。全グレードに新開発の「550cc 3気筒 SOHC 12バルブエンジン(F5B型)」が搭載されました。エクステリアデザインは、姉妹車「アルト」のと同じでフロントグリル以外は特に変更された箇所もほとんど無く特徴的なクォーターウインドウも同様のものが付いていました。廉価グレードを除きフロントディスクブレーキと12インチラジアルタイヤが標準装備されていました。1989年3月にアルトと統合され、生産終了となり「フロンテ」の名称は27年の歴史に幕が下ろされました。

7thモデル「CN11型」主要諸元

エンジン:553cc 4サイクル直列3気筒横置き キャブレター仕様(F5B型)
最高出力:40PS/7,500rpm
最大トルク:4.3kgm/6,000rpm
トランスミッション:5速
駆動方式:FF
サスペンション:F ストラット R セミトレーリングコイル
ブレーキ:F/ディスク R ドラム
全長:3,195mm 
全幅:1,395mm 
全高:1,385mm 
ホイールベース:2,335mm
車両重量:590kg

まとめ

「スズキ フロンテ」は、パワートレインの変更やスポーツモデルの追加モデルなどバリエーションが多く存在したモデルで「アルト」が登場するまでスズキを牽引していたモデルでした。再び「アルト」と共に市場を賑わすモデルとして登場することを期待したいです。