【4ドアクーペ】謎が解けた!クーペとセダンの違いを図解で検証!

最近の新車をみると「クーペ=2ドア=スポーツカー」と「セダン=4ドア=ファミリーカー」という古いイメージが当てはまらなくなって来ています。エンジン性能の向上に伴って高速性能に配慮したスポーティなセッティングになってきているのは分かるのですが、フォルムだけみるとクーペとセダンの違いが全くわからない状況です。そこで車のデザインに関して改めて調べてみました。

クーペとセダンの語源

「馬」車から「自動」車へ

自動車の形状を現す言葉が馬車の形状や使用方法に由来していることは一般的に知られていると思いますが、それぞれの呼称に厳密なルールがあったかは定かでありません。その当時は身分制度があった時代で各身分階級の生活に応じた馬車の使い方がありました。その代表的な呼称は下記の通りで現代の自動車の形状を現す語源であることは間違いありません。

・キャリッジ (Carriage) - 2頭または4頭立ての4輪馬車
・クーペ (coupé) - 2人乗りの4輪箱型馬車
・カブリオレ (cabriolet) - 1頭立ての2輪幌馬車
・ワゴン (wagon) - 通常2頭立て以上の4輪荷馬車
・キャラバン (caravan) - 大型の幌馬車
・コーチ (coach) - 4頭立ての4輪大型馬車
・カート (cart) - 1頭立ての2輪荷馬車
・バギー (buggy) - 1頭立ての軽装馬車
・キャリオル (cariole) - 1頭立ての小型馬車
・チャリオット (chariot) - 古代の2輪戦車、または18世紀の4輪軽馬車

この画像の乗車スペース(車体)は英語=キャリッジcarriage、イタリア語=キャロッツァcarrozza、フランス語=キャロースcarrosseと呼ばれて対面4人掛けの仕様が貴族(王族)界でのスタンダードでした。

キャロース(仏:carrosse) - 2頭または4頭立ての4輪馬車

出典:https://www.washingtonpost.com/graphics/local/2015-papal-visit/popemobile-illustrated-history/

カール・ベンツ氏(現在のメルセデス・ベンツ社の創設者の一人)がドイツで特許を取得した世界初の実用的な4サイクルガソリン自動車は下の画像の「BENZ PATENT MOTOR-WAGEN」ですが、この頃はボディ(車体)そのものが無く「セダン」や「クーペ」と言った形状による分類がされていた訳ではありません。では何故、いつ頃から馬車の名称が使われるようになったのかでしょう。

出典: https://www.mercedes-benz.com/en/mercedes-benz/classic/history/corporate-history/

1886年 BENZ PATENT MOTOR-WAGEN

カール ベンツがドイツで特許を取得した世界初の実用的なガソリン自動車。名前にはPATENT(特許)がついています。

自動車に馬車の用語が使われた理由

1800年代後半から1900年代初頭の自動車黎明期にモータリゼーションの普及に一役買ったのが「コーチビルダー」の存在です。コーチビルダーとは「馬車」を造っていた職人さんたちですが、当時、木製だったキャリッジ(車体)を造るには家具の様な繊細で美しい装飾技術と船舶の様な緻密で精度の高い技術が必要とされた特殊技能工でした。そして彼らが愛顧の貴族(王族)からの要請を受けて自動車メーカーにドライブトレイン(エンジン、ギアボックス、ディファレンシャル、アクスル、ホイール)、サスペンション、ステアリングシステムやラジエーターが搭載されたシャシー(車台)を注文してキャリッジ(車体)を実装するとうシステムになっていました。その後は自動車の普及に伴い自動車メーカーの顧客からの要請を受けて(車体)を製造して行くことになります。このコーチビルダーの存在によって馬車の用語が車の形状を表す言葉になったのです。

出典:https://www.mercedes-benz.com/en/mercedes-benz/classic/history/corporate-history/

1895年に世界初のバス。天候や技術的な問題が発生して正規運行は1905年まで待たなければ行けなかった様です。
形状は正にエンジンで動く「キャリッジ」です。

「クーペ」って何だ

クーペ(英:coupe・仏: coupé)は、中世の2人乗り用の馬車がフランス語でキャロース・クピ(carrosse coupé)「切られた馬車」と呼ばれいたことが由来で、日本には英語の外来語として定着しています。この馬車の呼称から2人乗り2ドアの形状が「クーペ」と呼ばれる様になりました。

フランス語でキャロース・クピ(carrosse coupé)「切られた馬車」を意味する

出典:https://www.washingtonpost.com/graphics/local/2015-papal-visit/popemobile-illustrated-history/

世界初のクーペはベンツの「Myroad」

メルセデスベンツ社からは自動車で初めて「クーペ」として定義した車はベンツの「Myroad」だと紹介されています。顧客からの要望に合わせてベンツの初代「モーターワーゲン」を改良して「キャリッジ」の前部を切った形状をしていますね。現在の定義2ドア2人乗り「クーペ」の源流です。

出典: http://www.emercedesbenz.com/Oct08/06_001437_eMercedesBenz_Feature_Coupes_By_Mercedes_Benz.html

クーペを定義したベンツのMyroad

The coupe is an exclusive body design. This was true even in the days of the horse-drawn carriage, when the coupe – presumably so-called because it resembled a four-seater carriage with its front end cut-off (French: “coupé”) – offered two seats in the comfort of the cab with the coachman seated up front on the open box seat. People who chose this mode of travel clearly liked to demonstrate a sense style and individuality.

出典:www.emercedesbenz.com

”クーペは他に類のないボディデザインです。なぜならそれは馬で4人乗りの乗車室を引いていたの時代の前部を切り取ったいわゆる「クーペ」に似ていたから、あるいは運転者が乗っていた2人掛けの快適そうなオープンボックスシートに似ていたからそう呼ばれたのでしょう。このドライビングスタイルを選んだ人は自分の個性を大切にする人たちです。”

出典:http://www.emercedesbenz.com/Oct08/06_001437_eMercedesBenz_Feature_Coupes_By_Mercedes_Benz.html

1901年当時に「クーペ」呼んでいたかは定かでありませんが、まさにキャロース・クピ(carrosse coupé)の形状をしていることは間違いありませんね。その後、自動車の普及と工場制機械工業の発達によって「コーチビルダー」は車体製造の役目を終えて自動車メーカーの1部門としてに取り込まれたり、特殊車両(消防車など)や内装専門に特化した工場又はデザインに特化した企業に姿を変えていきました。

「セダン」って何だ

Sedan chair(セダンチェアー)

出典:https://www.washingtonpost.com/graphics/local/2015-papal-visit/popemobile-illustrated-history/

上の画像はセダンチェア(Sedan Chair)と呼ばれて、日本で言う「駕籠」と一緒で馬車よりも歴史は古く、やはり高貴な人の移動手段とされていました。ここで疑問が湧いてきます。「セダンチェアー」が起源であることは間違いないと思いますが、クーペ、カブリオレ、コーチ、キャラバン、ワゴンなどの馬車用語の流用と「セダン」は明らかに違う系譜にあるということです。

自動車の用途や目的によって定着した!?

ここからは文献を調べても「いつごろ」「誰が」「どの車」をさしてセダンと呼び始めたのか確認が出来なかったので前段の話を元にした推論になります。時系列で見て考えられるのは自動車の原型は2ドア2人乗り「クーペ」から始まり「カブリオレ」「コーチ」「ワゴン」「キャラバン」といったサイズと用途に合わせて「馬車」⇒「自動車」の流れで馬車用語が使われていたと思います。一方で「セダン」は自動車が普及していく過程で用途や目的によって生まれた言葉なのではないでしょうか。

出典:https://www.washingtonpost.com/graphics/local/2015-papal-visit/popemobile-illustrated-history/

1900年代中頃から量産化にともない車体も「ハードトップ」いわゆる屋根まで鋼製の4ドアタイプのキャビン(乗員室)が出来た時期から「セダン」という表現が使われ始めたのだと思います。まず「クーペ」を原型として2ドア2人乗り自動車に後部座席(セダンチェアー)を付けたので4ドアとなり「セダン」と呼ばれる様になった。そして「セダン」の車内に快適性求められて「サルーン」となり、後部座席を区画した個室の様な乗車空間をもった車が「リムジン」と呼ばれる様になった流れだと思います。これが馬車の系譜であれば「リムジン」は「キャリッジ」と呼ばれていたはずです。この様に自動車の量産化が進み顧客や市場の要求に合わせていく中で車体デザインを自動車メーカー内でセグメントする過程で定着したのだと思います。

現在でいうLimousine(リムジン)はこの運転席と乗客室が仕切られている形状を意味しています。

出典:https://www.washingtonpost.com/graphics/local/2015-papal-visit/popemobile-illustrated-history/

日本のJISや自動車技術会では、「サルーン」という呼び名が基本で、「セダンともいう」と規定されているそうですが、「サルーン」はアメリカの西部開拓時代に酒場(社交場)の総称です。語源はフランス語の「サロン=社交場」という意味で雰囲気はだいぶ違いますが同義語です。一般的なセダンの乗車スペースよりも「サルーン」の方がサイズが広めであったり内装が上質だったのではないでしょうか。1900年代前半に日本でも自動車産業が産声を上げましたが、戦後間もない日本では欧米の様な馬車や駕籠からの系譜による自動車ではなく、工業技術と産業としての自動車だったので当時は「車格」という概念に捉われていなかったのでしょう。

出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Hazen,_Nevada

呼び方の基準がかわってる!?

現在のクーペとセダンの判断基準

現在では加工技術の発達によってシャシー(車台)とボディ(車体)が一体となっているモノコック構造が世界的に主流になっています。その為に構造的な観点から屋根を支える柱:ピラー(Pillar)の「A」から始まる位置と本数を基準に形状の呼称を判断しているようです。

(1)クーペ(3ボックス)
(2)セダン(3ボックス)
(3)ステーションワゴン(2ボックス)
(4)ハッチバック(2ボックス)



出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Pillar_(car)

最近の「4ドアクーペ」って何?

ベンツの4ドアクーペ

「クーペ」の生みの親メルセデスベンツが2003年にCLSを発表して再定義したのが「4ドアクーペ」です。

”この車は明確なクーペのルーツを持ちながら、広々としたセダンの居住性と4つのドアを持つ、二つの最高の世界感を巧みに合わせて設計されたボディです。”

このメルセデスベンツによる4ドアクーペ「CLS」が1901年にクーペに対する「このドライビングスタイルを選んだ人は自分の個性を大切にする人たちです。」という定義によって大ヒットをしました。それ以降、各国の自動車メーカーから「4ドアクーペ」という新しいスタイルの車が登場しています。

This car combined the best of two worlds, offering the spaciousness and four doors of a sedan, while at the same time exhibiting its clear coupe roots with a skillfully designed body.

出典: www.emercedesbenz.com

出典:http://www.emercedesbenz.com/Oct08/06_001437_eMercedesBenz_Feature_Coupes_By_Mercedes_Benz.html

メルセデスベンツCLSクーペ(アッパークラス)

出典:http://www.bmw.co.jp/ja/all-models/6-series/gran-coupe/2014/design.html

BMW6 4ドアクーペ(アッパークラス)

サイドを精緻に流れるキャラクター・ラインは印象的な陰影を生み出し、BMW 6 シリーズ グラン クーペの傑出したラグジュアリーとスポーティさ、胸を打つエレガンスを強調します。

出典:http://lexus.jp/models/gsf/design/exterior_interior/index.html

レクサスGSF(アッパークラス)

機能に特化したデザインと実用性の高いセダンスタイルが融合したGS Fは、一般道からサーキットまで、誰もがシームレスに走りを楽しめるスポーツセダンです。

出典:http://www.mercedes-benz.co.jp/content/japan/mpc/mpc_japan_website/ja/home_mpc/passengercars/home/new_cars/models/cla-class/c117/fascination/technology.html

ベンツCLAクーペ(ミドルクラス)

出典:http://lexus.jp/models/is/design/exterior_interior/index.html

レクサスISセダン(ミドルクラス)

どの席の方も気持ちよく過ごせるゆとり、セダンとしての然るべき機能性を備えた室内空間。

【メルセデスベンツ】
最上位メルセデスベンツSクラスの中にSクラス2ドアクーペがラインナップされている。
現在のCLSクラスは4ドアクーペとして独立したクラスとして扱われている。
【BMW】
最上位BMW7シリーズと同等のスペックを持つクーペスタイルが6シリーズのグレードポジション。
BMW6シリーズの4ドアクーペ「グランクーペ」はそのバリエーションの1タイプ
BMWは5~3までの各シリーズにもクーペと4ドアクーペをバリエーションとして揃えている。
【レクサス】
各クラス「セダン」のスポーツタイプが独立してラインナップされている。
2ドアクーペも同じく独立したラインナップとなっている。

もはや4ドアに「クーペ」も「セダン」も存在しない!

現在では車体形状での「クーペ」「セダン」の区別ではなくなっています。各自動車メーカーのターゲット(顧客)に合わせて、メルセデスベンツ・BMWは後部座席の快適性を求めた4ドアクーペというデザインコンセプト。一方のトヨタはスポーティな4ドアセダンというデザインコンセプト。この様に結果的に入口が別でも出口(デザイン)が一緒になってしまっています。結論としては4ドアスポーツカーというカテゴリーの中に4ドアクーペと4ドアセダンが混在している状態です。

本物の4DC、国産4ドアクーペのマツダRX8

メルセデスベンツがフランクフルトショーでCLSを発表した同時期の2003年4月にマツダが発売を開始した「RX8」は構造的に見てもA~Bピラー間に4枚ドアがあり、世界で唯一の真性4ドアクーペだと思います。後部座席の乗降性を良くする為の観音開き4枚ドアはスポーツカーのクーペスタイルを「RX-7」や「ユーノス・ロードスター」でずっと大切にしてきたマツダならではの回答です。これって本当に地味ですけどボディの構造強度を確保するのに大変な技術が必要なんです。セールス的には大ヒットではありませんでしたが心からエールを送りたい1台です。

出典:http://rx8-mazda.blogspot.jp/2009/11/rx-8-r3-hiqh-quality-backgrounds.html

出典:http://rx8-mazda.blogspot.jp/2009/11/widescreen-rx-8-silver-photo-shoot.html

市場が生み出したボディスタイルの定義

1960年代の自動車はまだシャシー(車台)とボディ(車体)が分かれていたので、それまでの伝統的なボディ形状による「セダン」「クーペ」「ワゴン」などのセグメントを自動車メーカーがしていたと思われます。しかし1970年代に入りモノコック構造が主流となる頃から自動車の大衆化が一気に進み市場の多様性と競合メーカーとの差別化戦略により新たなデザインコンセプトが求められました。特に4ドアセダンのリヤデザインは燃費に影響があるので傾斜が滑らかになり、リヤガラスとトランクの折れ目をあらわす「ノッチバック」スタイルが現在のスタンダードです。ちなみに「ハッチ」はと水平軸を中心に上下に可動する扉のことで2ボックスカーのB又はCピラーに取り付けたハッチ付リアゲートを「ハッチバック」と呼んでいます。「ノッチバック」と「ハッチバック」は比較対象ではありませんのでご注意を!

この様に現在では「クーペ」や「セダン」という言葉は車体形状を表す言葉ではなく「デザインコンセプト」を説明する上での「サンプル=例」として使われています。車選びはセダンやクーペという言葉の固定概念に惑わされないで自分の気に入ったコンセプトデザインで選ぶのが一番ということですね。