「ホンダ ホライゾン」いすゞと組んだハンドリング・バイ・ロータス

90年代初頭、街には各メーカーを代表する様々なSUVが走っていました。一社が出せば、また一社がそれに乗り遅れるまいと次々と新型車を投入。バブルの余韻が残っていることもあって、SUVは「売れる」ジャンルへと急成長していきます。そんな中、そのブームに乗り遅れたのがホンダでした。しかし、ホンダもただ指をくわえて見ていたわけではなく、新型車を投入したのです。それが今回紹介する「ホンダ ホライゾン」です。

ホンダ ホライゾンの生い立ち

ホライゾン誕生前夜

このクルマの生い立ちを知る前に、ホンダが当時置かれていた状況を知る必要があります。

常勝将軍と言われていた1980年代とは打って変わって、1990年代に入るとホンダはF1で苦戦し始めます。そしてついに1992年シーズンを最後に「参戦一時休止」を宣言。F1から撤退してしまいます。
それまでスポーティで若々しいイメージのあったホンダですが、これを機にスポーツイメージが下がり始め、その影響は市販車にまで及ぶようになってしまいます。市販車の販売は低迷の一途をたどりますが、それを打開すべく1993年にある契約が成立されました。それが、いすゞ自動車との商品相互補完契約だったのです。

そして、ホライゾン誕生

ホライゾンのベースとなった、いすゞ ビッグホーン。外観はホライゾンもビッグホーンも、ほとんど変わりません。

この契約により、お互いのモデルをOEM(Original Equipment Manufacturer=「相手先ブランド名製造」の略)供給することができるようになりました。その一台として当時流行していたSUV(当時はRVとも呼んでいました)の車種を持たなかったホンダは、いすゞ ビッグホーンに白羽の矢を立てます。こうして1994年に誕生したのがホンダ ホライゾンです。当時はホンダクリオ店(現在のホンダカーズ店)専売車種でした。

ホライゾンとは、英語で「地平線」の意味です。

ホンダ ホライゾンのエンジンスペック

エンジンは前期・後期型とも2種類が存在します。
詳しく見ていきましょう。
・前期型
ガソリンエンジン車
6VD1型エンジン
V型6気筒DOHC24バルブ
3,165cc

ディーゼルエンジン車
4JG2型エンジン
直列4気筒OHC+インタークーラーターボ
3,059cc

・後期型
ガソリンエンジン車
6VE1型エンジン
V型6気筒DOHC24バルブ
3,494cc

ディーゼルエンジン車
4JX1型エンジン
直列4気筒DOHC16バルブ+インタークーラーターボ

それぞれ4速オートマチックと組み合わされましたが、一部グレードでは5速マニュアルも選択できました(後述します)。

ホンダ ホライゾンのグレード構成

出典:http://www.honda.co.jp/news/1998/4980319-1.html

写真は、ホライゾン後期型「XS」。

ホライゾンは基本的に2ボックス5ドア、7人乗りとなります。本家であるいすゞ ビッグホーンにあったような3ドアショートボディは、最後まで追加されませんでした。
グレード構成としては、基本的に
・ハンドリング・バイ・ロータス(ガソリンエンジン車、インタークーラーターボディーゼル車)
・ハンドリング・バイ・ロータスSE(ガソリンエンジン車、インタークーラーターボディーゼル車)
の2グレード構成でしたが、1995年に廉価モデルとして「XS」が追加されています。ただし、これはインタークーラーターボディーゼルエンジン車のみの設定でした。
また、ハンドリング・バイ・ロータスのインタークーラーターボディーゼル車とXSのみ5速マニュアル車が選択可能でした。

ハンドリング・バイ・ロータスとは

ハンドリング・バイ・ロータスの代表格、いすゞ ピアッツァ。

1980年代当時、元々GMと協力関係にあったいすゞ自動車が、同じGMグループであった英国のロータスエンジニアリングをシャシーコンサルタントとして招き入れ、いすゞ車で展開していたグレード名がこの「ハンドリング・バイ・ロータス」です。
彼らのチューニングメニューは主にサスペンションのセッティングでしたが、ベース車の素性が良くなければアーム類の変更など大胆なメニューも取り入れられました。そしていすゞ ビッグホーンもこのチューニングを受け、更なるサスペンションリファインが行われました。結果、それがそのままホンダ ホライゾンとしてOEM供給されたのです。

ホンダ ホライゾンの販売実績

こうしてホンダの旗艦SUVとなるべく船出していったホライゾンですが、CMをするなどの広告戦略はほとんどありませんでした。こうした手法が災いしてか、知名度は低く、買うのはほとんどホンダ関係者のみという事態に。さらにいすゞとの商品相互補完契約も終了してしまい、1999年にホライゾンはそのモデルライフを終えます。

ホンダ ホライゾンの後継車種は?

直接の後継車種ということではありませんが、強いて言うならばCR-Vが最も近い存在でしょう。初代CR-Vの登場は1995年です。CR-Vはトヨタ RAV4の対抗馬となるべくデビューした、いわゆるライトクロカンタイプのクルマですが、代を追うごとに大型化しています。
現行CR-Vの大きさを考えると、走行性能以外ではホライゾンの後継車と言っても差し支えないと思います。

おまけ

ホライゾンだけじゃない?当時のホンダSUV車

いすゞ ミューをベースにした、ホンダ ジャズ(写真はいすゞ ミュー)。

ランドローバー ディスカバリーをベースとした、ホンダ クロスロード(写真はランドローバー ディスカバリー)。

どちらもホライゾン同様、マーケティング的戦略もあまりなく、販売面では大苦戦でした。

こんなにある!? ホライゾンの兄弟車

ホライゾンの元になったクルマがいすゞ ビッグホーンであったことは、これでお分かり頂けたと思います。この他にも、いすゞは国内で富士重工(スバル)にもビッグホーンをOEM供給しており「スバル ビッグホーン」として販売していました。
また海外に目を向けると、ホライゾンの兄弟車はまだまだたくさんあります。
北米シボレーブランドでは「トゥルーパー」として、欧州オペルやヴォクスホールブランドでは「モントレー」として、また豪州ホールデンブランドでは「ジャッカルー」として販売されていました。
同じクルマでも、こんなに車種があるんですね。

おわりに

ホンダ初の本格SUVは、販売面だけを見ると見事な「失敗作」だったかもしれません。
しかし、今でも街なかで注意して見ているとたまに見かけるホライゾン。大事に乗っているオーナーさんもおり、長く愛されているクルマであることは確かです。そんな一台と出会えたオーナーさんは、きっと幸せ者でしょう。クルマにとっても幸せですね。