【ランチア・テーマ】フェラーリエンジンを搭載した“紳士のクルマ”

第二次世界大戦以降、フィアットはイタリア国内の主要な自動車メーカーを次々と買収して傘下に納めるようになり、いつしかイタリア最大の自動車メーカーになりました。フェラーリ、マセラティ、アルファロメオ、ランチア、アウトビアンキ、アバルト。現代では当たり前になった、グループ内で開発や生産を共有しながらコストを抑える方法を作り上げたのはフィアットです。今回ご紹介するランチア・テーマもそうして生まれました。

ランチア・テーマというクルマ

ランチア・テーマは1984年にデビューしました。FFレイアウトの大型の部類に入るクルマです。合理化された生産方式のおかげで、製品としてのできの良さと価格のバランスが良く商業的にも成功したクルマです。特にイタリアでは"L'Auto dei Signori(紳士のクルマ)"と呼ばれ、絶大な人気を博していました。1988年に外観から機関に至るまで大幅に手を加えた“シリーズ2”を発表し、スタイルはI.DE.Aの手によるフェイスリフトなどが行われました。1992年にはさらに大幅に手を加え“シリーズ3”としてリリースし、後継の“カッパ(κ)”に交替する1994年までの10年間作り続けられました。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%9E

外装はジョルジェット・ジウジアーロが、内装はランチアチェントロスティーレ(デザインセンター)がデザインを担当しています。CD値は0.32と当時のセダンボディとしては最先端の空力デザインでした。1988年にはI.DE.Aによって内外装ともにでイスリフトを行っています。ステーションワゴンのデザインと生産は、ピニンファリーナが担当しました。ピニンファリーナは、セダンの4枚のドアの形状を一切変えることなく荷室の追加を成立させています。またワゴンの特徴であるフロントガラス上部からリアドア上部にかけてのリアウイングを併せ持ったシルバーのルーフラインは、デザイン上のものだけでなく水捌けやリアウインドウの汚れ防止を効果的に行う機能面も考慮されています。
内装のデザイン・素材は、高級家具メーカー、ポルトローナ・フラウがデザイン・製作した本革トリム(同社が“フラウ・カーズ”を設立し自動車産業に参入する契機となった)か、またはエルメネジルド・ゼニアの生地やアルカンターラをシートやドアトリムに用いたり、無垢のアフリカン・ローズウッドのパネルを用いたりと豪華に仕立てられました。
軽い車体に比較的高出力のエンジンを積むことで、走りの良さをセールスポイントにしていました。エンジンバリエーションは、2,000ccの直列4気筒自然吸気エンジンと同ターボ版、及びPRVの2,850ccV型6気筒、更にヨーロッパ市場では欠かせないディーゼルモデルも用意されました。当時のディーゼル車の中では最速クラスでした。

DOHC・2.0Lエンジンの“テーマ・ie”

出典:https://de.wikipedia.org/wiki/Lancia_Thema_(Y9)

ボアφ84mm×ストローク90mmの1,995ccエンジンを搭載しています。ボッシュ製LE3.1ジェトロニックインジェクションにより120ps/5,750rpm、16.8kgm/3,300rpmを発揮します。ZF製4速A/Tとの組み合わせです。
販売価格は1991年に設定で413万円。

ターボを搭載した“テーマ・ieターボ”

出典:http://weblogs.lanciathema.nl/?page_id=2

上記“ie”のエンジンにボッシュ製LジェトロニックインジェクションとギャレットT3タービンを装備して、ブースト圧0.9barで165ps/5,500rpm、26.0kgm/2,500rpmを発揮しました。1991年には175ps/3,300rpm、29.9kgm/5,000rpmにパワーアップしています。日本には当初5速M/Tのみ正規輸入されましたが、1989年からZF製4速A/Tを選択できるようになりました。このエンジンは、その後ランチア・デルタHF4WDにも転用されました。
販売価格は1987年~1989年は480万円。1991年は438万円。

PRV製のV6エンジンを搭載した“テーマ・6V”

出典:https://de.wikipedia.org/wiki/Lancia_Thema_(Y9)

ボアφ91mm×ストローク73mmの2,849ccのPRV製エンジンを搭載し、ボッシュKジェトロニックインジェクションで150ps/5,750rpm、24.5kgm/2,700rpmを発揮します。1987年モデルは5速M/T、3速A/Tがありましたが、日本には3速A/T仕様のみが正規輸入されました。最高速度は208km/h、0-100km/hは8.2秒というスペックです。
販売価格は1987年~1989年は545万円、1991年は448万円。

ディーゼルターボエンジン搭載のワゴンモデル“テーマワゴン・ターボds”

出典:https://de.wikipedia.org/wiki/Lancia_Thema_(Y9)

ピニンファリーナが手がけたステーションワゴンです。エンジンは2,499ccディーゼルターボで118ps/3,900rpm、25.5kgm/2,200rpmを発揮します。最高速度は190km/h、0-100km/hは12.7秒とまずまずのスペックです。

ちょっと変わり種“テーマ・リムジン”

出典:http://www.lanciathema.it/versionispeciali.htm

ランチアの最上級車は伝統的にイタリアの公用車として用いられ、テーマにも後席部分を300mm延長したストレッチリムジンを、元首や要人向けに極少数トリノにある小規模のサン・パオロ工場で製造されました。搭載されたのは6Vと同じPRV製のV6エンジンです。

フェラーリエンジンを搭載した“テーマ8.32”

出典:https://de.wikipedia.org/wiki/Lancia_Thema_(Y9)

テーマ・8.32は、1986年4月のトリノショーで発表されましたが生産開始はずいぶん遅れて1988年頃になったといいます。量産テーマの生産ラインを離れて、トリノにある小規模のサン・パオロ工場(当時)で生産されました。多い時で1日6~7台ペースで生産されたようです。このモデルの名前は、V型8気筒の32バルブエンジンを搭載することに由来しています。
同じフィアット系列の、フェラーリ・308クアトロヴァルヴォーレ用V型8気筒ボアφ81mm×ストローク71mmの2,927ccエンジンをボッシュ製KE3ジェトロニックインジェクションに改装して搭載しています。215ps/5,750rpm、29.0kgm/4,500rpmを発揮します。1991年には200ps/6,750rpm、26.8kgm/5,000rpmになりました。最高速度は240km/h、0-100km/hは6.8秒というスペックを誇ります。
当初は、スタート時にタイヤが空転して危険を招くことも危惧されましたが、一旦動き出すと前輪に荷重の64%が掛かること、またこのモデルのためグッドイヤーが新たにイーグル205/55VR15を開発してくれたおかげで走行性の問題を解決できました。
星型ホイールや格子状フロントグリルなど、フェラーリのデザインモチーフを踏襲しています。運転席のスイッチで任意に電動収納可能なリヤウイングが備えられました。内装は、シートやドアトリム、ダッシュボードに本革やローズウッドを張り巡らした豪華なもので、価格も1989年で通常モデルの倍近い950万円。1991年で838万円に設定されていました。
フィアットグループ会長だったジャンニ・アニェッリの要望で、8.32のステーションワゴンが1台だけ作られたそうです。1992年の最終モデルチェンジの際に廃止されて、トップグレードとなったエンジンはPRV製V6からアルファロメオ製V6に変更されました。

出典:https://de.wikipedia.org/wiki/Lancia_Thema_(Y9)

ランチア・テーマの誕生

テーマはそれまでのベータ(β)とガンマ(γ)の後継車種として、1978年に“Y9プロジェクト”として開発が始められ、基本的デザイン・コンセプトはイタルデザイン・ジウジアーロに発注されました。基本開発は当時提携関係にあったサーブと共同で行われ、“ティーポ4プロジェクト”として開発が進められました。1984年10月に4ドアセダン型から発売し、1986年にはステーションワゴンを追加しています。
“ティーポ4(クアトロ)プロジェクト”は、当時需要が高まってきたアッパークラスを担うセダンの開発コストの圧縮目的で、共通プラットフォームを共同開発したプロジェクトです。これにはランチア、サーブの他に、フィアット、アルファロメオの2社も加わり、その車種はランチア・テーマ、サーブ・9000、フィアット・クロマ、アルファロメオ・164の4車種です。エンジンを含む半完成状態のドライブトレインをサブフレームごとボディ下側から組み付ける現在の標準的技法を採用し、大幅な生産合理化を目指したのです。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%9E

ランチア・ガンマ

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%BF

ランチア・ベータ

テーマの兄弟車たち

サーブ・9000

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%BB9000

“姉妹車”とされるものの、この9000はフィアットグループの他の3車とは外観、内装、メカニカルなど差異が多くありました。なおこの共同プロジェクトで、サーブはエアコンの開発を担当しています。9000に関しては、サーブ車の特徴の一つであるセンターコンソール上のキーシリンダーが採用されておらず、一般的なステアリングコラム右側に設置されています。セールス的には伸び悩み、中でもM/T車は特に稀少です。1989年に9000ターボ16CDが630万円という価格設定で、当時のシーマやセルシオより高価でした。モデルライフ後半ではグレードも細分化され、約380万円の廉価グレードを設定されましたが、ライバル車に比べるとモデルライフの長さに起因する設計の古さが目立ってしまいました。

フィアット・クロマ

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%9E

ジョルジェット・ジウジアーロのデザインによる5ドアハッチバックながら、ノッチバック風デザインを持ちフィアット・アルジェンタの後継車種として登場しました。ランチア・テーマの好調に隠れてセールスは伸びず、1996年に生産を終了しました。これを最後にフィアットはこのクラスの乗用車生産から撤退しました。

アルファロメオ・164

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AD%E3%83%A1%E3%82%AA%E3%83%BB164

アルファロメオがイタリア産業復興公社(IRI)の支配下にあった時代に開発された中型セダンです。アルファロメオがフィアットに買収された翌年の1987年、フランクフルトショーでデビューしました。当初は後輪駆動レイアウトで計画されていましたが、当時のアルファロメオの深刻な経営不振のために4社共同の“Tipo4プロジェクト”へ参加したことで前輪駆動車に変更されました。スタイリングデザインはピニンファリーナ(メインデザイナーはエンリコ・フミア)で、1988年に“トリノ・ピエモンテデザイン賞”を受賞しています。

復活?? 2代目ランチア・テーマ

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81%E3%82%A2%E3%83%BB%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%9E

2009年にフィアット・グループとクライスラーが資本提携を結んだ関係で、クライスラーとランチアのディーラー網が統合され、ヨーロッパ大陸ではクライスラー車がランチアブランドで販売されることになりました。クライスラー・300のバッジを変えた2代目テーマは、2011年3月のジュネーヴモーターショーで他の5車種と一緒に初公開され、2011年10月19日からイタリアで販売を開始しました。初代同様ポルトローナ・フラウ製のシートが装備されたりターボ・ディーゼルエンジンが設定されている点などが、ベースになったクライスラー・300との相違点です。

まだまだ乗れる“テーマ”

最終モデルが1994年ですからすでに22年が経過していますが、テーマまだまだ乗れるクルマです。兄弟車のアルファロメオ164もそうですが、数は多くないものの熱心なファンたちに見守られながら走り続けています。私が知っているだけでもオーナーが2人いますから、日本中探せばまだまだ現役テーマはたくさんいるんだろうと思っています。
最終モデルが1994年とは言え元々の設計は1980年代前半ですから、イタリア車お約束の“マイナートラブル”は多々あります。いわゆる“電装が弱い”というやつです。日本の高温多湿な夏が理解されていない時代の輸入車は、湿気による電気の導通不良トラブルが必ずおきます。車中、いたるところのカプラーというカプラーを一旦外して、接点復活剤と呼ばれるスプレー剤を塗布します。本当は防水カプラーに交換したいところですが、すべてのカプラーに対応できるわけではありませんのであきらめましょう。
あとはバッテリー回りの配線を交換します。特にマイナス側のコード(アースケーブル)は、性能的には新車時の半分以下になっているはずです。プラス側もターミナル端子を交換してあげるといいですよ。オルタネーター~バッテリー間に補助ケーブルを追加すると効果倍増です。これだけで、各電装品の動きが“疑い”から“信頼”へ変わるはずです。

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某中古車サイトを覗いてみたら6台ありました。V63.0Lモデルが多いですが、なんと“8.32”が1台いるじゃないですか。フェラーリ308の3.0L・V型8気筒DOHCエンジンを搭載している8.32です。208万円でフェラーリエンジンが手に入るならと考えてしまう自分が怖いですが。

最後にまとめ

いかがでしたか。ランチアが1980年代に世に送り出したハイサルーン、テーマ。楽しんでいただけたでしょうか。テーマは“紳士のクルマ”と呼ばれるほどイタリアではとても人気の高い車でした。先代に当たるベータやガンマが時代遅れになっていたところへ、ジウジアーロのモダンデザインをまとって登場しましたから反響も大きかったことでしょう。日本でのセールスはさほど良い成績ではありませんでしたが、当時400万円を超えるプライスだったことを考えれば検討したほうだと思います。今こうして思い返してみても、良いクルマだったなぁ、と素直に思えるクルマです。