【フォード フォーカス】環境を意識しつつスパルタンモデルも揃えた5ドア

米国のみならず、世界中の地域に事業を展開し、ほぼ全ての国の自動車ユーザーから確固たる支持を得ているのが、フォード・モーター社だと思います。そして、その世界戦略の中でも主力となるのが、〜2.0リッタークラスに位置する、このフォード フォーカスなのです。数年前には世界で最も選ばれたのがこの車種、でも、その正体がなんとなくおぼろげというか、存在が遠い気がしていませんか?

フォーカス、デザインとその存在位置

それを真横から見たとき、比較的短いフロントノーズに深く傾斜したウィンドシールドが続き、ルーフトップから後方へかけては、積極的な絞り込みがスポーティー感を演出する、そのせいか、ゆとりを持ったホールベースもダルな印象にならずバランス感も良い。それが、フォード フォーカスを見た時の印象です。欧州、オセアニア、そして日本も含む全ての先進国市場で、他メーカーの同クラスと競合することを目的にしたデザインには、古典的でバタくさいアメリカンな味わいは、ほぼ与えられていないのです。
それでも、今の日本人がデザインをもとに5ドアハッチバックのファミリー車を狙うなら、マツダのアクセラの方が有力かもしれません。また、デザインよりもニュルブルクリンク24時間耐久レースでの成功、といった性能&品質に引かれるなら、スバルのインプレッサの方が魅力的と言えるでしょう。邪魔な関税などがない分、私達にとっては後者2台の方が価格的にも断然有利です。
しかしながら、フォード フォーカスが持つ最大の訴求ポイントとは、やはり生粋の外国育ちである、という点なのです。日本の芸能界に例えれば、シャーロット・ケイト・フォックスさんとか、ダコタ・ローズちゃんに匹敵する存在感は、小さな島国の価値観しか知らない私達にとってエキゾチックだし、同時にアイオープニングでもあることでしょう。
でも、話し言葉のアクセントが独特、という以上に、実はこのフォード フォーカス、本質的なタレント(才能)をまじめに磨き上げた一台でもあり、世界中の自動車ユーザーやレポーターからも、一定以上の評価をもらっているクルマだったんです。

限定された日本向けモデル

フォード・モーター・カンパニーが、当時製造に12時間を費やしていたT型モデルの工程を、わずか90分に短縮する技術革新を成し遂げたのは、今から実に百年もさかのぼる1913年の事だそうで、それを考えれば、21世紀の今日、フォードの自動車が世界中のあらゆる場所を走り回っている現状も、また当然の結果だと言えるでしょう。まさに、天下を取った自動車メーカーがフォード社です。
しかし、そんな同社にとっても、ガラパゴス化という独特の進化形態を取った日本市場だけは、その扱いに苦慮しているようで、現行で日本に正規輸入されているフォード フォーカスは、実質1グレードのみとなっています。

1.5ダウンサイジングターボ

今、フォード車が従来のガソリンエンジンの代わりに、急速に置き換えを進めているのが、『EcoBoost』の呼び名が与えられたダウンサイジングターボエンジンです。フォード社は、いくつかのタイプのエンジンを、輸出先のマーケットに合わせて使用しているようですが、現状の日本で購入することができるのは、1.5リッター直列4気筒ガソリン直噴のターボ過給のみ。実は、これにもレギュラータイプとスペシャルの2バージョンが存在して、その出力がかなり違うのですが、実は今現在、ちょっとした大人の事情があるらしく、日本フォードの公式ページから詳しいデータなどが得られません。
一応、南アの公式サイト他を見ますと、標準スペックで出力が150ps、トルクは24.5kgmを発揮し、特別バージョン向けのタイプですと、この出力は183psまでアップされるのだそうです。この1.5ターボは、コモンレール式の燃料噴射機構を持ち、自然吸気の2.0リッターを超えるパワーと、高い燃料効率とを両立したという優れもの、との触れ込みがなされていて、当然、自動アイドリングストップも装備しています。
外から米国を見ると、自国内でシェールオイル&ガスなどが、じゃかすか産出される様になったという事情も背景にして、いまだに世界のCO2排出量を一人でリードしているというイメージもあり、フォードの様な会社は、エネルギー効率なんて感心ないのではないか、と勝手に決めつけたくなるのですが、実は、全世界の国々で製品を販売している関係上、現代的な環境意識を無視することも出来ない、というのがこのメーカーなのですね。

トルクベクタリングで駆動を制御

動力源と別に、フォーカスの走行性能を高めるシステムとして与えられているのが、トルクベクタリングという積極的な走行姿勢制御です。これは、コーナリングからの加速時に内側フロントタイヤ(駆動輪)に、わずかなブレーキをかけることで、効果的にトラクションを発生させるという仕組みだそうで、車体が大きくロールした時など、空転気味になるタイヤへ、ディファレンシャルギアからトルクが逃げるのを防止する、という発想のようです。本家(英語版)のサイトでは、「通常、上級クラスの自動車にしか使われない機構です」なんてアピールがされています。

フォーカス?あぁっ終わる車っ?…なんてとんでもないっ!

日本で購入できるかできないか、は別として、基本的に、2016年型フォード フォーカスには、最も廉価版の、『S(セダン)』、その上の『SE(セダン&5ドアハッチ)』、その上に『Titanium(同左)』、さらにスポーティグレードの『ST(5ドアハッチ)』、電気自動車の『Electric(同左)』、そして最上級最強バージョンとなる『RS(同左)』、の全6タイプ(限定生産を除く)が生産されています。

シャーシ周りにも魅力が

現行のフォーカスで採用された足回りは、前輪がマクファーソンストラット式の独立懸架という標準的なものですが、後輪を支えるのは、サブフレームに支点を持つ上下に分かれたコントロールアームで、ホイールハブを挟むように支持し、前後の位置決めはトレーリングリンクで行うという独立懸架で、コイルスプリングを、コントロールアームの下側から直接ボディーとの間に挟んでいる、という、ちょっと面白い感じのものです。これだと、リアサスのダンパー高が抑えられるという利点があるそうですが、同時にもちろん、この前後サスペンションの構成とセッティングが、世界的に評価の高いフォーカスのハンドリングに、最も貢献していることも間違いありません。
もちろん制動機構には、ABSと、前出のトルクベクタリングが備えられ、トラクションコントロールなどと合わせて、車体の走行姿勢を安定させる、ESC(エレクトロニック・スタビリティー・コントロール)の機能もあります。

E85も使用できるエンジン

2016年型フォーカスには、125psを発揮して都市部の走行モードテストでは12.6km/Lの燃料消費性能(EPA推定値、米国内テスト)を示す、1.0リッターの EcoBoostエンジンもありますが、もう一つ面白いのが、SEとTitaniumに搭載される、2.0リッターの『Flex Fuel』エンジンです。
これは、スペック的には、162.2ps/6,500rpmの出力に、20kgm/4,500rpmのこのエンジンなのですが、ガソリン以外に、エタノール85パーセントとガソリン15パーセント混合の、『E85燃料』にも対応しているのです。前に原油価格が先物相場に引っ張られて超高騰した際(そんな時期もありましたね)、時の米国ブッシュ政権が、トウモロコシで車を動かすぞ、なんていう政策を打ち出したことに引っ張られ、燃料高であえいでいた日本の社会でも、エタノール混合自動車が登場しそうになったのを思い出しますが、今となっては、そんな話題を持ち出す日本人は、一人もいなくなってしまいました。日本みたいな国の農協さんも、農作物の一部を破棄するのではなくて、バイオエタノールに変えることなんかをやってくれたら、ちょっと遠い未来には日本のエネルギー自給率に貢献できるかもしれないのに、などと私のような素人は思うのですが、まぁ、分野が違う世界に鼻を突っ込んではろくなことにならない、というのはどこの世界でも一緒で、農業を守っている人々に、そんなことを押し付けるのはアンフェアというものですね。
余談はともかく、混合燃料のインフラが出来上がっている国、あるいは、そういった燃料の方が現実的であるという地域でも、しっかり車を供給してゆこうというフォード社の使命感が、このエンジンに表れている気はします。ちなみに、2.0リッターエンジンには、スポーツモデルのSTへ搭載されるハイパワーのターボ過給(EcoBoost)付きもあって、そちらの出力は256ps、トルクは37kgとなります。

インテリア

フォード社は、このフォーカスの内装設計にも、環境意識の高さを表現していて、例えば、標準仕様のシートにはプラスチックボトルなどをリサイクルして製造された、『REPREVE』という生地を採用したり、EVのモデルにおいては、シートのクッションへ大豆由来の原材料を使ったりしています。
さらに、エココンシャスという意味で言うと、その計器盤は『SmartGauge with EcoGuide(エコガイド付きスマートゲージ)』と名付けられ、LCDパネルと組み合わされたもので、そこに青いバタフライが羽ばたく時は、燃料を大事に運転が出来ている証拠、というドライバーを鼓舞する演出がされています。また。このグラフィック表示の部分は、自分好みにモディファイできたりもするそうです。
室内の利便性に関する所では、夜間の運転時に役に立つ『Ambient Lighting(アンビエント・ライティング)』が選べます。これは、室内が暗くなる時間帯に足元やカップホルダーを照明する機能ですが、その色合いが、レッド、ブルー、パープル、オレンジ、アクア、ホワイト、そしてイエローグリーンの7色から選択することができます。この機能なんて、日本仕様では3原色のLEDを採用して、春は桜のピンク、夏は緑や海の青さ、秋は紅葉の色、そしてその他の色もスマホアプリから設定可能、なんていうサービスを導入していたら結構訴求力が高まったのではないか、という気もしますが、まぁ、どちらにしても今や実現性はないですね。
空調にもちょっとした工夫があって、『Dual-Zone Electronic Automatic Temperature Control(デュアルゾーン・オートエアコン)』は、前2座席の空調温度を個別に設定、管理することができる機能であり、シートヒーターを装備していれば、その温め具合も3段階にセット可能です。
他の内装アイテムとしては、フォーカスのスポーティモデルであるSTに、下部を平らに削ったレーシーな形状の革巻きステアリングホイールを採用したり、専用のサイドステッププレート、アルミ製ペダル、金属のヘッドが光るシフトノブ、そして、レカロのフロントシートなどが装備され、グレードを表す『ST』のロゴが随所に刻印されている、とのことです。

同等他車との価格比較をすると

米国大統領選挙の行方によれば、TPPも吹っ飛んでしまうかもしれないので、日本市場における輸入ファミリーカーの未来には、まだまだ楽観視できないものがあります。
そんな日本で戦ってきたフォード フォーカスの基本価格は¥3,090,000で、あえて若干不公平な言い方になることも自認しつつ、その性能は無視して、1.5リッターという排気量と値段のつり合いだけを考えれば、この値段は法外な数字である、という言い方も可能です。
例えば、車格とコンセプトが近いと思われる、マツダのアクセラでは、スカイアクティブ搭載の2.0ガソリンエンジン&前輪駆動である5ドアスポーツ20Sの場合で、¥2,278,800からの価格設定、また、スバルのインプレッサスポーツになると、リニアトロニック(常時全輪駆動)を付けても、¥2,149,200から購入が可能ということにもなり、数字の上ではあきらかにフォーカスに不利です。
さらに言えば、いろいろと細かいことを組み合わせ、燃料消費を少なく抑える芸当は、日本メーカーの方にかなり分があるのも明らかなので、フォードフォーカスが日本市場で劣勢を強いられた事情は、かならずしも制度などによる弾圧ではなく、消費者の選択による結果だとも言えます。
そうであったとしても、日本にだって少なからず居るはずのフォード車ファンの方々は、これから正規輸入がなくなることで、もっと高い値段でフォーカス(その他の車種)を購入することを強いられる、と言うことにもなって行く訳ですね。

RSは羨望の的

一応、ファミリーカーのセグメントにあるフォード フォーカスですが、もちろんフラッグシップとなるモデルも用意されています(現行モデルでは2016年から)。最強バージョンとなるそのグレード名は『RS(ラリー・スポーツ)』。そして、フォード・モーターにとってラリーとは、もちろんWRCのことを指します、同社は1999年から2010年まで、フォーカスをベースにした車両で世界選手権ラリーを戦っていたのですね。
モータースポーツでの活躍を思い起こさせ、選手権への復帰をも想起させるのが、駆動方式をAWDに変更し、その他の装備もグレードアップして、他のフォーカスとは一線を画す存在となった、このRSであり、もうすでに世界中のフォードファン達から熱視線を浴びているのだそうです。リアスポイラーが大型化しているとはいえ、外観そして内装の面でも、スポーティグレードのSTからそれほど飛躍していないRSの印象ですが、その中身を見れば結構面白い部分もあるのです。

ダイナミックに駆動配分を行う新世代AWD

今よりパワーのあるマシンが許されていた頃のWRCでは、コーナーのずっと手前から車をスライドさせて、ドリフト状態をキープしたまま旋回し立ち上がってゆく、なんて姿が見られたと思うのですが、あれは0.1秒を削るために、とてつもなく運転の上手い人達がやっていたことで、一般人の我々には出来ないしやってはいけないことです…いや、でした、十数年前のクルマに乗っている限りでは。
フォード フォーカスRSにも、今どきのスポーツカーとしては常識的と言うべき、走行モードの変更ボタンが付いており、その設定は、比較的マイルドな『スポーツ』、サーキット走行を想定した『トラック』、そして極め付けの『ドリフト』、という3つの走行モードを持ちます。フォーカスRSに採用された4輪駆動システム『Dynamic Torque Vectoring』は、両サイドの後輪それぞれに多板式のクラッチがあり、左右の駆動トルクを自由に制御するという機構で、全トルクの70パーセントを後輪に振り向けつつ、それら2つの後輪間では、どちらかに全ての駆動力を伝えることも可能というものです。前出の3つの走行モードは、この制御システムの働きを使うとともに、ショックアブソーバーのセッティング、エンジンとステアリングのレスポンスさらには、エキゾーストノイズの音質まで調整して、車の走行特性と乗り味を可変させるという仕組みです。
そうは言ってもフォーカスは一般乗用車ですので、基本的には、コーナーへオーバースピード気味に入った場合でも、人間が反応するより遥かに速くリアタイヤへのトルク配分を増強して、弱オーバーステアを作り出し、走行ラインが外側へドリフトアウトしないよう、アシストしてくれるというのが、その主目的ではあります。
しかし、最後の設定、ドリフトを選択すると、この自動トルク配分機構は、RSの車体に後輪を横滑りさせてドリフトしながらのコーナリングを許す領域で働きます。しかも、自動的にブレーキを使い走行姿勢を制御する『ESC(エレクトロニック、スタビリテティー・コントロール)』との協調制御で速度に対応したドリフトアングルを実現、ドライバーの意図する走行ラインをトレースするように、自動アシストを行うのです。
もちろん、この機構の性能をフルに発揮させるため、フォーカスRSは、その動力系もパワーアップされていて、STのものより排気量が拡大された、2.3リッターEcoBoostエンジンが搭載され、出力は355ps、トルクは48kgmを絞り出します。そういったパワーと独創的な四輪駆動は、一部の人達にとっては、この上ないオモチャとなること間違いなし、ですが、これまた日本の社会には受け入れられ難いものかもしれません。(例の大人の事情によりすでに実現性がないのですが)仮に正規輸入されたとしても、走行モードスイッチから、『ドリフト』が消えていた、などという非常に寂しい話になったかもしれませんね。

まとめ

フォードが日本市場から撤退を決断した、と言うのは、衝撃的なニュースでもありました。自動車産業そのものを作り出し、現在でも数えきれない程のユーザーを世界中にもつ、そんな老舗中の老舗でも簡単に切り込めないのが、今の日本市場でもあるのです。
クルマは、そのデザインで選択されることも多いと思いますし、その意味で言っても、フォード フォーカスを支持する顧客層が、日本国内にもある程度は存在するはずです。しかし、この車がアピールする人々が、ファミリー層であるということが、売り込み方を難しくしていたのかもしれません。
仮に、価格、性能、その他のギミックの中で、見劣りする部分が存在するとしても、そういう製品を愛する人から購入機会を奪うというのは、先々のことを考えた場合には、あまり良くない話のような気がしてなりません。

【基本情報】
名称:フォード フォーカスST
エンジン排気量:1,999cc
エンジン出力:256ps/5,500rpm
エンジントルク:37kgm/2,500 rpm
全長:4,361mm
全幅:1,824mm
全高:1,483mm
重量:1,473kg
ホールベース:2,649mm
サスペンション:マクファーソンストラット(前)/ コントロールブレードSLA(後)
トランスミッション:6速マニュアル

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