【ロータス エヴォーラ】名門のピュアスポーツに近づいてみたい

スーパーカーブームの昔から、自動車ファンにとってロータスのブランド名は、きらりと光る一つの星だったと思います。南欧の国が作っている、派手さ命みたいなスーパーカーとは違い、同社の送り出す車は、乗り手の感性に加え日常のライフスタイルにも、そっと寄り添ってくれそうな、そんな付き合いが出来そうだ、なんて思わせてくれるんですね。そのラインアップの中でも最上位にあるのが、ロータス エヴォーラです。

大きなロータス

世に販売される製品の中でも、自動車というのは特別な性格を持っています。家電より相当高価であるけれど、家を購入する程の一生ものではなく、趣味性が高いけれども自由に選べる訳でもない、そしてその選択によっては、周囲に与える印象が良い方へも悪い方向へも、大きく変わってしまう…。
それを男性が見るか、女性が見るかによっても大きく評価が割れるでしょうし、マグネシウムホイールがフェンダー内部を目いっぱい占領しているような、ギンギンにデコったミニバンで彼女を初デートに誘っても、自分が思った通りのインプレッションを与えられるかどうか、これが微妙な所らしいんですね。その上、青信号でのゼロ発進は必ずレッドゾーンを舐める、なんて事を繰り返して、「◎◎君の運転凄いね」などと言われたからといっても、その凄いを文字通りに受けとってはいけません。
もちろん、センスは人それぞれなので、色んなケースがあると思いますし、やはり出来ることなら自分に似合った車に乗れたら良いですよね。と言う訳で、今回のお題は、ロータス エヴォーラを所有することのイメージが、はたして自分にとって(あなたにとって)リーズナブルだろうか? という一つの思考実験です。

エヴォーラの性能とは?

ロータス社はピュアスポーツカーの老舗メーカーであり、将来的に同社の商品コンセプトがどう動くかは分からないとしても、現状ではその製品に、真のスポーツ性能が備わっていなければなりません。車好きなら真っ先に気になるその中身を、現行のエヴォーラ400について見てみましょう。

シャシー

今のロータス社をスポーツカーメーカーたらしめているものとは、間違いなく、同社が持つコンペティション(競技)の世界への挑戦と成功の歴史でしょう。そして、現行のロータース車両にも、実にレーシングライクな構造が用いられています。それは、アルミニウム系の素材を貼り合わせて制作したタブに、サスペンションと動力部を取り付け、上部にはコンポジット素材のボディーを被せるという手法です。
これは、レースに興味があるだけの私のようなミーハーにとっても、それだけで興味が湧く話なのですが、同時に、この特別な製造手法に注力したことで与えられた恩恵として、ボディーの強力な捻じれ剛性と、それが生み出す精密なハンドリング感覚というものも、忘れてはいけません。さらに言えば、そのモディフィケーションのしやすさも、開発者達にとっては大きな魅力であるはずですね。
まぁ、レーシングカーというのは、永遠に進化と変更がなされるものですので、そのために同社が培ってきたノウハウが、市販モデルにそのまま使われている、そんなイメージに捉えても良いのでしょう。とにかく、現行のエヴォーラ400の車体重量は6速MT車で1,395kg、これは、前のモデルであるエヴォーラSから、マイナーチェンジの際に40kg以上もの軽量化を果たした値で、ここにも車体の改良のしやすさが表れていると思います。
その車台に組み付けられるサスペンションは、これまたスポーツカーの最低必須要件である、ダブルウィッシュボーン式を前後供に採用、ダンパーはビルシュタイン製、コイルスプリングはアイバッハ製という贅沢なものになっています。そしてもう一つの大事な要素、制動機構には、2ピースクロスドリルドベンチレーテッドブレーキディスクを、APレーシング製4ポッドアルミ合金製キャリパーが挟み込む形となっていて、(ちょっと舌を噛みそうですが)とにかく充実していることは確かでしょう。
アルミの車体にプラスチックのボディー、ですから、正直言って一抹の不安と疑念を抱かれる方も居そうですし、私なんかまさにその一人でもありますが、逆に言えば、ある程度のコストはかかっても、ちゃんと精度がでる組み立てをしてくれているなら、むしろ、耐候性や耐久性は優秀ということにもなるかもしれません。と言っても、駐車するガレージは必須ですね。

エンジン&トランスミッション

当初から、ロータス エヴォーラのシリーズには、トヨタ製V63.5リッターエンジンが、横置きミッドシップマウントされています。そのパワーは自然吸気タイプで280psでしたが、現行でこの搭載車は製造されておらず、スパーチャージャーで加給された406psのタイプが、今のエヴォーラ400に搭載されています。この馬力は、英馬力(bhp)表示に換算すると丁度400馬力となり、それが車名に付け加えられた数字を表しています。また、このエンジン部分で、マイナーチェンジ時に20kg以上の重量削減を果たしたのだそうです。
トランスミッションは、6速のマニュアルが中心ですが、オプション的に6速AT(パドルシフト可能)が用意されていますので、免許証の制限のためにこのクルマを泣く泣く諦める、ということにはなりません。ただ、ピュアなスポーツカーを求めて重量への負担を気にした時には、やはりマニュアルが好ましい選択とも言えるでしょう。
一応気になるのが燃費ですが、英語版サイトを参考にすると、都市部の走行パターンで約7.3km/L(マニュアル車)というデータです。

スピード

機械式過給機によりパワーアップしたエンジンは、このロータス エヴォーラ400に、1ps辺り3.5kg弱のパワーウェイトレシオを実現しています。マニュアルギア搭載車についてそのスピード性能を見てみると、0〜時速100km加速で4.2秒、最高速度は時速300kmに達します。さらに、改良されたリアスポイラーなどの効果で、フラットな車体底面からは後方へ効率よく空気が通過するので、時速240kmに到達した場合には32kgのダウンフォースを発生します。
ロータスの車なら、しっかりしたシャーシと足回りによりもたらされる、精密なハンドリングは十分以上に期待できますから、この空力性能があれば日本の高速道路での追い越しなんて、何の不安もなくこなせることでしょう。しかし、あんまり調子に乗ってぶちかまし過ぎると、隣の女の子が二度と同席してくれなくなる可能性も高いので、どうぞ、社会人として節度ある運転をお願いします。

人の居る空間として

クルマにとって最も重要な人間は、それを運転するドライバーでしょう。操作する人自身が、極短距離の走行で疲弊しきってしまったり、加減速やステアリングの度に違和感を感じ続ける様では、助手席の人物に良質な居住感を与えることも叶いません。そして、ロータスの様なスポーツカーを設計する際は、日常的な居住性が最も犠牲にされやすい要素だとも言えるのです。
そんな中にあって、ロータス エヴォーラを個性的にしている大きな点は、ミッドシップのピュアスポーツカーでありながら、(理論的には)4人乗りを可能にしているという点です。まぁ、4人全員の快適性が保証されるものではないと思いますが、たとえば、バッグやジャケットを置くとか、ドライブ先で購入したお土産や、誰かへのプレゼント(花束なんてどうですか?)を置いておく、そんな最低限のユーティリティがもたらされるのは、このクルマを選ぶ一つの動機には成り得ますね。
ただ、スポーツカーの宿命として、搭乗者の乗降性には一定の難もあるようです。エヴォーラSでは、横長で高い敷居の開口部には、あまり良い評価が無かったということなのです。これは、車体剛性への高い要求があることに起因しているかもしれませんし、ひょっとしたら、アルミの押し出し材を貼り合わせるというシャーシの製造手法にも、若干は責任があるのかもしれません。とは言え、エヴォーラ400の登場時にこの問題には一定の改良がなされ、ドアの開口部分は44mm程狭くした代わりに、その敷居を56mm程低くしています。
たとえロータスと言えども自動車ですから、そこへ乗り込むのは運転手だけではありません。また、ドライバーやナビゲーターが女性の場合もあるでしょうし、場合によったら両親や親類など、年上の人達も運ぶことになるかも。そんなエマージェンシーのことを車の選択時に少しだけ考慮してみる、というのも、大人のドライバーとしての心得と言うものです。
加えて言いますと、公式ページなどでコックピットのペダル配置の写真を見る限り、ブレーキペダルがどちらかと言うとスロットルペダル寄りにオフセットしていて、これは、私が乗っている某トヨタ車(もちろんMTですがコンパクトですよ)とは真逆の良い配置だと思います。意外と日常の運転でも、ヒールアンドトーを使って回転数を合わせたくなるので、二つのペダルが合理的な距離に置かれているのは喜ばしいことです。MT車、特にスポーツカーにとってはペダル配置は重要です。

エヴォーラを使ってみた人の話

多くのニューカーインプレッションが、箱根のターンパイクとか、運がよければ筑波サーキットなどに車両を持ち込んで、そこそこなオーバースピードで振り回した時の操縦性などを、レポートするのだと思います。しかし、逆に考えると、ロータス エヴォーラの様に癖があって高性能が約束されているクルマについて購入の可能性を考える時、当然そういった究極インプレッションも参考にしつつも、むしろ購入した後、本当に付き合ってゆけるのかという点が、本当に気になるのではないでしょうか。
したがって、エヴォーラの様に話題性を持つクルマの長期使用レポート、というものが行われる訳ですが、英語の電子版『CAR Magazine』に、エヴォーラSを9ヵ月間日々実際に使用してみた、という体験記事があり、ちょっと古い話で申しわけないのですが、面白かったので軽くご紹介します。
まず、誰でもちょっとは気になる実用燃費。このレポーターが日々走らせる、遠出もあり市街地もありというシチュエーションで、概ね7km/L前後の燃費を記録しているようで、この記者の方は、「まぁ、その点でお金を出し惜しむなら、エリーゼにすれば? 10km/Lは記録すると思うよ」、なんてことを仰っています。
編集部でテストしている他の車種にくらべ、エヴォーラのキーが実に質感があって良い、との報告もあるのですが、これは実物がないとなんとも分からない話ですね。質感で言うと、とにかく素晴らしいのはそのシャーシと足回り、ハンドリングの感覚は大概の天候の下で一級品、とりあえず文句の出ようがないと言う風な感想を述べられていました。
ただ、これ(エヴォーラS)を乗用車として使う時、やはり問題になりえるのが乗降性のようで、テスターの方は6フィート2インチの身長(標準的な体格だと申されています)だそうですが、乗り降りをするたびに、ドア内側やスピーカーに足をぶつけ、いくつもの靴跡が残ってしまったという話です。ただ、一度着座してしまえば、長距離ドライブだって苦にならない居住性があるので、むしろこの乗降性の問題は大変残念だとのこと。
そして、使い勝手の件で一番おもしろかったのは、子供達をエヴォーラで学校へ送り迎えしたらどうなるか、という実験です。鞄をエンジン後部のユーティリティーボックスへ押し込み、前席は膝がダッシュボードに触れるまで目いっぱいスライドさせ、12歳程度の子供2人を後席に着座させ学校へ向かう、校門へ着いたときの学友の熱視線はもう凄い事になるのですが、その後が最大の問題で、子供2人ですらシートとピラーの間をよじ登るようにして這い出さなければならず、最初の格好良いインパクトとのギャップがかなり大きくて、恥ずかしいとのこと。結果的に、このエヴォーラ通学は2日しか続かなかったそうです。

エヴォーラGT4、スパルタンを超えたレースモデル

最近の欧州自動車メーカーは、GTレース参加用の車両を自ら手掛け、市販することが多くなってきた様に思います。ポルシェ911GT3なども、良くクルマ関係のネタとして取り上げられますよね。そして、自動車の製品セグメントとして、その911カレラに対抗する所へ位置づけされるというエヴォーラにも、GT4というレース向け車両がラインアップされています。
これは、日本へは正規輸入されていないクルマだと思いますし、どちらにしても、ナンバー登録しようなんて思わない方が良いクルマでしょうけれど、ある意味、ロータス社がレースへの関心を失わないでいてくれることの証、そして、ユーザーがロータスに憧れて、ひょっとしたらエヴォーラを選択する理由ともなるかもしれない、そんな象徴的ともいえるモデルです。

車体の仕様

出荷状態でレース出場が可能、というエヴォーラGT4ですから、まず軽量化が大前提となります。この車体では、もともとレースカー作りのノウハウがそのまま生かされていたアルミシャーシに加え、外装にコンポジット&カーボン素材を使用することで、車体重量は1,200kgまで軽量化されました。レース用に極限まで簡素化された室内には、6点式シートベルトを備えてHANS(レーシングドライバーの首と頭を事故の衝撃から守る装備)の使用を妨げない形状の超軽量シートが使われ、転倒時の安全のためにロールバーも標準で組み込まれています。また、ステアリングホイールも、マグネシウムを使用した小径脱着可能タイプで、さらにはスターターは押ボタン式になっています。

走行性能

エヴォーラGT4には、過給機を取り外したトヨタ製3.5リッターV6エンジンが搭載され、その出力は360ps、トルクは45.4kgmを発生します。レブリミットは7、200rpmです。エキゾースト系では、ステンレス製のマニホールドに、FIA公認取得済みの触媒を内蔵したサイレンサーが取り付けられていて、発生するノイズはエンジンが3,800rpmの時に100dbなんてスペックも公開されています。
その動力系からのパワーを、サーキットの路面に伝えるのに大切なダブルウィッシュボーン式サスペンションでは、強化されたブッシュと2段階調節付のダンパーを標準で装備。ブレーキにも、前後のバランスを調整できるレース用の仕組みが、工場出荷時にすでに組み込まれているのだそうです。
外観を見ると、フロントのスポイラー、エンジン後方にそびえるリアウィングなどもそうですが、何と言ってもリアの下部に目立つ大きなディフューザーが圧巻で、やっぱりこれはレーシングカーなのだと見る者に知らしめます。
ひょっとして、このスタイリングのロータスを乗り回したい、と熱望され、このGT4を個人輸入される方も居らっしゃるかもしれませんが(あんまりないですよね)、とりあえず必要な改造と手続きを経て登録に至ったとしても、まぁ、サーキット以外ならどこで走らせることが出来るんだろう、ガソリンスタンド入れるかな、などと、余計な心配をしてしまいます。とにかく、スパルタンとかレーシーなどという言葉を超えた、真のコンペティションモデルが、このエヴォーラGT4です。

最終的にはお金の問題

上のGT4は別としても、このロータス エヴォーラ400というクルマには、ライバルと目されるポルシェ911カレラにはない魅力が、数々備わっているのだと思います。同じ2プラス2の乗員数だとしても、ミッドシップのエヴォーラには、運動性能の部分で若干の利点があるはずですし、もし、ポルシェに巨大企業が理詰めで開発した機械という印象があるとすれば、エヴォーラには高い技術を持った工房が組み上げた作品、という一つの質感が漂うのです。
では結論です。エヴォーラを選びますか? いや、その前に確認しなければならないのは、そのプライスタグに刷られている数字でした。とりあえず、6速マニュアルギア車にオプションを全くつけない時の車体本体価格が、¥13,554,000で(ポルシェカレラは¥13,091,000、カレラ4で¥14,371,000)、これにはクラリオン製のナビゲーションシステムや、アルミホイールくらいは含まれています。このカラーバリエーションは、2種類のシルバーを含めた10色から選択します。中でも、レーシンググリーンという塗装が、あまり見かけない色だと思われるので、多少ルックスでアピールしたいとお考えの向きには、お勧めなのかもしれません。
もちろん、上の値段には税金などの諸費用が加算されますが、あんまり細かいことを言っても野暮というものですよね。そうそう、先ほど燃費の話なんて書いたのですが、このお値段を出せる人が、リッター何キロ? なんて気にする訳がありませんでした、はっはは、ごめんなさい。しかし、それでもです、スポーツカーにきびきびした動きを求めるとしたら、本体価格が高々¥5,994,000のエリーゼでも十分ということも言えるのではないでしょうか、あぁしかし、これはエヴォーラの紹介記事でしたね。

まとめ

アンソニー・コリン・ブルース・チャップマンが、1949年に大学卒業後、イギリス空軍を経て最初に就職したのがアルミニウムを扱う会社だったそうです。大学で構造エンジニアリングを学んだ彼は、その後、自分で高性能のレーシングカーを作り始め、コンペティションの世界で成功を積み重ねます。彼が、最初に彼のスポーツカーへロータスの名を与えたのは、1951年のことだと言います。
クルマの基本性能を車体の強度・剛性に求めるという姿勢は、こんな黎明期に創生されて以来、今の時代までロータスカーズの中に生き続けたポリシーであるはずです。金と時間がかかりすぎるエンジン開発は止めて、その後の段階の車開発に専念してしまうという思い切りも、誰にもまねができないシャーシ開発のノウハウがあるからやれることです。
企業としては、様々な艱難辛苦を乗り越えてきた同社であり、最近では、ロータスカーズではないのにロータスを名乗るF1チームが出てきたりして、熱心なファンはソワソワさせられる所ですが、この会社には、そういった下世話な事情にも動じない、しっかりとした筋が一本通っているのだと思います、それが、コリン・チャップマンが残したレジェンドそのものなのです。
そこから生まれたロータス エヴォーラは、自動車の長い進化の歴史が生んだ、一つの結論であることは確かなはずです。

【基本情報】
名称:ロータス エヴォーラ400(6速MT)
エンジン排気量:3,456cc
エンジン出力:406ps / 7,000rpm
エンジントルク:41.8kgmkgm / 3,000 - 7,000rpm
全長:4,390mm
全幅:1,850mm ミラー除く
全高:1,240mmmm
重量:1,395kg
ホールベース:2,575mm
サスペンション:4輪ダブルウィッシュボーン式独立懸架

Evora 400について。ロータス社正規輸入総代理店(エリーゼ・エヴォーラ・エキシージなど)エルシーアイ株式会社です。