【日産 シーマ】バブルの申し子として社会現象まで巻き起こしたVIPカー

1thモデルは、「シーマ現象」という社会現象まで巻き起こし爆発的に大人気となりました。バブルの申し子とまで評された初期モデルから先端技術を駆使している「シーマ」のヒストリーに迫ってみたいと思います。

「シーマ(Cima)」

「シーマ(Cima)」は、日産自動車が生産し販売している高級セダンモデルです。1thモデルは1988年に登場と、初めの1年間に36,400台が販売され、「シーマ現象」と呼ばれる大ヒットモデルとなりました。1991年の2thモデルの販売は減少、4thモデルは年間販売台数は294台となり、2010年8月に一旦、生産と販売が中止されました。しかし2012年5月にフーガハイブリッドをベースとしたハイブリッド専用車として復活しています。

1thモデル「FPY31型」(1988年-1991年)

1988年1月に「Y31型 セドリック/グロリア」と同じプラットフォームを使い、3ナンバー専用の上級モデルとして登場しました。搭載エンジンは「VG30DE型 V型6気筒 DOHC NA(200PS)」の「タイプI」「タイプII」と「VG30DET型 V型6気筒 DOHCターボ(ハイフローセラミック式/255PS)」の「タイプII-S」「タイプIIリミテッド」の2モデルです。ボディスタイルは、4ドアピラーレスハードトップでした。当時のオプションとして、AVマルチシステム、地磁気センサー(GPSアンテナに近い物)、デジタルメーターなどがありました。

鎌倉の大仏=Cima?

スタイリングデザインのモチーフとなったのは、鎌倉(長谷)の大仏とされています。ボンネットに目立つ特徴的なエンブレムは、アカンサスの葉を模してデザインされたものです。「ジャガー・XJ」を思わせる国産車離れしたエレガントで流麗なエクステリアとハイパワーのエンジンとサスペンションによる動力性能の高さから、高級セダンとしては異例の一般オーナードライバー向け要素が強いモデルとして大人気でした。

ハイパワーユニットの搭載理由とは

当初のパワーユニットの開発は、V型6気筒の3リッターNAエンジンで進んでいましたが、ライバルを2THモデルの「トヨタ・ソアラ」に定め、「ソアラには走りで負けるわけにはいかない」という意向から「VG30DET型」を搭載することになりました。「VG30DET型」のユニットは元々、レパードの開発チームが「ソアラ」の「7M-GTE」に対抗し開発していたものでしたが、「シーマ」の開発担当者の熱意に負けて初搭載の座をシーマに譲ったという話があります。

ヒットの裏側

CM戦略においても斬新なものが採用されていました。ベースモデルの「セドリック/グロリア」のCMは「きっと新しいビッグカーの時代が来る」と「シーマ」誕生を予感させるものにして、購買欲を高めていました。また「Y31型 セドリック/グロリア」の発表時に当時の社長が3ナンバー専用モデルの発売を予告したのです。これによって発売後は、爆発的ヒットとなり1988年2月は、3ナンバークラウンを販売台数で抜くことができました。

女優の伊藤かずえさんの愛車

車好きとして知られる伊藤かずえさんの現在の愛車は1990年式の「シーマ」です。伊藤さんが24歳の時から23年間も乗り続けているほどのお気に入りのモデルは、特別仕様で日本に5台しかないモデルだそうです。エンジンなどの部品交換を行いながら可愛がり、長年乗ってきたピカピカに輝く「シーマ」の総走行距離は24万キロオーバーのようです。

主要諸元

エンジン:2,960cc V型6気筒 DOHC 24バルブターボ(VG30DET型)
最高出力:255PS/6,000rpm
最高トルク:35.0kgm/3,200rpm
トランスミッション:4AT
速駆動方式:FR
サスペンション:F ストラット R セミトレーリングアーム
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:4,890mm
全幅:1,770mm
全高:1,380mm
ホイールベース:2,735mm
トレッド:F 1,500mm R 1,520mm
車両重量:1,670kg

2thモデル「FY32型」(1991年-1996年)

1991年8月セドリック/グロリアより2か月遅れて2thモデルの「FY32型」が登場しました。モデル名を「シーマ」に統一されました。このモデルから後席居住性、ボディ剛性上有利なセンターピラーを持つ一般的なセダンのスタイルとなりました。

インテリア

インテリアはバブル期を反映し、イタリアの高級車に見られるようなデザイン重視のアナログ時計、20箇所に設置されたライトが状況に応じて点灯するトータルコーディネート照明、タン色の本革内装など豪華なインテリアとなっています。

パワートレイン

搭載ユニットは、「VH41DE型 V型8気筒 DOHC 4,130cc」エンジンが搭載されています。先代モデルで好評だったターボの強烈な加速感を「シーマ」のアイデンティティのひとつとし、NAエンジンで実現するために排気量4,100cc以上のエンジン「VH41DE型」が採用されました。また「FY32型」ではエアサスペンションが廃止され、油圧式アクティブサスペンションが装備されました。1992年9月には、「アテーサE-TS」を搭載した4WDシリーズ「S-four」が追加モデルとして設定されました。1993年2月に追加された「タイプ・ツーリング」は、鍛造アルミホイールやエクセーヌのシート地を標準で装備するモデルでした。

主要諸元

エンジン:4,130cc V型8気筒 DOHC 32バルブ(VH41DE型)
最高出力:270PS/6,000rpm
最高トルク:37.8kgm/4,400rpm
トランスミッション:4AT
速駆動方式:FR
サスペンション:F ストラット R マルチリンク
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:4,945mm
全幅:1,780mm
全高:1,420mm
ホイールベース:2,825mm
トレッド:F 1,500mm R 1,500mm
車両重量:1,820kg

3thモデル「FY33型」(1996年-2001年)

1996年6月に3thモデル「FY33型」が登場しています。先代モデルのイギリスの高級車ロールス・ロイスのようなデザインからドイツのベンツのような高級車のデザインへ変更されました。一説ではVIPカー的なネガティブなイメージを払拭するためのデザインとも言われています。

グレード設定

グレード設定は、ラグジュアリーな「リミテッド」シリーズ「41LX」「41LV」「41L」「30LV」「30L」と、エアロパーツや専用サスペンションなどを装備したスポーティモデルの「グランドツーリング」シリーズ「41TR-X」「30TR」「30T」で、上級グレードは「41LX」「41LV」で「VIPパッケージ」を設定していました。

安全性の向上

搭載エンジンは、「VH41DE型」「VQ30DET型 V型6気筒 DOHC 2,987ccターボ」の2タイプです。また日本車初となるSRSサイドエアバッグが全車に標準装備されたり、キセノンヘッドランプの標準装備化、インパネのマルチAVシステム画面、オドメーターの液晶タイプになりました。インテリアでは日本車初のアクティブヘッドレストの採用や後部中央席に3点式シートベルトが装備されるなど安全面や快適性も向上が図られています。また1999年7月には日本車で初めて自動ブレーキング機能をもつ車間自動制御システム(ミリ波レーダーセンサー採用)を搭載しました。

主要諸元

エンジン:4,130cc V型8気筒 DOHC 32バルブ(VH41DE型)
最高出力:270PS/5,600rpm
最高トルク:38.4kgm/4,000rpm
トランスミッション:4AT
速駆動方式:FR
サスペンション:F ストラット R マルチリンク
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:4,970mm
全幅:1,820mm
全高:1,430mm
ホイールベース:2,830mm
トレッド:F 1,540mm R 1,545mm
車両重量:1,870kg

4thモデル「F50型」(2001年-2010年)

2001年1月に4thモデルへとフルモデルチェンジしました。新世代LLクラスプラットフォームを採用し、「VQ30DET型 V型6気筒 DOHC 2987ccターボ」「VK45DD型 V型8気筒 DOHC 直噴4494cc」の2種類のエンジン設定でした。エクステリアは小型のプロジェクターランプを中央に1つ、それを取り囲むように6つ配置された特徴的なヘッドライトが「バルカンヘッド」と呼ばれ、V8モデルのみに採用されていました。2010年8月に「プレジデント」とともに生産終了しました。日本国内で販売される日産の8気筒エンジン搭載モデルが消滅することになりました。

世界初採用の「レーンキープサポートシステム」

「レーンキープサポートシステム(車線逸脱防止支援システム)」を世界初採用(オプションで42万5000円)もする当時のハイテク技術を搭載していました。これは高速道路を走行中に道路の傾きや横風によって乱れる進路をCCDカメラで高速道路両側の白線を認識し、逸脱しそうになると微舵修正を自動で行うものシステムです。「レーンキープサポートシステム」と「レーダークルーズコントロール」によって、先行車の自動追尾運転が可能となりました。ただし約100km/h以上の速度域では機能しないようにセッティングされていました。

主要諸元

エンジン:4,494cc V型8気筒 DOHC(VK45DE型NEO)
最高出力:280PS/6,000rpm
最高トルク:46.0kgm/3,600rpm
トランスミッション:5AT
速駆動方式:FR
サスペンション:F ストラット R マルチリンク
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:5,120mm
全幅:1,845mm
全高:1,500mm
ホイールベース:2,870mm
トレッド:F 1,575mm R 1,555mm
車両重量:1,830kg

5thモデル「HGY51型」(2012年-)

4thモデルの生産中止から約1年9か月が経った2012年4月に日産自動車は「シーマ」の生産再開と、5thモデルが2012年5月発売されることを発表しました。5thモデルはハイブリッド専用モデルとして新たなスタートを切り、日産自動車はブランドイメージが向上することを期待しているといわれています。

ハイブリッドシステム

搭載されるユニットは「フーガ・ハイブリッド」と同じ「VQ35HR型」エンジンに「1モーター2クラッチ方式」のハイブリッドシステムを加えた「インテリジェント・デュアルクラッチ・コントロール」で、変速機は「ジヤトコ製マニュアルモード付電子制御7速ハイブリッドトランス ミッション(AT)」です。トルクコンバーターを介さないため伝達効率も高いものとなっています。ボディの延長とバッテリーを含むハイブリッドシステムの装備により、車両総重量がベースグレードで2,205kg、「VIP」と「VIP G」で2,225kgとなっています。ハイブリッドシステム、アイドリングストップ装置、可変バルブタイミング機構、電動油圧式電子制御パワーステアリングなどの効果により、燃費性能はJC08モードで16.6km/Lと、平成27年度燃費基準+20%を達成し非常にエコなモデルです。

「匠」の技が輝く塗装

品質向上を図るために塗装工程において「匠」と呼ばれる熟練者が中塗り後に生産ラインから外し、「GT-R」と同じように一台一台専用の特別室で塗膜を平滑にする「水研ぎ」と呼ばれる作業が行われます。また、検査工程においては資格を持つ検査員が全車両に対し品質検査を実施した後、走行試験において検査員が2名体制(通常は1名体制)で走行や操舵フィーリングの評価試験や内装の軋み音の有無のチェック等も行い、全ての工程を合格したモデルは栃木工場長の直筆サインが記された「品質検査確認書」が付与されるこだわりようです。

主要諸元

エンジン:3,498cc V型6気筒 DOHC モーター(VQ35HR型)
最高出力:306PS/6,800rpm
最高トルク:35.7kgm/5,000rpm
トランスミッション:7AT
速駆動方式:FR
サスペンション:F ダブルウィッシュボーン R マルチリンク
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:5,120mm
全幅:1,845mm
全高:1,510mm
ホイールベース:3,050mm
トレッド:F 1,570mm R 1,565mm
車両重量:1,950kg

中古車相場

1thモデルの1988年式から歴代の「シーマ」は、現在どれくらいの価格で取引されているのでしょうか。新車価格と中古車価格を比べてみました。

初代の1988年1月から1991年7月生産のモデルは、新車価格はベースモデルの「3.0Lセレクション」が384万円からで上級モデルの「3.0タイプII-S」は、510万円でした。現在、中古車となり35万円から160万円で流通しているようです。

1995年5月から1996年5月生産の2thモデルは、新車価格は、「3.0ツーリングセレクション」モデルが419万円で上級グレードの「4.1 リミテッド LマルチAVシステム装着」モデルが644万円でした。中古車は、15万円から100万円程度が相場のようです。

1996年6月から2000年12月生産の3thモデルの新車価格は、「3.0 30T」モデルで426万円で上級グレードの「4.1 41LX VIP」モデルが660万円という価格設定でした。現在の中古車相場は、10万円から120万円が相場となっています。

2001年1月から2010年7月生産の4thモデルの新車価格は、「3.0 300G」モデルで492万円で上級グレード「4.5 450VIP FOUR 4WD」モデルが788万円と先代モデルに比べて、さらに上乗せされた価格です。中古車は10万円から250万円と幅広い価格帯になっています。

ハイブリッドモデルの5thモデルは、新車価格は756万円から864万円で、中古車相場は、260万円から670万円が相場のようです。

まとめ

デビュー当初からハイテク技術やエクステリアデザインで高級車クラスのトップクラスとして存在を現してきた「日産 シーマ」は、社会現象にまで発展した1thモデルをはじめ、常に時代の先端とニーズに応える日産のトップモデルとして魅力をは放ち続けていくことでしょう。