【ホンダ S660試乗レビュー】性能いっぱいを使って楽しめるスモールスポーツカー!

ホンダファン待望のオープンスポーツカー「S660」が発売されたのは2015年4月のことでした。MRのオープンではビート以来、実に19年ぶりとなります。元来スポーツカーのイメージが強かったホンダですが、そうしたファンはここのところやきもきしていたという状況の中での登場となり、発売以来、好評を博しています。私も昨年、何度か試乗する機会があったので、ご紹介したいと思います。(飯嶋洋治:RJC会員)

S660とは?

等身大のスポーツカーとしてファン待望のS660

photo by honda

「ホンダ=チャレンジスピリッツ」というイメージは、1960年代からのF1への挑戦などで培われ、脈々と受け継がれてきたものです。その中核となるのはやはり「スポーツカーメーカーとしてのホンダ」だと思います。ただし、近年はややそのイメージが薄れていました。NSXが現在ラインナップに存在しないこと、シビックタイプRでさえ一般には手の届かない価格帯にいってしまったことなど、いくつか要因はあるでしょうが、ホンダファンは欲求不満になっていたことは間違いないと思います。

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軽自動車のミッドシップオープン2シーターということではビートの血脈!

S660は、それを解消する契機となるクルマと言えます。かつてホンダには軽自動車のミッドシップオープンである「ビート」がありました。現在でも根強いファンが存在しているモデルです。その後継ともいえるのがS660です。ホンダは、S660を「見て楽しい、乗って楽しい、あらゆる場面でいつでもワクワクする、心が昂ぶる本格スポーツカー」とすることをを追求し、「Heart Beat Sport」をキーワードに、「走る喜び」の実現を目的として開発したといいます。

エクステリアは?

ビートの面影を残しつつも、ガンダム的? 力強さを持つ!

photo by honda

デザインコンセプトは「ENERGETIC BULLET」としています。ロー&ワイドでタイヤが四隅でしっかりと踏ん張り、高い運動性能を予感させるたたずまいを追求した「弾丸」というところでしょうか? ただ、作り手が意識したかどうかは別として、やはりどこかビートを連想させるスタイリングとなっています。全体的にスポーティにはまとまっていますが、どこか「アニメ風」、「ガンダム風」を感じさせ、そういう世代が作ったクルマと言えるのかもしれません。運転席、助手席後ろのエンジンフードの2つの盛り上がりも、スポーツカー的かロボット的か? で評価が分かれるところのように思います。

ルーフの脱着は簡便にする工夫が盛り込まれる。

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ルーフは脱着式ソフトトップの「ロールトップ」となっています。ルーフのしまい方は気になる点ですが、これは簡単にルーフの脱着ができ、軽量さを損なわないための工夫がされています。これは「はずしてクルクルとたたむ」という操作でオープンとすることが可能で、外したルーフはフロントフード下部に備えられたユーティリティボックスに収められるようになっています。風や雨水も気になるところですが、ルーフ両側にはアルミダイキャストを使用して強度を確保したサイドロックを備え、ボディへ頑強に取り付け、さらにルーフの前後には金属製ワイヤーケーブルにテンションを掛けることで、ボディに密着させる設計とする対策をしています。降雪地帯では雪の重さも気になるところですが、これは車両の前後方向にかかるスチール製のボウ(縦骨)を3本取り付けて強度を確保しています。

インテリアは?

スポーツカーらしさが溢れるタイトさと小径ステアリング!

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「走るための空間として直感操作を実現する操作性を徹底的に追求。さらに、本格的なスポーツカーらしい高い質感を目指した」とホンダが胸を張るインテリアを見てみましょう。コクピットのタイト感は、「スポーツカー」を十分に感じさせるものです。ステアリング径はφ350mmという小径となっており、スポーツ感を醸し出しつつ操作上も特に違和感を感じさせるものではありません。シートに関しては、見た目はそれほど強烈にバケットシートを主張するものではありませんが、サポート性や硬さは良いものです。

ペダル配置は「ヒールアンドトウ」至上主義?

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スポーツカーでMT設定があるとなればペダル配置も重要です。ここもこだわったところで、エアコンユニットなどを小型化してペダルのスペースを確保し大型のフットレストを設置しています。これはコーナリング中のドライバーの姿勢安定化、ロングドライブの疲労をやわらげることができます。MT車では、ヒール&トゥ操作を考え、アクセルペダルとブレーキペダルの位置をチューニングしているのもキモとなっています。

ドライブトレインは?

3気筒DOHCターボエンジンはNA感覚でスムーズに吹け上がる!

エンジンはNシリーズに搭載されている直列3気筒DOHCエンジンに新設計のターボチャージャーを装備しています。このターボはNシリーズのものよりもハイレスポンスとしたものです。アクセルを軽く踏み込んだパーシャル状態でもレスポンスを良くすることを図ったものとなっており、よりNA(自然吸気)的な味付けとしたといえるでしょう。ベアリングハウジングとタービン等の小型化も図り、12%程度Nシリースから軽量化しています。

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6速MTのほかにCVTを選べるのも時代の要請?

トランスミッションは軽自動車として初となる6速MTを装備しました。シフトフィールも上々と言えます。また、これは時代の要請とも言えるのでしょうがCVTもラインナップしています。これはスポーツモードを備えた7速パドルシフト付きとなっており、より気軽にスポーティ走行を楽しめる仕様となっているといえるでしょう。

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ボディ、サスペンションは?

「一線入魂ボディ」で剛性と軽量の両立を図る!

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ホンダはS660のボディを「一線入魂ボディ」と名づけています。このコンセプトはボディ骨格の大多数を「直線+なめらかな曲線」で構成して高剛性を追求するということだそうです。これによって得られたシンプルな形状のために補強も最小限に止めることができ、軽さも確保しています。エンジンが搭載されるリヤにはサブフレームが採用されています。これはアルミダイキャスト製で軽量・高剛性となっています。その他、ロワーアーム・クロスメンバースティフナー、フロントタワーバー&リヤダンパーバーなどで剛性の確保が図られています。こうした工夫で低重心と前後重量配分45:55としました。MR車としては理想的と言えるでしょう。

photo by honda

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フロントサスペンションはオーソドックスなマクファーソン・ストラット、リヤにはマルチリンクストラットサスペンションを採用することで、ロール時のキャンバー変化を最適化させています。ショックアブソーバーは低速域でもしっかり減衰力を発揮する低フリクションとしたものが採用されています。

乗り心地は?

シティコミューターとしても最適なサイズで取り回しは良い!

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街中、首都高、ツインリンクもてぎの周回路と比較的いろいろな場所で試乗する機会を得ることができました。街中は都心を走りましたが、感じたのは軽自動車としての取り回しの良さです。割りと細かい路地も走ることが多かったのですが、やはり都内を走るサイズにはこのくらいがいいなというシティコミューターとして優れていると思いました。かばん一つくらいの荷物で、都内をあちこち移動するなどという使用用途には優れているのではないかと感じました。サスペンションは乗り心地が良いというわけには行きませんが、一般道を乗るにはキツイというほどでもなく、個人的には「十分あり」と感じました。ちなみにですが、リヤパワーウインドウを開けるとエンジン音が良く聞こえます。これは個人的には「良い音」というよりもちょっとノイジーな感じがして、閉じていた方がドライビングに集中できると思いました。

首都高では、若干ペースを高められるということもあり、ミッドシップのコーナリングが楽しめるか? と期待したのですが、わりと普通で物足りないというのが率直な感想でした。どこかが悪いということではないのですが、ステアリングを切り込んでも特にスポーティとかシャープという印象ではなく、「スムーズだな」というくらいの印象でした。乗り心地に関しては適度に固められた足という感じです。シフトダウンをしてアクセルを踏み込むと、ターボエンジンらしいパワー感は感じられます。850kgという車両重量も相まって結構元気な加速を見せますが、「これから!」というところでシフトアップしなければならなくなってしまうのは64PS縛りがあるかぎりは仕方がないことなのかもしれません。

本領を発揮するのはワインディングロードやミニサーキット!

ツインリンクもてぎの周回路では速度制限がありませんので、割りと思い切りアクセルを踏むことができました。当日は、国内外の各メーカーの試乗車を乗り比べることができたのですが、お世辞抜きに一番おもしろいと思ったのがこのS660でした。コース幅がかなり制限されたコースです、いくつかのコーナーとパイロンで仕切られた区間を走ったのですが、ストレートで全開で3速まで加速してブレーキングからヒールアンドトウで2速にシフトダウンして、右直角コーナーを抜けさらに加速してパイロン区間を抜ける……などというシチュエーションでは、動力性能、コーナリング性能などを存分に発揮することができ、「やはりスポーツカーなんだ」ということを再認識させられました。挙動が安定しすぎているという面は無くはないのですが、オンザレール感が強く、ステアリング操作への追従性や回頭性、ブレーキの効きなどもとても良いフィーリングだと思いました。

主要諸元と実際の燃費は?

カッコ内は7速CVT搭載車
型式 DBA-JW5
【サイズ/定員/重量】
全長 3.395mm
全幅 1.475mm
全高 1.180mm
ホイールベース 2.285mm
トレッド 前/後 1.300mm/1.275mm
最低地上高 0.125mm
乗車定員 2名
客室内寸法 長さ0.895mm/幅1.215mm/高さ1.020mm
車両重量 830kg(850kg)
最小回転半径 4.8m
【エンジン主要諸元】
型式 S07A
種類 水冷直列3気筒DOHC
総排気量 658cc
ボア/ストローク 64.0mm/68.2mm
圧縮比 9.2
最高出力 47kW・64PS/6,000rpm
最大トルク 104Nm・10.6kg-m/2,600rpm
燃料供給装置 電子燃料噴射装置
燃料タンク容量 25L
燃料消費率・JC08モード 21.2km/L(24.2km/h)
【変速比・減速比】
トランスミッション
変速比 1速:3.571/2速:2.227/3速:1.529/4速:1.150/5速:0.869/6速:0.686/後退:3.615(3.125~0.577・マニュアルモード付き/後退2.722~1.309)
最終減速比 4.875(5.175)
【走行伝達装置】
ステアリング形式 ラック&ピニオン・電動パワーステアリング仕様
主ブレーキ 油圧式ディスク
サスペンション マクファーソン式
スタビライザー トーションバー式
タイヤサイズ フロント165/55/R15 75V リア195/45R16 80W

JC08モードの燃費は6速MT車で21.2km/L、アイドリングストップが装着される関係もあり24.2km/hとエコカーとしても優れた燃費となっています。試乗したのはMT車のみでしたが、市街地のゴースストップでもストレスが少なく、軽量ということもあるのか、街中と首都高走行を含み15km/L弱をマークしました。

無限S660のエアロパーツ

カスタム市場の活性化も期待できるS660!

カスタム用のパーツが多いというのもS660の特徴と言えるでしょう。ホンダでも純正アクセサリーブランドである「モデューロ」やホンダ車用アフターパーツで知られる「無限」などを中心として、さまざまなパーツを出しており、オリジナルのS660を作れるというのも魅力の一つとなっています。現状で無限製のフルカスタマイズだと100万円強となるようです。無限では2016年に無限S660 RAをリリースするという噂もあり、目が離せないところです。写真は東京オートサロンに出典された「MUGEN S660RAプロト」です。

まとめ

気合でファーストカーとして乗りこなすのもアリか?

軽自動車のミッドシップカーということで、どうしてもラゲッジスペースに乏しいのは事実ですが、ワインディングロードやミニサーキットなどに持ち込んだ時の楽しさを考えると、「そんなことはどうでもいい」と感じさせる魅力を持つ一台、というのが率直な感想でした。基本は一人乗りと割りきって、日常の足と週末のサーキットなどという使いかたが似合っていると思います。あとはホンダに頑張ってもらって、S660のワンメイクレースなどを開催してもらえれば最高だと思うのですが……。

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