【MINIクーパー・クラブマン試乗】ボディを長く大きくしながらも、ハンドリング性能は秀逸!

新型のMINIクーパー・クラブマン、Sクラブマンが2015年に発表されました。1.5Lターボ、2.0Lターボのパワーユニットとともに、より大きく使いやすくなったスタイルが好評を得ています。MINIの伝統を守る部分、打ち破る部分という二面性をもったこのクルマを見ていきましょう。(飯嶋洋治/RJC会員)

ミニクラブマンとは?

スモールではなく「プレミアム・コンパクト・セグメント」となった。

photo by jima

BMWでは、MINIクラブマンの位置づけを、「MINI初のプレミアム・コンパクト・セグメント」と位置づけています。それまでのMINIは、3ドアや5ドアを「プレミアム・スモール・コンパクト・セグメント」として位置づけて来ました。MINIクラブマンはそれよりもひと回り大きいセグメントに属するモデルということです。ちょっとMINIの歴史を遡ると、1969年に初代モデルとなるMINIクラブマンエステートが誕生しています。BMWグループとなってからのはじめてのMINIクラブマンは2007年に登場しました。今回紹介するモデルはそれを継承する2代目ということになります。

ミニクラブマンエステート photo by BMW Japan

エクステリアは?

伝統のスタイルを継承しながらも、大きく長くしてユーティリティを向上。

丸型ヘッドライト、フロントグリルなどは、従来のMINIのアイコンともいえるものですから、新型クラブマンでも引き継いでいます。代が変わっても、基本的イメージを変えないというのは、欧州車ならではの特徴です。ただ、先代モデルより大きく長いということは一長一短あると思います。取り回しの面もありますし、スタイル的には「胴長」の感は無きにしもあらずで、この辺は好みが分かれるかもしれません。

先代から引き継ぐリヤのスプリットドアはやはり大きな特徴と言えます。新型ではイージーオープナー機能が備えられています。特にこういうクルマのオーナーは荷物が多いから……というのが選択肢となっていることも多いでしょう。荷積みの際に両手がふさがっているということはありがちです。イージーオープナー機能では、足を車両の後部下に出すことにより、1度目で右側、2度目で左側を開けることが可能となっています。とても重宝する機能だと思います。

インテリアは?

高級感を醸し出しつつ、より快適な空間を作り出す。

photo by jima

インテリアデザインは、クラブマン専用として一新しています。エクステリアと同じようにクロームの採用、ハイグロス・ブラック仕上げなどで上質な感じを与える仕上げとなっています。室内に座ってまず気がつくのは、ダッシュボード中央のワイドスクリーンが収められたスペースです。伝統的にここにはスピードメーターが収まっていたのが変更になりました。ナビゲーション、渋滞情報、保存したミュージックコレクション、SNSなどの利用が可能となっており、「イマドキのクルマ」を感じさせる部分です。ただ、サークルの周囲のイルミネーションは、やや「子どもっぽさ」を感じさせる面もあり、好みの分かれるところかと思います。

これまでダッシュボード中央に設置されていた伝統ともいえるメーター・パネルはステアリング・コラム上のインパネに移動しました。センター・コンソールに電動パーキング・ブレーキ用レバー、小物入れ、カップホルダー2個、MINIコントローラーが配置されています。

photo by jima

シートは高級感を感じさせます。電動でシートベースの傾き、高さ、前後位置、バックレストの角度が行えます。特にドライバーズシートは2セット分のメモリー機能付きですから、ご夫婦で一台などという使いかたにも親切な設計になっているといえるでしょう。ヘッドアップディスプレイはオプションとなりますが、ドライバー側のダッシュボードに備えられたパネルにナビゲーションがシンプルに映しだされます。ダッシュボードセンターのカーナビゲーションに目を移すこと無くドライビングに集中できるということでは良いアイテムのように思いました。

photo by jima

後部座席は、ボディサイズの拡大の影響もあり、先代モデルに比べて快適性がかなり高まっています。カーゴルーム(トランク)の容量も360Lを確保するなど、クラブマンならではのユーティリティをもたせています。ラゲージフロアは、2段階に調整できるもので、標準装備のストレージ・コンパートメント・パッケージ(フラット・ロード・フロア、ラゲージエリア12V電源、4ヵ所のラゲージフロアフック)を採用することなどでフレキシブルに使用することが可能となっています。

パワートレインは?

3気筒1.5L、4気筒2.0Lにツインパワーターボを装着。両者ともトルクフルに!

MINIクーパー・クラブマンは1.5L直列3気筒MINIツインパワー・ターボエンジンで最高出力100kW(136PS)/4,400rpm、最大トルク220Nm/1,250-4,300rpmを発揮します。組み合わされるのは6速ATとなります。いわゆる「ダウンサイジングターボ」エンジンとなったわけです。ちなみにエンジンの理想的な1気筒あたりの容積はボア80.0mm、ストローク95.0mmの480cc程度といわれますが、このエンジンはボア82.0mm、ストローク94.6mmと非常にいい値を持っています。同じ排気量の4気筒よりも摩擦損失も減りますし、冷却損失も減ります。3気筒に起因する振動は良く抑えられています。MINIクーパーSクラブマンは2.0L直列4気筒MINIツインパワー・ターボエンジン。141kW(192PS)/5,000rpm、280Nm/1,250-4600rpmで8速ATを採用しています。現代的なハイパワーエンジンで、1,470kgのボディをストレス無く引っ張るには十分と言えます。

ボディ、サスペンションは?

MINIに共通のハンドリング性能はボディ構造とサスペンションセッティングで維持!

photo by BMW Japan

ボディは「インテリジェント・ライトウェイト構造」としています。ねじれ剛性にすぐれて強度も高く、その上で最適化した重量の実現を図っています。これは結果的に安全性、俊敏性、音響快適性に貢献するものとなっているようです。高強度負荷分散構造として、クラッシャブルゾーンのデザインも最適化を図り、最終的にドライバーの命を守る要となるパッセンジャーセルは形状安定性が高く、衝突時の衝撃エネルギーを逃がすとともに、乗員保護を最大限に保持する構造となっています。

サスペンションは、シングル・ジョイント・ストラット式フロント・アクスルとマルチ・リンク式リア・アクスルとなっています。専用構造として、前輪駆動(FF)と低重心の組み合せという構造となりました。ショックアブソーバーにはフロント・アクスル、リア・アクスルともに3 パス・サポート・ベアリングを採用しています。これは振動を分離するための機構といえます。

乗り心地は?

「ゴーカート感覚」とは違うが、進化したハンドリング性能。

photo byjima

MINIという、どうしても硬い乗り心地というイメージが私の中にありました。いわゆる「ゴーカート感覚」というのも、その辺のニュアンスが含まれているように思います。かつて専門誌でMINIの記事を書いていた時代も、ノーマルだと硬いので乗り心地のより良いサスペンションに交換するというようなチューニングもけっこうあったのです。今回、都内の一般道とツインリンクもてぎ内で走行した限りでは、そのような過剰な硬さは全く見られませんでした。ホイールベースが長くなっているというのも、安定感につながっているのでしょう。

ツインリンクもてぎの周回路(ロードコースではありません)では、ある程度のスピードで加速から減速、そしてコーナリングを試したのですが、不安な挙動はまったく見られませんでした。感覚的なものですが、「けっこう踏んでいっても大丈夫だぞ」という安心感が全体から醸しだされている感じです。これはクーパー、クーパーSとも同じでした。1.5Lエンジンは3気筒ですから振動の問題が残ります。3気筒エンジンというのは、慣性偶力が発生してしまいピストンの動きでエンジン全体が「すりこぎ運動」が発生してアイドリング時や低回転で深いな振動となりがちですが、それが良く抑えられているのは特筆されると思います。

photo by jima

1.5Lのクーパーでも十分に速いと思いながら、2.0LのクーパーSに乗り換えると、やはりパワー的には段違いなものがあると感じました。アクセルレスポンスに応じたリニアさ、その気になったときの強烈な加速など、スポーツカー的とも言っていいと思います。ただ、全体的に強烈な個性を持っているというよりも、普通になったとも言えるのかもしれません。これはMINI的というよりもBMW的になったとも言い換えてもいいと思います。

主要諸元と実際の燃費は?

photo by BMW Japan

MINIクーパークラブマン主要諸元 

※カッコ内はMINIクーパーSクラブマン
型式 DBA-LN15(DBA-LN20)
ステアリングホイール位置 右
定員 5名
【エンジン】
型式 B38A15A(B48A20A)
種類 3気筒DOHC(4気筒DOHC)
総排気量 1,498cc(1,998cc)
ストローク/ボア 94.6/82.0mm
最高出力 100kW・136PS/4,400rpm(141kW・192PS/5,000rpm)
最大トルク 220Nm/1,250-4,300rpm(280Nm/1,250-4,600rpm)
圧縮比 11.0
燃料供給装置 電子燃料噴射装置
燃料タンク容量 48L
過給装置 MINIツインパワーターボ
燃料消費率・JC08モード 17.1km/L(16.6km/L)
【サイズ/重量】
全長 4,270mm
全幅 1,800mm
全高 1,470mm
ホイールベース 2,670mm
車両重量 1,430kg(1,470kg)
トランク容量 360-1,250L
最小回転半径 5.5m
【タイヤ/ホイール】
タイヤサイズ F/R 225/45R17 
ホイールサイズ F/R 7.5J☓17
ホイール材質 アロイ

燃費に関してですが、JC08モードはMINIクーパー・クラブマンが17.1km/L、MINIクーパーSクラブマン 16.6km/Lとなっています。最近の国産車の20km/L台が当たり前のような状況をみると苦しいかなという感は否めません。1.4トンを超える重量も影響はあるのかなと思います。私自身は給油をするほどは乗れませんでしたが、いろいろ調べるとクーパーSでも実燃費12km/L以上は走っているようです。

新型クラブマンと先代クラブマンとの違いは?

先代のクラブドアを廃し、後席左右にドアを設けた。

先代のクラブマンとの最大の違いは、まずボディサイズが上げられます。全長3,980mm、全幅1,685mm、全高1,440mmと、全長で290mm、全幅で115mm、全高でも30mmの差があります。セグメントで言えば新型がCセグメント、先代がBセグメントに属することになります。もうひとつ大きな変更部分は先代がフロント2ドアに加えて右側にクラブドアと呼称された観音開きのドアを装備していたのに対し、新型は完全な4ドアとなったことです。リヤゲートを加えると6ドアということになります。

先代のハワーユニットはMINIクーパー・クラブマンが無段階可変バルブ・マネジメント・システムを装備した4 気筒ガソリン・エンジンを搭載。排気量は1,598 cc、最高出力88 kW(120 PS)/6,000 rpm、最大トルク160 Nm/4,250 rpmを発揮していました。MINIクーパーSクラブマンの方はツイン・スクロール・ターボチャージャーと燃料直接噴射装置を装備した4気筒エンジンで、排気量1,598 ccから最高出力128kW(175PS)/5,500 rpm、最大トルク240 Nm/1,600~5,000rpmを発揮するというものでした。

ちなみに先代クラブマンの中古車価格帯は、2008年のデビュー当時のものなら70万円台から、比較的新しい年代になるとまだ300万円オーバーをするようです。

車格的に近いMINIクロスオーバーとの違いは?

クラブマンはロングツーリング、クロスカントリーはヘビーデューティーな傾向。

MINIにはMINIクロスオーバーというラインナップがあります。こちらはいわゆるSUV(スポーツユーティリティビークル)と位置づけられています。4WDをラインアップし、エンジンもクリーンディーゼルを中心とするなど、クラブマンがファミリー層向けだとしたら、クロスオーバーはファミリー向けに加えて、アクティブに使用する層にむけたものと言えるでしょう。

まとめ

MINIクーパー・クラブマンは、2016年次のRJCカーオブザイヤー・インポートを受賞しました。受賞理由は伝統を維持しつつアップデートさせながら世代交替してきたこと、観音開きのテールゲートを持ち、MINIの長所と特徴を捨てることなくユーティリティの高さは向上したこと。さらに上質・快適・俊敏な移動空間を実現していることなどがあげられています。こうした手堅い作り方は、英国のかつてのミニというよりも、ドイツのMINI的といえるのかもしれません。

photo by jima