【プリムス ロードランナー】男気溢れるスパルタンさから「ワイルド・スピード」でも活躍

430PS以上のエンジンを搭載しながら、当初はパワステさえオプションという男気溢れるスパルタンな仕様だった「ロードランナー」は、今でも映画「ワイルド・スピード」で使用されるほど、魅力あるモデルです。今回は、その魅力とポテンシャルに迫ってみたいと思います。

「プリムス ロードランナー(Road Runner)」

「プリムス ロードランナー(Road Runner)」は「クライスラー社」のプリムス ブランドから販売されたスポーツカーです。
当時ブームに乗って高級化していた「マッスルカー」から若年層の購買者が離れてしまい、若年層を呼び戻すために徹底したコスト削減を行い、販売価格を安価な設定に戻しすというコンセプトを掲げて開発されました。

基本コンセプト

1960年代から自動車メーカー各社は、ハイパフォーマンスなモデル(マッスルカー)をラインナップしていました。
マッスルカーの本来のコンセプトは、スタンダードモデルにスポーティな性能を付け加え、比較的安価な価格設定で若年層を取り込むことでした。
しかし、多くのオプションが追加されることで高級、高価格となっていき、それぞれのルーツとなったモデルから独立したモデルとしてラインナップされていきました。
それによって「マッスルカー」は若年層には手の届かない高級な存在へとなっていました。
そのために「プリムス」は若者向けに0-400mを14秒以内のスピードで走ることができる性能を持ち、3,000ドルより安価な価格で販売できるモデルをコンセプトに独創的なスポーツカーを開発することに着手しました。
そのような中、「プリムス ロードランナー(Road Runner)」の開発が進みました。

1thモデル(1968年-1970年)

「プリムス」のモデルとしての位置づけは、ハイエンドモデルの「ベルヴェデア」とエントリーモデルの「サテライト」の間を埋める「マッスルカー」として開発されていきました。
「ロードランナー」は1964年にコンセプトカーが発表され、市販モデルが1968年にデビューしました。
徹底したコスト削減を行うことによって、ベースモデルで2,980ドルという価格で販売されることになりました。「ロードランナー」は大ヒットモデルとして若年層の心を捉えていきました。
「ロードランナー」の成功は、高級モデルの「プリムㇲ GTX」の販売数を追い越し、「プリムス」のラインナップに混乱を起こさせることとなるほどヒット作となりました。
しかし排気ガス規制やオイルショックの影響によってマッスルカーブームが冷めていくと、「ロードランナー」も単なるパッケージ・オプションとなり、1980年代初頭にラインナップから消えてしまいます。

スタイリングデザイン

ボディデザインについてはコンセプトカーが発表された時点では、ハードトップのルーフをカットしたようなデザインのコンバーチブル・モデルでしたが、市販モデルはクーペ、ハードトップとなっていました。
ベースとなった「Bプラットホーム」は、基本に戻ってマッスルカーを造るために用意したものでしたが、「プリムス」のラインナップである「ベルヴェデア」や「サテライト」、「GTX」と同じであり、その動力性能は良いものでした。

STDで「スパルタン仕様」

「ロードランナー」は、マッスルカーにとって重要な条件であるパフォーマンスと走行性能、安全性に必要なサスペンションシステムなどの走りの部位はすべて強化され、性能はパフォーマンスは大きく向上が図られていました。
しかし、走りに影響しない部分はほとんどがコスト削減のために無視されました。
パワーステアリング、パワーブレーキは装備されず、腕力や脚力を必要としていました。
またインテリアにおいてはカーペットさえなく、内装は質素なものでした。
しかし、これらの装備は標準では用意されていないだけで、ほとんどがオプションを追加することで利用することができました。
「ロードランナー」は、走りのための「男のクルマ」としてスパルタンな仕様になっていたのです。

「ワーナー・ブラザーズ」とコラボレーション

「プリムス」は車名にちなんで、映画会社の「ワーナー・ブラザーズ」に50,000ドルを支払い、「ルーニー・テューンズ」のキャラクター「ロードランナー」をマスコットに採用しコラボレーションしました。
同時に、漫画で登場したキャラクター紫色のダチョウのような鳥「ロードランナー」が「ワイリー・コヨーテ」から逃げるときの鳴き声「ビープ・ビープ」を模倣したホーン(クラクション)を標準装備として使う契約をしました。
発売時に流れたCMには、ワーナー製作のアニメーションが採用されていました。

搭載ユニット

ベースモデルの内装などは、非常に簡素な「ロードランナー」でしたが、搭載ユニットは、たいへん豪華で、標準モデルでは「383キュービックインチ(6.3L)スーパーコマンド」のV型8気筒エンジンが用意されていました。
「383 エンジン」は、最大出力335PS/5,200rpm、最大トルク43.3kgm/3,400rpmを発生しました。
追加オプションで714ドル払えば、モパーエンジン最強の「426 Hemi(7.2L)」型のヘミエンジンをセレクトすることもできました。
「426 Hemi」型のV型8気筒エンジンは、最大出力431PS/5,000rpm、最大トルク67.7kgm/4,000rpmを発生していました。
低重心なシャシー構成と相まって、6人乗りのロードランナーは、0-400mを169km/h、13.4秒で走行するコンセプト通りの動力性能を持っていました。
これは当時のマッスルカーにおいて、「ロードランナー」が最適なエンジン、プラットホームの組み合わせの1台であることを証明してしました。
「プリムス」は、1968年に2,000台の販売を予想していましたが、安価な設定とパフォーマンスから実際の売上は、2倍以上の5,000台を数え大きなヒットとなりました。

1969年モデル

1969年モデルは、基本的な外観を保ちながらわずかに変化が加えられた。
また「ロードランナー」にコンバーチブル・オプションが新たに設定されました。
しかし、コンバーチブルの生産台数はわずか2000台で、オプションの「ヘミエンジン」を選択したのはその内たったの9台でした。
「383 エンジン」が「ロードランナー」のSTD標準設定とされたまま、オプションとして新たに「440 キュービックインチ」のエンジンに3つの2バレル・キャブレター追加した「440-6バレル」型エンジンが、ラインナップに加えられました。
「ヘミエンジン」よりも安価なエンジンを搭載したこの「440-6バレル」仕様の「ロードランナー」は、非常に質素な構成でホイールカバーもホイールキャップも取り付けられていないほどのスパルタンな仕様となっていました。
しかし「440-6バレル」仕様のエンジンは、最大出力390PS/4,700、最大トルク66.3kgm/3,200rpmを発生を発生させコストパフォーマンスは良好でした。
安価な「440-6バレル」仕様はパフォーマンス特性には大きな違いがあるものの、「426 Hemi」のヘミエンジンと、少なくともハイウェイの巡航速度ではほとんど同じくらい速いポテンシャルを持っていました。

1970年モデル

1970年モデルは、エクステリアデザインが小変更されています。
新しいフロントマスクとリア・エンドは、基本的な1969年のボディ維持したままとなっていますが、これはスタイリングデザインが一つの成功であったことを証明しています。
1970年の「ロードランナー」と「GTX」は、変わらず魅力的で人気な車として、エンジンラインアップは、変更はされていません。

1970年「スーパーバード(superbird)」モデル

1970年には、「NASCAR」のホモロゲーション向けに、「FRP製」の延長ノーズと専用フェイス「シャークノーズ(ウインドピアシングノーズとも呼ばれる)」、高さ70cmほどもある「アルミ製」超大型リアウィング「ゴールポストウィング」等を装着した「ロードランナー」がスペシャルモデルとして「スーパーバード」というモデル名で販売されました。
この独創的なボディデザインを担当したのは、ミシガン州にある「クリエイティブ・インダストリー」です。
リアに装備されている「ゴールポストウィング」には「ルーニー・テューンズ」キャラクター「ロードランナー」が描かれています。
また大型化したフロントノーズは、ベースモデルのノーマル「ロードランナー」では装着できなかったためにフェンダーは、「ダッジ・コロネット」のものが流用されています。
「ゴールポストウイング」は、ダウンフォース得る、整流のため角度が調節可能になっていました。
そして「スーパーバード」の兄弟車として「ダッジ・チャージャーデイトナ」が存在しています。
2006年の「ピクサー」の映画「カーズ」に「キング(ストリップ・ウェザース)」の名で登場しています。

2thモデル(1971年-1975年)

人気爆発の「ロードランナー」は、1971年にフルモデルチェンジが行なわれました。

1971年モデル

「ロードランナー」のクーペのモデルは、急傾斜で傾斜したフロントガラス、隠されたカウルと深いフロント・グリルとヘッドライトなど、ボディディテールは、当時の「クライスラー社」のスタイルトレンドに合わせてデザインされており、より丸いボディデザインに変えられました。
また、2ドアハードトップとコンバーチブルは廃止されました。
2thモデルにモデルチェンジした「ロードランナー」は1thモデルのようなパフォーマンスを持った車ではなく、また、排気ガス規制という厳しい現実によって大きなパワーダウンを余儀なくされてしまいました。

1972年モデル

1972年モデルは、1971年モデルとほとんど同じ仕様でした。
グリルはジェットエンジンの吸気口のようなデザインになり、テールライトは丸型を採用し、外観にマッチするよう高い位置にセットされました。
1971年モデルとの大きな違いは、エンジンです。
ビッグ・ブロック「383 エンジン」、当初オプションであったスモール・ブロックの「340バージョン」が、「ラージ・ボア400」と乗せ換えられています。
また、初めて「440-4バレル」仕様のキャブレターが装備されたエンジンが搭載可能となりました。
このエンジンは、「GTX」パッケージとして、1972年から1974年まで「ロードランナー」でセレクト可能でした。
しかし全てのエンジンの実力は、新しいSAEネット測定システムでは非常に低いパワーとして計測されりことになりました。
そして「ロードランナー」を象徴していた「426 Hemi」型エンジンは、1972年に搭載が中止されてしまいました。
そして、5台のみ「440-6バレル」仕様のエンジンが生産されるという寂しい時代でした。

1973年-1974年モデル

1973年-1974年のモデルは、デザインの変更によってボンネットの前方に突出するフロント・フェンダーが特徴のスタイリングでした。
1973年-1974年モデルのベースエンジンは、「クライスラー製 318CID-V8」エンジンとなり、デュアル・エグゾーストは、まだ標準装備でした。
車重に対してエンジンパワーが低いために、このエンジンを搭載した「ロードランナー」の0-400m加速は、マッスルカーの地位からはかけ離れたものになってしまいました。
1972年以後、「440 エンジン」の4速MTモデルは、製造されていません。
「400 キュービックインチ」エンジンは、4速MTで提供される最強のエンジンで、「340 キュービックインチ(1973年)」と「360 キュービックインチ(1974年)」エンジンを搭載することも可能でした。
「440 キュービックインチ」エンジンは、1973年と1974年も搭載できましたが、727台のオートマチック車と組み合わされることになりました。

1975年モデル

1975年モデルは、新しく設計されたよりフォーマルなデザインボディの「Bボディ」のモデルである「フューリー」をベースモデルとして開発されました。
セレクトできたエンジンは、「400 キュービックインチ」エンジンで「デュアルエグゾースト」が廃止されて、190PSでした。
この「プリムス」の最強エンジン「440 キュービックインチ」エンジンは、警察モデル用に販売が制限されることになりました。

3thモデル(1976年-1980年)

1976年に「ロードランナー」はモデルチェンジを果たし3thモデルとなります。
小型な「Aボディ」の「クライスラー」の「ヴァリアント/ダスター」シリーズの2ドアモデルバージョンとして切り替えられてしまいました。
ベースモデルは、「ヴォラーレ」で、使用されていたプラットフォームは「Fプラットホーム」が採用されていました。
姉妹車に「ダッジ アスペン」が存在しています。
モデルチェンジした「ロードランナー」ではあったものの、ベースとなった「ヴォラーレ」と全く同一のボディで、「ヴォラーレ」の小奇麗なグラフィックスパッケージという位置付けにすぎない形でした。
しかしサスペンション等の多くのパーツは、「ヴァリアント」の警察パッケージから流用されたことで、パフォーマンスは差別化されていました。
エンジンラインナップは先代までと同様で、145PSの「318Cid-V8」がSTDバージョンのエンジンでした。
「360 キュービックインチ」エンジンはオプションで、3速ATと組み合わされていただけでした。
また1979年までに「225 キュービックインチ」エンジン(スラント6)が標準となり、「ロードランナー」は「ヴォラーレ」と統合されて車種整理された後、「ヴォラーレ」のグレードの一部として存続し続けることになりました。
1980年に「ロードランナー」は、製造中止となりました。

「所ジョージ」さんの「ロードランナー」

「所ジョージ」さんが所有する「プリムス ロードランナー」は、1969年式のようです。
外装は、1970年式に変更されています。
そして所さんのロードランナーのカラーリングは鮮やかな「ベイビーシットイエロー」という色にカラーリングされています。
「ベイビーシットイエロー」は、「赤ちゃんのうんち色」とのことです。
ボンネットの中は「オリーブグリーン」に塗装されており所さんのこだわりの強さを感じます。
所さんの「ロードランナー」は、オリジナルは「440 キュービックインチ」の6バレルキャブレターが装着され、最高出力が390ps/4,700rpm、最大トルクは66.3kg-m/3,200rpmを発生するマッスルカーです。
所さんは、エンジンやトランスミッションなど、何度か乗せ換えをされています。
今では、換装されたエンジンは400PS以上で、最大トルク58.0Kg/mに6速MTのトランスミッション(オリジナル4MTからATに換装していた)が組み合わされているようです。
またボディや足回りもフルレストアされています。
内装も所さんのこだわりで、フロントはベンチシートです。
オンリーワンの「所スペシャル」仕様の「ロードランナー」になっています。

「ワイルド・スピード」仕様

映画「ワイルド・スピード」で使用された「ロードランナー」は、ドミニクが使用するモデルでキャブレターではなくインジェクション仕様になっており、排気量は8,200ccのエンジンにチューニングされています。
「ワイルド・スピード」シリーズ3作目「Fast and Furious Tokyo Drift」では、1970年式「ロードランナー」が登場し、ガンメタのボディにブラックカラーのホイールが装着されていました。
「ワイルド・スピード MAX(Fast and Furious 4)」では、女性ドライバーのレティーによって運転されています。

まとめ

「プリムス ロードランナー」は、当初は非常にパワーを求め、簡素な内装などでスパルタンな仕様として男気あふれるマッスルカーとして人気を博したモデルでした。その魅力的なデザイン、ポテンシャルは今なお衰えを知らず、映画で使用されることもあり人気が上昇していくモデルと言えるでしょう。