【フェラーリ 512TR】「テスタロッサ」とは似て非なる実力主義

「フェラーリ 512TR」は、モデルとして「テスタロッサ」とは似て非なる実力主義とされるモデルです。後に「ケーニッヒ仕様」などで怪物となったモデルです。そのポテンシャルに迫ってみたいと思います。

「フェラーリ 512TR」

「フェラーリ 512 TR」は1991年に「フェラーリ テスタロッサ」のアップデートバージョンとして登場しました。
かなり似ているものの中身は別物に生まれ変わっています。
1991年から1994年の生産期間にシャシーナンバー「89100」から「99743」の2261台が生産されました。

名称の意味

「フェラーリ 512 TR」の名称の「5」は、排気量の「5L」を意味し、「12」は「12気筒」エンジンの気筒数、「TR」は、「TESTA ROSSA」の頭文字をとったものを意味しています。

スタイリングデザイン

「テスタロッサ」と「512 TR」のはっきりと違う点は、フロントノーズのデザインです。
リトラクタブルヘッドライトに変更はありませんが、フロントグリルが丸みを帯びたデザインとなり、「テスタロッサ」ではフロントグリルとコンビネーションライトがつながった形でバンパーにセットされていたものが、3分割されたデザインとなっています。
フロントグリルには「キャヴァリーノ・ランパンテ」のクロームメッキが施されたエンブレムが装着されています。
ドアミラーのデザインと装着位置も「512 TR」では、デザイン変更となりドアに取り付けられています。
テールデザインは、テールライトがはっきり見えた形でセットされていた「テスタロッサ」に対して、「512 TR」は、テールライトを隠す形でブラックカラーに塗られたフィンタイプのルーバーで覆われています。
エンジンリッドもルーバーのデザインに変更が施されています。
またリアのクォーターパネルのデザインも変更されており、「テスタロッサ」はステップが付きブラックのグリルが装備されていましたが、「512 TR」では滑らかな曲線がルーフにつながっています。
ホイールのデザインにも変更が加えられています。
リアスカートデザインもライセンスプレート周辺のデザインに変更が見られます。
またエンジンカバーのリアに「512 TR」のエンブレムが装着されています。
リアのデッキには「Ferrari」のエンブレム、また上方部分に「Testarossa」のエンブレムが装着されています。

インテリア

インテリアにおいては、ダッシュボード、シートやステアリングホイール、センターコンソールのデザインなど、細かく変更が施されています。

搭載ユニット

エンジンにも大きな変更が施されており、排気量アップにともないパワーが上がっています。
また搭載いちにも変更されています。

V型12気筒エンジン

「512 TR」に搭載されるエンジンは、4,943ccの排気量に変更はありません。
1気筒に4バルブのV型12気筒エンジンは、潤滑方式はドライサンプ方式が採用されています。
搭載エンジンの型式は、「ティーポ113G」です。
インテークポートがチューニングされ、プラナムチャンバーが見直しされ、大径バルブが採用され、空燃比が向上しています。
インジェクションシステムと点火システムが「ボッシュ製」の「モトロニック M2.7」に変更されています。
新設計のピストンが採用され、ボア・ストロークは、82mm×78mmで圧縮比10.0:1で最大出力428PS/6,750rpm、最大トルク50.0kgm/5,500rpmを発生させます。

低重心化されたシャシー

搭載エンジンの高出力化に伴い、エンジン、トランスミッション、デフのアッセンブリーの搭載位置が「テスタロッサ」に比べて「512 TR」では、30mmも低くなり低重心化によって、ロールを抑えることができコーナリング性能を向上させています。
サスペンションシステムは、4輪独立懸架で前後ダブルウィッシュボーンにコイルスプリング、油圧ダンパーが組み合わされています。
前後には、アンチロールバーが装備されています。
ブレーキシステムは、4ピストンキャリパーが装着されており、4輪クロスドリルドベンチレーテッドディスクが装備されています。
ホイールは、新設計となり「テスタロッサ」の16インチから18インチに変更となっています。
フロント8J×18、リア10.5J×18のホイールが装着され、前後のトレッドが変更されています。

向上したポテンシャル

「テスタロッサ」時代は、エンジンとギヤボックスの搭載位置の問題によりロールが激しくコントロールに問題を抱えていました。
「テスタロッサ」は、V型12気筒エンジンの真上にギヤボックスを搭載し、後輪の軸にまともに置かれているために搭載位置が高い状態でした。
しかもV型12気筒エンジン、ギヤボックス、デフのアッセンブリーの重量は、約440kgです。
この重量物が高重心に後輪軸の上に搭載され車体の前後重量配分がバランスを崩した形でした。
また「テスタロッサ」は、スチール製チューブラースペースフレームに12気筒エンジンを搭載し、フレームもボルト留めであったり、シャシーにアルミ板をリベット止めしていたりとフレーム補強が上手く施されず剛性が高くできませんでした。

「512 TR」での変更

エンジンとギヤボックスの搭載位置が地上から高さ50cmから30mm低く47cmとなっている点です。
これは、マウントブラケットを工夫することにより解決されました。
エンジンを搭載するフレーム設計は、「テスタロッサ」は、リヤが「スロープバック」でエンジンを真上から取り外すことはできすエンジン、トランスミッションをアッセンブリーでフレームから取り外す設計でした。
「512 TR」は、フレームリアデザインが「トンネルバック」になり、エンジンを真上から取り外すことが可能になりました。
この変更によってフレームは、ボルト留めから溶接留めに変更されフレーム剛性が向上しました。
またキャビンの床部分とフロントバルクヘッド、エンジンルームの間にスチールパネルを溶接補強して剛性を向上させているのです。

現在の相場価格

「512 TR」は、登場以来20年以上になりますが、今なお人気モデルとして取引されています。
1,400万円から2,000万円が相場として取引されているようです。
「512 TR」は、「テスタロッサ」シリーズのアップデートバージョンであり、V12型エンジンをリア・ミドシップ搭載最終モデルとして人気が高まりそうです。

「512 TR」主要諸元

エンジン:4,943cc V型12気筒 DOHC 48バルブ
最高出力:428PS/6,750rpm
最高トルク:50.0kg/5,500rpm
圧縮比:10.0:1
トランスミッション:5速MT
駆動方式:MR
サスペンション:F/R ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R クロスドリルド・ベンチレーテッドディスク
全長:4,480mm
全幅:1,976mm
全高:1,135mm
ホイールベース:2,550mm
トレッド:F 1,532mm R 1,644mm
車両重量:1,473kg
最高速度:313.8km/h
0-100km/h加速:4.8秒
0-1000m加速:22.9秒

「ケーニッヒ スペシャルズ」

「ケーニッヒ スペシャルズ」は、ドイルのチューニングメーカーで一時期「フェラーリ」をはじめ、「メルセデス ベンツ」「BMW」「ポルシェ」「ジャガー」「ランボルギーニ」と世界の名だたる高級車をチューニングするメーカーとして有名です。
現在は、ライトチューンを主に行なっているメーカーになっているようですが、1980年代から1990年代は過激なチューニングを行なうことでも有名でした。
創業者の「ヴィリー・ケーニッヒ」が出版社時代に愛車のフェラーリのパワー不足からチューニングをはじめ、ターボチューンにどっぷりと浸かりハイパワーチューニングを楽しみだしたことが
「ケーニッヒ スペシャルズ」設立への始まりだったようです。

「ケーニッヒ スペシャル」モデル

「ケーニッヒ スペシャル」モデルは、「テスタロッサ」ベースモデル、「512 TR」ベースモデルが製作されています。
大迫力のエクステリアデザインとハイパワーエンジンを搭載していました。
「ケーニッヒ スペシャル コンペティション エボリューション」モデルは、初代は「テスタロッサ」ベースに仕上げられたモデルで700PS、2thモデルで1,000PS、3thモデルでは、1,200PSを発生していた当時としては過激なモデルでした。

迫力のボディエアロデザイン

「フェラーリ F40」のようなデザインでボディパネルは、カーボンケブラー製で製作されていました。
フロントセクションは、リトラクタブルライトを廃止し、埋め込み固定式のヘッドライトに変更されています。
ボディのパネルサイドは、フロントノーズからリアパネルに向けてボディサイドに大きく張り出し、大きなインテークがリアパネルに設けられています。
キャビン後方にもエンジンインテークのダクトが設けられインパクトあるデザインです。
リアには、「フェラーリ F40」のような巨大なリアスポイラーが装備されています。
ボディは200kgも軽量化されていると言われています。
これらのボディエアロデザインによって「512 TR」の面影は、ほぼ皆無です。

ハイパワーエンジンを搭載

ベースエンジンは、4,943cc V型12気筒 DOHC 48バルブで、最高出力428PS/6,750rpm、最高トルク50.0kg/5,500rpmを発揮するパワーユニットですが、「ケーニッヒ スペシャル」モデルは、これにツインターボを搭載して最大出力700PS、過給圧を上げて1,000PSとなり、3thモデルでは、ツインターボにスーパーチャージャーを追加して1,200PS/7,000rpm、最大トルクは102.0kgm/4,500rpmにまで引き上げられていました。
T04Eタービンを使用し、ターボシステムはオーストリアの「アルベルト社」を採用しており、ターボチューンのセッティングは、「ローテック社」です。
このハイパワーにともないフレーム補強や足回りなど、純正パーツは使用していないというほど、チューニングされています。

ポテンシャル

「ケーニッヒ スペシャル」モデルの動力性能としての目標は、最高速370km/h以上、0-100km/h加速は、4秒以内、0-200km/hは、10秒を目指していました。
当時は、谷田部最高速アタック(谷田部高速周回路)というものが流行っていましたが、そのアタックに際して、すべて再度組み立てし直し、マフラーやインタークーラーをワンオフ製作し、パイピングの効率を図り変更しリセッティングされています。
結果は、レブリミッターがメーター読みで360km/hで作動し、実測最高速度は、312km/hにとどまりました。
また谷田部最高速アタックの際に高速主回路のテストコースを5周(28km)を310km/hの高速巡行し、ハイブーストがかかっていたものの、水温、油温、油圧は安定していたようです。
エンジンよりもタイヤが持たずに終了しています。
ハイパワーを求めただけでなくエンジン特性や強度を熟知し、耐久性もしっかり備えたエンジンに仕上がっていました。

「ケーニッヒ スペシャル」主要諸元

エンジン:4,943cc V型12気筒 DOHC 48バルブ ICツインターボ
最高出力:1,200PS/7,000rpm
最高トルク:102.0kg/4,500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:MR
サスペンション:F/R ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R クロスドリルド・ベンチレーテッドディスク
全長:4,532mm
全幅:2,160mm
全高:1,140mm
車両重量:1,690kg
最高速度:370km/h以上
0-100km/h加速:3.5秒
0-200km/h加速:10.0秒以下

取引価格

「ケーニッヒ スペシャル」モデルは、製作された台数も少ないことから希少性も含めて値が下がることはないようです。探し回っても「価格応談」「ASK」となっています。
コレクターズアイテムの領域にあるクルマと言えそうです。

まとめ

「フェラーリ 512TR」は、エンジンのピストンから新設計するなどパワーの増加、それにともなって見直されたシャシー剛性の強化、エンジンのマウント位置の再設計による前後重量配分のバランスが取れたフレーム、低重心化によって得られたコーナリング性能を向上、そしてボディのエクステリアデザインの変更によってもたらされた空力性能の向上など、「テスタロッサ」シリーズの熟成モデルといえる存在と思われるかもしれませんが、スタイリングデザインは似ているものの全く別物のモデルと言っていいのが「フェラーリ 512TR」と言えるでしょう。