【フェラーリ 308】F40に続くV8搭載モデルシリーズの原点

「ディーノ 246GT」の美しいスタイリングを引き継ぎ、コンペティションモデルでは、650PS以上のパワーを備えたハイパワーマシンとなっていたフェラーリV8エンジン搭載シリーズの原点ともいうべきモデルに迫ってみたいと思います。

「フェラーリ 308」

「フェラーリ 308」は、「ディーノ 246GT」の後継モデルとして1975年「パリ・サロン」に登場しました。クーペボディの「GTB」、後に追加されるオープンボディの「GTS」があります。後にコンペティションモデルが発表され、「F40」に続くプロトタイプまで製作されました。

Dino246GTの後継モデル

車名の「308」は、排気量約3,000cc 8気筒エンジンを搭載していることに由来し、「GTB」の「B」はベルリネッタ(クーペ)を意味しています。
「ピニンファリーナ社」がデザインしたボディは、ウェッジシェイプが特徴で、格子パターンのアルミ製ラジエターグリルは角形で、その上を半つや消しのブラックに塗装されたスリムなフロントバンパーがフロントセクションの特徴です。
ヘッドライトには丸型2灯式のリトラクタブルヘッドライトを採用しています。
ボディには、「ディーノ 246GT」のデザインエレメントが受け継がれています。
ドアにはエアインテークのえぐりが設けられ、テールライトは丸形2連で、垂直のリアウィンドウは凹型に湾曲し、その左右をフィン状のサイドパネルが挟むようなデザインは、「ディーノ 246GT」からのものです。
フォルムは本質的に「ディーノ 246GT」のアップデート版になり、スタイルはメディアからも顧客からも絶賛される美しさをもっていました。
エンジンベイ背後にラゲッジコンパートメントが備わるのがディーノ・シリーズの共通点となります。
エンジンカバーを開けると、ファスナー留めのコンパートメントが現れる形です。

ボディ=FRP製(初期型)スチール製(後期型)

初期生産モデルは、ボディ材質にFRPを採用していました。
グラスファイバーをボディの素材として用いた最初の生産型フェラーリであり、しかも「308 GTB」は、フロントグリル以外はオールグラスファイバー製ボディをまとっていました。
そして「308 GTB」の登場以来、フェラーリはグラスファイバー製のパネルを多数のモデルに採用しています。
しかし北米仕様では1976年後半、ヨーロッパ仕様では1977年中頃に伝統のプレススチールとアルミのボディに戻されています。
違いとしてグラスファイバー製ボディには、フロントウィンドウピラーとルーフパネルのつなぎ目があり、北米仕様には重いバンパーアッセンブリーと角形のサイドマーカーライトが備わる点で識別することができます。
FRPモデルが1,090kgに対し、スチール製モデルが1,330kgと210kgの差があり、FRPモデルが軽量に仕上がっていたことが分かります。
ヨーロッパ仕様に用いられた鋼管シャシーは、「ティーポF 106 AB 100」と呼ばれるものとなっています。

オプションスポイラー

1977年に大型のフロントスポイラーがオプションで用意されました。
フロント前方への突き出しが浅いノーマルタイプと同じく、グラスファイバー製です。

パワーユニット

パワーユニットは、「2,926cc 90度 V型8気筒 DOHC 16バルブ」エンジンが搭載されています。
カムシャフトはチェーン駆動で、81mmx71mmのボア・ストロークで、キャブレターは、ツインチョークのウェーバー製 40 DCNF キャブレター4基をVバンクのなかに装着しています。
エンジンの細かいスペックは、ヨーロッパ仕様ではドライサンプ式の潤滑方式を採用したのに対し、オーストラリア、日本、北米仕様は、ウェットサンプのままでした。
圧縮比8.8:1によって最大出力255PS/7,000rpm、最大トルク30.0kgf·m/5,000rpmを発揮します。
スポーツエグゾーストシステムや、ハイコンプレッションピストンとハイリフトカムのコンビがオプションで用意されました。

パワートレイン

エンジンは、オールシンクロメッシュ5速トランスミッションと組み合わされトランスミッションアッセンブリーはエンジンのサンプの下、後方に搭載されています。
サスペンションシステムは、ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、油圧ダンパーによる独立サスペンションで、前後にアンチロールバーを装備し4輪にディスクブレーキを装着されています。

「GTS」モデル

1977年のフランクフルト・ショーでデタッチャブル・ルーフ(タルガトップ)を採用した「308GTS」が発表されました。
「GTS」の「S」はスパイダーを意味しています。
ボディはスチール製です。外観はブラックの塗装を施された取り外しのできるグラスファイバー製ルーフパネルと、リアクォーターウィンドウに被さる梨地仕上げのルーバーパネルが「308 GTS」の特徴です。ルーフパネルは開閉可能で、開くとリアクォーターウィンドウを拭くことができ、左側パネルの奥には燃料注入キャップが位置しています。どちら側もロックが可能となっています。
取り外したルーフパネルはシート背後に収納できるようになっています。
ルーフを切り取ったために失った強度を補完するため、シャシーには専用の補強材が組み込まれています。

「308 GTB/GTS」主要諸元

エンジン:2,926cc V型8気筒 DOHC 16バルブ
最高出力:255PS/7,700rpm
最高トルク:26.5kgm/5,000rpm
圧縮比:8.8:1
トランスミッション:5速MT
駆動方式:MR
サスペンション:F/R ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R ディスク
全長:4,230mm
全幅:1,720mm
全高:1,120mm
ホイールベース:2,340mm
トレッド:F 1,460mm R 1,460mm
車両重量:1,090kg
最高速度:252km/h

「308 GTBi/GTSi」

燃料噴射装置が採用され、「308 GTBi」になりました。
モデル名の最後につく「i」の文字は燃料噴射装置のインジェクションを意味します。
5本スポークアルミホイールの鋳造パターンがわずかに異なります。
14インチホイールと組み合わされるインペリアルサイズのミシュランXWX、16インチホイールと組み合わされるピレリP7もオプションで注文することができました。
横置きにミドシップされるV8エンジンは、4基のツインチョークキャブレターから燃料噴射が採用されており、燃料供給はボッシュ製のKジェトロニックを採用していました。
これと組み合わされる点火系はマレリ製のMED 803Aデジプレックス電子制御式で、各バンク専用の点火コイル、ディストリビューター、イグニッションモジュールを装備していました。
このモデル以降、「308」シリーズは潤滑方式がウェットサンプになりました。

「308 GTBi/GTSi」主要諸元

エンジン:2,926cc V型8気筒 DOHC 16バルブ
最高出力:214PS/6,600rpm
最高トルク:24.8kgm/4,600rpm
圧縮比:8.8:1
トランスミッション:5速MT
駆動方式:MR
サスペンション:F/R ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R ディスク
全長:4,230mm
全幅:1,720mm
全高:1,120mm
ホイールベース:2,340mm
トレッド:F 1,460mm R 1,460mm
車両重量:1,286kg
最高速度:240km/h

「クワトロバルボーレ(Quattrovalvole )」

1982年にはエンジンヘッドを4バルブ化したモデル「クワトロバルボーレ(Quattrovalvole)」イタリア語で4バルブの意が追加されました。
外観の変更は、ラジエター熱気抜ルーバーパネルが備わるフロントリッド、エナメル製のエンブレムをつけた電動ドアミラー、両端に角形ドライビングライトを備えたラジエターグリル、角形サイドマーカーライトなどです。
インテリアの変更は、シートは標準がフルレザー張りですが、センターをクロス張りにすることができるようになっています。
ステアリングホイールは、ホーンボタン周囲のセンターセクションが3角形になりました。
オプション装備は、メタリック塗装、フロントスポイラー、エアコン、ワイドホイール、ピレリP7と組み合わされるスピードライン製16インチホイール、ルーフのリアに備わるブラック梨地仕上げのウィングです。

「Quattrovalvole」主要諸元

エンジン:2,926cc V型8気筒 DOHC 32バルブ
最高出力:240PS/7,000rpm
最高トルク:26.5kgm/5,000rpm
圧縮比:9.2:1
トランスミッション:5速MT
駆動方式:MR
サスペンション:F/R ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R ディスク
全長:4,230mm
全幅:1,720mm
全高:1,120mm
ホイールベース:2,340mm
トレッド:F 1,460mm R 1,460mm
車両重量:1,275kg
最高速度:255km/h
0-400m加速:14.5秒
0-1000m加速:26.2秒

モータースポーツ

「308 GTB」は、ラリーカーにコンバートされ好成績を収めています。
プライベートエントリーでイタリア国内のラリーに幾多の勝利を収めただけでなく、トゥール・ド・フランスでは1981年と82年に2連勝し、81年のタルガ・フローリオで優勝したのをはじめに数々の優勝を勝ち取っています。

レース仕様モデル

1984年に「308 GTB」をベースに大規模な改修を施したグループB規定マシン「288 GTO」が登場しています。
「GTO」と「308」は外観も内装も似ており、V8エンジンを積んでいます。
しかし「GTO」と「308」の互換性のあるコンポーネントはほとんどありません。ボディは全長4,290mm、全幅1,910mm、全高1,120mm、ホイールベース2,450mmと変更され、エンジンは縦置き、ボディパネルの大半はコンポジット製かレジン製となっています。
エクステリアの変更は、前後フェンダー、リアフェンダーのエアスロット、フロントスポイラー、ラジエターグリル両端に位置する角形ドライビングライト、テールスポイラー、ドアミラー、エンジンリッドなど多岐に及びます。

縦置きV8エンジン

ミドに縦置きされるエンジンは90度V8、キャビンバルクヘッドに触れるばかりに前寄りに位置して重量配分の最適化を図っています。このためバルクヘッドにはメインテナンス用のサービスハッチが設けられました。GTOはV8エンジンを縦置きした最初の生産型フェラーリであり、ツインターボチャージャーを備える最初の生産型フェラーリでもあります。80mm×71mmのボア・ストロークから2,855ccの排気量を得ており、圧縮比は7.6:1、社内コードネームはティーポF 114 B 000です。1気筒あたり4バルブのDOHCヘッドで、カムシャフトはコッグドベルトで駆動されました。潤滑はドライサンプ、2基のIHI製ターボチャージャーが1組のベール製インタークーラーを通して、吸気を0.8バールで過給しました。ウェバー・マレリ共同開発のIAWが点火システムと燃料噴射システムを統合制御しました。
最大出力は、約406PS/7,000rpm、最大トルク51.0kgm/3,800rpmを発生しています。

「288 GTO」主要諸元

エンジン:2,855cc V型8気筒 DOHC 32バルブ ツインターボ
最高出力:406PS/7,000rpm
最高トルク:51.0kgm/3,800rpm
圧縮比:7.6:1
トランスミッション:5速MT
駆動方式:MR
サスペンション:F/R ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:4,290mm
全幅:1,910mm
全高:1,120mm
ホイールベース:2,450mm
トレッド:F 1,559mm R 1,562mm
車両重量:1,160kg
最高速度:305km/h
0-100km/h加速:4.9秒
0-400m加速:12.7秒
0-1000m加速:21.8秒

コンペティションモデル

「288GTO」をベースに製作されたコンペティションモデルが「Evoluzione」です。実質は「F40」のプロトタイプになります。
パワーユニットは、2,855ccのV8DOHCにIHI製のターボをツイン装着し、インタークーラーをダブルで装着、「ウェーバー製(現マニエッティ・マレリ)」のインジェクションシステムが装備されています。
最大出力は650PS/7,800rpm、最大トルク68.0kgf·m/4,800rpmを発生しています。
ボディカウルは軽量なカーボン製、前後オーバーフェンダー、角度調整式の大型リアスポイラーが装着されています。
4本に増やされたリアフェンダーの縦型ルーバー、フロントカウルとリアカウルに新たに設けられた複数のNACAダクト、プレクシグラス製のサイドドアおよびリアウィンドウ、3本口のエキゾーストエンドなどの変更が施されています。
生産台数は、「GTO」をベースに製作された1台を含めると6台となっています。

「288GTO Evoluzione」主要諸元

エンジン:2,855cc V型8気筒 DOHC 32バルブ ツインターボ
最高出力:650PS/7,800rpm
最高トルク:68.0kgm/4,800rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:MR
サスペンション:F/R ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:4,225mm
全幅:1,970mm
全高:1,100mm
ホイールベース:2,445mm
車両重量:1,114kg

まとめ

「フェラーリ 308」シリーズは、「ディーノ 246GT」の美しいスタイリングを引き継ぎながらもコンペティションモデルでは、650PS以上のパワーを備えたハイパワーマシンに変貌していました。フェラーリV8エンジン搭載シリーズの原点ともいうべきモデルでしょう。