【スズキ 新型アルトワークス試乗レビュー】MTを楽しめる最速の軽スポーツカーの復活!

アルトワークスは、「ボーイズレーサー」として、ドライビングが好きな若者層に絶大な人気を誇っていました。しかし、時代が「速さ」ではなく「エコ」を求めるようになり、クルマの楽しさが重視されなくなるとともに姿を消していました。転機は昨年末。アルト ターボRSの登場すると「MTの設定を!」という声が強まることになります。そこでスズキはMTとするだけでなくワークスというカタチでそれを実現してくれました。

スズキ アルトワークスとは?

「軽自動車は遅い、つまらない」という概念をひっくり返したパイオニア!

photo by jima

アルトワークスは「軽自動車=遅い」というイメージを払拭したクルマといえるでしょう。1999年以来、その系譜が途絶えてしまっていたわけですが、新型アルトワークスの登場により、15年ぶりの復活となりました。初代のアルトワークスが発売されたのは1987年2月、軽自動車初のDOHCターボエンジンを搭載し、しかもフルタイム4WDというのは大きなインパクトがありました。全日本ラリーやダートトライアルでの活躍も印象的でした。ただ、なにしろじゃじゃ馬です。私も何度か乗ったことがありますが、あまりコントロールできる自信がありませんでした……。

もちろん年々リファインされてきましたが、基本的なその性格は変わらなかったように思います。ただ、モータースポーツでは維持費も含めて、「アルトワークスがあるから続けられる」という層も少なからず存在していたので、4代目でラインナップが途切れたことを惜しむ声は大きいものでした。今回、5代目となる新型アルトワークスについて試乗記を含めて概要を紹介していきます。

パワートレインは?

冷却性能アップで吸気効率を改善。さらにトルクアップを!

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パワーユニットは「ターボRS」と同じくR06型VVTターボエンジンです。ただし、そのままでは移植したわけではありません。冷却水制御温度を88°から82℃とすることで、燃焼室の温度を低減しています。こうすることで空気の密度が高まりますから、燃焼室への混合気の充填効率が向上し、より強い燃焼が得られることになるのです。

なおかつ冷却によって圧縮の際に起こる可能性のあるノッキング(異常燃焼)を抑えています。フロントバンパーの右側に外気口を設けることによっても冷却向上を狙っています。こうしたチューニングによってトルクが従来型の98N-m(10.0kg-m)/3,000rpmから100N-m(10.2kg-m)/3,000rpmへと向上しました。アクセルレスポンスの向上も見逃せないところです。ターボRSに対し、加速時のレスポンスを10%アップし、アクセルワークにダイレクト感を増しました。

待望の5速MTは、専用チューニングを施されて登場!

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トランスミッションを見ていきましょう。5速MTはワークスのための専用開発となります。いくつかのポイントがありますが、本質的なところでは1速から4速をクロスレシオとしたことが上げられます。クロスレシオ(closed ratio)とは、各ギヤのギヤ比が近いということです。こうすることによって、よりエンジンを高回転で維持しやすくなります。シフトワーク自体は忙しくなりますが、エンジンの美味しいトルクバンドを使うためには有効なセッティングです。

MTはシフトストロークが長いと、タイムロスにもなりますし、スポーティ感にも欠けるものとなってしまいますが、アルトワークスはその辺のチューニングもしてあります。ショートストロークとしたとともにシフトレバーの位置をレカロ製シートに合わせてアジャストしてあります。操作荷重まで専用に設計し、クラッチもクラッチディスク荷重特性を最適化したというこだわりも見せました。その辺は次項の試乗記で触れるようにします。

MTだけでなく、従来からのAGS採用のバージョンも用意されています。こちらもスポーツ走行に対応するように変速制御プログラムをチューニングしています。変速スピードの短縮を図るために変速時間を最大で10%短縮しています。5速マニュアルモード付きパドルシフトも装備されています。

エクステリアは?

ターボRSをベースにワークスならではのポイントがそこかしこに!

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ご存知のようにアルトには「ターボRS」というスポーティグレードがあります。エクステリアは基本的にはそれと大きく変わるものではありません。ターボRSをベースにカーボン調のフロントバンパーアッパーガーニッシュ、ブラックメッキヘッドランプ、フロントバンパーロアガーニッシュ、ボディサイドデカール、リヤエンブレムなどが目立つところです。


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ブラック塗装された15インチアルミホイール、レッド塗装されたフロントブレーキキャリパーなどもワークスであることの存在感を増すアイテムです。ボディカラーは「スチールシルバーメタリック」「パールホワイト」「ピュアレッド」「ブルーイッシュブラックパール」となっています。ベースとなるアルトもどちらかというと男性的で力強いイメージをもっていますが、それをさらにスパルタンに特化したという感じという感じに仕上がっています。

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インテリアは?

スポーティ感を増したインテリア。レカロシートは出色!

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室内は黒を基調にシルバーとレッドのアクセントカラーをあしらったものとなっています。出色なのはなんといってもシートにレカロを採用したことでしょう。ホールド性もさることながら、フルハーネスシートベルト(4点式シートベルト)装着を前提としたショルダーベルトの用のホールが開いているのは、サーキット走行やジムカーナ走行を考えるとありがたいものです。

待望の5速MTのシフトノブは、自然なシフトワークができる位置となっています。シフトレバーのブーツもレッドステッチが入るなどスポーティ感が溢れます。ちなみに5速AGSは従来通りインパネに設置されています。こちらもセレクターのブーツはレッドステッチが入りスポーティ感を演出しています。

後部座席は、基本はアルトですので、実用性的には問題ないものです。アルトの新プラットフォームはロングホイールベース化をもたらしていますから、室内長もクラストップとなり、快適性を高めています。カーゴスペース(ラゲッジスペース)は、上部開口部幅1,065mm、下部開口部幅1,065mm、荷室開口部高690mmとなっています。特に下部の開口部は先代より160mmの拡大となっていることから、より使いやすくなっていると言えます。

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ボディ、サスペンションは?

ボディはスポット増しを行いワークス専用のチューニングとした!

スポーツに特化していくとボディには剛性の高さと軽さという相反するものがもとめられるようになります。サスペンションをチューニングしたとしても、ボディの方がグニャグニャとしてしまえば、その性能を十分に発揮することができないからです。もちろん、アルトはベースとしてのボディがしっかりしたものですが、ワークスでは、スポット溶接を増すことで、さらに剛性アップを図っています。軽さに関しては、新プラットフォームで、形状の最適化による剛性の保持、補強部品を減らし板厚を薄くするなどで対処しています。

ショックアブソーバーはKYB。減衰力アップでロールスピードを抑える!

サスペンション形式はフロントがマクファーソン・ストラット、リヤは2WDがツイストビームとなっており、ターボRSを含むアルトシリーズと変わりありません(4WDはI.T.L)。ただし、ショックアブソーバーは、ワークス専用にチューニングしています。前後ともKYB製のものとなり、フロントストラットは、専用ピストンとなりました。これにより乗り心地の確保と操縦安定性の向上を図っています。また、微小なストロークでも減衰力が立ち上がるようにフリクションコントロールダンパーを新採用しました。ショックアブソーバーは前後ともに減衰力を専用にチューニングしています。ロールの初期から減衰力が立ち上がるようにして、接地感、応答性の向上に努めています。

EPS(電動パワーステアリング)もワークス用に制御マップを最適化しました。これは専用のショックアブソーバーを採用したことによるタイヤの接地感の向上に対して、ステアリング中立付近の手応えを高くすることを狙ったものです。

乗り心地は?

引き締められた足回り。ステアリングのダイレクト感も好印象!

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乗り心地はかなりハードなものとなっています。スプリングレートはRSターボと同じですが、ショックアブソーバーの減衰力が高められたのが如実にあらわれているといえます。ピストンスピードが遅いところところから減衰力がぐっと立ち上がっているために、ロールスピードが抑えられていると感じました。「攻めるレベル」で走ったわけではないので、速度域を上げていくとどうなるかは試せませんでしたが、一般的な速度域では十分にスポーティさを感じることができます。ただ、これは仕方ないことですが不整地などにはいると結構な振動がゴツゴツと感じられます。

エンジンフィールは、かつてのワークスのダーボで無理やりパワーを出している! という感覚ではなく、いい意味で現代的なフィールとなりました。比較的高圧縮比として、不足している分をターボの過給で補っているという感じですから、どちらかというとNA(自然吸気)エンジン的に気持よく加速していきます。そういう意味ではエキサイティングというような感じではありません。

ヒールアンドトゥが気持よく決まるMTは素晴らしい出来!

MTはストロークが短く、カチッカチッとシフトポジションが決まる出来となっています。この辺はワークス用にセッティングしたということで、すばらしい出来と言っていいと思います。特にコーナリングに入る前にヒールアンドトゥを使って3速から2速にシフトダウンしたときなど、スポーツドライビングの楽しみが存分に楽しめるでしょう。この辺はクロスレシオの良さが出ている部分だと思います。ペダル配置もごく自然なもので、ブレーキペダルとアクセルペダルの位置もヒールアンドゥにジャストフィットするものとなっています。クラッチの操作感も自然で申し分ないものです。ただ、ブレーキのフィーリングは比較的ストロークが長く、効きの弱い区間が長く、奥の方で急に効きが強くなる感があるので、もうすこしリニアに効いた方が好みかな? とは思いました。

アルト ターボRSとの違いは?

ターボRSが万人向けと思えるほどに特化されたワークス

ターボRSは、「走り」に興味のある層を惹きつける魅力のあるグレードです。ただ、さらに「MTが欲しい」というある意味わがままな要求にスズキが応えたのが今回のワークスといえます。ここまでの文章内でも触れてきましたが、MTの設定はもちろん、エンジントルクのアップ、アクセルの制御、専用ショックアブソーバー、EPSの専用チューニングなどワークスはターボRSからもう一段進化させてきました。特にサスペンションの味付けに関してはターボRSでも結構ハードだなと思いましたが、ワークスはそれ以上となっているので、乗り手を選ぶということは言えるかもしれません。そういう意味でターボRSは万人向けとなっています。

実燃費はどうなる?

トルクフルなエンジンとMTを駆使すれば結構伸びる?

今回は短時間の試乗だったために、実燃費までは計測できませんでした。JC08モードで2WDの5MT車が23.0km/L、2WDのAGS車が23.6km/Lとなっています。この差はAGSにはアイドリングストップシステムが装着されるからです。ただ、MTの方でも、トルクフルなエンジンでMTですから、その気になれば5速巡航時はもちろん、街中でもエンジンブレーキを積極的に使うようなドライビングをすれば、結構燃費が伸びるような気がします。この辺は改めて一度検証する機会があればと考えています。

過去のアルトワークスも気になる方は……

アルトワークスは最初の項目でも記載した通り、過去のバージョンのアルトワークスの印象がかなり強烈にあるかと思います。そこであえて過去のアルトワークスを探したいという方もいるのではないでしょうか。

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まとめ

MTの設定のみならず「ワークス」を復活させてくれたことに感謝!

スズキがアルトワークスを発売してくれたということは、まずは「感謝」という言葉しか思い浮かびません。ターボRSが出た時に各方面からのMTの設定の要望は多かったと思いますが、それを実現してくれただけではなく、シフトフィールのチューニング、さらにエンジン、サスペンションなどもレベルアップするなど、それ以上のものを出してくれたという感じがします。現在発売されているクルマの流れを見てくると、スポーツカー、スポーティカーが増えてきたことに合わせ、マニュアル車の復権という感じもします。ここでアルトワークスが登場したことで、さらにその傾向がはっきりしたと思います。個人的にはぜひともこの流れが続いて欲しいと思っています。