【トヨタ コルサ】コンパクト、それは上手くまとまること

最近は、音楽家や俳優そして映画監督やアニメーションのタイトルなど、世界中に名の知れた人やモノが日本から多く輩出されています。多分、その進出の後ろ盾になっているのは、独特の日本らしさなんでしょうね。ガラパゴス化なんて揶揄される時もありますが、日本の一番上手い技は、制限の有る環境でうまくモノゴトをまとめ上げる仕事なんです。そして、トヨタ コルサという自動車にも、そんな良さが感じられる気がするんです。

初代コルサ、今とは違う時代にトヨタが出した解答

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%82%B5

意外と忘れがちですが、パソコンとかスマホ、4Kテレビなども、当然のことながら一朝一夕で発明された訳ではありません。あらゆる工業製品は、その都度ちょっとずつ改良されることで、今の時代のハイテク文化を支えるものに進化してきたのです。まぁ、自動車の世界でもそれは同様、いくつかの時代にその時々の技術で応えながら、今の最新型が生み出される下地を培ってきた訳です。
今回お話するトヨタ コルサの生まれた1978年は、いろいろな意味でも、今の文化につながる流れの出発点、あるいはちょっとした転換点、現代ポップカルチャーの種が蒔かれ、一方、大衆コンパクトカーの作り方にも、それなりな影響を残した時期だったような気がします。

最先端のFF車として

トヨタのカーラインアップに、コルサ(ターセルと姉妹車)が登場した1978年は、がむしゃらな経済成長に一区切りがついた時期で、だから一般人が車などに向ける関心も大きくなり、だんだん成熟してきた頃だったでしょう。テレビでは、田宮二郎主演の『田宮二郎』や、堺正章と夏目雅子などが出演した『西遊記』が人気を博したこの年の8月に、『トヨタのFF』と大きく銘打ってコンパクトカー市場に登場したのが、このトヨタ コルサでした。
初期のトヨタ コルサで、自動作車として最も特徴的なポイントは、縦置きを採用したそのエンジンの搭載方法です。自動車の中身に興味の無い人でも、自分の車のボンネットを開けてみれば、殆どの場合、エンジンが進行方向に対して横に設置されていることを、うかがい知ることができます。そんな風に、現代のFF車なら通例、と言うよりむしろ常識となっている横置き方式を、この時のコルサはあえて採用しませんでした。
普通に考えても、FF車両のエンジンは横向きに配置すれば、クランクシャフトと駆動輪の回転軸が平行になりますから、その分でパッケージングに合理性が生まれます。わざわざ縦置きFFにすると、一度後ろ(もしくは前)側に出した出力を、どこかの位置で、直角に向きを変える仕組みにしなければならない訳です。余計な手間が増えれば、多分余計な部品も増えるでしょう。
もちろん、横は横で、ボンネット内が窮屈になりますし、それ以上にトランスミッションからの、ドライブシャフトを出すポイントが、右か左のいどちらかにずれるという、ややいびつな形態になり得ます。これは、乱暴にアクセルを踏み込んだとき、ハンドルがどちらかに取られる、トルクステアという面白くない現象を生み出します。
このコルサのために、この時トヨタ開発陣が出した結論は、あえて縦置きのFFにする、ということでした。これでトルクステアを出さずに済みますし、ボンネット内部もスッキリして整備性の向上にもなるという訳なんですね。ただそのために、ギヤボックスの下で前方に一本のドライブシャフトを通し、その先にディファレンシャルギアを置く、という無駄な複雑さも生み出していました。

それでもアピールポイントはやはり、FF

今の時代だったら相当凝り性のエンジニア達くらいしかやらない、そんな前輪駆動の構造を採用していても、やはりコルサがアピールしたいのは、FFであることの居住性や便利なラゲッジスペースの広さでした。フロントノーズは、FFらしくない程に四角張って長いイメージですが、前輪と後輪を結びつける機構がない分、ホイールベースの設定には大きな自由度が与えられ、2,500mmという長さは、当時の大人5人乗車に余裕をもたらしました。
サスペンションは、前にマクファーソンストラット式、後にトレーリングアーム式の4輪独立懸架となっていて、当時のカタログには、スキッドパッドを高速走行するコルサの写真と共に、「スロットル前回。コーナーをグリップせよ。」なんて、今ではちょっと過激過ぎて使えなさそうなコピーが躍ります。ボディータイプとしては、2ドアと4ドアセダンのに加え、ガラスハッチ付2ドアセダンがある3種類で、当初は全車種に、新開発の1.5リッター直列4気筒SOHCのエンジンが搭載され、1979年6月になると1.3リッターのモデルも追加になっています。また、この時、1.5リッターモデルに3速ATも追加され、翌年にはそれが1.3モデルにも拡大されました。

【基本情報】
名称:トヨタ コルサ(初代)
型式:AL10
エンジン排気量:1,452cc
エンジン出力:80ps/5,600rpm
エンジントルク:11.5kgm/3,600rpm
全長:3,990mm
全幅:1,555mm
全高:1,375mm
重量:815kg
ホールベース:2,500mm
サスペンション:マクファーソンストラット(前)/ トレーリングアーム(後)

オリジナルのカタログです。

2代目、姉妹が増え3台体制

もともとトヨタは、コルサとターセルという2車種を、ほぼ双子の姉妹車種として誕生させました。しかし時代が花の80年代に突入すると、実はもう一人の姉(もしくは妹)、カローラIIが居たことが発覚します。この家族編成変えのために、ターセル系はビスタ店へ鞍替えとなり、コルサもトヨペット店へ配属替えになります。テレビのCX系列で『笑っていいとも』の放送が始まり、NECからPC-9801が発売となり、映画では『E.T.』が世界的ヒットとなった1982年のことです。
この頃は、自動車販売店もどんどん拡大し、メーカーはモノを作れば売れて行き、テレビをはじめとしたポップカルチャー業界でも、新しいことがたくさんはじまった、そんな風に活発な時代だったと思います。

コンパクトカー、女性に応えたいから

今思うと不思議ですが、初代コルサのボディーは、リアのハッチがあるタイプにしても、2ドアセダンをベースにしたものでした。まぁ、同じハッチが付いてるのにどう違うんだ、言われれば若干返答につまりますが、車体強度の問題などの理由で、後部の構造設計が持つ制限事項のために使いにくい形状となったのかもしれません。とにかく、自動車を運転する女性の数が増えた1982年には、お堅いセダン色を押し出すのは上手い商品戦略ではなくなってきたらしく、1982年のフルモデルチェンジ時点で5ドアハッチバックが、その翌1983年には、当時の女性ユーザーが多く求めていた3ドアハッチバックが登場します。考えてみると、コンパクトカーとは主に3or5ドアハッチバックの、というイメージが、世界的に固まってきたのがこの頃からかもしれませんね。
依然として、エンジンは縦置きを踏襲していましたが、それを収めたボンネットはスタイリッシュな傾斜がつけられ、樹脂成型のバンパーはボディから連続するシルエットに、また、シャープですっきりとしたボディシェイプ、鮮やかな原色によるボディーカラーなど、かなりモダンなクルマに進化したのが、この2代目コルサ系列ではあります。
2代目のコルサに用意されたエンジンは、共にSOHC直列4気筒の1.3と1.5リッター、標準タイプに加えて、1.5には可変ベンチュリーV型キャブレター装備で出力86PSのタイプもある、レーザーエンジンと呼ばれた新型が搭載されています。サスペンションは、前にマクファーソンストラット、後には新しくデュアルリンク式ストラットが採用されました。1994年のマイナーチェンジで、エンジンにツインキャブレターを装備し90psの出力を発揮するタイプが追加され、4ドアセダンにはパートタイム4WDも加わりました。
カタログ上で、この時の宣伝戦略を見ると、初代が「大地を掴み疾走する」などと高性能ぶりを売り込んだ姿は消え失せていて、陽気な男女がコルサを中心にテニスに興ずるという、時代なりのイメージ戦略になっているのも、ちょっと興味深い点です。

【基本情報】
名称:トヨタ コルサ
型式:AL21
エンジン排気量:1,452cc(可変ベンチュリーV型キャブレター)
エンジン出力:86ps/6,000rpm
エンジントルク:12.3kgm/4,000rpm
全長:4,080mm
全幅:1,615mm
全高:1,385mm
重量:850kg
ホールベース:2,430mm
サスペンション:マクファーソンストラット(前)/ デュアルリンク式ストラット(後)

オリジナルのカタログです。

3代目コルサ、コンパクトでもスペシャルティ―感

1986年5月に行われたモデルチェンジでは、2ボックス系だけが切り替えられ、4ドアセダンは継続生産とされています。とは言え、この時のモデルチェンジが、コルサの歴史上、もっとも面白いチェンジだったかもしれません。大きな要素としては、まずエンジンの横置き化(FFスターレットとプラットフォーム共有のため)、そして、3ドアモデルへ、フルリトラクタブル式ヘッドライト装備の、1.5リトラの投入です。
AE86トレノに通じる、スポーツ感あるフロントノーズのリトラの登場は、小型の3ドア2ボックスにも贅沢さや豊かさを求める顧客層が、この時代にどれだけ居たのかを物語ると言えるでしょう。このタイプには、電動ムーンルーフと言われる開口部が、オプションとしてルーフに装備できました。
サスペンションは、スターレットと同様に、前マクファーソンストラット、後トレーリングツイストビーム式という、現代の小型FFに通じる機構に変更されています。また、当初用意されたエンジンは、1.3と1.5リッターSOHC直列4気筒で、可変ベンチュリー型キャブレターのガソリンタイプ、そして、ターボ過給つき1.5リッターディーゼルもありました。またその後、過給圧切替機能を持つインタークーラー付ターボチャージャーを備えた、GPターボというグレードも追加設定されています。これは、ターボの設定を切り替えることで、エンジンの最大出力を97psと110ps(後115psにアップ)に切り替えられるという、面白いエンジンです。このGPターボでは、TEMSと呼ばれた電子制御式サスペンションまで、選ぶことができました。
カタログを見ると、カラフルで楽しいイメージを押し出していた先代のPRから、自動車本来のクールでメカニカルな感じに回帰しています。内装に、CD付カーコンポのオプションなどが大きく扱われているのも、男性客をコンパクトカー市場に引き戻す作戦だったかもしれませんね。

【基本情報】
名称:トヨタ コルサ(3代目)
型式:EL31
エンジン排気量:1,456cc
エンジン出力:79ps / 6,000rpm
エンジントルク:12.0kgm / 4,000rpm
全長:3,865mm
全幅:1,625mm
全高:1,370mm
重量:840kg
ホールベース:2,380mm
サスペンション:マクファーソンストラット(前)/ トレーリングツイストビーム(後)

オリジナルのカタログです。

4代目、曲線美にまとまった2ボックス

いよいよ世紀最後の10年に突入した1990年、スーパーファミコンが発売される2ヵ月前に、トヨタ コルサは、4ドアセダンと3ドアハッチバックを同時にフルモデルチェンジしました。セダンは実に8年ぶりの一新です。ともすると男性向けに格好良さをアピールした、3代目のリトラ(フルリトラクタブル・ヘッドライト)は、このモデルチェンジで消滅しています。その新しいボディーデザインも、曲線をまとめあげてさらにモダンなものに変更され、コンセプト戦略的には、4ドア系に夢を追う男性、3ドア系にはキュートさを求める女性の顧客層を、それぞれイメージしたものに変わっていて、1.3リッターにはソフィアという女性仕様が誕生。また、電動ムーンルーフも選択できました。
基本的要素で大きな変化は、ガソリン系のエンジンが全てDOHC16バルブの、レーザーαIIタイプになったことです。これには、吸気の管路をエンジン回転域によって切替え、広い回転域で吸気効率を最適化する、ACIS(アコースティック・コントロール・インダクション・システム)という機構も装備されていました。可変バルブタイミング登場前夜の、エンジン出力カーブ改善技術と言ったところでしょうか。エンジンの排気量は、1.3リッターと1.5リッター、ディーゼル仕様は1.5のターボ付きでした。
FFのサスペンションは、前ストラットの後トレーリングツイストビームですが、このモデルから登場したフルタイム4WDのリアは、トレーリングリンク車軸式です。
このフルタイム4WD、方式としては、前輪と後輪を結ぶプロペラシャフトの真ん中に、シリコンオイルを封入したカップリングを、差動機構として設置しているものです。カップリングの中ではオイルをかき回すブレードが回転していて、前後のドライブシャフトに回転差がない場合は、オイルによる抵抗も生まれないため後輪側にトルクが伝わらず、回転差が生じたときそれを埋め合わせる方向で、後輪にトルクが伝わるという仕組み。穏やかに直進している場合などは、ほぼFFとして走行するので、燃費の悪化を防げる方式ですね。
SRSエアバッグ、サイドドアビーム、後席3点式ELRシートベルトなどの安全装備が追加投入されたのも、この代のコルサです。

【基本情報】
名称:トヨタ コルサ(4代目)
型式:EL43
エンジン排気量:1,496cc
エンジン出力:115ps / 6,600rpm
エンジントルク:13.8kgm /4,000rpm
全長:3,930mm
全幅:1,645mm
全高:1,365mm
重量:880kg
ホールベース:2,380mm
サスペンション:マクファーソンストラット(前)/ トレーリングツイストビーム(後 FF車)

オリジナルのカタログです。

5代目トヨタ コルサ、集大成の仕上がり具合

トヨタ コルサにとって最後のモデルチェンジがあった、1994年は、日本のポップカルチャー界をちょっと調べても、さして愉快な事がみつからない年でもあります。それは、1978年の登場以来16年が経過して、コルサの賞味期限にも終わりが近づいていたことも感じさせる要素でしょう。
最終型となるトヨタ コルサは先代からの正常進化、とは言えその外観は、上質な曲線で構成されたボディーパネルがきちっとまとまっていて、海外の某高級車メーカーでも、21世紀の今どきだったら逆に作りたがるかもしれないなぁ、とか思わせる仕上がりになっています。このタイプのエンジンも、当然のことながら全てDOHC16バルブ(ガソリン)、排気量は1.3リッター(88ps)と1.5リッター(94ps)の2本立てであるのも変わりません。
実は、エンジンの出力数値の方だけは、先代より低いものになっているのですが、街乗りなどの日常で最も良く使う回転域である、およそ5000rpmまでのトルク特性を重視したからのようです。扱いやすいエンジンに高めのギヤ比設定は、燃費性能の向上を助けました。ディーゼルも1.5リッターのターボ付きが継承されています。

上質は人を守る事

5代目コルサのカタログを見ると、このクルマを使ってどう行動するかとか、どういうライフスタイルを提案するか、ということより、小型車として品質を極めた車が上品な街並みにどれだけ似合うか、を押し出すPR戦略を感じます。良し悪しは別として、アクセルを踏めっ、なんて煽っていた初代の元気なイメージ戦略から大きく変わって、自動車を静的に捉える写真の方が多いのは、やはり時代がおとなしくなった、いや、窮屈になって色々と自由にできなくなったということの、表れなんでしょうか。
さて、上質という意味で言うと、カタログの1ページを側方からの衝突テスト時の写真に使って、安全性能のアピールをしているのが印象的です。その横のページには、ハイマウントストップランプや、ATのキーインターロック付きシフトロック、ABSにSRSエアバッグと、この最新型コルサの安全に関する情報がたっぷりと説明されていて、安心安全を重視するこのクルマの上向き指向が見て取れる気もします。
駆動方式はFF主体でも、一応のフルタイム4WDも選択できたので、加速時やコーナリング時にトラクションを無駄にしない小型3ドアハッチとして、楽しい運転が期待できるクルマでもあったと思います。もちろん、この時代なら、まだ5速MTのギアボックスが生き残っています。それらに組み合わされたサスペンションも、ほぼ先代からの正常進化型でした。

【基本情報】
名称:トヨタ コルサ(5代目)
型式:EL53
エンジン排気量:1,496cc
エンジン出力:94ps/5,400rpm
エンジントルク:13.5kgm/4,400rpm
全長:3,915mm
全幅:1,660mm
全高:1,370mm
重量:870kg
ホールベース:2,380mm
サスペンション:マクファーソンストラット(前)/ トレーリングツイストビーム(後 FF車)

オリジナルのカタログです。

まとめ

なんとなくトヨタらしくない、と思えるユニークなパッケージングから幾多のカイゼンを積み重ねて、最終的には、やっぱりトヨタだねぇと思わせる質感のあるコンパクトカーへ進化した、それがトヨタ コルサの歴史だったと思います。最終型の5代目には、どこか欧州車の香りさえ漂うでしょう。やたらボディーを上に伸ばそうとしないのも、この時代のデザインの良いところですね。
個人的には、自動車は、デカぶったりエラぶったりするためのモノではなくて、小さくても日々運転して、経済的でありつつ楽しく、その気になったらワインディングに(自信がある人はサーキットへ)走りに行ける、そんな一台が理想です。トヨタ コルサのようにコンパクトで、かつ走りが元気な3ドアハッチバックが、現代にもっと復活してくれたらいいなぁ、と思うしだいです。