【ホンダ インサイト】技術が詰まったエコカー!そんなインサイトに引導を渡した車とは?

昨今、トヨタから発売されているエコカー「プリウス」がフルモデルチェンジをしれ「4代目」となって販売されました。「エコカー=プリウス」と言う確固たる地位を築いたプリウスの影に隠れ、ひっそりと市場からいなくなったある車があります。それはホンダの「インサイト」です。インサイトとはどのような車だったのか? 皆さんも一緒に見ていきましょう!

ホンダの技術を集結させ販売したエコカー「インサイト」発売

出典:http://www.honda.co.jp/auto-archive/insight/2004/line_up.html

1990年代の初頭バブル崩壊の煽りを受け、車業界が軒並み販売不振に落ち込むようになりました。現在では国内メーカーでも2~3番手の位置にいるホンダの懐事情は相当厳しいものでした。しかし当時のホンダは「スポーツカーを作ろう!」「エンジンをもっと極めるぞ!」「車体が重いな…よし! ならこうして車重を減らすぞ!」と言うようにある意味変態な技術者達が競い合い、現在でも語り継がれるほど有名な「CR-X」「シビック(タイプR含む)」「インテグラ(タイプR含む)」と言った名車を生み出し続けていました。

確かに名車を生み出してきましたが、購入者が限られてしまうため経営陣は皆が好んで乗れる「大衆車」作りを進めていくことを決定しました。特にバブル崩壊の煽りが消えない1990年代初頭~半ばはお財布事情も厳しいと感じ、他社に先駆けて「燃費が良いエコカーを出そう!」と言う決定に至りました。そして1999年、ホンダから初のエコカーとなる「インサイト」が発売されたのです。

今のホンダのエコカーを支える「IMA」初搭載

初代インサイトには、現在のホンダのエコカーに使用されている「IMA」と言うシステムが初めて搭載されるようになりました。ホンダのIMAシステムとは、ガソリンエンジンだけでなく電気モーターの2つの動力源を持っており、両者を平行して駆動するシステムになります。エコカーに乗られている読者の方々でしたら体験されていると思いますが、巡航運転・下り坂・余剰エネルギーは全て電気モーターのバッテリーに充電されるため自分で発電する手間が掛かりません。

このシステムにより、ガソリンエンジンだけでなく電動モーターによるアシストがあるため余計なエネルギーを消費しなくなります。そのおかげで燃費は向上し、業界の中で一時期トップの燃費を実現していたのです。

初代インサイトの車情報

先ほど紹介した見た目が特徴的な初代インサイト。初代インサイトの車情報を下記に紹介します。

全長:3,940mm
全幅:1,695mm
全高:1,355mm
ホイールベース:2,400mm
車両重量:CVT:850kg、MT:820kg

エンジン:ECA型:1.0L 直3 SOHC 12バルブ VTEC
モーター:MF2型:薄型DCブラシレスモーター
最高出力:エンジン:66kW/5,700rpm、モーター(MT):10kW/3,000rpm、モーター(CVT):9.2kW/2,000rpm
最大トルク:エンジン:92N·m/4,800rpm、モーター:49N·m/1,000rpm
変速機:CVT(ホンダマルチマチックS)、5速MT
駆動方式:FF

燃費:CVT:32.0km/l、MT:35.0 - 36.0km/l(10・15モード)

こうして見ると、1980年代~1990年代に他車とは真っ向から異なる道を歩み続けてきたホンダとしてはおとなしい車になったと感じます。ですがやはりそこはホンダですので、至るところに「面白くない! だからこうした方が良い!」「スピードを出すためにこうしよう!」と言う今のホンダでは考えられないほど熱心な技術者の努力が詰め込まれています。ではその変態的な技術を見ていきましょう。

当時のホンダを物語る変態的技術を詰め込んだインサイト

2人乗りと言う時代を逆行する割り切り仕様

1990年代は各社バブル崩壊の煽りを受け「スペシャリティーカー」ではなく「大衆車」に力を入れていた時代です。例えばトヨタの「RAV4」日産「マーチ」三菱「パジェロ」等々、今でも乗られている大衆車が多数出てきた時代です。ですからホンダも大衆車としてインサイトを作ったのかな? と思いきや時代と逆行する「2人乗り」と言う割り切った仕様になっているのです。

私見となりますが、やはり当時のホンダはCR-Xやシビック等のスポーツカーが主流だったため「後部座席は必要ないだろう」と感じていたのでしょうか? そのため車内の荷室は広いものの運転席・助手席共に快適といえる空間ではありませんでした。この時代に逆行した思い切った割り切りも当時のホンダを彷彿とさせるものです。

NSXの技術を盛り込んだ超軽量アルミフレーム

JOOY読者の皆さんの多くはホンダの名車「NSX」をご存知かと思います。初代NSXは1990年に発売され、現在では「新型NSX」として注目を集めるホンダを代表するスポーツカーです。実は初代インサイトは、そのNSXの技術を盛り込んで製造された車なのです。車にとって重さは「燃費の悪化」「加速性能が落ちる」等のデメリットしかありません。初代インサイトに搭載されているIMAが小さくてもやはり車体が重たくなります。

当時、後々敵となるトヨタのエコカー「初代プリウス」は車重「1,220~1,240kg」ですので多少重くなるかなと感じていました。ですがやはり1990年代のホンダの技術者は考えが違いました。「バッテリーで重たくなるなら軽くすれば良い」と考え、なんとNSXの技術であるアルミフレームの技術を盛り込んで設計を行ったのです。その甲斐あって、先ほど紹介した車重「CVT:850kg、MT:820kg」と言う1,000kgを切る軽量化に成功したのです。

空気抵抗を減らすために特徴的なデザインに仕上がった

初代インサイトのボディは一目見ると二度見してしまうほど特徴的なデザインをしています。特に今の車では考えられない「リアホイールスカート」まで着用しています。しかしこれには理由があってこのようなデザインになったのです。この特徴的なデザインにすることで空気抵抗を極力減らすことに成功したのです。空気抵抗を減らすことによって余計なエネルギーを車が消費しないため、燃費向上に繋がっているのです。このデザインによって後々、ホンダから発売される車種の参考になったと言えます。

とは言え、リヤタイヤを交換する時は大変でありいちいちリヤホイールスカートを外す手間隙がありました。空気抵抗を減らすことに成功はしましたが、消費者にとって面倒な仕様を押し付ける結果になっています。

まるでターボエンジン!初期のIMAは面白みのある電気モーター

現在のホンダが発売する「ハイブリット車」はどれもマイルドな運転を私達に提供してくれます。スポーツハイブリットの「CR-Z」も「ECOモード」で運転していますと車内が静寂に包まれ、上質な乗り心地になります。けれどここまで進歩したのは初代インサイトがあってこそです! 実は初代インサイトに搭載されていたIMAは色々と面白みのある電気モーターだったのです。

初期のIMAは今のようにマイルドな運転とは程遠く、電気モーターによるアシストを加えるとまるでターボエンジンのように後ろから押し付けるような荒いものでした。スポーツカーとして販売すれば「まるでターボエンジンだ! IMAは面白いシステムだな!」と感じるところですが、これは大衆向けに作られた車です。購入した方々からは大変不評だったようで、この初期のIMAが改良され今のホンダのハイブリットへと繋がったのです。

以上のようにホンダの熱意溢れる技術者によって、設計・製造・販売された初代インサイトは色々とおかしいポイントはありました。しかし1999年当時は世界で一番燃費が良い車として高評価を受けていたのです! しかしエコカー分野の首位になった初代インサイトは、ある車によって窮地に追いやられることになりました。続いての項目は初代インサイトを窮地に追いやった車について紹介します。

初代インサイトが窮地に!追いやったのはトヨタを代表するあの車!

ホンダの初代インサイトの燃費が1番になったことにたいして、面白く感じていない車メーカーがありました。それが「トヨタ」です。トヨタは1997年12月に世界で初となる量産型ハイブリットカー「プリウス」を販売しています。当時としては「28.0km/l」と言う世界で一番の燃費をたたき出してたのです。ところがホンダのインサイトの発売により、初代プリウスの最終モデルであっても太刀打ちできなかったのです。

そこでトヨタは「インサイトに負けるな!」と言わんばかりに2003年9月にプリウスをフルモデルチェンジしたのです。それによって燃費は「35.5km/l」に向上し世界で一番燃費が良い車の地位をホンダから奪還したのです。しかしホンダも負けじと2004年10月に2度目のマイナーチェンジでMTのみ燃費が向上し「36.0km/l」と言う燃費を出し再度奪還しました。

しかしいくら燃費が良くなっても購入者が限られる初代インサイト、セダンタイプであり大衆向けのプリウスでは徐々に差が開いていきました。そして遂には燃費で勝っても売上で負ける散々な結果になったのです。そうして初代インサイトは徐々に追い込まれていき、2006年7月に販売を終了したのです。

トヨタのプリウスに負けるな!インサイトがフルモデルチェンジして帰って来た!

ホンダのインサイトの販売が終了して1年後の2007年。ホンダも「このまま終わるものか!」と感じていたのかは定かではありませんが「2009年にもう一度ハイブリットカーを作る!」と大々的に発表したのです。そして2009年2月6日、2代目となるホンダの新型インサイトが販売されたのです! それでは上の写真を見てみましょう。新型インサイトは初期のデザインを反省したのか5ドアのハッチバック。リアホイールスカートを外しまるで「プリウス」を意識しているかのようなデザインに変身されています。

それでは新型インサイトの車情報を見てみましょう。

全長:4,390~4,395mm
全幅:1,695mm
全高:1,425~1,435mm
ホイールベース:2,550mm
車両重量:1,190~1,210kg

エンジン:LDA型:1.3L 直4 SOHC 8バルブ i-VTEC i-DSI、LEA型:1.5L 直4 SOHC 16バルブ i-VTEC
モーター:MF6型:薄型DCブラシレスモーター
変速機:CVT(ホンダマルチマチックS)

燃費:XLインターナビセレクト:22.2km/l、XG,XL:23.2km/l、G,L:27.2km/l(JC08モード)

新型インサイト登場!トヨタのプリウスに勝てるか?

初戦は新型インサイトの大勝利!売上台数でホンダは1位、2位を独占!

当時のホンダには既に、変態的な技術者が殆どおらず初代のように「改造を施して燃費を少しでも良くしよう!」と言う熱意を持った方「NSXの技術を盛り込んでアルミフレームを製造しよう!」と言う考えを持った方はおらず、そのような考えも無かったのだと感じます。その結果、車重は重くなり燃費も初代より悪くなりました。燃費が悪いインサイトをホンダはどうやって売ったか? 答えはインサイトの部品を「ケチル」ことで価格を下げプリウスに対抗したのです。主なケチりポイントは下記のようになります。

・ボディを独自に開発せずフィットから流用して製造
・ニッケル水素バッテリーを初代の「7.2V×20本=144V」から「14.4V×7本=100V」に変更
・ベースグレードの「G」はセダンとは感じられないチープな内装
・「G」ではオーディオレスになるためよりコストダウンに繋がる

等々、挙げるとキリがない程ケチりにケチってなんとかベースグレードの「G」を車両本体価格税込「189万円」にすることができたのです。その価格帯が購入者の心を掴み、発売3ヵ月後には売上台数トップにインサイト、2位にフィットが並ぶワン・ツーフィニッシュで飾ったのです。

インサイトの天下は早々に終了…引導を渡したのはやはりあの車!

しかしインサイトの天下もすぐに終了することになります。なんと初代インサイトを販売終了ばで追いやった「プリウス」が2009年5月にフルモデルチェンジして戻ってきたのです! しかも燃費は「38.0km/l」と言う驚異的な低燃費車。価格帯もインサイトと離れていればよかったのですが、インサイトを目の敵にするかのように最低価格を「205万円」にしてきたのです。外見(写真は4代目プリウスです)内装共にインサイトより優れているため客層はプリウスに流れていきました。

そうしてインサイトは一時期トップを飾っていたものの、3代目プリウスの登場により今度は最下位を争う不人気車種に変わったのです。結局「売れない車を残しても仕方がない」とのことで2014年3月に販売を終了したのです。

最後に

いかがでしたか? 初期インサイト・新型インサイト共にホンダの技術が注ぎ込まれていましたが、トヨタのプリウスに駆逐されるかのように散々な結末を迎えました。とは言え、決して悪い車ではなく普通に載っているなら低燃費で運転しやすい車です。現在では中古車でしか手に入りませんが、気になった方がいましたら1度はインサイトを見てみましょう。