ホンダで稀少な軽ターボ車「ザッツ」人気車種の特徴&悲しい結末とは?

現在、車メーカーの「ホンダ」を支えていると言っても過言ではない軽自動車「Nシリーズ」その中で軽トールワゴンの「N-BOX」「N-WGN」は人気を博しています。ですが、それらが発売されるよりも前に前身となった車があります。それが「ザッツ」と呼ばれる車です。本日はそのザッツとは何か? から特徴に至るまで幅広く紹介していきます。

ホンダのトールワゴンの前身ザッツとは?

出典:http://www.honda.co.jp/auto-archive/thats/2007/type/ext-front/index.html

現在のようなスタイリッシュな軽トールワゴンではなく、昔の角ばった雰囲気を残す「ザッツ」こちらは2001年10月に開催された東京モーターショーにて「w・i・c」と言う名称で発表されました。ザッツとして販売がスタートしたのは翌年の2月8日になります。「ザッツを発売します!」と発表したのはなんと同年2月7日。前々から販売する計画はあったと思いますが、現在のように発表から発売まで期間をおかないのはあまり見られないことです(ここ最近ではスズキのアルトワークスが早い段階で発売を開始しています)

軽自動車の需要が高かったのか、それともホンダ自体の家計簿事情が苦しく「今は軽自動車が売れてるから早く販売しろ!」と考えていたかは定かではありません。そんなどたばたした状況で誕生したザッツの車情報は下記のようになります。

全長:3,395mm
全幅:1,475mm
全高:1,620mm
ホイールベース:2,360mm
車両重量:820-920kg

エンジン:E07Z型 直3 SOHC 0.66L
最高出力:52PS/7,200rpm(NA)、64PS/6,000rpm(T/C)
変速機:コラムシフト式3速AT
駆動方式:FF/4WD
サスペンション:前:マクファーソンストラット、後(FF):車軸式、後(4WD):ド・ディオン式

今の軽自動車には当たり前のようにターボを搭載していますし、現にホンダはターボを促進させるように様々な車種に取り付けています。しかしこの時のホンダはターボを搭載している車が殆どありませんでした(昔はシティターボ等がターボを装着していました)と言うのも1980年代~1990年代に発想・技術・製造に至るまで変態的な技術を培っていたからです。その最たるものが「VTEC」です。

今では販売されていない「シビックタイプR(2015年モデルを除く)」「インテグラタイプR」「S2000」と言ったモンスターマシンの多くに搭載されていたエンジンであり、別段ターボを取り付けなくてもレース車両並みのパワーを公道で搾り出すことができたのです。乗られた方、または現在も乗っている方であればそれらのマシンに搭載されていたエンジンがどれだけドライバーの心を昂らせるエンジンかご理解いただけると思います。

別段ターボを必要としない社風でありながら、取り付けたということは非常に珍しいことなのです。その点は当時を知るホンダの方からすれば「珍しい」「ホンダもとうとう頭がおかしくなったか?」と感じていたかは定かではありませんが、珍しいとは感じていたでしょう。

では続いて、ホンダから発売されていたザッツの特徴を下記に紹介していきます。

ホンダザッツは皆の人気者!その理由はザッツの特徴にあり!

ホンダには珍しいターボ搭載車

先ほども紹介しましたが、現在のホンダは何かと「ターボ!」「ターボ!」と言ったようにターボエンジンを搭載しています。「Nシリーズ」や2015年に華々しくデビューした「S660」にも搭載されています。そしてCMでも紹介されている「ステップワゴン」「ステップワゴンスパーダ」にもです。今では「ターボ搭載か」程度ですが、当時のホンダからすれば独自の技術や発想力がありましたのでターボを搭載するのは考えられませんでした。

しかしザッツには珍しくターボを搭載したのです。ターボを搭載したことにより、他の軽自動車と比べれば燃費は落ちたものの軽自動車の加速をいかした「瞬間加速の向上」そして軽自動車に物足りない「パワー」を持つ車へと変身したのです。現在のような綺麗なターボ(やかましくなくお上品なターボ)とは異なりますが、ホンダの持つ「エンジンを回す楽しさ」がターボにもあるのは嬉しいところです。

車内空間を視覚的に広げ軽自動車とは思えない開放感を演出

出典:http://www.honda.co.jp/auto-archive/thats/2007/interior/interior/index.html

軽自動車ではダイハツ「ムーブ」スズキ「ワゴンR」普通車ではトヨタ「bB」日産「キューブ」等のように、2000年前半は軽トールワゴン・トールワゴンの分野に活気が満ちていました。その業界に少し遅れてやってきたホンダが他社に負けないためには差別化を図っていかなければなりません。

その中の1つが車内空間を視覚的に広げたことです。
実はザッツ、先代のライフと比べて車内空間がそこまで広がっておらずせいぜい10mm程です。とは言え軽自動車の規格は決まっているため、広げようにも広げられない。そこで考えた策が「視覚的」に広げることです。まず乗車席と天井の幅を広くすることで圧迫感を無くす。次に横方向の圧迫感を無くすために、写真でも分かるように隅を角ばるのではなく丸くしています。

そうすることで車内空間を視覚的に広げることに成功したのです。言い換えれば誤魔化しになりますが、それでも当時としては画期的な技術だったんですよ?

当時としては画期的なシートアレンジができる軽自動車

出典:http://www.honda.co.jp/auto-archive/thats/2007/interior/seatarrange1/index.html

ダイハツ「ウェイク」スズキ「ハスラー」等、シートアレンジが自由自在の軽自動車は今ではそこまで珍しいものではありません。と言うよりも「できて当たり前」のような感覚です。しかし、2000年代前半は普通車でしたらミニバン等でありましたが軽自動車はそこまでシートアレンジが発達していませんでした。そのためホンダのザッツは当時としては画期的なシートアレンジができた車種なのです。

まずは上の写真を見てみましょう。
当時としてはこのように、前・後部座席を連結させることはそこまで多くありません。軽自動車ですのでシートはそこまで良いと言えませんが、車内泊は1~2泊程度であれば荷物も詰めますので問題なくこなせるでしょう。では続いてもう1枚見てみましょう。

出典:http://www.honda.co.jp/auto-archive/thats/2007/interior/seatarrange2/index.html

こちらは小さな自転車や長いものを詰め込む際に使用するシートアレンジです。ハスラーやウェイクのように詰め込むことができたため、アウトドアをされる方は非常に重宝したシートアレンジです。もちろんアウトドアだけでなく、買い物の際に長いものを詰め込む時でも活躍します!

出典:http://www.honda.co.jp/auto-archive/thats/2007/interior/seatarrange3/index.html

最後に紹介するのは大量の荷物を搭載する際に使用するシートアレンジです。後部座席が完全につぶれるため、運転手含めて2人だけしか搭乗することができません。しかし「軽自動車で旅行するから荷物が多くなる」「軽自動車でアウトドアを楽しむから機材を大量に詰め込みたい」と言う方であれば、これほど便利なシートアレンジは無いでしょう。もし身長がそこまで高くなければ寝心地は悪いですが、フラットのところに敷物を置いて就寝することも可能です。

現在であれば珍しいものでもありませんが、当時としては画期的なものでした。その技術は今やNシリーズ等に受け継がれていることでしょう。

ホンダのザッツは購入しやすい価格帯です!

現在では「新車が売れない!」と言う事態が発生しているのをご存知でしょうか? そのためメーカー側はなんとしてでも「新車を売るぞ!」と言うことで「残価設定型クレジット」または「低金利ローン」等を用意しているのです。とは言え、普通車・軽自動車共通して新車の価格が高騰したのが新車の売れない原因かと思います。ちなみにホンダのNシリーズ、ザッツと同じ軽トールワゴンの「N-BOX」は最低グレードで「119万円」カスタムになった場合の最低グレードは「148万円」と「本当に軽自動車の価格?」と感じるほど高額になっています。

ではホンダのザッツはどうだったのでしょうか?

ザッツの最低グレード、つまりターボが付いていないNA・FFの場合「89万9850円」ターボを搭載したFF車両でも「116万9000円」と言う低価格を実現していました。この価格が功を奏したのか2004年10月には前年比の2倍を超える売上を実現しています。この価格帯であれば老若男女問わず「最低グレードが100万円を切っているなら…新車で購入しようかな!」と感じる値段になるでしょう。とは言え、現在の軽自動車は「ラグジュアリーカー」として押し出しているため、ザッツのような低価格で利便性のある軽自動車はホンダから出てこないでしょう。

ザッツのここが残念!魅力を下げるポイントとは?

高回転まで回るが3速ATが非常に残念!

ホンダのザッツは例えターボが搭載されていても、ホンダ車の楽しみである「回す楽しみ」がある軽自動車です。しかし回す楽しみを半減させるものがあります。それが「3速AT」です。

加速を行う際にザッツのエンジンは「ここまでパワーを絞りだせるんだぞ!」と言わんばかりに高回転エンジンが踏ん張り、70~80kmまで2速で加速していきます。その際、現在の軽自動車の中にもありますが「もう限界だ!アクセルを踏むのを止めてくれ!」と言う悲鳴が聞こえるようなエンジン音はせず「まだまだ余裕だ!」と言っているかのように余裕があります。そのため意外とAT3速であっても気にならないと言う方もいます。

ですが、やはり4速・5速ATのような余裕がなく3速に入ると徐々に3気筒エンジンのけたたましいエンジン音が車内に響き渡ります。また3速から2速に落ちていきますと後ろから小突かれたような衝撃が襲います。もしザッツが4速ATや5速ATであればけたたましいエンジン音もなく、そして衝撃も無く緩やかに変速していくと感じます。コストの関係上仕方なかったと思いますが、乗り心地やエンジン音が気になる方にとっては残念なポイントです。

後部座席の居住性はおすすめできない

ザッツは特徴のところでも紹介したように視覚的に広さを確保しているため、運転手含め4人乗車しても快適かと思われます。しかし残念ながら後部座席の居住性はあまりおすすめできません。と言うのも後部座席に問題があるからです。

普通車や現在の高価格帯の軽自動車であれば、後部座席のシートにも力を入れているため座り心地抜群です。一方、ザッツはコストを抑えているからかどうしてもシートが薄く感じてしまい、シートに座っているのか板に座っているのかと感じるほどです。後部座席のシートをバックしようにも殆ど進まず、現在ある足のスペースで頑張るしかありません。極め付けがヘッドレストです。普通なら調整できますが、そのまま抜けてしまいます。

そのためお世辞にも後部座席の居住性はおすすめできないのです。

ホンダザッツは何かに似ている?似ていると言われた車種とは?

ホンダから販売されていたザッツは一時期「あれ? あの車と似ているな…」と感じさせる車でした。その車種と言うのが上記の写真1枚目の「トヨタ bB」写真2枚目の「日産 キューブ」になります。

トヨタbBが発売されたのが2000年の2月3日になります。当時のトヨタはトールワゴンタイプの車種が殆ど無かったため、どうなるか検討も付きません。しかし蓋を開けてみれば大盛況でありボックスタイプのトールワゴンを求める若者やファミリー層から多大な評価を受けました。好評もあって現在も2代目bBがトヨタで販売を継続しています。そしてもう1つ、日産キューブも初代が1998年2月から販売されこちらも同様に多くの支持を受けることになりました(ちなみに写真は2代目キューブになります)

トールワゴンの市場が活気に満ち溢れたところに、ホンダがザッツを投入したのです。見た目からして似ていると言われますが、果たして本当にホンダがbB・キューブを模したのか不明です。

ホンダザッツ惜しまれつつ販売終了!後継はどの車に?

ホンダのザッツは低価格ながら利便性もあり多数の支持を獲得する人気車種になりました。しかしホンダザッツも別れの時が近づいてきました…。初めに2006年3月のことです。マイナーチェンジにより「ターボモデル」の販売を終了。そして同時にザッツの後継車となる「ゼスト」の販売を開始したのです。ゼストの販売に伴い、徐々にホンダのザッツの存在意義がなくなり始め遂に2007年9月に生産終了となりました。在庫車の販売が終了したのが同年11月。これをもってホンダザッツは消滅しました。

後継車となったゼストでしたが、こちらもザッツと同じように新しく「Nシリーズ」が出現したことによって「これが無くても大丈夫では?」と思われ存在意義が無くなっていきました。そしてザッツと同じく2012年6月に消えてしまったのです。ホンダザッツ、そしてゼストは同じような形状で誕生し同じように消えた少々可愛そうな車種です。

ザッツの中古車情報

ホンダの中でも大人気とはいかなかったザッツですが、その中古車を探してみたい方もいらっしゃると思います。そんな方のために下記にリンクを貼っておきますので是非ご確認ください。

中古車をお探しの方はこちら

最後に

最後になりますが、悲しい運命を辿った2台ですが現在も街中では価格の安さ・利便性の高さがユーザーの心を惹きつけ愛用している方々がいます。残念ながら新車では購入できず中古車のみですが、もし低価格で軽のトールワゴンを探しているのであればホンダのザッツを検討されてみてはいかがでしょうか?