【ランボルギーニ ムルシエラゴ】コウモリの翼のようにドアを広げるモンスター

「ランボルギーニ ムルシエラゴ」は、アウディ傘下になった後の1thモデルです。今回は、特性としてはアウディ色は薄いランボルギーニの闘牛のようなモンスター性が色濃く残ったポテンシャルに迫ってみたいと思います。

ムルシエラゴ=「コウモリ」

「ランボルギーニ ムルシエラゴ(Murciélago )」は、イタリアの高級スポーツカーブランドの「ランボルギーニ社」が2001年から2010年にかけて製造したスーパースポーツカーです。「ムルシエラゴ」はスペイン語で「コウモリ」の意味があります。

新たな「ランボルギーニ」の1thモデル

「ランボルギーニ ムルシエラゴ」は、ランボルギーニ社がアウディ社の傘下に入った後に発売された最初のモデルです。モデル系統としては、「ランボルギーニ ディアブロ」の後継モデルとなるフラッグシップスポーツカーにあたります。登場は、2001年のフランクフルトモーターショーで発表され、同年秋から市販化されています。「ムルシエラゴ」の車名の由来は、これまでの過去のランボルギーニ車の伝統にならい、19世紀に実在した伝説的な闘牛の名前から取られています。ガルウィングドアの特徴的なボディを持っていますが、ボディスタイリングは当時ランボルギーニのデザイン部長であったルク・ドンカーヴォルケ氏が担当しています。

先代「ディアブロ」に比べて

アウディ社に買収された1thモデルであるにも関わらず、親会社であるアウディ社の影響が少ないモデルです。後に発表される「ランボルギーニ ガヤルド」はアルミ製スペースフレームに、アウディ社の設備を利用して設計されたエンジンを搭載する仕様ですが、「ムルシエラゴ」はアウディ社に買収される以前に設計した「ディアブロ」の構造的特徴の多くを受け継いだモデルとなっています。
ボディは角断面を持つ「鋼管スペースフレーム」が採用されています。そして外部からの応力をほぼ全てシャシーによって負担する構造となっています。シャシーの大部分はスチール製ですが、フロアパネルなどはカーボンファイバー製となっています。また、ボディパネルにもカーボンファイバーが採用されています。剛性を図り、ルーフと左右のドアにはスチール素材が使われています。新たな素材を多用したことで、「ディアブロ」より全長が約100mm延長されているにも関わらず、乾燥重量は1,650kgと同レベルなっています。またエンブレムは装着されていませんが、ドアのサイドシル部分に「MURCIELAGO」のロゴが刻まれています。さらにガルウイングドアの上昇量を増やし、開口部を広くすることで、「ディアブロ」に比べ乗降性も向上しています。空力面では、高速域での安定性を確保するため、電動可動式ウイング、サイドインテークが装着されています。

美しい闘牛に与えられた心臓

搭載エンジンは新規設計されたものではなく、「ディアブロ」に使用されていたエンジンが採用されています。アルミダイキャストの60度V型12気筒DOHCエンジンのチューニング型を搭載しています。このエンジンはランボルギーニ社の伝統のエンジンで「カウンタック」から「ディアブロ」まで受け継がれてきた基本設計を持つエンジンです。「ディアブロ」の最終生産型である排気量6.0L V12型エンジンの「ディアブロ 6.0SE」のものに基本ストロークを延長し、排気量を「6.2L」に引き上げています。また「ディアブロ」のエンジンと比較して、素材見直しによるムービングパーツの軽量化も行われています。最高出力は、約600PS、最高トルクは、66.3kgmを発生します。

パワートレインの見直し

パワートレインの配置は、「カウンタック」から「ディアブロ」を経て受け継いだもので、運転席と助手席の後ろに置かれたエンジンの強力なパワーを運転席と助手席の間のセンタートンネルに置かれたトランスミッションを経由した上で後輪に伝えられる設計になっています。しかし、新たに潤滑方式をドライサンプにすることによって、エンジンの搭載位置を50mm下げています。そしてドライブシャフトをディファレンシャルギアごと車体右側にずらして設置されています。トランスミッションは、先代「ディアブロ」の5速から6速に変更され、後に「e-gear」と呼ばれるセミオートマチックトランスミッションが追加されました。

駆動配分を常にコントロール

「ムルシエラゴ」は駆動方式が4WDのみの設定になっています。そして「ムルシエラゴ」の4WDは比較的簡易な構造を持つビスカス式センターデフを持つものであり、動作制御もディアブロが姿勢を崩した時に効果を発揮する仕様でしたが、「ムルシエラゴ」の4WDシステムは、通常でも前輪にも積極的に駆動力を配分するものに変更されています。

燃費も超ド級

「ランボルギーニ ムルシエラゴ」は、アメリカ環境保護局とエネルギー省が毎年発表する燃費ワーストランキング2010年では、MT仕様が市街地燃費で3.4km、高速燃費が5.53kmとなりワースト1位に選ばれています。またAT仕様も3位に選ばれ、ランボルギーニは4年連続1位となりました。燃費など気にせず「ムルシエラゴ」を本当に好きな人だけが所有できるスーパーカーなのです。

「ムルシエラゴ」主要諸元

エンジン:6,193cc V型12気筒 DOHC 48バルブ
最高出力:580PS/7,500rpm
最高トルク:66.3kgm/5,400rpm
トランスミッション:6MT
駆動方式:フルタイム4WD
サスペンション:F/R 独立懸架、ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:4,580mm
全幅:2,045mm
全高:1,135mm
ホイールベース:2,665mm
車両重量:1,650kg
0-100km/h:3.8秒
最高速度:330km/h
価格:2,550万円

「ロードスター」バージョン

「ムルシエラゴ」発売の約2年後2004年3月にジュネーヴモーターショーにて「ムルシエラゴ・ロードスター」が発表されました。

高速クルージングでもオープンを推奨

「ロードスターバージョン」は、ルーフをカットし、ソフトトップの幌を付加したオープンモデルです。ルーフをカットしたことによる剛性低下を補うためシャシーが補強されていて、エンジンルーム上部には、クロスメンバー状の補強フレーム(オプション設定で、スチールからカーボンファイバー製に変更可能)が装着されています。「ランボルギーニ社」によると、ソフトトップは悪天候時の非常用として位置づけられているものです。それで、高速走行時でもオープンの状態で走ることが推奨されています。

「ムルシエラゴ」のバリエーションモデル

「ムルシエラゴ」は、「ロードスター」だけでなく発売後にボディデザインの異なるモデルを幾つも発表しています。

ステルス戦闘機「レヴェントン(Reventon )」

2007年フランクフルトモーターショーで初公開され、世界20台限定で販売されました。また21台目は、「ランボルギーニ・ミュージアム」に展示されています。価格100万ユーロ(日本円で約1億6000万円)と設定されていました。貴重な「レヴェントン」は日本国内には、1台が輸入されています。
「レヴェントン」は、「ムルシエラゴ」をベース車両とし、車名の由来はドン・ロドリゲス家が所有していた闘牛の名前から取られています。デザインのモチーフは「ステルス戦闘機」で、フロント周りやリアのデザインは、後に発表された「ムルシエラゴ」の後継モデルである「アヴェンタドール」が採用しています。実質的に「アヴェンタドール」のデザインスタディモデルになりました。
エンジンは「6.5L V型12気筒 DOHC 48バルブ NAエンジン」で最高出力は650PS以上を発生し6速eギアのトランスミッションでコントロールします。
2009年フランクフルトモーターショーではロードスターバージョンが公開されました。クーペバージョンとの違いはリア部分のブレーキランプの数程度でほとんど変わりはありません。

「LP640」

2006年3月に発表されました。ベースとなる「ムルシエラゴ」よりハイパワーなエンジンを搭載し、エクステリア、ギヤボックス、トランスミッション、電子系にも改良が施されたモデルです。LP640における「LP」はエンジンの後方搭載を意味する「Longitudinale Posteriore (後方縦置き)」の略で、「640」は最高出力(640PS)を意味しています。価格は3,800万円です。

「LP640ヴェルサーチ」

2006年10月には、ファッションブランドの「ジャンニ・ヴェルサーチ」とのコラボレーション企画として、ヴェルサーチのデザイナー陣が各種インテリアを手掛けたモデル「LP640ヴェルサーチ」発表されました。パステルホワイトのボディや「ヴェルサーチ」デザインのオシャレなインテリアが際立っていました。価格は、5,000万以上というプライスでした。

史上最強の「ムルシエラゴ」

2009年3月に全世界350台限定生産される「LP670-4 SV(スーパー・ヴェローチェ)」を発表しました。バルブ・タイミングの最適化、インテーク・システムの見直しによって、車名で表す670PS馬力を発揮し、新たなフロント、リヤエンド、エンジンボンネット、2タイプのリヤスポイラーを選択可能とし空力性能が向上しています。高速時のダウンフォースを改善した小型、オプションとして、大型で固定タイプのカーボンファイバー製リヤスポイラー「エアロパック・ウイング」が用意されていました。ボディには、軽量な素材とハイテクなカーボンファイバーが使用され、シャーシ、エンジン、トランスミッションを始めとして見直され、インテリアはアルカンタラを採用しています。スポーツバケットシートの採用とオーディオ/ナビゲーションシステムを廃止(日本仕様はナビゲーションが標準)など徹底した軽量化が図られていて100kg軽量化を実現し車重は1,565kgです。また4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションは、標準装備されたリフティングシステムで、フロントエンドを45mm持ち上げることが可能です。ブレーキには標準でカーボンセラミックディスクブレーキが採用され、専用の5ツインスポーク・デザインを纏った「Ares」合金鍛造ホイールと前後異サイズ「ピレリP Zero Corsa」ハイグリップタイヤが標準装備されています。

「LP670-4 SV(スーパー・ヴェローチェ)」主要諸元

エンジン:6,496cc V型12気筒 DOHC 48バルブ
最高出力:670PS/8,000rpm
最高トルク:67.3kgm/6,500rpm
トランスミッション:6ATeギア
駆動方式:フルタイム4WD
サスペンション:F/R 4輪ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:4,705mm
全幅:2,058mm
全高:1,135mm
ホイールベース:2,665mm
車両重量:1,565kg
0-100km/h加速:3.2秒
最高速度:342km/h
価格:4,600万円

レーシングモデル

「R-GT」は、2004年にデビューしたレース仕様です。FIA GT選手権へ参戦するために製作されたモデルで、オールカーボンのボディ、強力なダウンフォースを生む空力パーツなどが装着されているものの、基本的には市販車の仕様となっています。FIA GT選手権では、デビューレースの第1戦(バレンシア)で表彰台に上るなどの戦績を残しています。
「RG-1」は、ランボルギーニが全日本GT選手権に参戦するJLOCに製作したモデルです。2004年の第2戦から登場しました。ベースモデルは、「R-GT」で多くのパーツが特注品です。2005年途中からGT300クラスに移り、2006年の第1戦で優勝しています。「ムルシエラゴ」として世界でのレース活動において初優勝でした。その後も毎年表彰台に上がるなどコンスタントに成績を残しています。
「R-SV」2010,2011年にFIA GT1世界選手権に投入したモデルです。2010年の第5戦スパで初優勝、2011年は第2戦ベルギー(ゾルダー)と第6戦スペイン(ナバラ)での2勝を挙げました。

まとめ

「ランボルギーニ ムルシエラゴ」は、アウディ傘下となっての1thモデルでしたが、「ランボルギーニ社」最後のモデルと言っていいほどランボルギーニの伝統やパーツを継承したモデルでした。インパクトのあるデザインにハイパワーエンジンによって最終モデルでは、最高速度350km/hを可能とするポテンシャルを秘めたスーパーカーなのです。