【ダイハツ タントエグゼ】広いタントは上質なエグゼへ!タントエグゼとはどんなクルマ?

タントは大きな軽自動車として販売され人気に。その室内空間の広さでより良い快適性を手にすることになりました。でも、快適性=広さではない。もっと質感としての快適性を追求できないか?タントの広さに質感をプラスして、更に快適な軽自動車となったタントエグゼ。それまでのタントとはどこが違うのか?

広がる軽自動車の室内空間

狭い軽自動車からの脱却

軽自動車と言うのは大きさに決まりがあります。
・全長 3.40m以下
・全幅 1.48m以下
・全高 2.00m以下
それ以外には「排気量660cc以下」「定員4名」「貨物積載重量350kg以下」と、なっています。

この制約の中で軽自動車は作られており、既に全長・全幅という水平方向に関しては、規格ギリギリの大きさになっています。
そこで着目されるのが全高。軽自動車に限らず、普通自動車においても全高2.0mというのはかなり大きさ。この垂直方向に車体を大きくすることで、より自由な座席の位置決めが可能になり、その結果として室内の広さを確保することに成功します。

その成功例と言えるのが、スズキのワゴンRです。今ある軽ハイトワゴン人気の基礎を築いたクルマとも言えます。
バブル崩壊後の不景気の中での発売開始でありながら、たちまち人気車種に。生産ラインを増設しなければならないほどの販売台数を記録し、現在でも好調な売れ行きを見せています。
その後ダイハツのムーヴなど、各自動車メーカーがこのワゴンRに対抗する車種を投入。かつての狭苦しい軽自動車というイメージは消えていきます。

ワゴンRが販売されてから10年後、ダイハツからタントが登場。ワゴンRなどの軽ハイトワゴンを超える、軽スーパーハイトワゴンの時代が始まります。
当初は横方向への安定性が不安視され、ユーザーからは戸惑いの声があったものの、その後は順調に販売台数を伸ばしていきます。今ではワゴンRの販売台数を抜き、軽自動車市場を牽引するまでになりました。

現在では軽スーパーハイトワゴンであるタントよりも、更に大きなダイハツのウェイクが登場。より広い室内空間を求め、更に全高が高くなりました。

ただ大きくするだけではない

車体を大きくすれば、車内が広くなる。これは当たり前の話です。車体を大きくすることが軽自動車にとって良いことなのか?

答えはNOですね。
車体が大きくなったら、その分車両重量は重たくなるんですから、燃費も含めた運動性能が低下してしまいます。スポーツカーでなくとも、ある程度の運動性能と言うのは必要なこと。かつてのタントのように横方向の不安定感などがあってはユーザーとしては困ります。そもそも全てのユーザーが大きな軽自動車を求めているわけではありません。小さくても快適な室内空間を確保した軽自動車を求めているユーザーだっているはずです。

例えばダイハツのミラ イースなどはそうです。ミラの小さな車体であっても、後部座席の足元空間はしっかりと確保されており、座るときの窮屈な感覚はありません。

ワゴンRのように成功した軽自動車というのは、ただ単純に車体を大きくしたものではありません。
座面が高くなった見晴らしの良い座席に、車内空間における座席の配置…。あくまでも全高を高くするのは、座ったときの快適性を求めた為であり、単純に全高を高くしたからと言って快適な座席とはなりません。

タントに「上質さ」を追求した エグゼ

使い勝手よりも、快適性の追求

タントは広い室内空間で座席での快適性を獲得しました。しかし、座席での快適性=室内空間なのでしょうか?
天井こそ低いですが、ミラ イースの後部座席も足元が広くて快適と言えます。広い方が良いという人もいますが、広さ=快適性というのであれば最終的にはミニバンがもっとも快適なクルマに。高級セダンの座席はミニバンの広々とした室内空間の中にある座席に劣るのでしょうか? クルマの座席に求められることと言うのは広さだけではないはずです。

軽自動車では広さばかりに着目されていましたが、そこに「質感」という考えを取り入れたのが、タントをベースとした「タントエグゼ」です。

タントの座席と言うのは、シートアレンジを考慮しての設計になっています。シートアレンジによる使い勝手の良さを得ましたが、その変わりに座席の座り心地を損なうことになりました。「人が座る座席」としての出来は中途半端な仕上がりだったと言えます。

エグゼでは、その座席を「人が座る」ということに重きを置きました。より座り心地の良い座席を採用しています。タントではその広い車内空間を「シートアレンジによる荷物の積み易さ」という使い勝手の良さに割り振られましたが、エグゼは「広い室内空間+座り心地の良い座席」による更なる快適性を追求したスタイルになりました。

スライドドアは採用せず

タントでは2代目以降からスライドドアを採用していましたが、エグゼでは従来通りのヒンジドアになっています。
近年ではスライドドアの車種が人気です。乗り降りし易いというのがその理由では無いでしょうか。ヒンジドアでは、その開閉方向の先にある障害物が気になりますが、スライドドアならその心配は無用。そういう意味では、ドアの開閉動作は簡単であると言えます。

しかし、スライドドアというのは重量が増加します。ここに電動パワースライドなどを搭載すれば更に重量増加につながり、燃費にも影響がでることも。
エグゼではヒンジドアを採用したことで、ベースとなるタントに比べて60kgも軽量。専用のエンジンセッティングを施したこともあり、タントよりも燃費は向上しました。

短い期間で生産終了に

タントエグゼの販売期間は2009年12月から2014年10月。4年9ヶ月というかなり短い販売期間でした。タントそのものは人気車種であったにもかかわらず、なぜエグゼはこのようなことになったのでしょうか?

スライドドアのほうが人気だった

スライドドアを搭載したタイプのほうが人気だったと言うのもエグゼの販売不振の要因と言えます。ユーザーのスライドドアというニーズに答えられなかったということ。

単純に考えれば簡単…ではありますが、なぜスライドドアでなければならないのか?

私が考えるには、タントが「ファミリカー」としての需要が高かったというのがその原因ではないかと思います。つまりは小さなお子さまが居るというユーザーの存在です。なぜお子さま=スライドドアなのか?

「スライドドアというのは、開閉時に障害物を気にしなくても良いと言うのが利点。それに対してヒンジドアは開閉時に横にある障害物に気をつけなけばならない。」これは既に述べたとおりです。ここにお子さまが開閉動作を行うと言う条件が加わると、更に厄介なことになります。
お子様が勢いよくドアを開けてしまうと言うこともあります。強風が吹く中での開閉は大人でも事故になることがあります。それをお子さまにさせると言うのは更に危険が伴うことになります。ドアに手を挟まれるかもしれません。

ではスライドドアならその様な事故は起きない…というわけではありませんが、スライドドアなら「電動化」が出来ます。
電動スライドドアやパワーウィンドウというのは電動モーターによって駆動しています。使うユーザーからすれば「力を使わなくても開閉できるから便利だな~」なんて思っていることでしょう。クルマに限らず、電車にエレベーターに商店に…あらゆるところで自動ドアが採用されています。
これらの自動化には利便性と並行して安全性も求められています。つまり挟み込み防止機構のことです。モーターの力で駆動するので、ただ単純に開閉を行うだけの電気回路では、その間に挟まれたときに重大な事故につながります。なので、これらの自動開閉機構を持つものは、挟み込みを検知すると自動開放されるか、挟み込まれても強い力が加わらないような安全に配慮した構造になっています。

対してヒンジドアはどうか? 強風でドアの開閉が上手くできなかったことありませんでしたか? 不注意で挟み込みをしたという経験はありませんか?
大人の手であればちょっとした怪我でも、お子さまの小さな手の場合はより重大な結果になる可能性があります。

スライドドアは電動モーターを搭載することで、利便性と同時に一定の安全性を確保することができた。この事がお子さまを持つ家族向けのファミリーカーとしてタントが受け入れられる一方、それを持たないエグゼではその様なニーズを持つユーザーには受け入れられなかったのではないかと思われます。

「タントエグゼである必要性」が欠けていた

スライドドアはファミリーカーとして欲しい機能だとしましょう。しかし、全てのユーザーに小さなお子さまがいるわけではありません。
後部座席はお子さまの指定席ではありません。別に後部座席に大人が座っても良いわけです。大人が使うことをメインとして考えた場合であれば、エグゼを使うのは全く問題ないはず。なにがダメなのか?

エグゼがダメというわけではありません。「エグゼである必要性がない」という話になってしまうのです。上質な座席を望むと言うのであれば、タントカスタムという選択肢もあるでしょう。

「スライドドアは不要だ!」というのであれば、ムーヴカスタムを選べばいいのです。

エグゼはタントカスタムとムーヴカスタムの中間に位置するクルマになっていました。「タントからスライドドアを外して、座席の質感をアップさせたモデル」なんですが、別の言い方をすれば「タントカスタムからスライドドアを外したクルマ」「ムーヴカスタムを少し大きくしたクルマ」となります。
これではあまりにも中途半端と言えます。「タントカスタムからスライドドアを外しました!」と言われて、その事に大きな魅力を感じるでしょうか? 「ムーヴカスタムをタントサイズにしました!」と言われても、ムーヴの大きさで満足しているユーザーが乗り換えるわけでもありません。

同じメーカー内で競争しあう状態に

「タントエグゼである必要性がない」と言うことに加えて、特にムーヴカスタムとの差別化ができなかったことが問題でした。

「ムーヴカスタムをタントサイズにしました!」というのでは、差別化されているとは言い難いです。ユーザーからすれば「いや、別にムーヴカスタムで満足だし…」「タントサイズなら、スライドドア付いたタントカスタムで良いし…」「ヒンジドアで軽量化されて、燃費が良い? それなら同じヒンジドアで車体も一回り小さいムーヴカスタムの方が燃費では有利だし…」とまぁ、エグゼを選ぶ理由に苦慮するわけです。

当然、このエグゼを生産・販売しているダイハツも苦慮します。あまりにも販売ターゲットが小さすぎます。「大きさはタント」「座席は良質」「スライドドアはいらない」「タントよりも燃費が良い」というクルマを求めるユーザー…居ますかねぇ?
エグゼから大きさを取り払ったら、それはムーヴカスタム。座席から質を取ったら、それはタント。スライドドアを付けたら、それはタントカスタム。燃費を気にしない…タント…。

競合他社とのシェアの奪い合いをしている中で、更に自社内で奪い合いをしても美味しいことなんてありません。
仮に「タント・ムーヴ」の2種生産と「タント・ムーヴ・エグゼ」3種生産で、双方の合計の販売台数が同じで、それによる売り上げも同じだとしましょう。エグゼを作る分、生産ラインを確保しなければなりませんし、エグゼ専用の部品も調達しなければなりません。エグゼを作った分コストがかかるわけです。
そのコストを考慮しても、エグゼの販売台数が十分であれば問題はありませんが、実際にはムーヴと競合してしまって、ムーヴから販売台数を奪うだけの状態で、トータルでの販売台数は変わりが無い。そうなれば、生産ラインが1本多く稼動してる分、生産コストの面で利益が減ってしまいます。

このような理由から、より効率よく利益が得るためにタント・ムーヴの生産を重視し、エグゼは生産ラインを閉じることになりました。

まとめ

いかがでしたか?

タントエグゼ自体は悪いクルマではなかっただけに、その生産終了を惜しむ声も少なからずありました。その結果でしょうか? 「2015年中にエグゼが復活する」という噂がありました。が、実際のところその様なことは無く2016年を迎えてしまいました。
もし仮に復活するのであれば…タントがフルモデルチェンジを迎えたときでしょう。現行の3代目タントが販売されたのは2013年です。フルモデルチェンジ…するには少々早いかもしれませんが、全くありえないと言う話では無いはず。
しかし、エグゼ復活となったとしてもムーヴとは競合しないようにしなければ…また同じ結果になりかねない…その様な差別化が可能なのでしょうか?

タントはムーヴやキャストのような幅広いシリーズ展開はしていません。タントのフルモデルチェンジの際には、エグゼが復活するかにも注目したいところです。