「トヨタ スターレット」元祖「ホット・ハッチ」は、走り屋小僧御用達

「トヨタスターレット」は、1thモデルからコンパクト・ホット・ハッチとしてスポーツ性に優れ、モータースポーツ、ストリートは峠や埠頭で大人気モデルとして走り屋小僧御用達モデルでした。その魅力に迫ってみたいと思います。

元祖「ホット・ハッチ」

1973年にトヨタのコンパクトカー「パブリカ」の上級派生モデルとして登場しました。1thモデルは、ファストバックボディの2ドアと4ドアのスタイルで、2thモデルから3ドアと5ドアのハッチバックボディのスタイルとなっています。2tn、3thモデルには商用車のバンスタイルも存在しました。2thモデルは、型式名称「KP(ケーピー)」などと呼ばれストリートで人気を博しました。駆動方式がFF(前輪駆動)化した3thは、ターボチャージャー付きエンジンを搭載し、「韋駄天」「かっ跳び」など走りのコンパクトカーとして人気になりました。

初代は、純「スターレット」ではなかった

「スターレット」は、1973年4月に2代目パブリカのスポーティーな上級シリーズとして、「パブリカ・スターレット」の名称でデビューしています。「フリーチョイスシステム」を採用しエンジン、内外装色、トランスミッション、外装の他、内装の材質、装備など、ある程度自由な組み合わせが可能で、ユーザーが自分の好みに合わせられるという販売システムが採用されていました。

1th「KP45/KP47」「KP51」

「トヨタ・スターレット」としてパブリカシリーズから独立したモデル名となったのは、ボディスタイルが直線的なエクステリアデザインの2ドアのファストバッククーペモデル(1,000cc KP45/1,200cc KP47)、4ドアモデル(ファストバックセダン、1,000cc KP40/1,200cc KP42)が追加された1973年の10月でした。マイナーチェンジが行なわれた1976年2月、排出ガス規制のために1,000ccとツインキャブ仕様は廃止され、1,200cc シングルキャブ仕様/64PSのみとなり、型式もB-KP51となりました。

パワーユニット「2K型/3K型」

搭載されたパワーユニットは、パブリカと共通の1,000ccエンジン(2K型)と1,200ccエンジン(3K型)の2タイプでした。1,200ccエンジン(3K型)にはシングルキャブ(68PS)とツインキャブ(74PS)の2タイプが設定されていました。

モータースポーツ

モータースポーツでは、サーキットレース、ラリー、ジムカーナ、ダートトライアルなどに広く活躍しました。「TS(マイナーツーリング)レース」では日産「サニー(B110型)」、ホンダ「シビック(SB1型)」とライバルになりツインカム仕様で180PS以上のスペシャルエンジン「3K-R」などが開発されたりしています。TRDからは各種の競技用パーツが市販されるほどの人気ぶりでした。また1981年から開始された「スターレットカップ」シリーズは、日本初のワンメイクレースで2000年に「ネッツカップ ヴィッツレース」シリーズになるまで開催されていました。

1th「KP47」主要諸元

エンジン:1,166cc 水冷 直列4気筒 OHV(3K-BR型)
最高出力:74PS/6,600pm
最高トルク:9,5kgm/4,600rpm
トランスミッション:4速MT
駆動方式:FR
サスペンション:F ストラット R リジット/リーフ
ブレーキ:F ディスク R LTドラム
全長:3,790mm
全幅:1,530mm
全高:1,310mm
ホイールベース:2,265mm
車両重量:755kg

2th「KP61」

2thモデルは、1978年2月に登場しています。ボディは2ボックスボディーのハッチバックスタイルとなりました。通称「1300スターレット」「KP61」と呼ばれています。10月5ドアバンモデル(KP61/62V)が追加されています。1979年3月4K-Uエンジンの改良が行なわれ、燃費、ドライバビリティーが向上しました。1980年5月マイナーチェンジが行なわれました。「中期型」モデルは、ヘッドランプが前期型の丸型2灯から角型2灯に変更されました。またフロントサスペンションのオフセットコイルスプリングが採用されました。1981年8月「中期型」のマイナーチェンジとなりました。吸気系統が変更され、運輸省届出型式は4K-Uのまま、カタログ表記が「LASRE 4K-II」 に変更されました。1982年8月「後期型」へ マイナーチェンジされコーナーマーカーがヘッドライトの外側に付きました。またインパネのデザインが大幅に変更されています。EFI仕様の「4K-EU型」搭載車も設定され、全グレードの駆動系を強化しています。

パワーユニットの出力アップ

「KP61」型に搭載されているエンジンは「KP47」モデルの3K型をベースに排気量をアップした「4K型エンジン」で、最高出力は72PSへ向上しています。しかも同時期のライバルはFF駆動化が進みましたが「KP61」は、FR駆動でデビューしました。新開発されたのは、シャシーです。そしてブレーキは同クラスで初めて全グレードにフロントディスクブレーキを標準装備したモデルになりました。サスペンションは、リアアクスルは固定車軸ながら、4リンク/コイルスプリングに変更されています。またロック トゥー ロック3回転のラックアンドピニオン式ステアリングギアボックスが採用されました。

幅広いグレード設定

グレード設定は、「SE」、「S」、「XL」、「DX」、「スタンダード」です。木目調インテリアやヘッドランプクリーナーなど最高グレードが「SE」、スポーツバージョンが「S」、標準的な装備の量販グレード「XL」、ベースグレードが「DX」、廉価版が「スタンダード」となっています。また「後期型」では電子燃料噴射方式(EFI)仕様の「Si」「SE-EFI」「XL-EFI」が追加されました。「カモシカ風」のエンブレムが付いている最後のモデルです。

「ラリーの神様」起用のTVCM

「KP61 スターレット」のイメージキャラクターは、トヨタのWRC参戦やトヨタF1の初代代表を務めた「オべ・アンダーソン」氏でした。TVCMやカタログでは「悪魔のはしご段」と呼ばれる秘境のラリーステージを「オべ・アンダーソン」のステアリングで華麗なドリフトで駆け抜けるというものでした。CMには、「ラリーの神様」と歌われていました。

峠小僧御用達

「KP61 スターレット」は、1980年代から1990年代にかけてアフターパーツが豊富に市販されたことから、競技用として普及し、サーキットレースやラリーで活躍しました。またチューニングカーベース車両として好まれし、峠小僧や環状族などストリートでも大人気でした。また、ストリートでは、エンジンを直立セットしたり、レスポンスを重視して「SOLEX」や「WEBER」などのレーシングキャブレターへの変更、トルク重視の「5K」「7K」の腰下ブロックを使った排気量アップ、高回転仕様のスタンダードなボアアップのチューニングが流行りました。また1,600ccのAE86、AE92のツインカムエンジンの「4A-GE型」に換装する改造も流行しました。このチューニングもNA派、AE92のスーパーチャージャー仕様、ターボキット組み込み仕様など多岐にわたります。「4K型 エンジン」は耐久性やポテンシャルも高くチューニングすると、古典的なOHVエンジンでありながら、高回転の10,000rpmオーバーまで回っていました。足回りもAE86用を流用してコーナリング性能、ブレーキ性能を高めるチューニングも流行りました。「KP61 スターレット」は、ホイールベースも短くドリフトしやすいため峠小僧に愛されストリートでも活躍しました。また、その素性の良さから2005年から岩井照宜がD1グランプリで使用していました。

2th「KP61」主要諸元

エンジン:1,290cc 水冷 直列4気筒 OHV(4KU型)
最高出力:72PS/5,600rpm
最高トルク:10,5kgm/3,600rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:FR
サスペンション:F ストラット R 4リンク/コイル
ブレーキ:F ディスク R LTドラム
全長:3,725mm
全幅:1,525mm
全高:1,370mm
ホイールベース:2,300mm
車両重量:710kg

3th「韋駄天」「かっ跳び」

3thモデルから「スターレット(P70型)」も駆動方式を横置きFFに転換して1984年に登場しました。ターボモデルには5ドアもあったが、販売台数は少ない。1985年1月には充実装備でお買い得価格の特別仕様車の「ソレイユ」が登場しました1986年1月「ターボ」105PSモデルが追加されました。1987年1月マイナーチェンジが行なわれ、ディーゼルが追加され、ターボ以外のモデルはバンパーが大型化されたり、フロントグリルの変更で外観が変わりました。1988年1月「ターボ モデル」がマイナーチェンジされ最高出力が110PSに向上しました。

「韋駄天エンジン」

3thモデルに搭載された1,300cc 直列4気筒 SOHC 12バルブ 2E型エンジンは、クロスフロー・バスタブ形燃焼室を採用していました。後期モデルでは、最高出力110PSとなり「韋駄天」「かっ跳び」などと呼ばれました。「FF化し前輪駆動となってからも、「Ri(自然吸気)」「ターボR」というモータースポーツ向けのグレードがありました。元々のスポーツグレードである「Si・ターボS」との違いは、無塗装のバンパー、廉価版の内装など競技車両への改造が容易になっていました。KP各型の後を継ぎ、サーキットレースをはじめ、ジムカーナやダートトライアルまで幅広い競技で活躍しました。ロントサスペンションは一般的なストラットですが、リアサスペンションは低コスト化が図られトレーリングツイストビーム(アクスルビーム)となっています。

3th「EP71」主要諸元

グレード:ターボS
エンジン:1,295cc 水冷 直列4気筒 ICターボ(2E-TE型)
最高出力:110PS/6,000rpm
最高トルク:15,3kgm/3,600rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:FF
サスペンション:F ストラット R トーションビーム
ブレーキ:F ディスク R LTドラム
全長:3,770mm
全幅:1,600mm
全高:1,380mm
ホイールベース: 2,300mm
車体重量:800kg

4th「GT ターボ」

4thモデルは、1989年12月に登場しました。衝突安全ボディー「CIAS(サイアス)」が採用されて安全性の向上が図られました。1990年8月4WDモデルが追加されました、またリアシート3点式シートベルトを全車にオプション設定され、4輪ABSが設定されました。1992年1月にマイナーチェンジが施されました。フロントバンパー、グリルの変更に加え「GT」、「Gi」、「S」、「Xリミテッド」にはバックドアにガーニッシュが追加されました。全車に運転席SRSエアバッグとABSがオプションで設定され安全性の向上が図られました。

高性能なエンジンと足回り

エンジンは1,300ccエンジンが、ハイメカツインカムII(DOHC16バルブ)になりました。最高出力はキャブレター仕様(4E-F型)で82PS、EFI(4E-FE型)が100PS、GTターボ(4E-FTE型)が135PS)です。またスターレット初の4輪ディスクブレーキをGTに搭載し、ABSのブレーキシステムもオプション設定されていました。エンジンが高性能になり、4輪ディスクブレーキ、ABSが装備されましたが、初期の「GT」はシャシーに対しパワーオーバーだったため、アンダーステアが過激な車でした。マイナーチェンジで足回りが見直され、ハンドリングもシャープな特性になりました。最終型では丸型ヘッドランプとなりスパルタンなホットハッチスタイルになりました。型式名は、FF駆動モデルは「EP82」、4WDモデルは「EP85」となっています。
有名なチューニングモデルとして「4WDモデル改FRドリ車仕様」が雑誌「ドリフト天国」によって制作されています。

4th「EP82」主要諸元

エンジン:1331cc 水冷 直列4気筒 DOHC 16バルブICターボ(4E-FTE型)
最高出力:135PS/6,400rpm
最高トルク:16,0kgm/4,800rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:FF
サスペンション:F ストラット(スタビ付) R トレーリングツイストビーム(スタビ付)
ブレーキ:F ベンチレーテッドディスク R ディスク
全長:3,805mm
全幅:1,620mm
全高:1,380mm
ホイールベース:2,300mm
車両重量:860kg

5th「グランツァ」

5thモデルは1996年に登場しています。衝突安全ボディ「GOA」、エアバッグやABS、シートベルトプリテンショナー/フォースリミッターを標準装備とし、安全性能の向上が図られています。1997年には、流行していたレトロ調モデルを追加するために、レトロ調のドレスアップモデルとして「カラット(Carat )」を追加しています。またすべてのグレードに自然吸気「TDI (Toyota Direct Ignition System) 」が採用されました。1998年にマイナーチェンジを行ない、フロントバンパーとテールレンズのウインカーレンズの変更をしています。1999年8月に後継モデルの「ヴィッツ」に1,300ccが追加され販売終了となりました。

マイルドな特性

エンジンは、「4E-FE型(1,331cc)」を搭載したNAモデル「グランツァS (Glanza S)」 、「4E-FTE型(1,331cc)」を搭載したターボモデル「グランツァV (Glanza V)」 がスポーツモデルとして登場しています。型式名はFFモデルは「EP91」、4WDモデルは「EP95」となっています。またターボモデルには本格的なスポーツ走行を目的とし、軽量化のために快適装備を省いたモータースポーツパッケージ 「MSP」 もありました。「EP91型」のターボモデルでは、安全性に配慮して駆動系の保護と過度のホイールスピンを防ぐために、1速(発進時)では過給圧を抑える機構が追加されています。また、任意でブースト圧を低く設定できる「ローモード・スイッチ」も装備されています。

5th「EP91型」主要諸元

エンジン:1,331cc 水冷直列4気筒 DOHC 16バルブ ICターボ(4E-FTE型)
最高出力:135PS/6,400rpm
最大トルク:16,0kgm/4,800rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:FF
サスペンション:F ストラット(スタビ付) R トレーリングツイストビーム(スタビ付)
ブレーキ:F ベンチレーテッドディスク R ディスク
全長:3,790mm 全幅:1625mm 全高:1,400mm ホイールベース:2,300mm
車両重量:950kg

まとめ

「トヨタ スターレット」は、21年に渡る歴史あるモデルで、常にモータースポーツを意識しストリートでも愛用されてきました。まさに「元祖 コンパクトハッチ」のモデルと言えるクルマです。