「フェラーリ F50」栄光と勝利が「幻」となった伝説の赤い跳ね馬

「フェラーリ F50」は、「公道を走るF1」というコンセプトをもとに開発された市販モデルのレーシングカーと呼ばれるフェラーリです。数々の「栄光」と「勝利」を目前にすべてが「幻」となってしまった悲運のサラブレッドです。そのポテンシャルに迫ってみたいと思います。

コンセプトは「公道を走るF1」

「フェラーリ F50(effecinquanta/エッフェチンクワンタ)」は、イタリアの高性能高級スポーツカーブランド「フェラーリ社」が創設50周年を記念して製作したスポーツカーです。「フェラーリ F40」の後継モデルになり、「F」は、ブランド名を意味して、「50」は、「フェラーリ創設50周年」から取られています。1995年から発売され生産台数は、世界限定349台です。開発コンセプトは「公道を走るF1」というものでエンツォ・フェラーリの息子であるピエロ氏の「F1のエンジンを積んだロードカーを創る」というシンプルなアイデアがきっかけとなっています。

作りは「F1マシン」そのもの

「フェラーリ F50」は、歴代フェラーリF1マシンの中でも最も美しいと評される「フェラーリ 641/2」をモデルデザインとして製作されました。シャシーへのエンジン搭載設計が一般車とは異なり、カーボンコンポジット製のセンターモノコックにF1用エンジンが剛結・ボディへ直にボルト止めされるストレスマウント化が採用されています。F1マシン同等の作りで高剛性シャシー構造は公道を走るモデルとして初めて採用しています。この構造ゆえに振動やメカニカルノイズが激しくなり、ドライビング時の快適性は考慮されておらず、ボディとシャシーは、本物志向の作りとなっています。ボディサイズは、全長4,480mm、全幅1,986mm、全高1,120mmでホイールベースは2,580mmになっています。コーナリング特性を図りトレッドは、 F 1620mm、R 1602mmとなっています。車両重量は1,230kg(乾燥重量)と軽量な車体です。

ユニットは、92年式「F1エンジン」

「フェラーリ F50」に搭載されているエンジンは、1992年のF1マシン「フェラーリ F92A」に搭載された4,698cc 水冷65度 V型12気筒 DOHC 5バルブ NAエンジンの鋳鉄ブロックを流用し、ピーキーな高回転型のエンジン特性をデチューンしF1では7速必要だったギアを6速にして使用回転域を広げマイルドな特性にしています。
とはいうものの「F1マシン」のエンジンは最高出力513PS/8,500rpm、最大トルク48,0kgm/6,500rpmを発生させるハイパワーユニットです。エンジンサウンドも「F1マシン」同等のNAエンジンらしい甲高いフェラーリサウンドを響かせています。

トランスミッション

F1マシン「フェラーリ F92A」ではトランスミッションは、7速セミオートマチックトランスミッションとなっていましたが、公道仕様にデチューンしている「フェラーリ F50」はフェラーリ伝統ともいうべき、ゲート式のマニュアルトランスミッションが採用され6速MTになっています。

サスペンションシステム

フロント、リアサスペンションもF1の作りを採用しプッシュロッド・インボード式ダブルウィッシュボーンが採用されています。 ブレーキは、ブレーキローターが「ブレンボ社製」ドリルドロータ(F 335mm、R 355mm)、F/R 4ポットキャリパーが採用されています。ホイールは、 F 245/35ZR18(8,5J)、R 335/30ZR18(13J)が採用され、タイヤはグッドイヤーの「GSフィオラノ・イーグルF1」が装着されました。

ボディデザイン

ボディデザインは、空力性能を図りつつも美しいシルエットを描いたボディラインになっています。ボディはルーフ部分を取り外しバルケッタ(オープン)にすることが可能です。しかし簡単に取り外しができるわけではなく取り外し、取り付けには、工場での作業が必要です。またバルケッタのときには雨をしのぐため簡易的なソフトトップが装備されています。インテリアはカーボンとレザーで製作され、エアコンもあり、インテリアは、若干の快適性も図られています。

まさにプレミア価格

世界限定349台が生産、販売、新車価格は日本円で5,000万円でした。現在では希少性価値としてプレミアが付いており、本来の価格よりも価格が上昇しており、どの販売車両も「ASK」となっている状態です。また日本における新車の購入条件は、「購入時にフェラーリを同時に6台所有していること」という条件がありました。そのため購入できたのは、わずかなフェラーリコレクターの方にしか渡っていないようです。

モータースポーツは?

モータースポーツ参戦記録としては、マカオグランプリの前座として開催されている「スーパーカーレース」で、ほぼノーマルの「フェラーリ F50」がマカオ市街地のグランプリコースを走りました。しかしモータースポーツの場においてF50が活躍する姿は残念ながら見ることはありませんでした。その理由は、「F50」のレース仕様の「F50 GT」が開発中止されたためでした。

「フェラーリ F50」主要諸元

エンジン:4,698cc 水冷 65度 V型12気筒 DOHC 5バルブ NAエンジン
ボア×ストローク:85mm×69mm
圧縮比:11,3
エンジン重量:198kg
最高出力: 520PS/8,500rpm
最大トルク: 48,0kgm/6,500rpm
トランスミッション: 6MT(ギア比 1速-6速:2,933-2,157-1,681-1,360-1,107-0,903)
駆動方式:MR
サスペンション:F/R プッシュロッド・インボード式ダブルウィッシュボーン
ブレーキ: ブレンボ製ドリルドロータ(F335mm、R355mm)前後4ポットキャリパー
タイヤ(ホイール):F 245/35ZR18(8,5J) R 335/30ZR18(13J)
全長:4,480mm
全幅:1,986mm
全高:1,120mm
ホイールベース:2,580mm
トレッド:F 1,620mm R 1,602mm
燃料タンク容量 105リットル
車両重量:1,230kg(乾燥重量)
最高速度:325km/h

先代モデル「F40」より速いのか?

「フェラーリ F40」VS「フェラーリ F50」
エンジン:V8ツインターボ = V型12気筒DOHC5バルブNA
最高出力:484PS/7,000rpm = 520PS/8,500rpm
最大トルク:58,8kgm/4,000rpm = 48,0kgm/6,500rpm
車両重量:1,100kg = 1,230kg
最高速度:324km/h = 325km/h

「フェラーリ F50」は、伝説の最速マシンといわれた先代モデル「フェラーリ F40」を超えたのか? と話題になりました。0-400m加速は、「フェラーリ F50」11秒109 「フェラーリ F40」11秒293という記録がありました。NAエンジンの「フェラーリ F50」がドッカンターボの特性を持つ「フェラーリ F40」にターボラグの差で勝利しています。サーキットで比較すると、「フェラーリ F40」は、テールスライドが激しく、路面がウェットだと「フェラーリ F50」に勝つことは難しいのではないかと思われます。「Ferrari F40 v Ferrari F50. Like You’ve Never Seen Them Before /CHRIS HARRIS ON CARS」という動画では、この2台が揃って走っている姿を楽しむことができます。

幻のレース仕様「フェラーリ F50 GT」

「フェラーリ F50 GT」は、フェラーリ社がFIA GT選手権やル・マン24時間耐久レース等のGT1クラスのカテゴリーに参戦するために製作された「フェラーリ F50」をベースに開発されたレーシングカーです。それまでBPRグローバル・エンデュランスGTシリーズ(FIA-GT選手権の前に行なわれていたGTカーによる耐久レースシリーズ)とル・マン24時間耐久レースに「フェラーリ F40」でエントリーしていたフェラーリは、1996年シリーズに「フェラーリ F40」の後継レーシングマシンとして「フェラーリ F50 GT」の開発を進めていました。「フェラーリ F50 GT」の製作はフェラーリ本社ではなく、シャシーコンストラクター、またレーシングカーコンストラクターとしても有名な「ダラーラ社」で行われることになりました。生産台数は、わずか3台のみです。

エクステリアの変更

市販モデルの「フェラーリ F50」のルーフでは取り外しが可能だった「デタッチャブルトップ」が装着されていましたが、「F50 GT」ではサーキット走行専用のためにボディ剛性、安全性の強化に伴い、ルーフ形状は、完全なクローズドボディに変更されています。またルーフエンド部からテールエンドにまでの形状がカウル自体も曲線を描くカウル形状に変更されています。またフロントスポイラー、サイドステップ、リアディフューザー、リアウイングなどのパーツは、空力性能を高めダウンフォースを得るために、この「F50 GT」専用に新設計製作されています。エンジンを覆っているカウルにはエンジンからの熱を放熱するためのエアダクトが備えられています。そしてノーマルのリアのウイングも変更されており、フォーミュラーマシンのような二本足の大きなリアウイングが装備され、トラクション向上が図られています。またエンジンベイを覆うようにエンジンフードを備え、エアーを取り込むインテークがルーフ上に装着されています。フロントバンパーも空力を考えたものに変更され、リアバンパー下にはディフューザーが取り付けられ車体の下の空気の流れを逃がしダウンフォースを効果的に得るように図られています。

軽量化が図られている室内

インテリアも軽量化されスパルタンでレーシーになっています。ボディ剛性、安全性の向上のためのロールバーが張り巡らされており、メーターはノーマルとはことなりデジタルメーターを採用し、カーボン製シートはシングルシーターに変更されています。

モンスター級のエンジン

搭載されるエンジンは、F1同様で潤滑方式はドライサンプシステム、12本のバタフライスロットルとダウンドラフトのインジェクターが装備された「V12型エンジン(TipoF130型)」をチューニングし搭載しています。マレリ製の点火システムや電子制御式インジェクションシステムが装備されています。エンジンの許容回転数はレッドゾーンが11,000rpmです。最高出力は720PS/10,500rpmを発生しています。このハイパフォーマンスなパワーユニットにマルチプレートクラッチと6速シーケンシャルトランスミッションを組み合わせています。

ポテンシャル

シャシーやボディパネルは市販車同様のカーボンファイバーコンポジットモノコックが採用されていますが、全長4,578 mm、全幅1,986 mm、全高1,092 mmのボディサイズで車両重量は860kg(乾燥重量)に抑えられ、軽量化と剛性の向上が図られています。サスペンションは、フロント/リアともに独立懸架ダブルウィッシュボーン/コイル(ガス封入式ショックアブソーバー)が装備されています。ブレーキシステムはカーボンブレーキ、ホイールはスピードラインの20インチとなっています。このレーシング仕様によって「フェラーリ F50 GT」は、パワーウェイトレシオが1.25kgとなり、最高速度は380km/h、0-100kmの加速は2.9秒の動力性能を発揮します。

超希少なプレミアムカー

「フェラーリ F50 GT」は、テストカーとして3台が製作されました。しかし、突然1996年シーズン間際になってフェラーリはF50 GTの計画をキャンセルすることになりました。結果、製作されたテストカー3台は全て売却することになりました。第1号モデルはアメリカ、第2号モデルは日本、第3号モデルはドイツに売却されることになりました。売却の際には条件がありました。文書の条項に「モータースポーツ等競技車輌として使用しない事」という文言が記載された誓約書にサインをした上で、売却が決定しました。現在、日本には第2号モデルと第3号モデルが確認されていて、イベントや雑誌の取材によって時折サーキットを走行しています。

まとめ

「フェラーリ F50」は、フェラーリ社の世界限定349台のメモリアルカーというだけでなく、F1同様のエンジン、シャシー設計によって市販し「公道を走るF1」というコンセプト通りのプレミアム・スーパーカーなのです。