「三菱 スタリオン」ガルウィングまで制作されたガンダムフェイスのスポーツカー

「三菱 スタリオン」は、アニメ「ガンダム」に出てきそうな派手なスタイリングや「ガルウィング仕様」で人気を博し、トルク重視のパワーユニットでモータースポーツでも活躍したスポーツカーです。その魅力に迫ってみたいと思います。

キャッチコピーは「ヘラクレスの愛馬」

1982年に『ヘラクレスの愛馬、アリオンが今、星になって帰ってきた』のキャッチコピーで「三菱 スタリオン(Starion)として登場しました。「スタリオン」は、三菱自動車工業によって1982年から1990年まで生産されました。国内仕様とは、若干異なる輸出仕様も生産されアメリカ仕様、ヨーロッパ仕様、オーストラリア仕様が用意され、1983年から1989年まで輸出されました。モデルとしては、三菱スペシャリティーカー「ギャランΛ/エテルナΛ」の後継モデルになります。

ガンダム仕様の角張ったデザイン

「スタリオン」の角張ったボディデザインは、セレステの後継車として計画されていた「セレステII」のプロトデザインがベースとなっています。「セレステII」のプロトデザインはノッチバックスタイルで、先代ベース車両の「ギャランΛ/エテルナΛ」も同じノッチバックデザインですが、「スタリオン」は、ハッチバックスタイルのデザインが採用されました。「ポルシェ 924」のようなスタイルは、国内にはないデザインです。またボディデザインの特徴としてスーパーカーブームの影響を受けて、ヘッドライトには「リトラクタブル・ヘッドライト」が採用されています。直線を強調したハッチバックボディのサイズは全長が4,410mm、全幅1,695 mm、全高1,320mmのナローボディです。またワイドボディも用意されており、輸出仕様と同様に「オーバーフェンダー」が採用され全幅1,745mmです。

パワーユニット

当初は2,000cc G63B型 直列4気筒 SOHC 2バルブ サイレントシャフト付きECIターボ エンジンが採用されています。ターボチャージャーのタービンは三菱TC05-12Aを採用しています。またキャブレター仕様のNAエンジンも設定されていました。ターボ仕様のスペックは、最高出力が175PS/5,500rpm、最大トルクは25kgm/3,500rpmを発生しています。トランスミッションは、5速MTと4速トルコンATが設定されていました。また「ギャランΣ/エテルナΣ」のフロアパンをベースとしているため、フロントに縦置きされたエンジンで後輪を駆動するFR車です。

サスペンションシステム

生産初期は「Σ」の後輪車軸をそのまま使用したリジット仕様の4リンクリジットシャシー(NAエンジン搭載車のみ)と、リアサスペンションに後輪にマクファーソンストラットを使用した独立懸架のシャシーの2タイプでしたが、すぐに前後サスペンションはマクファーソンストラットの独立懸架のシャシー車体のみに統一されました。ステアリングは当時としては保守的な機構であったボール・ナット(リサーキュレーティング・ボール)方式のパワーステアリングが採用されています。コーナリング向上が図られ、ターボエンジンの高出力とボール・ナットながらもクイックなギアレシオのステアリングが可能となっています。プラットフォームは「ラムダ」から引き継いだものでしたが、ホイールベースは10cm近く短縮されており2,435mmとなっています。車両重量は1,230kg~1,260kgで、ベース車両の「ラムダ」とほぼ同等に抑えられています。駆動方式はFRが採用されています。ブレーキシステムは、ターボエンジンに対応して強力なストッピングパワーが得られる、F/Rともに4輪ディスクブレーキが採用されています。

超希少車「2000GSR-VR」は、50台の限定車

1983年に、日本車の市販車で初の空冷式インタークーラーターボを装備するモデル、可変バルブ機構式3バルブヘッド搭載 インタークーラーターボ付エンジン( G63B型)通称「シリウスDASH3×2」と呼ばれるエンジンが追加され、新グレード「GSR-V」に搭載されました。スペックは、最高出力が200PS/6,000rpm、最大トルク28,5kgm/3,500rpmを発生し、200PSを超えるハイパワーエンジンでした。「シリウスDASH3×2」エンジンを搭載したモデルは「2000GSR-V」、3ナンバーサイズとなるブリスターフェンダーを採用したモデルは「2000GSR-VR」、そして「2000GSR-VR」のボディに初代「デボネア」に搭載されていたサイレントシャフト付き2,600ccのG54B型にインタークーラーターボを装着した2バルブエンジン(シリウスDASH3×2ではない)を搭載した「2600GSR-VR」が追加モデルとなりました。また数あるグレードの中で、「シリウスDASH3×2」の2Lターボを搭載したワイドボディの「2000GSR-VR」は、50台の限定車で、超希少車として都市伝説になるほどでした。新車時価格は253万円~312万5000円となっています。

「スタリオン 2000GSR-VR」主要諸元

エンジン:1,997cc 直列4気筒 SOHC インタークーラーターボ付エンジン(G63B型)
最高出力:200PS/6,000rpm
最高トルク:28,5kgm/3,500rpm
トランスミッション:5速MT
駆動方式:FR
サスペンション:F/R マクファーソンストラット
ブレーキ:F/R ベンチレーテッドディスク
全長:4,410mm
全幅:1,745mm
全高:1,320mm
ホイールベース:2,435mm
車両重量:1,260kg

MC後の「スタリオン」

「スタリオン」は、1985年にマイナーチェンジを行ないました。マイナーチェンジによってフェイスリフトと装備の充実が図られました。1987年、それまで輸出専用であったブリスターフェンダー仕様のボディを備えるグレード「GSR-VR」が、限定販売されました。このモデルは、全幅が1,745mmとなった為、3ナンバー登録となりました。そして、1988年には、全グレードがこのワイドボディに統一されると共に、エンジンが変更されました。マイナーチェンジ後に搭載されたエンジンは、2.6L 直列4気筒 SOHC 2バルブ インタークーラーターボのG54B型で、最高出力175PS/5,000rpm、最大トルク32,0kgm/3,000rpmのスペックでした。非常に扱い易い、トルク重視のマイルドなセッティングとなっていました。又、ABS(アンチロック ブレーキ システム)やLSD(リミテッド スリップ ディファレンシャル)が標準装備となっていました。これらの変更によって、車両重量は増大しており1,320kg-1,340kgとやや重くなっていました。後継モデル「三菱 GTO」が登場するまで、8年間に渡り生産が続けられるロングセラーとなりました。

モータースポーツでの活躍

1980年代のモータースポーツでは三菱を代表するレーシングベース車両として「スタリオン」は、活躍しました。国際格式の幾つものカテゴリーに参戦しており、特にサーキットにおけるグループAとグループNカテゴリーで活躍しました。「Simmons drums」にスポンサードされた「スタリオン」は多くのレースで勝利を収めています。

国内レースでの活躍

日本国内においては、全日本ツーリングカー選手権にて、中谷明彦/高橋国光組のドライビングによる活躍が広く知られています。特に1985年の「インターTECレース」において、中谷のドライブする「三菱 スタリオン」が「ボルボ 240ターボ」勢に国産勢で唯一互角以上の戦いを見せたレースエピソードや、1986年の「富士インターTECレース」においても「ジャガー XJS」を一時逆転し名勝負お繰り広げてポテンシャルの高さを示しました。

海外での活躍

海外での活躍も際立っており、「Simmons drums」にスポンサードされた「スタリオン」は多くのレースで勝利を収めています。アメリカでは、「スタリオン」は耐久レースでの活躍でし知名度を高めています。2,600cc G54B ターボエンジンはロータスエンジンのチューニングで著名な「Dave Vegher」の手によりチューニングされ、「デーヴ・ウォーリン」の率いる「チーム・三菱」のスタリオンは1984年から1987年までの「Longest Day of Nelson Ledges 24時間耐久レース」で勝利しています。また「チーム・三菱」のスタリオンは、その4年間「Sports Car Club of America(SCCA)」のアメリカ選手権で多くの勝利を獲得しています。しかも、当時のアメリカのモータースポーツシーンはクライスラー、アウディ、日産、マツダが「ワークスチーム」で参戦していましたが、「デーヴ・ウォーリン」の率いる「チーム・三菱」は三菱のフルワークス体制ではなく、「セミワークス体制」でした。現在でもアメリカでは多くのサーキット走行イベントでプライベーターの手によるスタリオンが走り続けています。

「スタリオン 4WD ラリー」

1983年10月の東京モーターショーで「スタリオン 4WD ラリー」が登場しています。グループB規定車両で競われていたWRCに、翌年からの参戦とホモロゲーション用車両の市販をコンセプトとしたモデルです。このマシンは排気量アップした2,091cc SOHC インタークーラーターボ付き「シリウスDASH3×2」エンジンを搭載して、最高出力360PS、最大トルク32,0kgmを発生していました。ラリー競技専用車両として開発されているため、ビスカスカップリング式4WDの駆動方式が採用されています。ボディデザインは、フロントのオーバーハングが切り詰められ、丸型ヘッドランプと大型フォグランプが装着されています。またFRP製のボンネットフードに変更されエアインテークが設けられていました。フロント・リアともにオーバーフェンダーを装着しリアスポイラー内蔵式オイルクーラーなどが大きな特徴でした。「スタリオン 4WD ラリー」の総生産台数は5台で「T1/T2」に加え「S1/S2」の4台と、市販車のために揃えられた各種部品は廃棄されたと言われています。現在は、岡崎工場に市販車仕様のレプリカが1台展示されており、本物の現存数は3台(日本に2台、英国に東京モーターショー仕様が1台)となっています。

実戦では

実際の開発マシンには、「ランサーEX2000ターボ」に搭載されていた2バルブ G63Bをベースに2,140ccまで排気量をアップし、更なるチューニングが施された「G63Bダッシュ エンジンが搭載されていました。1983年2月に試作1号車の「T1」、4月に2号車の「T2」が完成し、比較実験でWRC最強マシン「アウディ・クワトロ」を上回るコーナーリングスピードをマークするなどポテンシャルの高さを記録しました。残念ながら1984年市販車生産計画中止が決定しましたが、技術開発のため開発は続行され、1984年8月の「ミルピステ・ラリー」のホモロゲーションなしでも参戦できるエクスペリメンタルクラスに出場し、クラス優勝を飾っています。1984年11月の「RACラリー」には特別枠のプロトタイプクラスに参戦し、完走しました。1985年は「マレーシア・ラリー」のプロトタイプクラスに出場しています。1986年、1987年には「香港-北京ラリー」に参戦しましたが、マシントラブルでリタイアしています。

映画やドラマでも活躍

「スタリオン」の活躍は、モータースポーツに留まらず、映画やドラマでも活躍しています。1983年に公開された『キャノンボール2』という映画、そして1989年にテレビ朝日で放送された『ゴリラ・警視庁捜査第8班』で活躍しています。

ロケットエンジン搭載モデル?

1983年に公開された『キャノンボール2』という映画に出てくる「スタリオン」はレースに参加するペアのリチャード・キールとジャッキー・チェン組の愛車として登場しています。この「スタリオン」は、ブラックカラーで車高はノーマルですが劇中では、水陸両用でロケットエンジンを搭載し白煙を上げながら加速するシーンなどハイテクマシンになっています。映画の内容は、数々の名車やスーパーカーでアメリカを西海岸から東海岸まで賞金獲得のためにルール無用のレースを行うというもので、痛快コメディ映画です。

限定5台のガルウィング仕様

1989年には、テレビ朝日で放送の『ゴリラ・警視庁捜査第8班』に登場しています。西部警察の後に石原プロモーションが製作した刑事ドラマで、ガルウィングに改造されたスタリオンが登場しています。しかも首都圏の三菱ディーラーが「ゴリラフェア」を開催した時に、限定5台で販売されました。それも劇中で使われた「スタリオン ガルウイング」を製作した架装会社「アッスル」に依頼して製作されていました。

まとめ

「三菱 スタリオン」は、8年間に渡って生産される中でマイナーチェンジ毎にデザインクオリティ、パワーユニットの向上を遂げ、モータースポーツや映画、TVで活躍したモデルです。今でもスタイリングは魅力的でファンを増やしています。